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十六章 ミチル争奪戦!
7.ヒジリの過去の話を聞こう。
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(side ミチル)
「ヒジリが引っ越したのって、いつ? 」
暫く考え込んで‥ナラフィスがヒジリに聞いた。
なんで、今ヒジリの引っ越しの話する。
急に話変えるな。
‥なんか変える切っ掛けみたいな話したか? それとも、「くだらない話はもういいや」ってこと? ‥くだらない話始めたのアンタだからな。
ヒジリは「ん? 」とちょっと首を傾げてから
「俺が産まれて間もないくらいらしいから、俺は覚えてないな~。
父さんと結婚して、すっごい田舎で住んでたらしいけど、「こんな田舎だったら、周りの人は皆ヒジリのこと特異な目で見るかもしれない」って母さんが言ったって」
成程、とナラフィスが頷く。
俺はヒジリの話を聞きながら、
確かに、田舎の方が近所づきあいが濃くて、‥でも、同時に煩わしいかもな。
特に「そう触れてくれるな」って言う事があると‥ね。
リバーシに対する偏見も田舎の方が大きいかもしれないし‥。
なんて思った。
‥アパート暮らしの自分にそういう経験は無いけど、一般論として‥ね。
「田舎‥ねえ」
ナラフィスは、独り言のように小声で言うと、丁度部屋に入ってきたラルシュ様に
「『道徳教育』の後かな」
話しを振った。
‥なんで、今部屋に入ってきたばかりの人に話を振る。
しかも、今、結界張ってるんじゃなかったか? ここ。
ポカン‥とラルシュを見ると、ナラフィスが「ラルシュも「この結界に入れる人」にしといたんだ」って説明してくれた。
「それと、今までの話はラルシュも聞いてた」
と、しれっと‥情報漏洩をばらした。
‥トランシーバー的な魔法かな。
魔法、恐ろしいよ。
「前じゃないかな。寧ろ『道徳教育』の為の引っ越しじゃないかな? 」
ラルシュが首を傾げて言った。(俺たちの驚きや不信感なんか意にも介さずに、だ)
‥『道徳教育』?
聞きなれない言葉に、俺が首を傾げていると、ナラフィスが
「リバーシの子供は幼い頃‥まだ初等の学校に行く前に、週の最後に教会に行く決まりになっているんだ。そこでされる教育が『道徳教育』」
と、『道徳教育なるもの』の説明をしてくれた。
その後に続いたナラフィスの説明は(よくわからないところもあったが)こんな感じだったと思う。
タイトル「リバーシ、教会での『道徳教育』その内容と狙い」
(内容)
神官様のありがたいお話を聞く
優しい聖女様とお話をしたり、見習の若い神官にスキルを教わったりする。
因みに教えてもらうスキルは『見習いの若い神官』によって違うが、流石教会だ。攻撃的なスキルじゃない。それこそ、ちょこっとついた傷を治す、野菜をシャキッとさせる‥って程度のスキルだ。
(協会側の狙い)
人に対する思いやりを学ばせる。
自分の危険性をなんとなく理解させる。
弱者をいたわる心を持たせるように幼い頃から説いて聞かす。
間違った力の使い方をしない様に、基本的な力の使い方を学ばせる。
(‥というか単純に「聖女様綺麗‥神官様カッコイイ、俺もここで働きたい‥」って勧誘って意味合いが強いんだろうね)
‥まあ、多分そう間違えてはいないだろう。
ヒジリをちらりと見ると、
「‥確かに教会には通っていた」
と頷いた。
「遊び友達‥って言ってもそう一緒に遊んだわけでもないけど‥近所の子供たちは‥そういえば行ってなかった。
俺だけのけ者‥とかよくあったから、別に気にも止めてなかったけど」
‥悲しい慣れだな。
ちょっと俺の心は痛んだが、ヒジリは気にしていない様子だった。
ヒジリがぽつりぽつりと思い出話を始めた。
「俺だけが行ってたから、なんか‥面倒くさいなってのは正直あったけど‥だけど、嫌とかそういう感じではなかった。そこに行けば、俺と同じ年恰好の子供がいて‥近所の子供より話があったから。
っていうのも、「多分リバーシだな」‥ってお互い何も言わないでも‥なんか分かったらだと思う。
‥まさか、全員リバーシだとは思わなかった。まあ‥同じリバーシといってもやっぱりレベル‥ってか‥力の差はあるからね」
俺は頷いた。
つまり、レベルが低い奴はリバーシだと認識できなかったってことだ(‥哀れ~)
‥きっと、皆にはヒジリは一目で「リバーシだな」ってわかったんだろう。
