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十六章 ミチル争奪戦!
11.ベリー色の瞳のルーツ
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「ナツミは‥兄と認識があるのでしょうか。
それなら、でも‥納得がいく。
初めてナツミと会った時、ナツミは私のことを王子だと認識していたんです」
血の気が失せたラルシュを落ち着かせようと、ヒジリが既に冷めた紅茶を差し出す。
ラルシュはそれを小さく会釈してヒジリの手から受け取ると、一口口に含み、ふう‥と長めにため息をついた。
ナラフィスが
「‥瞳の色を見て王族だって判断したんじゃないか? 王族で、いかにもキラキラした外見をしてるから「王子様に違いない」って思った。‥別に変な話でもない」
ちょっと眉を寄せ‥「なあんだ、そんなことか」とため息をつく。
ラルシュが小さく首を振る。
「紫の目が王族にしか出ないというのは、城の中では常識なのですが‥国民にとっての常識ではないです。
現に「紫の様な瞳」の者は国民にもいる。
その人を知っている人にとったら私たちの瞳の色も同じ様なものとしか思わないでしょう」
ふと
そう言われて初めてヒジリは幼馴染の瞳の色が赤紫だったことを思い出した。
アメシストの様なラルシュの瞳とは違うけど‥サラージの赤っぽい紫とは少し似ている‥気もする。
否、今まで忘れていたわけでは無いから「思い出した」は違うかもしれない。
‥初めて意識した‥が正しいのだろう。
「その、紫の様な瞳の人間はどんな種類の人間なんだ? 王族のように、多数の属性の魔法が使える者‥ってことか? 」
ゴクリ‥とナラフィスが唾をのむ。
敵に‥そんな人間がいるなんて‥脅威でしかない。
ラルシュが首を振って否定する。
「単純に、先祖返りだろうと思う。
‥王族の全てが城に残るわけでは無い。
昔は「紫の瞳」が王族の象徴だと考えられていた時、紫の瞳ではなかったため城を出られた方々だって「紫の瞳を持ちうる」遺伝子を持っていた。その方々の子孫にその遺伝子がひょっこり出て来た‥ってことでしょうね」
ナツミは‥
王族の血を(きっとかなり薄いだろうが)引いている‥!
ヒジリはゴクリと唾をのんだ。
ナツミは王族どころか貴族でもない。だけど、先祖を遡れば誰かに王族の血が混じっている者がいたってことだ。
ナツミが庶民には珍しい魔法使いなのもそのせいなのだろう。
そういえば、ナツミはどことなく高貴な顔立ちをしてる‥かも。
ヒジリはナツミの顔を思い出し、ほんわかした。
「だから‥そんなナツミだから‥ラルシュ様のお兄さんはナツミと会ったんだろうか? 」
ヒジリが首を傾げる。
遠いとはいえ親戚だし、あんなに可愛いナツミだからな、なんて思ったり。
「「それは無いだろう」」
ナラフィスと、何故かミチルの声が被る。ラルシュも頷いて同意する。
「そういうのまで親戚って言ってたら‥国にきっと結構いるぜ? 遠い親戚」
ミチルが「多分」って付け加えて言ったら、ナラフィスが同意して頷いた。
「‥じゃあさ、親戚の内でも、珍しく紫の瞳が出たって聞いて「じゃあ会いましょう」とかそういうことになった‥とか? 」
言いながら、ヒジリ自身「無いな」ってわかってるんだろう。微妙な顔をしてる。だから
「(さっきも言ったが)紫っぽい瞳自体そう珍しくも‥ない」
って、ナラフィスの言葉にすぐに納得して頷いた。
ヒジリは単に「あるかもしれない」可能性をすべて挙げてみてるって感じなんだろう。
「いや‥そういう可能性もあるかな~って」
はは、って乾いた笑いを浮かべる。
まあ
「無いない」
ナラフィスが漫才のツッコミみたいにそれを軽く否定する。
‥絶対無いんだけどね。(知ってる~)
「‥じゃあ、王族の誰かが言った格言的な? ナツミの家にそういうものが語り継がれてたとしてもおかしくないんじゃない? だって、王族の血が‥僅かであろうとも流れてるんだから」
これも、思い付き。
だけど、これは‥さっきのと違って「ちょっとはありそう」な理由だった。
ラルシュもそう思ったのか、「あ」って顔をして
「‥成程」
‥それなら‥あるかも。
って頷く。
あるかも!
そして、ラルシュの兄もそのご先祖様(ナツミの御先祖様と共通)の言葉を自分の座右の銘として日々口にしていた。‥そういうことなら‥あるかも。
そこで一番に動いたのは
「じゃあ僕は昔の王族の本を調べて来る」
ナラフィスだった。
ナラフィスが手をふっと挙げて、結界を解除したのが分かった。
ファンと空気が揺れ、途端に周りの音がいっぺんに耳に入って来る。
ラルシュは黙って立ち上がりミチルに「じゃあまた夜に」って軽く挨拶し、ナツカに何か指示を出している。
「‥俺たちは帰る時間だな」
スマホで時間を確認してミチルも立ち上がる。
それに頷き、自身も立ち上がりながらヒジリは
ナツミはそれ‥自分が王族の血を引いていること‥を知っているのだろうか?
