リバーシ!

文月

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十一章 特別な人

11.事実確認

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(side ラルシュ)


 兄に渡したくない。
 もしかして自分はヒジリのことを好きなんじゃないか。
 って自覚した後、城のベッドで眠るヒジリをしみじみ眺めてみた。
 その後ヒジリが目を覚まし、メイドの助けを借りて上半身を起こし、カーディガンを掛けてもらっているのを眺めたり、メイドに礼を言う声を聞いたり、ナラフィスにまた「無茶して! 」って怒られたり、「ところで、今の具合ってどんな感じ?! あんなにある魔力でも切れるんだね! 多少でもあっちで魔力作ったりとかした? 」とか‥聞かれたり‥って「付きまとわれて」困ってる様子を見た。
(ナラフィス、‥ちょっと馴れ馴れしすぎないか? 私の婚約者だぞ? )
 
 これって、‥ちょっとやきもちみたい?
 だけど、‥話に聞く程でも‥ない。他の男と‥たとえそれが研究オタクのナラフィスだとしても‥話したりするだけで嫉妬しちゃうもんだって話に聞いてたけど、‥そこまでではないみたいだ。
 もっと、好きの段階が加速すると、私もいずれはそんな風に成るのかも。
(それはそれで楽しみだ)

 今のところは
 ドキドキして、なんか変に意識してしまって目を合わせられない、‥とかもないみたいだ。

 だけど、主張はしておかないとな、とは思った。
 誰にって。
 メイドたちや‥ヒジリに。
 ナラフィスはその証人だな。
 私がヒジリの婚約者だってことを、メイドに再認識させて、ヒジリに知ってもらう。‥知ってもらうっていうか、自覚してもらう‥かな?
 あとは‥今はここにいない兄に。
 ‥口に出して主張しておかないと、私がヒジリに対して王命以外の関心が無いって思われたら困る。
 周りから「ラルシュローレとヒジリの仲はどうやらいいらしい」っていう「噂」が伝われば兄だって「それでも二人を引き離そう」って思わないだろう。
 
「お前そんなこと言ってなかったじゃないか」「どうせそう関心はないんだろ? 」「なら‥」
 って‥きっと「今までの私」をよく知っている人たちなら思う。
「どうせ関心もないだろうから、ヒジリは私がもらっても構わないよね? 」
 って「兄に」言われたら困る。
 兄が言うって言う事は、許可でも問い掛けでもなく、それはもう‥決定事項だから。
 以前の私なら「それでもいい」って思っただろうけど、今はそうじゃない。
 他のものならまだしも、‥ヒジリ「だけ」は絶対に嫌だ。

 私が「ヒジリ争奪戦」をするのは(以前からヒジリのことを好きだった)ミチルであって、パっと出の兄ではない。(ましてやサラージでもない。サラージも絶対ヒジリのこと気にしてるよね)
 兎に角、ヒジリだけは絶対に嫌だ。
 国政の協力なら、ミチルがいる。
 「魔法を教えてくれるなら! 」って条件でミチルは私の協力要請に応じてくれて、私はそんなミチルに最低限度の「この国の常識」やら「この国の仕組み」も教育済みだ。
 ミチルはあの通り頭もいいから、きっとこの国をより良い国に変える技術や法律を一緒に考えてくれるだろう。
 兄の役に立ってくれる。
 それでいいでしょう?

 私が(ヒジリのことを)じっと‥思った以上に見つめていたみたいで、ヒジリが居心地悪そうに視線を泳がせてるこのに気付いた。
 優しいヒジリはあからさまに私から目をそらすのは悪い‥と思ったんだろう。へへ、と一度私に微かに愛想笑い(かな? )をして、ゆっくり視線を落としていった。
 
 その後は‥何か「別の事」を考え始めた様だ。
 眉をちょっとひそめて(ヒジリが「流石ミチルだよな~」って思ったあたり)
 その後、ちょっと「ひひ」って笑って(国見はお子様ってあたり)
 その後、ちょっと考え込んだ。(吉川はヒジリのことが好きだけど、自分はどうなんだろう‥って考えたあたり)
 そして、「ふむふむ」って小さく頷いたりなんかして(吉川は地味顔キングってあたり)
 ちょっと赤くなったり。(吉川の声がいい、って改めて気付いたあたり)

 表情がころころ変わって可愛い。
 それにしても‥何を考えてるだろう。
 ‥赤くなったりして、好きなやつの事考えてるのかな?
 ‥それは、妬けるね。

 だから、主張しておかないといけない。
 私は、なるだけ「誠実さが伝わるように」なるだけ「好印象を持ってもらえるように」微笑み、事実確認をした。

「ヒジリは私の婚約者ですからね」

 ヒジリが私の気持ちを知って、私のことを少しでも意識してくれたらいいのに。
 ‥好きになってくれたらいいのに。
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