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十三章 乙女ゲームじゃなくって‥
5.兄として!
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(サラージ退出後、ヒジリ)
「あなたは俺を‥一番の友達だって思ってくれてたんですか? 親友って奴ですね。そうですよね。親友に目の前で他の友達の話されたら腹が立ちますよね。嫉妬しますよね。ありがとうございます! サラージ様にそんな風に思ってもらってるって思ってなくて‥嬉しいです。ホントに‥」
顔を真っ赤にして、デレデレと話すヒジリ。
ヒジリは友達が少ないから、自分の事を「特別だって」思ってくれる友達が「出来ていた」のが嬉しくて仕方が無いんだ。
でも
目の前には‥
もう、サラージはいなかった。
「‥‥」
それに気付いたヒジリは、小さくため息をつく。
「そうだよな~。サラージ様は忙しいしな~」
そして、周りを見渡し
「あ、サラージ様の侍従さん、護衛さん。俺は、サラージ王子に危害は与えません。いい友達になれる様に努力していきます。怪しい奴じゃありません。‥怪しさ満載だとは思いますが、人間的には問題ないって思ってます。
大丈夫です。少しでも、俺に怪しさが見られたら、遠慮なく言ってください。‥出来れば、斬り捨てる前に、一言注意してください。
ええと‥あと、ラルシュ様の侍従さんですよね。お見かけしたことがあります。ラルシュ様には、「俺は、今のところは「ラルシュ様の婚約者」という立場ですから誰かに誤解されるような行動は致しません。とお伝えください。いずれは、皆さまにご迷惑が掛からない様に、婚約破棄ができる様に尽力しますから、今しばらく我慢してください」にっこりと宣言する。
それを聞いた周りの「見えない人々」が苦笑したのは、言うまでもない。
あわれサラージ様、ラルシュローレ様‥!
(side ナツカ)
あの後、直ぐにラルシュのもとに向かおうとした「ハイになってるサラージ」を止めたのは、ラルシュの侍従のナツカ・マルセルだった。
ナツカはさっきのヒジリの話を一見気の毒そうに(だけど明らかに楽しそうに)サラージに伝え、サラージが落胆して膝までついたのは‥言うまでもない。
因みに、この男もラルシュとサラージの幼馴染だ。
子供の頃、王たちがチョイスした「王子たちと身分が釣り合う高位貴族の友達候補」の中で、「こいつは面白そう」ってラルシュとサラージ二人が認めたたった一人の子供だった。侯爵家の三男坊で、成人後は侍従としてラルシュの下で働いている。
魔法に秀でた密偵兼侍従って奴だ。
因みに、ナラフィスのことは知ってはいるが、直接面識はない。
ナラフィスは高名な学者だけど、でも平民だしな、と思っている。
ナツカは貴族にしては「面白そう」な奴だけど、やっぱり貴族なんだ。
「やっぽりか‥」
膝をつき、うつむいたまま‥呻くようにつぶやいたサラージ。
「‥期待なんてしてない。‥ヒジリに期待する方が間違ってるんだ‥」
「‥俺に何を期待したんですか? 」
ふいに聞こえたヒジリの声に、サラージはびくっと顔を上げた。
「俺って‥人間的に問題があるらしくて、人の気持ちとか‥あんまり分からないんです。‥ホントに人間なんでしょうか‥」
ヒジリが眉を寄せてサラージを見る。
知らねえよ‥。
サラージはしらっとした表情をヒジリに向けた。
「人の気持ちなんて、他人には分かりませんからね。出来るだけ、人を傷つける言葉をいわない、とか気をつける以外‥できることなんてないのかもしれませんね」
ナツカがヒジリに慰める様な優しい言葉をかけた。
ナツカに「‥そうですね。ありがとうございます」と、軽く会釈して、ヒジリはサラージを見上げる。
聖の時は10㎝ほどしか違わなかった身長差は、今は20㎝以上あるから、自然とヒジリはサラージを見上げる格好になるのだ。
「あの‥サラージ様。すみません。親しく思って下さってる‥なんておこがましいですよね‥ホントにすみませんでした。サラージ様が呆れて帰られたわけでは無いってナツカ様から伺っても、‥一言謝りたいなって思って、連れてきていただいたんです」
で、「先に入室の許可を取りますね」とナツカだけがサラージの部屋に入り →サラージにさっきのヒジリの発言を伝え落胆させ →ヒジリの入室を「タイミングを見計らって」許可したってわけ。
ええ、勿論全部ナツカが「面白い」って思うタイミングですよ?
