リバーシ!

文月

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十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル

10.リバーシ出現スポット

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 でもね、その時の俺はね、正直そんなこと思わなかったの。
 
 なんか、幽霊みたいに薄気味悪い奴だな~。

 ‥失礼ながらそう思ったよ。
 人形みたいに整い過ぎてたのも「呪いの人形」って感じで怖さ倍増し‥って感じだったし。
 真夜中にぼ~と光る白い肌と銀の髪‥ってのもそんな感じだったし‥。
 しかもね、そいつ、俺を見たの。
 偶然目が合った‥て感じじゃなく、もうまっすぐ俺を見たの。
 怖かった~。
 だから
 逃げなきゃ、って思って立ち上がったら、いつの間にか近づいていたそいつに腕をとられた。
 その‥頭一つ分ほど小さいやせ細ったそいつは、俺と視線を合わせて、驚いた顔をした後、‥俺の腕をつかんだ自分の腕に視線を落とし、また‥驚いた顔をした。
 そして、呟いた。
 俺に話しかけるって感じじゃなかった。
 ぼそり、と呟いた。

「力がみなぎって来る」

 ゾッとしたよ。
 何言ってんの、コイツって思った。
 逃げようとしたらそいつは俺の腕をつかむ力を強くしてきたんだ。
 で、また、呟いた。

「これで、‥あいつを殺すことが出来る」
 って。

 やばい奴だ!!

 俺は確信した。‥こいつは、ヤバい奴だ! でも、同時に‥興味を持ってしまったんだ。
 俺は、腕を握られたまま、そいつと視線を合わせた。
 そいつがにこり、と笑う。
 にたりとか‥そういう「悪い」笑いじゃない。
 にっこりって感じでもないが、「悪い感じではない」笑顔だった。
 ‥大丈夫‥かも? こいつはそう「やばい奴」じゃないかも? 
 だから、俺は「口だけ口だけ」って思った。
 子供だし、面白がって「言っちゃいけない」って言われてること言ってるだけだろう。って。
 俺は、面白がって、
「殺すの? 」
 ってそいつの話に乗ってみた。
 そいつが、またにこりと笑って頷く。
 ホントに「機嫌が良さそう」だった。何がそんなに面白いんだ? って思った。
「うん、病気に見せかけて殺せる。今まで「方法」は分かってたけど、魔力が足りなかったんだ。だけど、君のおかげだ! こんなに魔力が充填しているって感じたことはない」
 って言ったんだ。
 魔力。
 こいつ、厨二か。
「俺に魔力があるの? 」
 ちょっと引き気味に聞いたら、そいつは「は? 当たり前だろ」って顔をした。
「君、リバーシだろ? だから、ここに居るんだろ? だったら、魔力があるに決まってるじゃないか。ああ、でもホントにリバーシに会えた。
 ヤクザな魔法使いが「あそこに行ったら何も分かってないような‥まだ誰とも契約していない‥子供のリバーシがいるらしい。だったら、だまくらかして、魔力を貰い放題だ」ってワル仲間に言ってたのを聞いたんだ。そいつは街でも評判の悪だったし、嘘を言ってるだけかもしれない。それに、そいつが実際にここに来たわけでもなさそうだ。だから100%信じたわけじゃなかったけど‥、来てよかった! 」
 ‥何を言っているのか分からなかったよ。
 だけど、子供の頃の俺は更に訳が分からなかった。
 そいつに子供の頃の俺が聞いたことは、
「リバーシから魔力を貰う? どういうこと? 」
 ではなく、
「なんでその魔法使いはこなかったの? いいってわかってるなら来たらよかったのに」
 だった。(なんで? って思うでしょ? だけど、子供だから仕方が無い。子供は訳が分からないことを気にしたりするもんなんだ)
 そいつは
「ここには魔獣がいるからね。「リバーシがいるかも」は不確かな情報だけど、「魔獣がいる」は確実な情報だ。魔獣は怖いだろ? ‥怖いじゃ済まないよね。正直僕も怖い。普通の奴だったら、不確かな情報を信じて、わざわざ危険を冒してこんなところには来たくないよ」
 ってちょっと誇らしげに笑った。
 こいつは
 つまり、「わざわざ危険を冒して」「不確かな情報を信じて」ここに来た「普通じゃない奴」ってわけだ。
 なぜか。
 リバーシから魔力を貰って(どうやって貰うんだろう)「あいつ」を殺すためだ。
 そして、俺はそのリバーシならしくて、リバーシなら魔力があるのが当たり前、らしい。
 この子は俺から魔力を貰ったということだろう。
 あげた覚えはないが、
 あげたんだろう。
 さっきからこいつが俺の腕をつかんで離さないところをみると、俺の腕から魔力を吸収している‥とかなんだろう。
 勝手に。
 勝手にとるのは、貰うとは言わない。それは泥棒だ。盗られたって感覚はないが、‥泥棒は良くない。
「腕を離せよ! 」
 俺は腕を振って、そいつの腕を振り払った。
「うん、もう大丈夫だから‥。ああ、それにしても君は‥心地いいな」
 って、
 今度は頬を赤らめて‥こう‥陶酔する様な‥表情で俺を見たんだ。
 俺は今度こそ、ゾゾゾ~となって、とにかくこの場から離れなきゃ! って走り出そうとして‥
 夜が明けて、俺は強制的に地球に‥自分の身体に連れ戻された。

「よかった~時間が来て」
 って心の底から安堵した。
 そういえば、あれ「夢でよかった~」って感情じゃない? あの時は思わなかったけど、今思い出したら、そうかなって‥。
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