リバーシ!

文月

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十一章 特別な人

10.ラルシュ参戦

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(side ヒジリ)


 さっきからラルシュの視線が「気になる」。
 ‥いや、確かにそれまでも見られること位あったけど、‥こんなに「にこにこ」見られ続けたことはなかったかな‥なんて。
 いつもはどちらかというと、「100点満点の笑顔を向けられる」って感じで、こんな感じでは‥なかった。
 なんだ、こりゃ。
 ちょっと落ち着かないかな~‥なんて。
 
 ナラフィスさんの「研究のネタ無いかな?? 」っていう視線が怖くてラルシュを見たら、‥これだ。
 これはどういう視線なんだ。
「ナラフィスに研究対象認定されてる! おもろ! 」
 っていう「ニタニタ」でもなく、 カフェでミチルといる時に感じる女子からの「あの人カッコイイ~」っていう熱視線でもない。(ちなみにこの熱視線のあと「‥彼女いるんだ」って呟きが聞こえ、ため息と共に‥視線が自分に来る。これが、めちゃ居心地悪い。誰が彼女だ。ってか、俺は女じゃない)
 ‥しかし、流石ミチルだよな~。俺は「聖」の時でも「あの人カッコイイ~」って熱視線向けられたことないぞ。吉川が向けられてるのも見たことないし、国見は‥問題外だな! お子様感満載だもんな!
 元気いっぱい「少年がそのまま大人になりました! ☆」って感じだもんな! でも、あいつが一番女の子に対して興味関心強いよな。あの女子にだけ笑顔っていう徹底っぷり、ほんと「いっそすがすがしい」って感じするもんな。俺は(やっぱり意識下では女だっていうのがあったのかな)そういうの無かったし、吉川も‥なかったかな。‥ああそうか、吉川は俺(聖・男)が好きなんだっけか。‥男が好きってことではなのか、男だろうが女だろうが「俺だから好き」なのか。
 俺はどうだろ。吉川の事‥嫌いじゃないんだけど、「好き」かと言われると‥よくわからない。
 好きってのがそもそも分からない。
 吉川は‥いい奴だとは思うんだけどな~。基本的に塩対応だけど、いい奴だし。背も高いし、‥顔はイケメンとかじゃないけど、実直さがそのまま顔に現れた! って感じの「いい顔」だ。
 濃くない顔。「視界の邪魔にならない」選手権があったら上位に入賞できそうな顔。‥まあ、つまり平凡そのものって顔。
 ‥だけど、まあ、平凡だからわざわざカフェで女の子たちに特別注目されることもないってわけか。
 いいよね。
 観賞用より、実用品。
 デザインより使いやすさ重視。(使いやすさってなんだ。別に俺は吉川を「使おう」とはおもってないぞ)
 高級品より普段使い‥これは、違うな。別にミチルは高級品じゃない。
 あんなに見た目はいいけど、高級感はない。普通に気さくだし、全然気取ったところないし、庶民的なお店‥焼き鳥屋とかにも連れて行ってもらったし。いっしょに「お鍋」したりするし。バッティングセンターとかで大笑いしたりするし。(ヒジリ、ミチルのペースにのせられてすっかりデート。だけど、ヒジリにその自覚はない)
 それを言うなら、吉川の方が「インテリ」な感じがする分「高級品」かな~。
 仕草とか上品だし。
 喋り方も国見みたいにわきゃわきゃしてなくて‥小型犬感はゼロだよな。大型犬の、あんまりほえないがっしりした感じの奴。
 声がちょっと低めで「よくいるような声」とかじゃない。
 バリトンっての? 結構渋いいい声なんだ。低いけど、低すぎないの。女子のアルトより、ちょっと高めって感じ。俺が高めだから羨ましいかったな~。昔はちょっと真似しようとした時も一時期あったけど、結局「骨格が違うのかな‥」って諦めた。‥まさか、骨格とかそういう問題じゃないとは思わなかったけど。
 ‥「低い渋い声」っていいよな~。(しみじみ)
 因みに、ミチルの声は俺と同じで「ちょっと高め」なんだ。高いっていっても、「男の声として一般的な感じ」の高さだけどね。ラルシュ様は静かで‥ってイメージが強くて、どんな声って言われても‥

 そういや、高級感のキングのポジションにいるの‥ラルシュだよね。
 そもそも‥ホントに王子様だし。(あ、でももう一人の王子様(サラージ)は中型犬って感じだよな。
 高級感ランキング1位.ラルシュ 2位.吉川 3位.ミチル・サラージ(同率)って感じ。‥流石にランク外には二人ともならない。
 なんせ、顔がいい。
 顔だけで、もう高級。ランク外1位(つまり4位。あ、3位が同率2人だから5位か)は俺で、国見は断トツ下の方。遥か彼方下の方。国見は違うランキング上位を狙っていただきたい。‥そうだな、「ワンコっぽい男ランキング」「弟っぽい男ランキング」とかかな。(うんうん)

 そんな「アホなこと」を考えていたら、

「ヒジリ」

 ラルシュの声で‥我に返った。

 ゾクっとした。
 ちょっと「艶のある」低音。吉川の声「いい声」ってさっき言ったけど‥あれとは「レベル違い」に「いい声」まるでビロードみたいな‥高級な艶のある‥声。
 ゾクっとした。ドキ、とは違う。こう‥怖い‥じゃない「ゾク‥」
 ‥なんだ、この落ち着かない感じ‥。
 本能的に、なんかこう‥落ち着かなくなる。
 ‥不快‥? 嫌悪? ‥じゃないけど、なんか‥
 あんまり「好きな感覚じゃない」感じ。
 ゾクっとしたのに、顔は‥熱くなる。‥なんだこの変な感覚。

「は‥はい? 」
 とにかく返事しなきゃ~‥って慌てて返事したら、緊張したせいか、変な声になっちゃった。
 恥ずかしい。
 ‥声が裏返っちゃった。
 おずおずと視線をあげてラルシュを見る。‥きっと、俺のこの情けない顔は小動物みたいな感じだろう。
 強者におびえる小動物。我ながら情けない‥! 

 ラルシュはそんな「挙動不審な」俺を「面白そうに」見ている。
 ‥腹立つわ~。(ベッドで寝てるから上目遣いになるけど)‥一応睨んどこ‥。どうせ怖くないでしょうけど。
 そんな俺を見てラルシュは(やっぱり)怖がる様子もなく、にこにこと(腹立つわ~)

 で、にこり、とすんごい男前フェイスで微笑むと‥

「ヒジリは私の婚約者ですからね」

 って言ったんだ。

 ‥へ?
 何それ急になに。怖い。
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