リバーシ!

文月

文字の大きさ
204 / 248
十七章 お試し「乙女ゲーム」

マリアン日記③ ドキドキはしないけど‥

しおりを挟む
(side マリアン)


 予測のつく事態に対する対策は立ててますって感じ。
 役に立ちそうな人の先行投資はしますよ、って感じ。
 だけど、逆に
 予測できないことにたいする備えはちょっと手薄かな~って感じ。

 この国は、そういうところがある。

 強い魔法使いやリバーシの子供は生まれながらにしてそういう措置がとられるが、ヒジリ様のように「パっと出の」リバーシにそのような措置は取られない。力が強そうだからという理由でヒジリ様だけを特別扱いすると、国民の反感をかうとか、「この子はそれ程危険な子供なんだ」と周りに悪戯に恐怖心を植え付けることになりかねないから‥とか、もっともらしいこと言ってるけど、ただ面倒くさがってるだけじゃない? って思う。
 私には考えつかないけど、「賢い頭」が何人も揃ってるんだから、「どうすればいいか」って考えればいいのに‥って思う。
 今回のことは検査した神官の見落とし、だから、神官が悪い。‥だけじゃなくて、「じゃあどうしたらいいか」って考えるべきだった。
 初めっから「この子は災いの子だから閉じ込めてしまおう」って「臭い物に蓋をする」的な‥ヒジリ様の人格や人権を無視した対応じゃなくて、まずヒジリ様を一人の人間として扱って、他の国民と同様にヒジリ様の生活を守って欲しかった。
 
 ‥ホントに、悔しい。

 夜、部屋に夕飯を食べるために立ち寄ったタツキ様にヒジリ様のお父様の話をすると、タツキ様は
「ヒジリのお父さんにこっちに来てもらうことは出来る? 」
 ってすぐにヒジリ様に聞いてくれた。
 私の話をちゃんと聞いてくれたことが、単純に嬉しかったのと‥
 真剣な顔をするタツキ様が‥
 かっこいいなって思った。

 タツキ様と結婚することに別に不満はない‥程度だったはずなのに、「見て! 私の旦那様すっごいカッコイイよ!? 」って自慢したくなってる。
 ‥誰にってわけじゃないけど。
 ホントにするわけでもないし‥。

 タツキ様でも‥じゃなくて、タツキ様がって思ってるのは、「自分の人生、妥協したって思いたくない」って理由から自分に思い込ませてる‥ってわけじゃないって思った。
 初めはそうだったかもしれないけど、今は違う。
 あんな「偉い人」が私の思い付きを真面目に取り合ってくれるなんて‥今まで考えたこともなかった。

「マリアンちゃんってホントにナラフィス先生の事好きなんだね。ナラフィス先生の片思いだって思ってた。偉い人だし‥断れないし‥的な? 」
 タツキ様を見つめる私をヒジリ様が「へー」って感心した様な表情で見て、言った。
「な! ヒジリは失礼だな! 僕はそんな残念な物件じゃないと思うぞ?! 顔は‥あれだけど、高給取りだし~、両親は存命だけど「両親と仲良くしてくれ」とかいう希望はないし~、初めっから家持ちだし~。
 職業は安定してるし、国王の覚えもすこぶるいいし~、結構ハイスペックだと思うワケ~。
 ラルシュ程剣の腕前もないけど、凄腕の護衛位は雇えるし。
 サラージみたいにキレッキレな決断力や統制力もないけど、学者なんて個人業だから、そもそも部下とかいないし。「ちょっと手伝って~」って言える後輩が居れば事足るわけだ!
 そもそもさ~、僕は別にサラージやラルシュと比べて自分が劣ってるばかりだって思ってないよ? ‥劣ってるっていっても、別にそれで不便はしてない訳だしさ」
 タツキ様‥ヒジリ様と話してるときってこんな感じなんだ! なんか、子供っぽくって‥可愛いかも(笑)
「‥うん、そもそもなんであの二人と比べるかなって感じしかないけどね」
 はは、ってヒジリ様が笑うと
「ん? 信じてないな? 僕があの二人に勝ってるとこなんてないって思ってるね? 
 じゃあ、説明するから聞いてて!
 僕の方が、サラージより女の子の気持ちが分かる! 」
 ‥そう‥なんですか? サラージ様、カッコイイしモテそうですよ?
「サラージ様より女の子の気持ち分からない人なんてそもそもいない気がしますけどね。サラージ様は女の子の気持ち‥というか、他人の気持ち自体そんなに分かってませんよ? でも、それでも部下との関係とか問題ないから、皆さんとの信頼関係が築けてるんでしょうね」
 はは、とヒジリ様がまた笑う。
「‥ラルシュ同様ワーカーホリックだけど、リバーシだからラルシュより24時間働けるし、ラルシュ同様勤勉だけど、ラルシュの持ち合わせてる「人に対する気遣い」やら常識の範囲内‥とかいう変なストッパーを持ち合わせて無い分、仕事がはかどってるし! 」
「‥それは‥もはやラルシュより勝ってるとは言えないんじゃ‥」
 ヒジリ様が苦笑いする。
 ‥同感です。
「言ったじゃないですか。比べる必要なんてないって。ナラフィス先生は、普通に問題なく、素敵な人だって思いますよ。
 キラキラしすぎてないから浮気の心配のない平凡な顔とか、一人親方な職場だからコミュニケーション能力無くっても問題なくていいね、とか。人間関係の悩みって仕事内容の悩みよりキツイですもんね。
 ワーホリで、勝手にブラック企業的な働き方する社畜だけど、問題があったら強制的に止めてくれる仲間がいるし、福利厚生がしっかりしてるし、そもそも働かなくても食ってけるほど蓄えありそうだし」
「‥ヒジリ、僕の事、モテない、コミュ障、金だけは持ってる社畜って思ってた‥? 」
 ‥ヒジリ様‥それは流石に酷いです‥。
 でも、楽しそう。
 私もいつかはタツキ様とこんなにフランクに話せるようになるといいな。
 
「‥それはそうと、さっきの話だけど‥マリアンちゃんの話と照合して‥「父さんはもしかして魔法使いかもしれない」そして、「国が検査時にそのことに気付かなかった可能性がある」ってことだよね。
 それで、今から調査しなおすってことになると思うけど‥もし、魔法使いだったらどうなるの? 父さんは地球から強制的に帰国することになる? 」
 心配そうにヒジリ様がタツキ様に聞くと、タツキ様はヒジリ様を安心させるように
「いや、補足教育が必要かどうか調べるだけ。問題ないって分かれば、その日のうちに帰れるよ。ヒジリの様子見てたら、特に今まで問題はなかったみたいだから、多分大丈夫」
 って笑った。
 タツキ様の笑顔は安心できる。
 ドキドキしないけど、安心できる。大丈夫、って気持ちになる。
 それって、結婚する上ですっごく大事だって思う。
 ‥キラキラしすぎてないから浮気の心配もないし、(更に! )心臓にも悪くないしね! 

 ヒジリ様(みたいな美形と)といたら、ドキドキしすぎて心臓に悪いし‥見つめ過ぎて‥眼精疲労です~!!
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

処理中です...