「そこに、リバーシばっかり集められてるってのは聞いてたの? 」
って聞くと、ヒジリは首を振った。
「どういう集まりだっていう説明は? ‥それとも、聞いてても分かってなかったのかも。子供だったわけだし」
子供どころか、未就学児だから‥。
幼稚園児なんて鼻たらして鬼ごっこしてる様な年齢だ。
って思ったが、ヒジリが首を振って否定し
「リバーシは早熟だから小学校に行く前の子供でも小学二年生位の理解力はある」
ちょっと不機嫌そうな顔で言った。
‥まあ、俺もそうだったな。
「それとなく道徳教育させること‥が目的だったんだって今聞いて、初めて納得した‥」
確かに初めから「道徳教育の為です」って言われたら教育じゃなく学習だな。
つまり、理解力があるとはいえ、相手は子供。
自覚 → 学習 → 訓練
って「学習計画」に沿って教育していく必要があるってことだ。
自分が人に危害を与え得る存在だっていう理解が無いまま、自分が周りより何か貴重なもの‥例えば魔力量だとか、状態異常のセンスだとか‥スキルの才能とかだ‥を持ってるって自覚すれば、子供だから、
それを鼻にかけて偉そうになる者
「偉くなった気になって」使えこなせないのに使おうとして周りに被害を及ぼす者
そういう‥周りに危害を与える者になることが普通に想定できる。
それに、目立った行動をとり、自分がリバーシであることが悪人に知られ、誘拐されることだってあるだろう。
そうなった時、リバーシの周りの人間が迷惑を被る。
そうならないように、リバーシ自身に「自衛手段」だの「心得」だのを叩き込むのだ。
あくまで、それとなく、だ。
「‥そういえば「保育園の先生」的な若いお兄さんがいた。‥あのお兄さんがつまり、ナラフィス先生のいう「見習いの若い神官」だったってことだね‥。
で、おじいちゃん先生が神官長ってわけか。
おじいちゃん先生は、俺によく
「君は、リバーシで魔力の枯渇なんてことは、無縁だろう。だけど、世の中の人たちは、魔力が無い人や(魔力が)あっても君より皆ずっと少ない。それが当たり前なんだ。
皆を自分と同じだと考えてはいけないよ。
力を使って誰かを傷つけたりしてはいけない。
力を持つ者っていうのは、それだけ責任があるんだよ」
って言い聞かせてたな~。
あの当時の俺には難しい言葉なんかも時々でてきたけど、子ども扱いすることなく、優しい穏やかな眼差しで真剣な話をしてくれる大人が‥あの時は嬉しかった。
だから「おじいちゃん先生」「おじいちゃん先生」って呼んでた。俺だけじゃなくみんなそう呼んでた。尊敬してたし、単純に懐いてた」
ヒジリは当時を思い出したのか、穏やかな表情で言った。
俺はそれを聞きながら、リバーシ出現頻度多数ポイントの一つ「おばあちゃんスポット」を思い出していた。
幼いリバーシを、安心させて、取り込む手段‥。
俺が小さくため息をついたことにヒジリは気にする様子もなく話を続けた。
「教会に遊びに行ったらまず、聖女様にご挨拶に行く。聖女様は、‥そうだな‥年のころだったら、20になっているかなってないかって年だっただろうかな? 常世場慣れした綺麗な人だったよ。
綺麗っていっても、勿論顔だけじゃない。もう、存在自体が「美しい‥」って感じの人なんだ。
顔も、バラの様な美しさじゃなくって‥白い儚いユリとか‥そういう清潔な‥如何にも聖女って感じの清楚な感じなんだ」
それを思い出してウットリした顔をするヒジリは、美しい花を見て目を輝かせる乙女というよりむしろ、「女神様美しいぃ~神~」って「対象物」について語るオタクの青年のそれだった。
「とにかく、立ち振る舞いだとか、優しい笑顔だとか、優しい声だとか‥そんな雰囲気も含めて凄く綺麗な人だった。
おじいちゃん先生も勿論好きだったけど、俺は聖女様が大好きだった。
当時の俺は、「将来、私も聖女様の様になりたい」って思ってた。‥女子だったから‥だろうね。それは俺だけじゃなくって女子は皆言ってた。
それで男は全員「強くなって、聖女様を守る」って言ってた」
で、今の「こころが男なヒジリ」なら「聖女様を守る」っていうんだろうな。でも、この前俺ヒジリに守るって言われちゃったな‥。俺ってヒジリにとって「聖女様的なもの」なのかな‥。(← 違う、ただペット的なものだ)
「ロン‥そういえばそういう名前だった‥に会ったのもそこだった」
ぽつり、とヒジリが呟いた。
「「「ロン? (男?? )」」」
残りの男三人の声がそろう。
