リバーシ!

文月

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十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル

19.皆の疑問まとめて回答 ②ナラフィスの質問に答えよう。

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 ミチルの頭は真っ白になった。

 自分が捕まると国家転覆の片棒を担がされる羽目になるとか‥!
 そもそも‥「手に入れる」ってなんじゃ?! 人をものみたいに‥ってか、こういうのって大概ヒロインに待ち受ける受難的な感じじゃね??
 なんで俺が‥
 しかも相手男だし。
 ここ‥一番重要‥

 しかも相手、男だし?!

 サイコポスの魔力供給源‥。
 毎日魔力を搾り取られて‥家畜のように扱われるんじゃないだろうか‥。 
 それこそ可愛い女の子なら、エッチな展開もあるかもしれないが、俺は男‥
 絶対、家畜扱い‥!

 怖い! 怖すぎるよ!!
 
 ないわ~‥

 頭の中をぐるぐるとそんな考えが回る。
 絶望とは違う。もっと、「動きのある感情」。
 混乱? 焦り? 嫌悪?
 そんな‥いろんなものが入り混じった感情。

 そんなミチルの様子なんか、まるでお構いなしって感じで、
「うん。まあ、捕まらなければ大丈夫。城から出なかったら問題なし。
 じゃ、次僕の質問に答えてよ」
 さらっとナラフィスが言う。

 あんた‥ホント、人間的に大丈夫!?
 自分に興味ないことに容赦なさすぎない!?
 ミチルはドン引きだ。

「まず‥雷が落ちた樹って」
 (やっぱりそんなミチルにお構いなしに)ナラフィスがメモを取り出しながら、ミチルを見る。‥例のサラリーマンの表情で。ホントに、「聞きたいこと以外全然興味ないんで~」なタイプなんだ‥。
 ここにもいたよ、サイコパスとは別のタイプのヤバい奴。この国もしかしてこんな奴ばっかりではなかろうか。
 ラルシュもよく考えたら「融通が利かなさすぎる」とこあるし‥そもそも、あの若さで真面目過ぎるし、悟り過ぎてるし。国家命過ぎるし‥は王族だからかな‥。
「あの、ヒジリが「ここに樹が立ってなかった? 」って聞いたあたりにたってた樹。今は何もなかったね」
 ミチルはため息をついて、ナラフィスの質問に答えた。
 もう、淡々と。
 なんか、色々「自分の杓子」でこの国の人間を見るのは諦めたって感じだった。
「‥やっぽりそうか。ヒジリは、あの樹があの後落雷を受ける‥って話を聞いていたんだな‥」
 と‥自分は「心の中で言った」つもりだったナラフィスは‥思った(← 実際は口に出しちゃってる)
 ラルシュが頷く。

 ‥ほら、やっぱり自分だけのけ者。二人はこの質問の意味がちゃんと解ってるんだ。
 ただの場所の確認ってだけではなく、だ。

 ミチルはイラっとした。
「あのさ‥! 」
 怒りを二人にぶつけようとしたら
「つまりね。これは、ヒジリが何をしたのかの確認だったんだ。
 さっきの質問は、ミチルの質問「ヒジリがなぜ「早送り! 」って言ったのか」の答えでもあるんだ」
 突如、ナラフィスが説明を始めた。
 この説明をする前に、ナラフィスは何か大掛かりな結界をこの周りに張り「最上級の防音の結界だ」とミチルに説明した。

 ‥最上級の防音の結界。
 それは、今から話すことがそれ程「ヤバい話」だってこと‥。
 
 ミチはゴクリと唾を飲み込み‥頷いた。
「結論から言えば、ヒジリはあの樹の「将来被雷する」って未来まであの樹の運命を早送りしたってことなんだ。ヒジリがしたことは、あの樹の運命を早送りしたことであり、別にあの樹をヒジリが被雷させたわけでは無い。
 ヒジリには雷の属性はない」

 どれくらい早送りすればいいかわからなかっただろうに‥本当にヒジリの魔力はでたらめだな。
 そういえば、ヒジリは自分が時の属性持ちだってわかってなかった時から、時の属性の状態異常を使っていた。

 水を氷にする。
 水 早送り 氷。

 これは、‥でも、状態異常が得意なものなら出来ないこともないことだ。だけど、普通なら水から氷になる「おおよその時間」の設定がいる。
 時間は分からなくても、「これくらいの力が必要」みたいな感覚をつかむのに苦心して‥ようやくできるようになるって感じ。「「望んだ結果(例えば氷)になるまで」時間を早送ったり、逆に水にするために巻き戻したりする」そんなことが出来るのは、きっとヒジリ位だろう。

