リバーシ!

文月

文字の大きさ
162 / 248
十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル

7.偶然じゃなくて。

しおりを挟む
「今と一緒だ」
 意外って顔をしたヒジリが言った。
「ああ、今と一緒だな。‥そして、デュカとリゼリア夫婦以前にはなかったことだ」
「え? 」
 ヒジリがナラフィスを見て、ナラフィスが頷く。
「デュカとメレディア‥史上最悪な交配実験により、リバーシと魔法使いは生まれた。‥それ以前には、リバーシも魔法使いもこの世界にはいなかったんだ」
 ヒジリが目を見開く。
「え‥だって‥」

「桔梗さんもきっとリバーシだったよ? 」

 同時代、異世界、同世代の桔梗もリバーシだった。
 今まで、この世界には魔法使いもリバーシもいなかった。でも、異世界にはいたっていうこと。
 それを、交配実験をした史上最悪の「調停者」は知っていたのだろうか。
 可能性は、二つだ。

 ① 事実として知っていたから、自分の世界でも試したくなった。
 ② 全く知らなかった。禁忌の交配も単なる好奇心。
 
「②‥だけど、禁忌の交配をすればリバーシと魔法使いが産まれるってことは分かってた‥感じがするんだよな。知ってたじゃなく、あくまで分かってた。
 きっと、調停者は地球で言うところの「科学者」って奴だと思う」
 ヒジリが言うとナラフィスも頷いた。
「それが一番あり得るな。研究馬鹿‥狂った奴ってのはいるからな」
 と、魔力枯渇寸前まで異世界渡りの実験を「身体を張って」までしていた科学者が言う。
 ‥説得力あるわ~。
 なんてヒジリは思ったが口には出さなかった。

「じゃあ‥桔梗さんがメレディアさんに会ったっていうのは単なる偶然なのかな」
 う~んとヒジリが腕組みをして考えていると、
「メレディア王がその桔梗さんと会った場所にいくって確率は、他の場所に行く確率より高かった‥とか言う事はないだろうか。
 だって、異世界からの桔梗さんが現れる様な場所だ。
 その場所はリバーシにとって特別な場所ってことだろう。
 ミチルが「現れた」場所だって、リバーシにとっては特別な場所だったからな」
「特別な場所? 」
 ヒジリが反芻するとナラフィスが頷いた。
 反芻したものの、ヒジリにも「そんな場所」には覚えがあった。
 なんとなくわかるけど‥確認の為‥っていうか、形式美だ。
 会話のリズムっていうか‥「ここは聞いといた方がいい」っていう「おきまり」って奴だ。
 で、ナラフィスの説明というのが
「特別な場所というか‥リバーシは「身体の充電中、飛ばされやすい場所」ってのがある。それは個人的に‥というより、リバーシの共通の場所なようだ」
 だった。
 自分の「何となくわかる気がすること」が間違ってなかったので、安心した。
 やっぱりそうだった。
 あの時、他のリバーシも飛ばされてきてたもん。
 っていうか‥そうか‥幼い頃、‥身体が疲れた時なんかに‥気が付けばあの湖に「飛ばされていた」のは偶然とか前世死んだ場所的な「個人的に関わりのある場所」じゃなくって、リバーシ共通の「飛ばされやすい場所」だったのか~。
 そして、‥それは俺だったら疲れた時だったんだけど‥(とにかく)自分の意思とは関係なしに飛ばされているようだということ。だから、あそこに飛ばされてきた幼いリバーシはぽかんとした顔をしていたのだろう。

「その特別な場所に飛ばされていることを弟妹のリバーシから聞かされたメレディア王はきっと、弟妹を探しにその湖に行ったのだろう。そして、そこで桔梗さんに会った」
「他の人たちには会わなかったのかな」
 ヒジリが首を傾げる。
 出会ったら、きっと大騒ぎだ。
 だって、王様なんだもん。‥その時は王子様だったかもしれないけどね。
「あの頃は、メレディア王の弟妹以外にリバーシはいなかったし、リバーシのことは今以上に分からないことだらけだった。だから、メレディア王は弟妹がやること言う事を全部日記に書き留めて‥観察日記のようなものをつけていた」
 え、怖い‥
「‥なんで? 」
「メレディア王以外が全員、今までいなかった未知なるリバーシと魔法使いだったんだ。未知なる存在に国民は皆恐れた。そんな存在だったんだ。リバーシも魔法使いも。それこそ、今の比じゃなかったと思う。
 メレディア王は「普通の人」だったんだけど、きっとメレディア王は不安に思っていただろう。「いつか自分もそうなるんじゃないか」って。だから、観察していた」
「う~ん。なるほどねえ‥。で、メレディア王は美人な桔梗さんに一目惚れして弟妹関係なくてもあの湖に通うようになった」
 なるほどねえ‥と何度か呟いたヒジリにナラフィスが「ん? 」という顔をする。
「なんだ? その湖って。ヒジリ、さっきどこに飛ばされてたんだ? 」
「なんて名前か知らないけど、結構昼間は有名な湖だよ」
 いや、ホント名前が言えたらいいのだけどね。
 ヒジリが「すみませんね」って‥照れ笑いする。
「あ、でも‥なんかちょっと違ったかも‥なんか、広かった‥というかなんか‥なんかわかんないけど違うかった」

 それは、「その湖の過去」だからじゃないか?
 残留思念を読んだんじゃなくって、過去に「飛ばされて」二人に会ったってことは考えられないか?

 あるかもしれない。
 だって、ヒジリの魔力が(普通の人にとってはやっぱり十分すぎるほどだけど)ヒジリにしては少ない。つまり、膨大な量の魔力を「使った」ってことだ。
 リバーシは「時の属性」の魔力を持っている。なら、スーパー魔力量のヒジリなら過去に行けたっておかしくはない。

 あり得ないけど、ヒジリならあるかもしれない。

「その湖に、今から‥は無理だろうから、明日にでも行ってみないか? 」
 ナラフィスが
 ヒジリの胸の前あたりで(← 二人とも座ってるから)ヒジリの両手を握って、熱い眼差しで(← 研究馬鹿だから)そう言ったあたりで、防音魔法が切れて‥ちょうどミチルが迎えに来た。

 机に向き合って、
 熱いまなざしをヒジリに向け、両手を握ってデートに誘うナラフィス。 

 を、目撃するヒジリ大好きなミチル。
 超高速移動で、ヒジリをナラフィスからはがしとり、自分の背中に隠す。
「何口説いてるんですか? 」
 口調が‥あれだ。マジだ。絶対零度の「冷た~い」口調。背中しか見えないけど、きっと視線もそういう感じなんだろう。

 ‥うわ~。ナラフィスさん固まってる。蛇に睨まれた蛙ってこんな顔かなって顔してる。
 いやね。誤解だからね、ミチル。違うよ、俺全然口説かれたりとかしてませんよ?!
 そんな「色っぽい話」とかしてませんからね?
 ナツカさんまで、ナラフィスさんを拘束しようとしないで?! 「主の婚約者に不貞を働こうとするとは‥」って感じなの!? 違うよ?!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...