リバーシ!

文月

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十三章 乙女ゲームじゃなくって‥

6.サラージ様の「恋愛特別講習(笑)」が始まりました。

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(side ナツカ)


 こんばんわ。
 今日はナツカが「恋愛音痴による恋愛音痴への特別講習」という世にも不思議な講習風景をお送りします。
 盗み見、盗み聞きしてるわけではありません。
 私はラルシュローレ様の密偵兼侍従ですから、その婚約者と弟が二人きりにならないように見張っているのです。それはもう堂々と控えているんです。
 護衛がいるから二人きりになりようが無いって? ‥それはそれ。
 物理的に問題は無くても、心が「必要以上に」急接近とかしたら、困るでしょ? 
 あの二人がそんなわけあるかって? ‥距離感がつかめない人たちは時々、「意図せず」急接近してしまったりするもんなんです。そして、その事に気付かないもんなんです。

 って、まあ、私も「そんなことはありえんわな~」って思ってますけどね。

「キュン? 」
 ヒジリが首を傾げる。
 そんな当たり前の事を、分からない。それが「天然の恋愛音痴」。決してカマトトぶってるわけでも「あざと可愛い子ぶってる」わけでもない。
 元々鈍かったってのもあるだろうけど、圧倒的な「経験不足」って感じ。
 12時になったら寝ちゃうから。この国の人間は「リバーシはそういうもん」って分かってるけど、地球人は知らないよね。だから、泊りがけNGとかで、「そういう機会がなかった」んだろう。
 だけど、「何とかうまくやる」ってことは出来ただろう。(きっと、ミチルはしてる)それをしてこなかった。
 ‥この子は、多分母親が(本来の性別の事があって)悩んで性的なことを出来るだけ遠ざけて育てちゃったんでしょうね。
 仕方が無い‥とは思う。
 けど、ね。
 ‥なんか哀れだよね。
「そう、キュン」
 サラージ様が頷く。 
 ドヤ顔で。
 ‥この人は、ヒジリとは違った意味で「哀れ」って感じ。
 そんなことで「こんなこと知ってる俺って大人~」みたいな顔できる。これが「進化した気になってる可哀そうな天然の恋愛音痴」。頭でっかっちの「(筆おろしは)玄人で済ませた(恋愛的には)童貞」って感じ‥?
 王族なのに教えられなかったのかって? 性教育的なことはされてますよ。だから「知ったつもりになってる」んじゃないですか! 知識を知ったからって女の子の口説き方は分かんないですよね? それと同じです(同じかな)。この人、どこか情緒的に‥足りないんです。
 ‥脳筋だから? 脳筋って言ったら、ヒジリもそういうところありますよね。
「キュン‥あんまり、分からないなあ‥」
 ‥それ(二人の恋愛ステータス)を踏まえてこの会話を聞いてたらもう、「なにこのくだらないの」って感じなんだけど、「くだらない面白おかしい話」として聞いたら、それはそれでおもしろい、かも。


 恋愛マスターと彼を尊敬している(?)弟子の会話(仮題)ナレーション:ナツカ

「例えば、ヒジリ。今まで生きてきて他人の行動とか表情にキュンと来たことはないか? それが恋愛に繋がらなくても勿論いいぞ」
 逆にサラージ様はあるんでしょうか。‥興味あります。
「わかんないなあ‥」
 そりゃね、今まで「キュン」すら分かんなかったんですからね。
「例えば、骨ばった手にきゅんと来るとか、神経質そうな細くて長い指とか、鎖骨がセクシー‥とか、振り向いた時の首の筋が‥とからしいぞ。メイドに聞いたんだ。女の子は男のそういうところを見てて、きゅんとしたりするらしいぞ」
 ‥サラージ様の本日二度目のドヤ顔でた。

 ぶ‥っ! それは、「フェチ」だな!  
 「キュン」ってそういうのじゃないでしょ! あんた、誰に聞いたのさ! 聞く相手間違ったでしょ!