 ナラフィスはミチルに説明しながら、ふとそんなことを考えた。
 だけど、こんな話、すんなり「はあ、そうですか」って理解できる話でもない。
 きっと、ミチルには‥ショックだろう。
 そして、そんな「時の属性」を自分も持ってるって知ったら‥。

 だけど、そんな心配は無用だったようだ。
 
 ミチルがラルシュとナラフィスを交互に見て、
「時の属性は‥ヒジリ特有のものじゃないよね。‥もしかして、リバーシなら全員持ってるもの? 」
 って聞いたんだ。
 二人が衝撃を受けて固まっている間もミチルは話を続ける。
「ヒジリも出来るんだ「デジタル魔法」って思ったんだよね~」
 ‥特に驚いた顔もせずに、だ。
 二人は目を見開いた。

 それにしても‥
 なんだその「デジタル魔法」? (名前がダサいな)

 ミチルの話は更に続く。
「DVDを使うみたいに‥「停止」とか「再生」とか。時間を止めるスキルっての? あ、状態異常だっけ? 俺、あの違いよくわかんないんだよね‥いまだに」
「風属性の魔力で作動させてるんだって思ってたんだけど‥時の属性? まあ確かにそう言われたら、その方が納得だよね」
「‥ちょっと待って、勝手に納得して次々話を進めないで? ミチルも使えるの? 」
 ようやくツッコミを入れられたのは、ナラフィスだった。
「うん。自分の周りだけ‥結構広範囲にわたって‥時間を止めることが出来るよ。一部でも身体に触れてたら、それも「自分」判定されて、それも「時間を止めない対象」にすることができる。
 あ、周りの時間を止めるっていっても、マンガみたいに「止まってるその他の人間」に悪戯できる‥とかじゃないよ? あくまでも「絵画や写真」みたいに止めるだけだ。写真には触れないでしょ?
 そうそう使うことも無いけど、ヒジリに「あんたスリーピングビューティーでしょ? 」って地球で話すときに使ったな。だって、そんな話誰かに聞かれでもしたら‥ヤバい奴認定されるでしょ? 」
 ‥と、そんなことを気にする奴が喫茶店で魔道具なんかの話を平気でする不思議。
「いつからそれを‥ってか、何に使ってたんだ? 」
「それこそ、あの湖の時以降だな。「怖いから夜が明けるまで「俺の周り誰も近寄るなバリア」張っておこう」って‥。
 思えば子供らしい発想だよね。バリアとか(笑)風で周りを囲む‥って感覚だったから、風魔法だって思ってた。
 初めはホントに自分の周りだけだったから、「動いてるところ(結界の外)」の声なんかは普通に聞こえるんだ。
 で、「おばあちゃんの家」を見つけたときは、おばあちゃんの声が聞こえて‥なんか心細かったのもあり、つい‥バリアを消した‥って感じかな」

 なんとなく、で「今まで聞いたこともない状態異常」なんかをさらっと作ってしまう‥。

 怖すぎるよ、怪物級リバーシ。

 国の災厄級リバーシ(ヒジリ)に
 高難易度の異世界渡りをさらっとやってのけて、更に「狙って何度も」ここにくる魔力と正確性をもち、国家転覆の可能性のある危険人物の「特別な相手」であるリバーシ(ミチル)。
 二人とも魔力量が半端なくって、しかも発想が豊かで‥ここの(魔力やなんかの)常識持ってないから、やることがもうでたらめ‥。(ヒジリなんてこの国の人間だっていうのに‥)

 何なんだ!

「成程~、時の属性。この防音魔法だって「この周りだけ時を止めて」るんでしょ? ここだけ周りから見たら時が止まってるから、音は聞こえない(どころか、動いてもいない)ってことか。
 ナラフィスもリバーシだから時の属性持ってるんだもんな。
 そうか~バリアで周りから囲むって感覚は同じだけど、この空間だけ周りから切り取る、とかもできるんだ~」
 
 そんなこと、考えたこともなかった。
 だって、防音魔法は昔からある状態異常で、張るマニュアルがある状態異常だから‥。

「でも、これは強い結界だから周りから攻撃されることはないだろうけど‥弱い結界だったら、周りからの攻撃が防ぎにくいね。
 だって、「ここだけ止まってるだけ」なんだから」

 はじめてこの結界の弱点(それも致命的な)を知ったナラフィスたちだった。

 この短時間にいろんなことを知って、そして、ノックアウトされかけた二人だったが
「リバーシが時の属性持ちだって事は、他言無用で‥。時を操れるなんて知られたら、それこそ全国民を混乱の渦に巻き込みかねないから‥」
 ってミチルに口止めすることだけは、忘れなかったのだった。
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