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十四章 デュカとリゼリア
5.デュカとリゼリア ②
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(side ラルシュ)
「‥? 全く違う? 」
ナラフィスのいつもとは違う真剣な表情。
ナラフィスは頷くと、一つ小さくため息をついた。
「まさか‥隠されてきた事実がああいうことだったとはね‥。僕も驚いた‥。「たまたま」ヒジリの面白仮説に触発されて「たまたま」今まで見たこともなかった王族の日記に目を通して、ああいう事実が見つかるなんて‥思ってもいなかった」
勿体ぶっているわけではなさそうだ。
ただ、あっさりと口にするには‥事実があまりに重く、衝撃的だったってことだろう。
心なしか、今まで見たことがない程、ナラフィスの顔色が悪い。
「王族の日記? 」
王族の日記‥。
デュカとリゼリアの子孫が残して来た争いの歴史についてなのだろうか?
私が聞くと、ナラフィスが首を振った。
「デュカとリゼリアは、元々王族だったんだ。それも、二人は双子の兄妹だったんだ」
「え! 」
私は驚愕して‥言葉を失った。
あまりのことで、一瞬結界が解けかけて‥慌てて気持ちを引き締めた。
ナラフィスが語った「真説 デュカとリゼリア」は‥おぞましく、恐ろしい話だった。
「まず、デュカとリゼリアの話をする前に、デュカとリゼリアの出自の話と、二人が対立するまでの経緯を説明しよう。これらは別々の書籍からの情報だ。
デュカとリゼリアの出自は、前王朝の最後の王コンサンティの日記
二人の対立するまでの経緯は、我が国の歴史の本(裏 ←これも持ち出し禁止の禁書)からだ」
ナラフィスによると、
デュカとリゼリアは生まれてすぐ別々に育てられた双子の兄妹だという。
彼らの父親はコンサンティ。
王であるコンサンティは、占い師に「お后様からこの度お産まれになる御子は双子で、将来二人は結婚して子供を産む」という呪われた予言を受けた。
そして、その予言を信じたコンサンティは生まれた双子の内女の子の方のリゼリアを家臣に命令して殺させた。
ここからはよくある話だ。
家臣は殺すことが出来ず、信用の出来る者に王女を預けた。
そして、数年後二人は敵の立場で再会する。
二人は二卵性双生児だったから、全くそっくりな双子というわけでは無かったから、二人が双子だなんて思う者は‥城の者でさえ‥一人たりともいなかった。
双子の母親は双子を生んですぐなくなっていたので、王子は母親の顔を覚えていなかったし、(見ると悲しくなるといって王が片付けさせたので)城には王妃の肖像画すら残っておらず、王妃の顔を覚えている者がいなかったのだ。(普通に考えれば変な話だが、何か(占い師の? )呪い的な力が働いていたのかもしれない)
だが、王子の父親である王だけはリゼリアの正体がわかり‥目を見開いた。
この子は、殺したはずの王女に違いない、と。
だけど、コンサンティはそれを口にすることが出来なかった。
妹を殺したことを、王子に言う事が出来ようか! そんなことを告げれば、王子は父親の過去の行いを許さないだろう。そして、戦いをやめるというだろう。
妹と争うなんてとんでもない、というだろう。
王は、自分たちの為、貴族たちの為に‥平民との戦いを「和平」という形で終わらせるわけにはいかなかった。
貴族には貴族の役割がある。平和な社会を持続していくためには、役割分担はやはり必要だ。平民の求める、貴族が権利を独占する社会ではなく、「皆が平等」という社会は、理想でしかなく、実現は不可能だと思っていた。
なぜなら、平民の多くは教育を十分に受けていないから。
貴族が政治をするのは、「貴族しか政治をすることが出来る教育を受けていないから」だ。
平民はそれが分かっていない‥。
そう思っていた。
貴族には権利もあるが、義務もある。
それを分からないで、貴族だけが利益を独占している‥と貴族を非難する平民を貴族は心底軽蔑していた。
「まあ、平たく言えば、昔はいまよりずっと平民と貴族の仲は悪かったんだ」
ナラフィスが補充説明を加えた。
それは容易に想像がついたので、私も頷いた。
貴族はプライドが高く、平民を見下していた。
だから、平民と肩を並べて「平等に」政治をしていくなんて、考えられない。
完全なる偏見だ。
だけど
革新的な性格で新しい社会を実現するために新しい政策や財政案を打ち出し、次々と実現していった王子でさえも、その考え方は「当たり前」のことで、貴族にとっては常識だった。
王子にとって平民は「働き手」‥労働力でしかなかった。
「社会の発展の為には、国民に今まで以上の労働を課すこともあるが耐えて欲しい」
王子の言葉は平民を労わり平民に頼む‥といものではなく、「決定実行のちょっと丁寧な説明」にしか過ぎなかったので、それを聞いた平民は憤怒した。
王子の態度(← それは、でも「王族はもともとそういうものだし」慣れている)にではない。考え方が理解できず、受け入れられなかったのだ。
平民は長い間保守的な暮らしをしてきた。そして、不満はあるものの「それは当たり前で唯一の暮らし」だったから。
それ以外の暮らしが想像つかなかった。
否
その日暮らしの平民には「十年後のサクセス」なんてビジョンは見えようはずがなかった。
そして、市民派から担ぎ上げられたのが、リゼリアだった。
リゼリアは美しく優しく、カリスマ性のある女性だった。
「‥? 全く違う? 」
ナラフィスのいつもとは違う真剣な表情。
ナラフィスは頷くと、一つ小さくため息をついた。
「まさか‥隠されてきた事実がああいうことだったとはね‥。僕も驚いた‥。「たまたま」ヒジリの面白仮説に触発されて「たまたま」今まで見たこともなかった王族の日記に目を通して、ああいう事実が見つかるなんて‥思ってもいなかった」
勿体ぶっているわけではなさそうだ。
ただ、あっさりと口にするには‥事実があまりに重く、衝撃的だったってことだろう。
心なしか、今まで見たことがない程、ナラフィスの顔色が悪い。
「王族の日記? 」
王族の日記‥。
デュカとリゼリアの子孫が残して来た争いの歴史についてなのだろうか?