「サラージ様がヒジリ様の事「親しく」思っておられることは嬉しかったんでしょ? 」
ナツカがヒジリに尋ねると、ヒジリはこくりと頷く。
もう、それだけでめちゃくちゃ可愛いんだ。そこら辺にいた護衛も通行人も侍女までもメロメロになるくらい。
‥勿論サラージもなった。
だけど、鉄の表情筋でそこらは我慢だ。
「ヒジリは俺のこと、「どのくらい」親しいって思ってる‥どのくらい親しくなりたいんだ? 」
んん、と咳払いしてから聞いた。
ヒジリが首を傾げて、サラージを見る。
「‥それはよくわからないんですが、ラルシュ様がサラージ様のこと信用してお話されてるの見て‥俺もそうなれたらいいな‥って思って。いや違うな‥羨ましいなって思って。俺、兄弟ってのに憧れてたんです」
へへ、ってはにかむみたいに笑う。
兄弟、まさかの兄弟!
ふう、と息をついてサラージがポンとヒジリの頭に手をのせた。
「じゃあ‥俺がなってやるよ」
兄に。
「弟に! なってくれるんですか! 」
サラージにかぶせ気味に、やや興奮した口調のヒジリが聞いてきた。
「え!? 弟!? 俺、ヒジリより年上なんだけど!? 」
ヒジリの陰に隠れるように立っていたナツカは
もう、呼吸困難になるくらい(声に出さずに)笑っている。
護衛と侍女は‥気の毒そうな顔をして、うつむいている。
「いや‥なんか年上って感じしなくって。なんか可愛いし‥」
へへ、ってヒジリが照れ笑いする。
可愛いのはあんただから! でも、サラージが可哀そうだからもう(それ以上言うの)やめてあげて‥!
ナツカはもう、呼吸困難過ぎて、ちょっと身をよじりだした。
「か‥可愛いって‥それはちょっと‥。で、その‥ヒジリは‥そういうのは、対象外なのか? その‥異性として見れないのか? 」
‥サラージ、ガッツだな!?
ナツカは笑いすぎて‥つい「っつ! 」っと声が出てしまいそうなのを必死に我慢している。
「え‥? サラージ様は‥異性としては見たことないですけど‥? 」
ヒジリは、真顔で即答だ。
ヒジリの攻撃値が‥エグイ!