「男の骨ばった手にきゅんと‥? 長い指? 鎖骨? 首の筋? きゅんと来るか? 堅そう、って思うだけだろ‥」
 ヒジリが首を傾げて、サラージ様に同意を求めている。
 サラージ様は‥サラージ様も首を傾げちゃってる。‥そりゃね、男にはその気持ちわかんないよね。私も分からないです。
「セクシー? 「女の子がいうセクシー」ってどんなだ? 漫画なんかで男が「あの子おっぱいでか~」って赤面してるような奴とは違うんだよな。「大人の色気が」とかいう感じの奴だよな? ‥でも、すまん、俺は‥分からん」
 ‥漫画って、どんな漫画読んだんだ? 間違った知識得ちゃってるよね? もうちょっとましな本読んだ方がいいですよ? もうちょっと高尚な? 感じの奴。

 あの人の本を読む、白百合のような横顔に見惚れた‥とかいう感じの‥。(←こいつも大概。耽美小説とかなのかな? )

 さて、サラージ様はどう答える? 
「まあ、そうだわな」
 ‥サラージ様同意しちゃったよ。
 同意しちゃ‥話は進まんわな~。
 とここで、ヒジリ
「でも、女の子の細い首とか、柔らかい手とかは‥守ってあげたい、可愛いって思うよね」
 提案してきた。
「それはな! 」
 サラージ様、同意。
 ‥サラージ様、同意してどうするんですか! 
 サラージ様の同意に気を良くしたヒジリは
「細い腰とか頼りない感じで、グッとくるよね」
 新たな提案をしてきた。
 ‥あんたそれ、完全に「女性の魅力を語る(エロ要素ナシ)」じゃないか!
「それは、そうだな! 」
 ‥ま、サラージ様も「そのレベル」だと思ってましたよ‥。 

 あと
 ヒジリ! あんたは「恋愛講座受講」以前に自分の性別を特定しろ!
 あんたは男なのか、女なのか!
 どっちになりたいんだ?! 恋愛対象はどっちなんだ??

 自分は男、恋愛対象も女、ラルシュローレ様とはあくまでも「国が決めた結婚」で、子供が出来る行為はごめんだ、って言うんだったらラルシュローレ様には、他に側室なり正妻なりを決めないといけない。
 ラルシュローレ様だって、一生そういう人がいない‥のも、(男として)気の毒だし、王族としては跡継ぎも欲しい。
 子はその妻となして、ヒジリとはあくまでも形式上の結婚‥ってことだ。
 ヒジリとラルシュローレ様の結婚は「しないといけない」だろうが、国の災厄とも言われてる危険人物にそれ以上の「協力要請」(つまり子作り要請的なことだ)は危険だろう。キレられたら、それこそ国家(どころか世界)の危機だ。
 「政治的な協力を要請する」って形にしないといけない。「形だけは婚姻という形をとらせてほしい」って確約をとらねばいけない。
 子作りが嫌ならしなくていい、だけど、対外的には「仲の良い夫婦の振りしてくださいね~」ってやつ‥つまり、ビジネス夫婦って奴だ。
 
 自分は女。男だと思ってたけど、実は女だったらしいから、女としてこれからは生きていこうと思うってる。恋愛対象は「今までは男を恋愛対象だと思ったことはなかったけど、この頃、自分が女だと自覚したら、周りのイケメンが気になってきた‥」ってパターンなら‥
 ヒジリがこの前言ってたみたいに「結婚すれば結婚相手であるラルシュローレ様を好きになる努力」をしてもらうのが望ましい‥かなあ。
 今はまだ小学生男子みたいな恋愛観しかないけど、この先「成長して」いただくってことだ。
 このパターンだったら「これから対男の恋愛講座」を「ちゃんとした女の子」にしてもらうってことも考えていかなくちゃいけない。教育とか言うんじゃなくて、気の合いそうな感じの女の子(身元や性格なんかをちゃんと調べてこっちで用意する)と、最終的には仲良く恋バナ~とかができる様になれば‥いいな。
 ‥なるかな。
 でも、ヒジリはこの頃「そうしよう」って努力してる‥って感じはするな。

 気持ちはあるけど、なかなかね~ってとこなんだろう。

 なら、こんなとこで、こんな恋愛音痴の「へっぽこ講座」聞かせてるのって、無駄なんじゃない??
 かえってダメなんじゃない???

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