リバーシ!

文月

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十六章 ミチル争奪戦!

6.嫉妬と焼き餅。

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(side ミチル)


 ‥一瞬、目が点になったよ。
 ナラフィスが

「じゃあ、ミチルが‥
 ミチルがカタルとキスしてるの想像したら‥どう? 
 ナツミがカタルとキスしてるのと想像するのと、どっちが嫌? 」
 なんて言うから。
 は?
 なんの例え?
 なんで俺が‥
 カタルとキスするとこ、ヒジリに想像されなきゃならんのだ。なんの嫌がらせだ。


「え‥? 」
 って呟いたっきり、ヒジリは固まってる。
 綺麗な若草色の目が、キョトンって感じで‥見開かれてる。
 普段くるくる変わるヒジリの表情が、固まってるのって変な感じ。無表情とは違う。ヒジリは不機嫌そうだったり、照れてたり‥いつも生き生きとした表情をしてるんだ。
 きっと、思ったこと全部顔に出ちゃってるんだろうね。
 そういうとこも、王族には向かないな~って思う。
 だって、ラルシュ見てたら‥笑顔がテンプレのポーカーフェイスって感じするじゃん。サラージもあの「俺様王子様」フェイスでほぼ固定だし。
 地球の政治家も同じだよね。思ったこと全部顔に出る様じゃ相手に手の内見せちゃってるのと同じなんだよね。それに、そもそも、話し憎いじゃん。「‥そこで不機嫌な顔になるなよ。大人気ねぇな! 」ってなるよね? ‥それは社会人ならみんなそうだ。表情もそうだけど、発言も。当たり前だけど一般人には考えられない位慎重にならないといけない。‥誰に聞かれても問題ない、録音されてても問題ない様な発言をしなきゃならないんだろう。
 表面上にこやかに、当たり障りのない発言で記者からの質問をかわし、でも、政治の場で「自分の言いたいこと」を端的に、誤解のないように、話す。
 自信たっぷりに、だ。
 人となり‥っていいながら、皆に見せる顔は「クリーンな政治家」「デキる政治家」っていう、「そう見せたい顔」。キャラメイクされた顔なんだ。
 ヒジリってそういう腹芸が出来るタイプじゃないでしょ。

 ナラフィスの馬鹿な発言なんかで固まってるヒジリには、王族なんて無理だよ。ヒジリは俺と一緒にいる方がきっと「向いてる」し、楽しいよ。
 楽しかったら、爆発しないんでしょ? 安心でしょ?

「‥ミチルとカタルと‥ナツミとカタル‥。ナツミとカタルの方がリアルでガチで‥嫌かも‥。
 ミチルとカタルだったら、魔力補充してるのかなって思うんだけど、ナツミとカタルなんて完全に恋愛でしょ? 魔力補充なんて、食事と一緒。食事は生理現象で、しなきゃならない生理的欲求‥だけど、恋愛は魂の問題でしょ。
 キスって簡単に言うけど、キスは結構特別だって思うよ? 
 そういう雰囲気にならなきゃすることないよね。
 ‥ぶっちゃけね、何とも思わない奴と「ムラムラしたから」セックスすることはあっても、キスはしなくない? 」

 ‥知らん。
 何とも思わない奴と「ムラムラしたから」セックスすることなんか、俺は絶対ない。
 ああゆうのは、雰囲気でしょ。
 「そういう雰囲気になって」いつのまにか、「そういう気分になって」するって感じ。
 ‥獣じゃないんだから、「ムラムラした! 」「しよう! 」とはならんでしょ‥。 
 ヒジリはそんな感じなのか!? 
 (あくまで時間的な問題で! ←ヒジリ談)ヒジリには今まで「そういう経験」がないって言ってたけど‥少なくともそう思ったことはあるのか?! こいつの事、別にどうでもいいけど、「ムラムラするから」セックスしたいな~とか?? その相手は男? 女??
 ‥っていうか‥
 なんでヒジリはそんなにキスを特別視してるんだ? 
 別にキスもセックスもそう変わらんがな。
 ムラムラして、セックスになる流れの中でキスすること位あるだろうさ。

 キスに対する、憧れ‥的な? 

