リバーシ!

文月

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十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル

4.ミチルみたい。

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 ‥夢を見た。

 黒目黒髪の美女が、髪とか雰囲気とかがとにかくキラキラした‥なんかラルシュたちに似た外国人男性にぽ~ってなっているのを「見た」。そんな夢。
 ラルシュが「あれは自分だってわかる他人の視点で見る夢」って言ってたことがあるけど‥あれとは違う。
 あれは‥あの美女は、自分じゃない。
 自分は、あの美女を見ていた「誰か」だった。

 あれは、俺じゃないし、俺は彼女を知らない。
 そして、あの外国人男性のこともまた‥知らない。

 彼女はとにかく目立った美女だった。
 純日本人って感じ‥って程、のっぺりした感じではない。そう‥エキゾチックな東洋系の美女。
 アジア人特有の黄色っぽい肌‥よりは白い感じの肌、烏の濡れ羽色っていうんだろう真っ黒な‥絹の様に艶のある長い髪。
 切れ長の瞳。
 黒い目‥。
 そういえば‥黒目じゃなかったな。
 黒っぽい紫色の目だった。

 キンキラの男が黒髪美女に
「桔梗」
 って微笑みかける。
 ラルシュみたいな上品な笑顔じゃない。
 サラージみたいな自信たっぷり‥って感じの笑顔じゃない。
 どちらかというと、「人懐こい」微笑。
 桔梗っていう‥あの黒髪美人のことをそれ程信頼して、好きなんだろうな‥って感じがした。
 桔梗もキンキラ男に微笑み返す。
「メー様」
 
 メー様って、羊かよ。
 メリーさん??
 あのキンキラ、「メー」っていうのか? いや、あだなってことも考えられるな。「メーテル」? 
 首をひねりながら見ていたら、
 キンキラが苦笑いして
「メレディア」
 って教えてる。
 おお、キンキラはメレディアっていうんだ。
「めれ‥」
 桔梗も苦笑いして訂正しようとしているが‥難しそう。
 桔梗は、きっとカタカナ苦手系女子なんだろう。美人だけど、なんか古風な感じだし。着物着てるし。
「メルでいいです」
 結局キンキラ‥メレディアは諦めたんだろう。桔梗にそう言って、笑いかけた。

 ‥いいんだ。
 メレディアのあだ名としてメルって正しいかな。メレの方がまだましじゃないか?

「メル様」
 桔梗が笑った。
 ‥桔梗的に、メレよりメルの方が呼びやすそうだったって話かな? 以前もそんなことがあったのかも。
 まあ‥本人たちがいいならいいか。

「昨日はごめんね。これなくて‥。寂しくなかった? 」
 メレディアが眉を寄せて‥「心配です」って顔で‥桔梗に聞くと、桔梗が精一杯首を振る。
 プルプルって感じ。
 めちゃ可愛い。
 犬みたい。
「大丈夫です。‥ずっと、湖を見てました。綺麗で‥見惚れてました」
 頬を染めて、恥ずかしそうにちょっと俯く桔梗。
 これも可愛い。
 この子、第一印象より若い感じ。
 しっかりしてるけど、きっと十代って感じだな。
 美人系だけど、笑うと可愛い。
 こりゃ、メレディアじゃなくてもメロメロになるわ。
「湖。ああ。ここね? 」
 メレディアが頬を染めて、胡麻化すように‥湖を見る。
 ああ、湖。
 この湖ね。
 見惚れるかもね。ここ、綺麗だもんね。
 俺も、昔ここに来たことあるよ。
 やっぱり、夜に。
 ここ、なんか飛ばされやすいんだ。
 何度か夜に飛ばされて‥同じようなリバーシと思われる子供たちと会ったりしたよ。
 その子たちに対して先輩面したりして‥

 ここね、この国の観光地らしいよ。
 昼は、だけど。
 勿論夜には誰も来ない‥こともないな。時々カップルが来てるな。キラキラ電気で照らされた夜景を見に行くんじゃなくて、夜の風景の「夜景」見にいくの。‥ロマンチックっていうか、どっちかというと肝試しだよな。オバケが出るんじゃなくて、獣が出るんだ。
 で、わざわざ獣に喧嘩ふっかけて
「俺は強いから、貴女のことも守れます! 」
 みたいな。
「この魔物の魔石で結婚指輪作ります! 」
 みたいな。
 
 いらんな~そんな血なまぐさいの。

 因みに、夜の人気なデートスポットは「何となく光って見えるお花畑」らしい。
 なんてことない。
 ヒカリゴケみたいな、なんとなく光る植物の群生した場所なだけだ。
 その光る植物自体は地味なんだけど、そこに綺麗なお花を植えて観光スポットにしてみました~って感じなんだ。夜限定の観光スポットで、「防犯の為」昼間に予約しておいて、予約券を持って入場するって感じなんだ。
 大変だよね。
 観光ビジネス。
 この湖は魔物が出るから勿論人気はない。昼間はあるけど、夜はない。
「昼の方が綺麗なんだけどね。いつか桔梗にも見せてあげたいな」
 メレディアが残念そうな顔で桔梗を見る。
 メレディアは桔梗の事「好き好き大好き」だけど、桔梗は「そこまででも‥」って感じかな? 可哀そうだわ~。
 頑張れメレディア! デートに誘え!
「昼間は忙しいですからね~」
 桔梗が困ったような表情で苦笑い。
 はい、撃沈~。
「夜はほら‥獣も出て危ないし」
 メレディア粘る。
「獣? 」
「ええ、魔獣です」
「魔獣‥」
 でも、桔梗は怖くないみたい。
「この調子だから、獣も怖くないですしね」
 って、自分の身体を「意識して」透けさせた。
 あ、この子‥やっぱり‥

 リバーシなんだ。

 リバーシが夜の間だけ、「精神だけで」この国に来てるんだ。
 ミチルみたい。
 俺はちょっと笑ってしまった。
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