因みにヒジリにとっての「異性」は、女性だ。自分の性別とか‥ヒジリは結構そこらへんまだ曖昧なんだ。
「ふは‥! 」
笑い死に寸前のナツカ。とうとう、お腹を押さえたままその場に膝をついた。
「ラル兄は?! 」
「異性かどうか以前に‥同じ人間かすらも不明ですね。俺が人間ならラルシュ様は神だし、ラルシュ様が人間なら俺はミジンコです」
「ミチルは?! 」
「異性というか、「勝ち組」俺とは別次元の人間ですね」
「ヨシカワは?! 」
「あいつは、同類。いい奴だけど、パッとしない‥正当に価値を評価されない、可哀そうな奴だよね。
でも、俺と一緒で恋愛とか無縁そうなあたり、安心感あるよね。リア充と一緒にいると、居心地悪くてさ~。
リア充って言っても‥ミチル程レベル突っ切ってたら、もうどうでもいいんだけど」
「ナ‥ナラフィスは? 」
「超天才。あと、‥超変人? 」
小気味よく繰り広げられる「漫才みたいな」会話をナツカはもう隠すことなく涙すら浮かべて、大爆笑して聞いていた。(← 相変わらず声には出していない)
「もう一度聞くけど俺は!? 」
「密かに弟って‥心の中で呼んでました! 」
「お前‥」
ふう、とため息をついたサラージがヒジリを真顔で見つめる。
「はい? 」
「何、恋愛に対して無関係決め込んでるの? 俺たちのことはともかく‥ラル兄はヒジリの婚約者だよな? 」
ヒジリがちょっと眉を寄せ‥苦笑いする。
「‥俺の場合は「好きだから結婚する」とかじゃないですよね。それに‥自分に恋愛って感情は理解できないです」
は、とした。
ナツカが顔を上げて、ヒジリを見る。
政略結婚は貴族の義務って諦めてる貴族の子女みたいに‥ヒジリは自分の恋愛をあきらめている。
「自分には分からない」
って自分自身を納得させて、恋愛感情を自分の中から排除している。
なぜなら、恋愛が「自分には」無関係だから。
なら、恋愛感情なんて誰に対しても最初から持たない方がいい。
自分が国が監視するレベルの危険人物だって自覚しているから。
ナツカは小さくため息をついて立ち上がり、膝の小じわを払った。
サラージは黙ってヒジリを見ている。
その表情には、少しの怒りが含まれているようにも見えた。
自分の人生だぞ、とは
でも‥王族の自分には言えない。
王族こそが「ヒジリの人生を決めた」から。それは「仕方が無いこと」だから。
だけど‥
自分自身がふがいなくて、もどかしくて仕方が無い。付き合いの長いナツカにはサラージの気持ちが手に取るようにわかるのだった。
腹黒で利己的、王家に忠実で、だけど友達想いな‥憎めない「弟」サラージ。
「やめろ‥。やめろヤメロ。そんな顔、ヒジリには似合わないぞ。
分かった。
俺がお前に「恋愛感情」って奴を教えてやる! 兄としてな! 」
いや、お前は「弟キャラ」だって。ヒジリにも弟認識されてるってさっき聞いたろ?
「自分が思ってたより」成長した弟に涙(笑)が隠せないナツカだった。
「あなたは俺を‥一番の友達だって思ってくれてたんですか? 親友って奴ですね。そうですよね。親友に目の前で他の友達の話されたら腹が立ちますよね。嫉妬しますよね。ありがとうございます! サラージ様にそんな風に思ってもらってるって思ってなくて‥嬉しいです。ホントに‥」
顔を真っ赤にして、デレデレと話すヒジリ。
ヒジリは友達が少ないから、自分の事を「特別だって」思ってくれる友達が「出来ていた」のが嬉しくて仕方が無いんだ。
でも
目の前には‥
もう、サラージはいなかった。
「‥‥」
それに気付いたヒジリは、小さくため息をつく。
「そうだよな~。サラージ様は忙しいしな~」
そして、周りを見渡し
「あ、サラージ様の侍従さん、護衛さん。俺は、サラージ王子に危害は与えません。いい友達になれる様に努力していきます。怪しい奴じゃありません。‥怪しさ満載だとは思いますが、人間的には問題ないって思ってます。
大丈夫です。少しでも、俺に怪しさが見られたら、遠慮なく言ってください。‥出来れば、斬り捨てる前に、一言注意してください。
ええと‥あと、ラルシュ様の侍従さんですよね。お見かけしたことがあります。ラルシュ様には、「俺は、今のところは「ラルシュ様の婚約者」という立場ですから誰かに誤解されるような行動は致しません。とお伝えください。いずれは、皆さまにご迷惑が掛からない様に、婚約破棄ができる様に尽力しますから、今しばらく我慢してください」にっこりと宣言する。
それを聞いた周りの「見えない人々」が苦笑したのは、言うまでもない。
あわれサラージ様、ラルシュローレ様‥!