‥誰だそれは。
新たな男の出現に、三人の表情がいっぺんに険しくなったのは‥言うまでもない。
「ヒジリが引っ越したのって、いつ? 」
暫く考え込んで‥ナラフィスがヒジリに聞いた。
なんで、今ヒジリの引っ越しの話する。
急に話変えるな。
‥なんか変える切っ掛けみたいな話したか? それとも、「くだらない話はもういいや」ってこと? ‥くだらない話始めたのアンタだからな。
ヒジリは「ん? 」とちょっと首を傾げてから
「俺が産まれて間もないくらいらしいから、俺は覚えてないな~。
父さんと結婚して、すっごい田舎で住んでたらしいけど、「こんな田舎だったら、周りの人は皆ヒジリのこと特異な目で見るかもしれない」って母さんが言ったって」
成程、とナラフィスが頷く。
俺はヒジリの話を聞きながら、
確かに、田舎の方が近所づきあいが濃くて、‥でも、同時に煩わしいかもな。
特に「そう触れてくれるな」って言う事があると‥ね。
リバーシに対する偏見も田舎の方が大きいかもしれないし‥。
なんて思った。
‥アパート暮らしの自分にそういう経験は無いけど、一般論として‥ね。
「田舎‥ねえ」
ナラフィスは、独り言のように小声で言うと、丁度部屋に入ってきたラルシュ様に
「『道徳教育』の後かな」
話しを振った。
‥なんで、今部屋に入ってきたばかりの人に話を振る。
しかも、今、結界張ってるんじゃなかったか? ここ。
ポカン‥とラルシュを見ると、ナラフィスが「ラルシュも「この結界に入れる人」にしといたんだ」って説明してくれた。
「それと、今までの話はラルシュも聞いてた」
と、しれっと‥情報漏洩をばらした。
‥トランシーバー的な魔法かな。
魔法、恐ろしいよ。
「前じゃないかな。寧ろ『道徳教育』の為の引っ越しじゃないかな? 」
ラルシュが首を傾げて言った。(俺たちの驚きや不信感なんか意にも介さずに、だ)
‥『道徳教育』?
聞きなれない言葉に、俺が首を傾げていると、ナラフィスが
「リバーシの子供は幼い頃‥まだ初等の学校に行く前に、週の最後に教会に行く決まりになっているんだ。そこでされる教育が『道徳教育』」
と、『道徳教育なるもの』の説明をしてくれた。
その後に続いたナラフィスの説明は(よくわからないところもあったが)こんな感じだったと思う。
タイトル「リバーシ、教会での『道徳教育』その内容と狙い」
(内容)
神官様のありがたいお話を聞く
優しい聖女様とお話をしたり、見習の若い神官にスキルを教わったりする。
因みに教えてもらうスキルは『見習いの若い神官』によって違うが、流石教会だ。攻撃的なスキルじゃない。それこそ、ちょこっとついた傷を治す、野菜をシャキッとさせる‥って程度のスキルだ。
(協会側の狙い)
人に対する思いやりを学ばせる。
自分の危険性をなんとなく理解させる。
弱者をいたわる心を持たせるように幼い頃から説いて聞かす。
間違った力の使い方をしない様に、基本的な力の使い方を学ばせる。
(‥というか単純に「聖女様綺麗‥神官様カッコイイ、俺もここで働きたい‥」って勧誘って意味合いが強いんだろうね)
‥まあ、多分そう間違えてはいないだろう。
ヒジリをちらりと見ると、
「‥確かに教会には通っていた」
と頷いた。
「遊び友達‥って言ってもそう一緒に遊んだわけでもないけど‥近所の子供たちは‥そういえば行ってなかった。
俺だけのけ者‥とかよくあったから、別に気にも止めてなかったけど」
‥悲しい慣れだな。
ちょっと俺の心は痛んだが、ヒジリは気にしていない様子だった。
ヒジリがぽつりぽつりと思い出話を始めた。
「俺だけが行ってたから、なんか‥面倒くさいなってのは正直あったけど‥だけど、嫌とかそういう感じではなかった。そこに行けば、俺と同じ年恰好の子供がいて‥近所の子供より話があったから。
っていうのも、「多分リバーシだな」‥ってお互い何も言わないでも‥なんか分かったらだと思う。
‥まさか、全員リバーシだとは思わなかった。まあ‥同じリバーシといってもやっぱりレベル‥ってか‥力の差はあるからね」
俺は頷いた。
つまり、レベルが低い奴はリバーシだと認識できなかったってことだ(‥哀れ~)
‥きっと、皆にはヒジリは一目で「リバーシだな」ってわかったんだろう。
「そこに、リバーシばっかり集められてるってのは聞いてたの? 」
って聞くと、ヒジリは首を振った。
「どういう集まりだっていう説明は? ‥それとも、聞いてても分かってなかったのかも。子供だったわけだし」
