リバーシ!

文月

文字の大きさ
186 / 248
十六章 ミチル争奪戦!

10.総ては私の為

しおりを挟む
(side ミチル)


「総ては私の為‥」
 
 ぽつり、とヒジリが呟いた。
「‥急に思い出した。懐かしいな‥」ってふわり‥と微笑む。

「何か言った? 」
 ナラフィスがヒジリを見る。
「凄い高飛車な発言が聞こえたんだけど‥」
 ってちょっとドン引きした様な顔をして、「そのほんわかした笑顔で言うようなセリフでもないと思うけど‥」って独り言のように付け加える。
 ヒジリが首を振り
「‥ナツミの格言。高飛車じゃないよ。ナツミらしい、向上心の塊みたいな言葉。
 ナツミは努力の人なんだ。
 いつもはもっとフランクな話し方するんだけど、これを言う時だけは‥自分の事「私」なんてかしこまった言い方したりしてた。だけど、ドヤ顔で言うわけじゃない。
 ‥泣きそうな顔‥
 口をきゅってつぐんで、前を真っすぐ向いて‥何かに耐えるみたいな顔してた。

『何か悪いことがあっても、いいことがあっても‥
 その裏にある、神の意図を読み取れ。
 神は私に何を考えさせようと、学ばせようとしているのか。
 偶然なんてものも、無駄なことも何もない。
 総ては私の為
 流されずに、考え、そして‥学べることを探せ』
 
 きっとさ、自分に言い聞かせてたんだって思う。
 それに‥きっと、これは‥俺の勘だけど、誰かの言葉なんだって思う。自分の言葉を格言にする様な奴じゃなかった。誰か‥尊敬する人か誰かの‥大事な言葉なんだろうって‥思うんだ」
 って言って、ちょっと寂しそうに笑った。
 ラルシュがビクッと‥なぜかビクッとしたのが分かった。
 ヒジリが寂しそうな顔をしたからだろう。
 が‥
 その顔が徐々に青ざめていく‥? 

「ナツミは、そう多くを語るタイプじゃなかったんだ。
 不言実行って言うのかな‥語るより実行するタイプだった。
 そんなナツミが繰り返し言った言葉だったから、印象に残って頭に残ってたんだ。‥俺もいい言葉だって思うしね」
「ヒジリから神って言葉が出るのは不自然でしかないけどね」
「俺を何だと思ってるんだよ。寧ろナツミの方が神の意思とは無縁なタイプだよ」
 ナラフィスの言葉に苦笑いで返し、ヒジリは言葉を続けた。

「友達にいじめられてた時は「憎しみは向上への最大の原動力」って言ってたし、家が貧しかったことだって「これは神の試練だ。あたしはこの苦境に打ちひしがれたりしない」って歯を食いしばってたし‥っていうか、苦境って言うほど貧しくなかったんだけどね。‥貧しい状況に自分を置こう‥としてた。欲しいものも家族にねだらない。‥ナツミは家族に甘えたりしなかった。わがまま言って家族を困らせたり、自分の境遇を恨んだり‥そういうことはしなかった。
 それと‥「意味のない我慢」をしなかったね。
 意味のない我慢ってのは、努力しない人間がすることだって言ってさ。
「お金が無いから魔法学校にいけない、じゃない。魔法学校に行ける為に自分でお金を貯める」「出来ないことがあるなら出来るまで努力する」「魔力が無いなら、無いなりに出来る工夫をするし、‥あるところから奪うまでだ」
 ナツミはホント、気持ちいいくらいスーパーポジティブだった」
 って、嬉しそうに一方的にしゃべる様子は思い出話というより、「大好きなナツミ」の自慢話みたいだった。

 どれ程ナツミが努力家で、‥どれ程ヒジリがナツミのことを大好きだったか‥
 ナラフィスに話して聞かせているのに、それはホントに一方的な「ナツミ自慢」だった。
 
 愛されてるなあ、ナツミは。
 ‥ちょっとジェラシー感じちゃうよね。
 幼馴染っていうだけで、今現在ヒジリに何をしているわけでもない‥それどころか、敵sideにいるっていうのに‥相変わらず凄い好感度だし、下がる兆しも見せない。‥こっちは、今現在、ヒジリの好感度上げようとあれこれ努力してるのに上がらないどころか、(俺から‥ってか、俺たちからの好意に)気付きもしてくれないのに‥ほんと、ヤになっちゃう。

「で、何を話したいんだ? 」
 ナラフィスが、「茶番は終わりだ」って感じで小さくため息をついて、ヒジリをチラリと見た。
「俺は‥
 ナツミじゃないけど‥俺も、これには「何か」の意図を感じたんだ。‥メレディア王が俺に何かを伝えたくて‥俺を呼んだんじゃないのかなって」
 ナラフィスが顎に手のひらを押し付けて「ふむ」と何かを考えるそぶりをし
「それは‥無いと思う。
 たとえ彼に、この世に未練やら憂い‥みたいなものがあったとしても‥見ず知らずのヒジリにそれを訴えるってことが‥あるだろうか。
 「時渡り」出来る存在がやっと生れたから「待ってました! 」でヒジリに「何かを」訴えようとした‥? ‥無いと思う。それなら、ヒジリの婚約者でもっと身近な存在であるラルシュとセットで訴えるね。
 ヒジリに対してメレディア王は直接接触してきていない。直接接触までは出来ないのかもしれない。「見て、察してくれ」って言うなら、メレディア王の存在すら知らないヒジリだけを呼んでも仕方が無い」
 自分の名前を呼ばれて、ラルシュがナラフィスを振り向く。
「‥さっきから、顔色がわるいぞ。ラルシュ、何か気になることがあったのか? 」
 ナラフィスがラルシュを見る。
 そう言われて、ヒジリが初めてラルシュを見て「ラルシュ様! 」と驚いた声を出す。
「顔色が‥どうされたんですか?! ご加減が悪いのでしたら‥」
 慌ててラルシュの肩を後ろから支えるために駆け寄る。
 ラルシュはヒジリを見上げ‥

「さっきの言葉‥ナツミの‥
 あれは
 兄の口癖だ」
 って言ったんだ。

 ラルシュの兄ってことは‥、次期王様のってこと‥?!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...