ってそんなことを思った。
元々同じ人がご先祖様だった者たちだのに‥今は敵対してる。‥そういうことってよくあることだけど、なんか悲しいな‥って思う。
なによりも
俺は‥
ナツミと敵対なんてしたくない。
それなら、でも‥納得がいく。
初めてナツミと会った時、ナツミは私のことを王子だと認識していたんです」
血の気が失せたラルシュを落ち着かせようと、ヒジリが既に冷めた紅茶を差し出す。
ラルシュはそれを小さく会釈してヒジリの手から受け取ると、一口口に含み、ふう‥と長めにため息をついた。
ナラフィスが
「‥瞳の色を見て王族だって判断したんじゃないか? 王族で、いかにもキラキラした外見をしてるから「王子様に違いない」って思った。‥別に変な話でもない」
ちょっと眉を寄せ‥「なあんだ、そんなことか」とため息をつく。
ラルシュが小さく首を振る。
「紫の目が王族にしか出ないというのは、城の中では常識なのですが‥国民にとっての常識ではないです。
現に「紫の様な瞳」の者は国民にもいる。
その人を知っている人にとったら私たちの瞳の色も同じ様なものとしか思わないでしょう」
ふと
そう言われて初めてヒジリは幼馴染の瞳の色が赤紫だったことを思い出した。
アメシストの様なラルシュの瞳とは違うけど‥サラージの赤っぽい紫とは少し似ている‥気もする。
否、今まで忘れていたわけでは無いから「思い出した」は違うかもしれない。
‥初めて意識した‥が正しいのだろう。
「その、紫の様な瞳の人間はどんな種類の人間なんだ? 王族のように、多数の属性の魔法が使える者‥ってことか? 」
ゴクリ‥とナラフィスが唾をのむ。
敵に‥そんな人間がいるなんて‥脅威でしかない。
ラルシュが首を振って否定する。
「単純に、先祖返りだろうと思う。
‥王族の全てが城に残るわけでは無い。
昔は「紫の瞳」が王族の象徴だと考えられていた時、紫の瞳ではなかったため城を出られた方々だって「紫の瞳を持ちうる」遺伝子を持っていた。その方々の子孫にその遺伝子がひょっこり出て来た‥ってことでしょうね」
ナツミは‥
王族の血を(きっとかなり薄いだろうが)引いている‥!
ヒジリはゴクリと唾をのんだ。
ナツミは王族どころか貴族でもない。だけど、先祖を遡れば誰かに王族の血が混じっている者がいたってことだ。
ナツミが庶民には珍しい魔法使いなのもそのせいなのだろう。
そういえば、ナツミはどことなく高貴な顔立ちをしてる‥かも。
ヒジリはナツミの顔を思い出し、ほんわかした。
「だから‥そんなナツミだから‥ラルシュ様のお兄さんはナツミと会ったんだろうか? 」
ヒジリが首を傾げる。
遠いとはいえ親戚だし、あんなに可愛いナツミだからな、なんて思ったり。
「「それは無いだろう」」
ナラフィスと、何故かミチルの声が被る。ラルシュも頷いて同意する。
「そういうのまで親戚って言ってたら‥国にきっと結構いるぜ? 遠い親戚」
ミチルが「多分」って付け加えて言ったら、ナラフィスが同意して頷いた。
「‥じゃあさ、親戚の内でも、珍しく紫の瞳が出たって聞いて「じゃあ会いましょう」とかそういうことになった‥とか? 」
言いながら、ヒジリ自身「無いな」ってわかってるんだろう。微妙な顔をしてる。だから
「(さっきも言ったが)紫っぽい瞳自体そう珍しくも‥ない」
って、ナラフィスの言葉にすぐに納得して頷いた。
ヒジリは単に「あるかもしれない」可能性をすべて挙げてみてるって感じなんだろう。
「いや‥そういう可能性もあるかな~って」
はは、って乾いた笑いを浮かべる。
まあ
「無いない」
ナラフィスが漫才のツッコミみたいにそれを軽く否定する。
‥絶対無いんだけどね。(知ってる~)
「‥じゃあ、王族の誰かが言った格言的な? ナツミの家にそういうものが語り継がれてたとしてもおかしくないんじゃない? だって、王族の血が‥僅かであろうとも流れてるんだから」
これも、思い付き。
だけど、これは‥さっきのと違って「ちょっとはありそう」な理由だった。
ラルシュもそう思ったのか、「あ」って顔をして
「‥成程」
‥それなら‥あるかも。
って頷く。
あるかも!
そして、ラルシュの兄もそのご先祖様(ナツミの御先祖様と共通)の言葉を自分の座右の銘として日々口にしていた。‥そういうことなら‥あるかも。
そこで一番に動いたのは
「じゃあ僕は昔の王族の本を調べて来る」
ナラフィスだった。
ナラフィスが手をふっと挙げて、結界を解除したのが分かった。
ファンと空気が揺れ、途端に周りの音がいっぺんに耳に入って来る。
ラルシュは黙って立ち上がりミチルに「じゃあまた夜に」って軽く挨拶し、ナツカに何か指示を出している。
「‥俺たちは帰る時間だな」
スマホで時間を確認してミチルも立ち上がる。
それに頷き、自身も立ち上がりながらヒジリは
ナツミはそれ‥自分が王族の血を引いていること‥を知っているのだろうか?
ってそんなことを思った。
元々同じ人がご先祖様だった者たちだのに‥今は敵対してる。‥そういうことってよくあることだけど、なんか悲しいな‥って思う。
なによりも
俺は‥
ナツミと敵対なんてしたくない。
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