子供どころか、未就学児だから‥。
幼稚園児なんて鼻たらして鬼ごっこしてる様な年齢だ。
って思ったが、ヒジリが首を振って否定し
「リバーシは早熟だから小学校に行く前の子供でも小学二年生位の理解力はある」
ちょっと不機嫌そうな顔で言った。
‥まあ、俺もそうだったな。
「それとなく道徳教育させること‥が目的だったんだって今聞いて、初めて納得した‥」
確かに初めから「道徳教育の為です」って言われたら教育じゃなく学習だな。
つまり、理解力があるとはいえ、相手は子供。
自覚 → 学習 → 訓練
って「学習計画」に沿って教育していく必要があるってことだ。
自分が人に危害を与え得る存在だっていう理解が無いまま、自分が周りより何か貴重なもの‥例えば魔力量だとか、状態異常のセンスだとか‥スキルの才能とかだ‥を持ってるって自覚すれば、子供だから、
それを鼻にかけて偉そうになる者
「偉くなった気になって」使えこなせないのに使おうとして周りに被害を及ぼす者
そういう‥周りに危害を与える者になることが普通に想定できる。
それに、目立った行動をとり、自分がリバーシであることが悪人に知られ、誘拐されることだってあるだろう。
そうなった時、リバーシの周りの人間が迷惑を被る。
そうならないように、リバーシ自身に「自衛手段」だの「心得」だのを叩き込むのだ。
あくまで、それとなく、だ。
「‥そういえば「保育園の先生」的な若いお兄さんがいた。‥あのお兄さんがつまり、ナラフィス先生のいう「見習いの若い神官」だったってことだね‥。
で、おじいちゃん先生が神官長ってわけか。
おじいちゃん先生は、俺によく
「君は、リバーシで魔力の枯渇なんてことは、無縁だろう。だけど、世の中の人たちは、魔力が無い人や(魔力が)あっても君より皆ずっと少ない。それが当たり前なんだ。
皆を自分と同じだと考えてはいけないよ。
力を使って誰かを傷つけたりしてはいけない。
力を持つ者っていうのは、それだけ責任があるんだよ」
って言い聞かせてたな~。
あの当時の俺には難しい言葉なんかも時々でてきたけど、子ども扱いすることなく、優しい穏やかな眼差しで真剣な話をしてくれる大人が‥あの時は嬉しかった。
だから「おじいちゃん先生」「おじいちゃん先生」って呼んでた。俺だけじゃなくみんなそう呼んでた。尊敬してたし、単純に懐いてた」
ヒジリは当時を思い出したのか、穏やかな表情で言った。
俺はそれを聞きながら、リバーシ出現頻度多数ポイントの一つ「おばあちゃんスポット」を思い出していた。
幼いリバーシを、安心させて、取り込む手段‥。
俺が小さくため息をついたことにヒジリは気にする様子もなく話を続けた。
「教会に遊びに行ったらまず、聖女様にご挨拶に行く。聖女様は、‥そうだな‥年のころだったら、20になっているかなってないかって年だっただろうかな? 常世場慣れした綺麗な人だったよ。
綺麗っていっても、勿論顔だけじゃない。もう、存在自体が「美しい‥」って感じの人なんだ。
顔も、バラの様な美しさじゃなくって‥白い儚いユリとか‥そういう清潔な‥如何にも聖女って感じの清楚な感じなんだ」
それを思い出してウットリした顔をするヒジリは、美しい花を見て目を輝かせる乙女というよりむしろ、「女神様美しいぃ~神~」って「対象物」について語るオタクの青年のそれだった。
「とにかく、立ち振る舞いだとか、優しい笑顔だとか、優しい声だとか‥そんな雰囲気も含めて凄く綺麗な人だった。
おじいちゃん先生も勿論好きだったけど、俺は聖女様が大好きだった。
当時の俺は、「将来、私も聖女様の様になりたい」って思ってた。‥女子だったから‥だろうね。それは俺だけじゃなくって女子は皆言ってた。
それで男は全員「強くなって、聖女様を守る」って言ってた」
で、今の「こころが男なヒジリ」なら「聖女様を守る」っていうんだろうな。でも、この前俺ヒジリに守るって言われちゃったな‥。俺ってヒジリにとって「聖女様的なもの」なのかな‥。(← 違う、ただペット的なものだ)
「ロン‥そういえばそういう名前だった‥に会ったのもそこだった」
ぽつり、とヒジリが呟いた。
「「「ロン? (男?? )」」」
残りの男三人の声がそろう。
‥誰だそれは。
新たな男の出現に、三人の表情がいっぺんに険しくなったのは‥言うまでもない。
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