リバーシ!

文月

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十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル

8.違うよ!

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「いや‥違うから」
 ヒジリは苦笑いして言った。ナラフィスも、すっごい頷いて肯定してる。

 そう、誤解だ!

 どう考えて、この二人から「色っぽい話」が出るっていうんだ! 考えて欲しい!
 二人が力説したら
「そりゃそうだな」
 ってあっさり納得された。
 ‥それも、どうかって思う。

「いや、ヒジリが白昼夢‥というか白昼トリップ? したらしくて‥その場所がこの国にあるっていうから、見にいってみようって話になっただけなんだ。
 白昼トリップって珍しいことだから。「何か意味があって呼ばれた」のかもしれないし」
 とナラフィスが説明したことでミチルが納得して(完全に納得したかどうかはわからないけど)地球に帰った。

 で、
 その例の湖にはナラフィスとヒジリそしていつも通りナツカ、そして何故かミチルとラルシュも来た。
 いや、ナツカもいるんだからデートとかあり得ないでしょ??
「なんかデートみたいだよね! 」
 ってにこにこするミチルがヒジリの傍から離れないのが‥鬱陶しい!! やっぱりまだ誤解してるのか!?
 ナラフィスは苦笑いした。
 ちらりとラルシュを見ると、(さっきナラフィスからヒジリの話を聞かされていたので)神妙な顔をして「なにかいつもと違っている点はないか」ってあたりを見回している。
 せっかくヒジリとお出かけだっていうのに、こっちはちっともデート気分にはなれない様だ。
 根が真面目だからね。

「あ、この建物は‥新しいんですね」
 ヒジリがあたりをきょろきょろと見回しながらナラフィスに確認する。
 ナラフィスはそんなヒジリの話を注意深く‥だけど、「何気ない様子で」聞いている。

 ミチルには「あの話」はしていない。
 でも、全てを隠せるわけがないから、
「突然の白昼トリップの理由を解明したい」
 ってことだけ話している。
 詳しい話‥ヒジリが誰かに会ったとか、その誰かがメレディア王だとかは‥内緒だ。
 あそこだけの話だ。
 関係者というか‥ご先祖様の話だから、ラルシュにはナラフィスから話をしておいた。

「ああ、築10年くらいかな」
 ナラフィスがヒジリに答える。
 ヒジリは「観光気分」って感じだし、ナラフィスも質問にただ答えるだけ‥って風を装う。

 新しいんですね。

 ヒジリは「わざわざ」そう言った。
 つまり、この建物は(ヒジリの見て来たビジョンには)無かった。
 ヒジリはやっぱり「タイムスリップ」したんだろうか。
 でも、一つだけじゃ分からない。
 一つだけで決めるのは早急だ。

「あれ、ここに大きな樹立ってなかったっけ? 細長い葉っぱの‥なんか白っぽい花が咲いてた樹」
 ってヒジリが言ったのは‥
 ここ10年以内に枯れたから切り倒された古い樹。
 確かに細長い葉っぱで、白い花が咲いていた。
 ただし、
 切られる前は、雷にでもあたったのか、縦に割れた半分だけが立っているだけの‥細い樹だった。
 だけど、掘り起こされた切り株から見てかなり大きな樹だっただろうというのは分かる。
 そういうことは、あの後この辺りの地図や文献をくまなく調べたラルシュやナラフィスには「分かる」。
 でも

 そんなことを聖が知っているわけがない。

 間違いない。
 ヒジリはタイムスリップして「メレディア王と桔梗」に会ったんだ。
 ナラフィスは確信した。
 大発見だ。

 ヒジリの時の魔力にこんな使い方があるなんて!

 はっきり言って、興奮した。
 なんていっても‥ナラフィスは学者馬鹿だから。

「ヒジリ。他に何か‥」
 気が付くことはないか? 
 って聞こうとして、ナラフィスが振り向いてヒジリを見る、
 ‥と、
 そこにヒジリはいなかった。
「ヒジリ‥? 」
 真横に立っていたミチルもいない。

 ラルシュだけが呆然と二人が立っていた辺りを見つめているだけ。
 ナツカは‥
 目を見開いて‥真っ青な顔してあたりを警戒している。
 珍しく腰に下げた剣に手を掛けている。

 いつものしら~ってした表情じゃない。
 騎士みたいな‥眼光鋭いナツカ。
 抜き身の剣を構えてラルシュを庇うように立つ。
 いつからそこにいたのか、護衛たちがわらわら集まってきた。

 ナツカ‥
 その剣、飾りじゃなかったんだ。
 ってか‥咄嗟に抜けなかったようだからやっぱり飾りじゃん?
 ‥ラルシュはどうしてるんだよ。
 剣の達人じゃなかったか? 
 
 なんで‥ヒジリとミチルは‥二人とも消えちゃってるの?
 ミチル、あんなにヒジリの横にいたのに‥何やってるんだよ。
 ラルシュはなんでヒジリを守れなかったの? 
 ダメじゃん‥ラルシュ。
 ミチルも‥あんなに魔王みたいな目が出来る癖に‥ダメじゃん。
 ヒジリを‥守れないならダメじゃん。

 ナラフィスはまるで映画でも見てるかのように‥目の前の光景をただ見ていた。

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