私が聞くと、ナラフィスが首を振った。
「デュカとリゼリアは、元々王族だったんだ。それも、二人は双子の兄妹だったんだ」
「え! 」
私は驚愕して‥言葉を失った。
あまりのことで、一瞬結界が解けかけて‥慌てて気持ちを引き締めた。
ナラフィスが語った「真説 デュカとリゼリア」は‥おぞましく、恐ろしい話だった。
「まず、デュカとリゼリアの話をする前に、デュカとリゼリアの出自の話と、二人が対立するまでの経緯を説明しよう。これらは別々の書籍からの情報だ。
デュカとリゼリアの出自は、前王朝の最後の王コンサンティの日記
二人の対立するまでの経緯は、我が国の歴史の本(裏 ←これも持ち出し禁止の禁書)からだ」
ナラフィスによると、
デュカとリゼリアは生まれてすぐ別々に育てられた双子の兄妹だという。
彼らの父親はコンサンティ。
王であるコンサンティは、占い師に「お后様からこの度お産まれになる御子は双子で、将来二人は結婚して子供を産む」という呪われた予言を受けた。
そして、その予言を信じたコンサンティは生まれた双子の内女の子の方のリゼリアを家臣に命令して殺させた。
ここからはよくある話だ。
家臣は殺すことが出来ず、信用の出来る者に王女を預けた。
そして、数年後二人は敵の立場で再会する。
二人は二卵性双生児だったから、全くそっくりな双子というわけでは無かったから、二人が双子だなんて思う者は‥城の者でさえ‥一人たりともいなかった。
双子の母親は双子を生んですぐなくなっていたので、王子は母親の顔を覚えていなかったし、(見ると悲しくなるといって王が片付けさせたので)城には王妃の肖像画すら残っておらず、王妃の顔を覚えている者がいなかったのだ。(普通に考えれば変な話だが、何か(占い師の? )呪い的な力が働いていたのかもしれない)
だが、王子の父親である王だけはリゼリアの正体がわかり‥目を見開いた。
この子は、殺したはずの王女に違いない、と。
だけど、コンサンティはそれを口にすることが出来なかった。
妹を殺したことを、王子に言う事が出来ようか! そんなことを告げれば、王子は父親の過去の行いを許さないだろう。そして、戦いをやめるというだろう。
妹と争うなんてとんでもない、というだろう。
王は、自分たちの為、貴族たちの為に‥平民との戦いを「和平」という形で終わらせるわけにはいかなかった。
貴族には貴族の役割がある。平和な社会を持続していくためには、役割分担はやはり必要だ。平民の求める、貴族が権利を独占する社会ではなく、「皆が平等」という社会は、理想でしかなく、実現は不可能だと思っていた。
なぜなら、平民の多くは教育を十分に受けていないから。
貴族が政治をするのは、「貴族しか政治をすることが出来る教育を受けていないから」だ。
平民はそれが分かっていない‥。
そう思っていた。
貴族には権利もあるが、義務もある。
それを分からないで、貴族だけが利益を独占している‥と貴族を非難する平民を貴族は心底軽蔑していた。
「まあ、平たく言えば、昔はいまよりずっと平民と貴族の仲は悪かったんだ」
ナラフィスが補充説明を加えた。
それは容易に想像がついたので、私も頷いた。
貴族はプライドが高く、平民を見下していた。
だから、平民と肩を並べて「平等に」政治をしていくなんて、考えられない。
完全なる偏見だ。
だけど
革新的な性格で新しい社会を実現するために新しい政策や財政案を打ち出し、次々と実現していった王子でさえも、その考え方は「当たり前」のことで、貴族にとっては常識だった。
王子にとって平民は「働き手」‥労働力でしかなかった。
「社会の発展の為には、国民に今まで以上の労働を課すこともあるが耐えて欲しい」
王子の言葉は平民を労わり平民に頼む‥といものではなく、「決定実行のちょっと丁寧な説明」にしか過ぎなかったので、それを聞いた平民は憤怒した。
王子の態度(← それは、でも「王族はもともとそういうものだし」慣れている)にではない。考え方が理解できず、受け入れられなかったのだ。
平民は長い間保守的な暮らしをしてきた。そして、不満はあるものの「それは当たり前で唯一の暮らし」だったから。
それ以外の暮らしが想像つかなかった。
否
その日暮らしの平民には「十年後のサクセス」なんてビジョンは見えようはずがなかった。
そして、市民派から担ぎ上げられたのが、リゼリアだった。
リゼリアは美しく優しく、カリスマ性のある女性だった。
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