 ‥少女漫画の純愛なら‥そうなのかも。
 恋に夢見る「初心なティーンエイジャー」の読む少女漫画なら、‥そんな感じかも。
 そっか~。ヒジリにとって、恋愛って
 
 ドキドキ、この胸の高まり‥私、変になっちゃったのかもしれない‥病気なのかも‥
 もしかして‥
 恋?
 ‥私、あの人の事好きなんだ‥だって、あの人と‥キスしたいって‥思うから‥。

 って感じなのかな~。
 う~ん。甘酸っぱいな~。なんか‥いいなあ。
 キスは特別。
 ‥風俗嬢の「キスは止めて」もそういう感じなのかな。(風俗とか行ったことないけど)
 
 これって‥男の発想っていうより、女の子の発想なのかも。‥よくわからないけど。
 そういう傾向がありそうだね~、って感じで。

「つまり、ヒジリはナツミとカタルなら、ガチ恋愛って感じで嫌だけど、ミチルとカタルの場合だったら魔力補充の一環って感じだから嫌じゃない、と。
 ミチルとカタルの場合も恋愛だって思わないの? 」
 にしても‥

 さっきから、コイツはなんやねん!
 気色悪いことを‥!

「おい! ナラフィス‥」
 そろそろ俺の堪忍袋の緒が切れかけた時、
「それは無いよ」
 ヒジリがケロッとした顔で、俺の言葉にかぶせて来た。

「それは無いよ。だって、ミチル‥カタルの事嫌いだもん。
 さっき、‥可哀そうな位怯えてたミチル見て、‥俺が守ってあげなきゃって思った。
 だから、ナラフィス先生。
 たとえ「例えばの話」でも、そういう話しちゃダメだ。
 ‥あと、
 俺が不愉快な気持ちになるから、ナツミとカタルの話‥しないで欲しい」
 ナラフィスを真剣な顔‥思わずヒヤッとするような冷たい顔‥で見ながら、ヒジリが言った。
 そして、その後

「‥リアルで‥ガチで‥
 嫌なんだ‥」
 俯いて、ぼそりと呟いた。
 今度はナラフィスに言うんじゃなくて、独り言みたいに‥。
「ナツミの表情‥視線を見て分かった。
 ナツミは‥カタルの事好きなんだろう‥って。
 だけど、カタルはそんなナツミの気持ちに気付いていない。‥気付かない振りしてるのかも。
 きっとナツミの恋は成就することはない。だから、ナツミとカタルがキスするっていう未来はないだろう。
 だけど‥嫌なんだ。
 ナツミが‥カタルの事好き、その事実がそもそも嫌なんだ‥
 カタルじゃ、ダメだ。カタルは‥ない」
 ああ、やっぱり‥
 これは‥姉妹のそれだ。
 好きな子に対する嫉妬じゃなくて、大好きな「お姉ちゃん」を取られたくない妹の立場での焼き餅。

 ヒジリはそれを認めたくないけど、‥でも「分かってて」‥納得したくないって思ってる。
 大好きなお姉ちゃんを渡したくない、‥お前がお姉ちゃんに見合ってるか見極めてやるって思ってる。
 きっとカタルは及第点を貰えていないのだろう。
 だって、
 カタルのことを俺が嫌いだから。

「カタルの人となりなんて知らないけど、ミチルがあれほど怯える何かが、ミチルとカタルとの間にあった。
 それだけで、もう、ダメだ。
 カタルの事、俺は絶対に認めない。
 ミチルにカタルをもう二度と近寄らせない。
 これから先も気付かない振りして‥ナツミの気持ちを弄ぶんなら、ナツミには、可哀そうだけどカタルの事諦めさせる。
 ナツミは俺が幸せにする。一生、恋愛にはならないけど‥俺が幸せにする
 そもそも‥。幸せなら、人の一生に恋愛は必要だろうか? 」

 今論じる時間じゃないだろうけど‥

 人の一生に恋愛って‥俺は必要だと思うよ? ‥少なくとも俺にとっては、かなり重要だよ?? そういうの、生活の活力だよね? 好きな子を想う気持ちで人って強くなれるって思うし、楽しいよね? 恋愛って、それだけじゃなくって、癒しだったり、潤い部分だったりするよね?? 
 ってか‥ナツミに対しては例え妹の立場としての焼き餅だとしてもそういう感情いだくけど、俺に対して「え!? いやだ、ミチルがキスするなんて考えるだけで嫌だ! 」とか‥焼き餅焼いて‥くれないんだね‥ (´;ω;`)
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