リバーシ!

文月

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十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル

9.なんか、ご機嫌だな、っていう‥どうでもいい「挨拶」

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 今日は、仕事終わりにヒジリとデート!
 楽しみだな~。
 なんて、思ってたら、
「なんかご機嫌だな」
 同僚に冷やかされてしまった。
 冷やかされたって言って、学生時代みたいに好奇心から「何とか聞き出しやる! 」って下心が透けてる‥とか、じゃない。
 ただの挨拶だ。
 同じ口調の挨拶に
「何だよ、しけた顔してるねえ。財布でも落とした? 」
 ってのがある。
 全て返事は
「そうですか? え~、別にいつも通りですよ~? 」
 で済むような類。

 学生時代の「なんかご機嫌だな」は「ご機嫌」の理由を興味津々「聞くまで許さねえぞ」ってニュアンスがあったけど、社会人になってからそれは‥なくなったな。
 だって、どうでもいいもん。
 学生ってさ、
 他の奴の恋愛事情が気になって仕方がないじゃん。
 もしかして、もう経験しちゃってないだろうな?! とか、「進展具合」も気になるし、そもそも「どういうものか」気になるじゃん。
 俺なんて、どうやら「モテる部類」だったらしいから、そりゃあ興味津々にいろいろ聞かれた。
 中学生なら、
「チューしたか? 」
 で、
 高校生なら
「あの子とはどこまでいった? 」
「あれって、どうなの? 」
 かな~。
 本やらメディアからの情報じゃなく、身近な人間から「生な情報」が聞きたい、ってやつ。
 ‥後は、やっかみかな~。
 聞き出すだけ聞き出して、
「ま、モテる男はいいですネ、俺らには縁のない話だヨ」
 って嫌味言われるんだ。
 全くいやになるね。

 高校生ってさ、ちょっとした「ヤラしい話」をしたい年ごろなんだ。
 実際「そういう経験がある」人間なんてそうはいないけど、見栄張ってみたり、さ。

 ‥今どきの子は進んでるから、中学生でもそういう話題するかもねえ。
 だけど、大人になったら、そんなのどうでもいいじゃん。
 人の恋愛事情なんて、さ。
 だから、聞いたものの、挨拶程度の意味しかないの。‥あとは、「誰かとの話題」の為の情報収集かな~。
「美代ちゃん、ミチルってば、佳代ちゃんと別れたっておもったらもう次の子とデートだって! 」
 って俺のこと、クズ男みたいに言いたい‥とかね。
 美代ちゃんは、我が社のアイドルで、聞くところによると、俺のことが好きならしい。だから、俺の評価を落としたいってわけだね。
 佳代ちゃんは、人気ナンバー2で、美代ちゃんのライバル、らしい。因みに俺の元カノ。例の、早朝乱入事件の彼女だ。
 そもそも、佳代ちゃんとは別れたんじゃなくて、振られたんだ。
 縁がなかったって奴だ。
 いや‥ちがうな。
 あの時は振られたって思ったけど、あれって「約束違反」だ。ビジネスの場だったら「大事な契約があるから5時までここには入らないで」って言われてる部屋に立ち入って、あわや契約が失敗に終わるところだった‥っていう位の違反だ。
 別に俺の方に非はなかった。
 浮気の事実はなかったわけだし。
 あの時は、ヒジリに対して「初恋の人」って以上の感情はなかった。
 佳代ちゃん > ヒジリ
 だった。
 あの時散々俺はそう説明した。
 だけど‥佳代ちゃんは俺のこと信用できなかった。‥それって、俺は全然悪く無くない?
 ま。そんなつまんない話、どうでもいいや。
 だから冷やかして来た同僚には、
「お得意様のところに持っていく、限定菓子が手に入って! あれってなかなかゲットできないんですよね。絶対好感度上がると思うと楽しみで! 」
 って、(色気の全くない話)言ってやった。
 因みに、これはホント。(別にこれが理由で機嫌がいいわけじゃないけど。勿論ね)
「え‥あ、そうなの? 」
 やべ~って顔してるね。
 そうそう、人の恋愛に首突っ込んでないで仕事しなさいね。あんた、今月営業成績ヤバいよ。
 まあ、勿論どうでもいいんだけど☆

 あ~、ヒジリと「デート」楽しみだな~。
 ただ、湖を見に行くだけだし、なんか色々おまけ付きだけど、デートには違いない。
 あの湖は、綺麗だし。
 絶対、ロマンチックだ。
 ヒジリも以前にも行ったことあるって言ってた。
 誰が言ったかは忘れたけど
「リバーシが「行きやすい」場所」
 って言ってたでしょ。
 ってことは、勿論俺も行ったことあるの。
 あの時は、もっと子供だったから、綺麗‥とかじゃなくって怖かった、かな。
 誰もいないし、
 明かりもついてない。
 実体がないから襲われる恐れはないとはいえ、なんか魔獣(かな? )の目が光ってるし。
 ただ、怖かった。
 怖くって蹲って震えてたら、他にも子供がいることに気付いたの。

 銀の髪のびっくりするほど綺麗な子供だった。
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