(side ナツカ)
あの後、直ぐにラルシュのもとに向かおうとした「ハイになってるサラージ」を止めたのは、ラルシュの侍従のナツカ・マルセルだった。
ナツカはさっきのヒジリの話を一見気の毒そうに(だけど明らかに楽しそうに)サラージに伝え、サラージが落胆して膝までついたのは‥言うまでもない。
因みに、この男もラルシュとサラージの幼馴染だ。
子供の頃、王たちがチョイスした「王子たちと身分が釣り合う高位貴族の友達候補」の中で、「こいつは面白そう」ってラルシュとサラージ二人が認めたたった一人の子供だった。侯爵家の三男坊で、成人後は侍従としてラルシュの下で働いている。
魔法に秀でた密偵兼侍従って奴だ。
因みに、ナラフィスのことは知ってはいるが、直接面識はない。
ナラフィスは高名な学者だけど、でも平民だしな、と思っている。
ナツカは貴族にしては「面白そう」な奴だけど、やっぱり貴族なんだ。
「やっぽりか‥」
膝をつき、うつむいたまま‥呻くようにつぶやいたサラージ。
「‥期待なんてしてない。‥ヒジリに期待する方が間違ってるんだ‥」
「‥俺に何を期待したんですか? 」
ふいに聞こえたヒジリの声に、サラージはびくっと顔を上げた。
「俺って‥人間的に問題があるらしくて、人の気持ちとか‥あんまり分からないんです。‥ホントに人間なんでしょうか‥」
ヒジリが眉を寄せてサラージを見る。
知らねえよ‥。
サラージはしらっとした表情をヒジリに向けた。
「人の気持ちなんて、他人には分かりませんからね。出来るだけ、人を傷つける言葉をいわない、とか気をつける以外‥できることなんてないのかもしれませんね」
ナツカがヒジリに慰める様な優しい言葉をかけた。
ナツカに「‥そうですね。ありがとうございます」と、軽く会釈して、ヒジリはサラージを見上げる。
聖の時は10㎝ほどしか違わなかった身長差は、今は20㎝以上あるから、自然とヒジリはサラージを見上げる格好になるのだ。
「あの‥サラージ様。すみません。親しく思って下さってる‥なんておこがましいですよね‥ホントにすみませんでした。サラージ様が呆れて帰られたわけでは無いってナツカ様から伺っても、‥一言謝りたいなって思って、連れてきていただいたんです」
で、「先に入室の許可を取りますね」とナツカだけがサラージの部屋に入り →サラージにさっきのヒジリの発言を伝え落胆させ →ヒジリの入室を「タイミングを見計らって」許可したってわけ。
ええ、勿論全部ナツカが「面白い」って思うタイミングですよ?
「サラージ様がヒジリ様の事「親しく」思っておられることは嬉しかったんでしょ? 」
ナツカがヒジリに尋ねると、ヒジリはこくりと頷く。
もう、それだけでめちゃくちゃ可愛いんだ。そこら辺にいた護衛も通行人も侍女までもメロメロになるくらい。
‥勿論サラージもなった。
だけど、鉄の表情筋でそこらは我慢だ。
「ヒジリは俺のこと、「どのくらい」親しいって思ってる‥どのくらい親しくなりたいんだ? 」
んん、と咳払いしてから聞いた。
ヒジリが首を傾げて、サラージを見る。
「‥それはよくわからないんですが、ラルシュ様がサラージ様のこと信用してお話されてるの見て‥俺もそうなれたらいいな‥って思って。いや違うな‥羨ましいなって思って。俺、兄弟ってのに憧れてたんです」
へへ、ってはにかむみたいに笑う。
兄弟、まさかの兄弟!
ふう、と息をついてサラージがポンとヒジリの頭に手をのせた。
「じゃあ‥俺がなってやるよ」
兄に。
「弟に! なってくれるんですか! 」
サラージにかぶせ気味に、やや興奮した口調のヒジリが聞いてきた。
「え!? 弟!? 俺、ヒジリより年上なんだけど!? 」
ヒジリの陰に隠れるように立っていたナツカは
もう、呼吸困難になるくらい(声に出さずに)笑っている。
護衛と侍女は‥気の毒そうな顔をして、うつむいている。
「いや‥なんか年上って感じしなくって。なんか可愛いし‥」
へへ、ってヒジリが照れ笑いする。
可愛いのはあんただから! でも、サラージが可哀そうだからもう(それ以上言うの)やめてあげて‥!
