リバーシ!

文月

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十五章 メレディアと桔梗とヒジリとミチル

18.皆の疑問まとめて回答 ①ラルシュの質問に答えよう。

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「‥ミチル。
 カタルがミチルの事覚えてた‥ってどういうこと? 
 二人は顔見知りだったの? 」

 ラルシュが険しい顔でミチルに聞いた。
 いつもの穏やかな笑顔なんか‥顔から消え去っている。
 だけど、「険しい」けど、ミチルの事睨んだりしてない。
 ただ、
 冷静に‥丁寧に、だ。

 ラルシュは「こんな時」でも声を荒げたりしないんだな。
 ‥だけど、それがよそよそしく‥また言いようのない恐ろしさを感じられ‥ミチルは黙って苦笑いしてラルシュから目をそらすように‥目を伏せた。


 ラルシュからミチルへの質問。
 なぜカタルを知っているのか。
 どこであったのか。
 どういう関係なのか。
 今回のこととそのことは関係があるのか。

 ナラフィスからミチルへの質問。
 雷が落ちて燃えた樹はこの場所に今現在あるか。
 どの場所だったか。
 ラルシュ似の男と黒髪美女は何を話していたのか。
 ラルシュ似の男や黒髪美女について、目の色その他覚えていることを全部もっと詳しく。

 ミチルの疑問。
 あの二人は誰か。
 なぜヒジリはあの場所に飛ばされたのか。
 ネルとは何者なのか。
 ネルとナツミの関係は? 特別な相手であるのか否か。
 ヒジリに雷の攻撃魔法が使えたワケ。
 ヒジリの「早送り! 」の謎。
 
 そもそも、二人が知っていることを全部俺にも教えてくれ!


「教えてくれって言うなら、まず僕たちにも全部教えて欲しい。
 ミチルが知ってることを」
 ミチルの不満を受けて、そう言ったのはナラフィスだった。
 いつもの「人のよさそうな笑顔」は今はなりを潜めて、ミチルが地球でよく見るような‥「社会人」の顔になっている。

 ここからは「真剣な話」なんだ。

 ミチルは、身が引き締まるような思いがして、思わず深いため息を一つついた。
 ラルシュも硬い表情で頷く。
 もうさっきみたいな険しい顔ではないものの、その顔はいつもより無表情に見えた。
 怒るのを我慢しているのかな? ‥友達なんだから、怒ってるなら素直に怒ってるって言えばいいのに‥
 そう思った。
 それは、寂しいって感情と‥ちょっとの怒りだった。

 今はそんなこと言っている場合じゃないってさっき気持ちを切り替えたばかりだろ?
 と、ミチルは自分で自分を叱責した。

 今度は小さくため息をついて呼吸を整えると、
「カタルには昔‥俺が城に‥「おばあちゃんのところ」に来る前にあの湖で会ったんだ」
 ミチルは、包み隠さずカタルとのことをラルシュたちに話した。

 カタルが自分の事を魔法使いだって言ったこと。
 母親を殺したいって言ったこと。
 ‥自分がカタルの「特別な相手」らしいって言う事。
 今回、カタルは自分(ミチル)の居場所を察知して来たかもしれない‥ってこと。
 そして、「ネルがヒジリに会いたがってた」ってカタルが言ったこと。

「特別な相手? ミチルがカタルの? 」
 ナラフィスが目を見開いた。
 そして、少しの沈黙の後、ボソリと
「‥男同士ってこともあるんだな」
 低い声で‥呟いた。
 ‥そこ?
 ミチルが「奇異なものを見る目」でナラフィスを見た。
 ナラフィスの表情は先ほどと変わらない、「サラリーマンの表情」だ。
 ふざけて言っているのではなく、本気で思ったのだろう。

「‥恋愛の相性とかじゃないから、別に性別は関係ない。年も関係ない。親子ほど年が離れることもあるけど、親子は無い。兄弟姉妹もない。
 ‥肉親以外、どういう組み合わせがダメってことはない。
 それに、「特別に相性がいい」ってだけで、唯一無二の存在ってことでもない。
 唯一無二‥そういう関係の者は‥実はいるのだろうが‥、普通は生きている間に会える者は稀だ。
 本当に‥それこそ‥奇跡といってもいい位‥会うことはないだろう。
 会ったことなければ「それがどういう存在か」ってことは‥分からない。だから「そこそこ相性のいい者」に出会い、その者が以前に会ったことがある「相性がいいと思っていた者」より相性がいいと感じたならば‥、その者のことを「特別な相手だ」って思う‥かもしれないって話だ」
 成程~とナラフィスが頷く。
 因みにナラフィスは「僕は魔石派~」らしい。
「だって契約って、ちょっと愛人契約みたいじゃない? ‥なんか本命の娘に悪いよ」
 って、その理由がちょっと「誠実な男」みたいって思ったのに‥その次の台詞
「でも、年食って独身だったらそれもイイかな。若くてかわいい子と契約だけの後腐れの無い関係。肉体関係の伴わないドライな、だけど「特別な関係」、なんかよくない? 」
 には‥ちょっと幻滅した。
 ‥でも、そういうこと考える輩もいるかもしれないね~。お金持ってる年寄りがお金の無い若い可愛い子に‥とか、ありそうじゃない。なんか不潔だよね。
 だから、この契約は「個人間の契約」ってのが認められていない。
 金が有る者だけが得をしたり‥「いいとこどり」するのって良くないからね。(そういうのがばれたら厳罰に処されるらしい)
 金品がらみの犯罪も、性犯罪も怖いしね。
 でも、
 ‥将来結婚するってことが多いなら、年齢や性格が合う方がいい。だけどそういう相手に会うことなんて、一般人には難しい‥出会いの場がない。
 まあ‥これは‥国が管理しないといけないだろうね~。

「は~。それにしても‥。男に特別な相手って言われてもね~」
 ナラフィスがため息をついてミチルを見る。
 ‥気の毒って顔‥
 しないでくれるか!! どうせ何もできない奴が‥何もしてくれないであろう奴が親切ごかしに! 

 ああそうさ! 不幸な奴見たら「俺の方がまし~、よかった~」って安心するよね!
 
「いや‥それは考え過ぎだよ。そんなに卑屈にならない方がいい」
 今度は、眉を寄せて首を軽く横に振る。
 ‥じゃあ、やっすい同情か?!
 それもやめてもらいたいね!

「‥異世界の乙女とこの国の王が‥一緒になってこの国を治める」
 ラルシュがポツリと呟いた。
 ミチルがびくりと反応して‥恐る恐るラルシュを振り向く。
「この国の‥昔からの「お約束」だ」

「カタルがこの国の指導者‥王になれば、一緒になって国を治めるのはミチルだって話。
 いや‥言い方が違うね‥。
 カタルは、ミチルを手に入れれば、「この国を治める準備ができる」ってことだ」
 ラルシュは‥ミチルに話しかけているわけでは無い。ただ、「あるかもしれない可能性」をただ口にしただけに過ぎない。
 ミチルはそれを偶然聞いただけ
 そして

 それはミチルをノックアウトするのに十分な威力を持っていたんだ。
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