ナツカはもう、呼吸困難過ぎて、ちょっと身をよじりだした。
「か‥可愛いって‥それはちょっと‥。で、その‥ヒジリは‥そういうのは、対象外なのか? その‥異性として見れないのか? 」
‥サラージ、ガッツだな!?
ナツカは笑いすぎて‥つい「っつ! 」っと声が出てしまいそうなのを必死に我慢している。
「え‥? サラージ様は‥異性としては見たことないですけど‥? 」
ヒジリは、真顔で即答だ。
ヒジリの攻撃値が‥エグイ!
因みにヒジリにとっての「異性」は、女性だ。自分の性別とか‥ヒジリは結構そこらへんまだ曖昧なんだ。
「ふは‥! 」
笑い死に寸前のナツカ。とうとう、お腹を押さえたままその場に膝をついた。
「ラル兄は?! 」
「異性かどうか以前に‥同じ人間かすらも不明ですね。俺が人間ならラルシュ様は神だし、ラルシュ様が人間なら俺はミジンコです」
「ミチルは?! 」
「異性というか、「勝ち組」俺とは別次元の人間ですね」
「ヨシカワは?! 」
「あいつは、同類。いい奴だけど、パッとしない‥正当に価値を評価されない、可哀そうな奴だよね。
でも、俺と一緒で恋愛とか無縁そうなあたり、安心感あるよね。リア充と一緒にいると、居心地悪くてさ~。
リア充って言っても‥ミチル程レベル突っ切ってたら、もうどうでもいいんだけど」
「ナ‥ナラフィスは? 」
「超天才。あと、‥超変人? 」
小気味よく繰り広げられる「漫才みたいな」会話をナツカはもう隠すことなく涙すら浮かべて、大爆笑して聞いていた。(← 相変わらず声には出していない)
「もう一度聞くけど俺は!? 」
「密かに弟って‥心の中で呼んでました! 」
「お前‥」
ふう、とため息をついたサラージがヒジリを真顔で見つめる。
「はい? 」
「何、恋愛に対して無関係決め込んでるの? 俺たちのことはともかく‥ラル兄はヒジリの婚約者だよな? 」
ヒジリがちょっと眉を寄せ‥苦笑いする。
「‥俺の場合は「好きだから結婚する」とかじゃないですよね。それに‥自分に恋愛って感情は理解できないです」
は、とした。
ナツカが顔を上げて、ヒジリを見る。
政略結婚は貴族の義務って諦めてる貴族の子女みたいに‥ヒジリは自分の恋愛をあきらめている。
「自分には分からない」
って自分自身を納得させて、恋愛感情を自分の中から排除している。
なぜなら、恋愛が「自分には」無関係だから。
なら、恋愛感情なんて誰に対しても最初から持たない方がいい。
自分が国が監視するレベルの危険人物だって自覚しているから。
ナツカは小さくため息をついて立ち上がり、膝の小じわを払った。
サラージは黙ってヒジリを見ている。
その表情には、少しの怒りが含まれているようにも見えた。
自分の人生だぞ、とは
でも‥王族の自分には言えない。
王族こそが「ヒジリの人生を決めた」から。それは「仕方が無いこと」だから。
だけど‥
自分自身がふがいなくて、もどかしくて仕方が無い。付き合いの長いナツカにはサラージの気持ちが手に取るようにわかるのだった。
腹黒で利己的、王家に忠実で、だけど友達想いな‥憎めない「弟」サラージ。
「やめろ‥。やめろヤメロ。そんな顔、ヒジリには似合わないぞ。
分かった。
俺がお前に「恋愛感情」って奴を教えてやる! 兄としてな! 」
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