リバーシ!

文月

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十九章 「皆が望むハッピーエンド」

1.マリアンの新作乙女ゲーム(side マリアン)

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「「流行りのカフェ」‥「ショッピング」‥「流行りのレストラン」‥」

 タツキ様はさっきからそんなことを呟きながら‥王都のガイドブックをめくりまくっている。
 ‥城の図書館にはこの手の本もあったのか‥って初めて知った。

「手伝いましょうか? 」
 って聞いたら、ちらっと本から顔をあげて私を見た。
 ふるふるって小さく首を振る。
 こういう仕草って珍しい。
 いつもは
「いいよ。大丈夫」
 って微かに微笑んで言うのに。
 これってどういう反応なんでしょ。
 その反応が可愛くって‥なんか‥自分にだけ見せてくれる顔を見た感じがして‥嬉しくて顔がにやけてしまった私に‥
 タツキ様は拗ねたような顔をした。
 あ、馬鹿にされたって思っちゃったかな? 
 笑われたらいやだよね。
「‥お出かけが楽しみで‥それが顔にでちゃった。
 お茶でも淹れますね」
 胡麻化す‥じゃないけど、「タツキ様を笑ったんじゃないよ」って伝えたくて言ったんだけど‥不自然じゃなかったかな?
 タツキ様はもう本に視線を戻してるようだった。
 思ったほどきにしてなかったのかな? って思ったら‥耳が赤かった。
 う~ん。男の子は難しいなあ。‥だけど、これ以上は言わない方がいいんだろうな~。

 お茶を淹れながら私はヒジリ様たちのことを考えていた。
 以前妄想してた、「乙女ゲーム ヒロイン「ヒジリ」」の件だ。
 
 ちょっとお話を整理しておこう。
 (ストーリー)
 ヒロインは、世界の災厄と恐れられている少女・ヒジリ。
 ヒジリは敵の組織に狙われているが、今のままでは自分の身を守るだけの力はない。そして、協力者(攻略対象)もまだ揃っていない。
 城は、ヒジリが成長し協力者が揃い、彼らがヒジリを助けるのに十分な力を備えるまでヒジリを敵の組織から隠すために、彼女を地球に転移させる。
 ヒジリはこの世界のことも、自分の力の記憶も全て封印されている。
 大人になったヒジリを協力者が迎えに行き‥乙女ゲームがスタートする。
 ヒロインのヒジリは協力者と親密度を上げながら敵の組織を倒す力をつけていかなければいけないのだが、ヒジリは今まで男として生活してきたため、攻略対象たちに恋愛感情を持つことがなかなか出来ない。
 だけど、いろんなイベントをこなしていくうちに、恋愛とは言えないけれど、攻略対象たちとの距離も徐々に縮まっていっている。(今ここ)

 ヒロイン: ヒジリ(リバーシ。世界の災厄)
 攻略対象: ラルシュ(魔法使い。第二王子)
       サラージ(リバーシ。第三王子)
       タツキ(リバーシ。学者、実は王子たちの従兄弟)
       ミチル(地球在住のリバーシ)
 敵の組織  カタル(魔法使い。敵(反政府組織)の幹部。ミチルが「特別」であるらしく、狙っている。過去にミチル誘拐を実行したやばい奴)
       ネル (リバーシ。ヒジリの影星。敵のトップ)
       ナツミ(魔法使い。ヒジリの幼馴染)
       
「今日調べるのは、このナツミさんっていう‥ヒジリ様の幼馴染の魔法学校時代のことなんですよね‥? 」
 つい口にだしてボソリと呟くと、タツキ様が顔を上げて私を見た。
 私は「しまった‥口に出しちゃった」って思ったけど‥それは‥もう、どうすることも出来ない。
 聞いてなかったかな? ‥とかも、タツキ様に限っては、ない。
 タツキ様はホント、耳が3つくらいあるんじゃないのか? って程、なんでもよく聞いている。
 タツキ様は、パタンとガイドブックを置くと私の顔をじっと見た。
 目がキラキラしている。
 これは‥あれだ。
 何? 何か思い出した? それとも、思いついた?話しをきかせて!  
 って目。
 タツキ様は、何かの参考になるかもしれない「第三者の意見」を聞くのが大好きなんだ。
 勿論、話を聞いて「なぁんだ。つまらない。全然聞きたい話じゃなかった」ってことも多い。だけど、それはタツキ様曰く、(役に立つ話かどうかは)聞いてみないと分からないし、今ではなくても、後々役にたってくることもあるから意味がある、らしい。

 そんな雑多な情報を貯めておいても、後々引き出して役に立たせることが出来るのがタツキ様の凄さだと思う‥。

「いえ‥ナツミさんって‥他の方と比べてキャラが薄いなって‥」
 キャラが薄い‥というか背景が平凡って気がする。
 主要人物というには‥「キャラが薄い」。
 他の敵の組織の方々についてもそれ(情報が少ない)は言えるんだけど‥他の人たちは顔からして「モブじゃない」顔してるし、設定っていうか‥キャラが濃い。
 ヒロインの影星だったり、ミチル様を誘拐するサイコパス(多分そう)だったり。
 ナツミさんはそれに対して‥ヒロインの幼馴染ってだけだ。
 そのことを言うと、タツキ様はうんうんと頷いて、
「そうなんだよね~。俺もそう思ってたんだ」
 って肩をすくめてから、「‥今まではね」って表情をぱっと明るくさせると
「でも、昨日さ、ヒジリたちの学生時代の先生が来てさ。ちょっと情報が増えたんだ。ヒジリから話も聞けたし」
 って言った。
 ええ!? 新情報? 新展開の予感! 
「どんな情報ですか? 」
 つい前のめりになった私は‥だけど、みんな気持ちを分かってくれると思う。
 だって、気になるじゃないですか! 
「ナツミは、
① 生れたときに神官が調べに来た「可能性のある子」だった。つまり、ご両親のいずれかが魔力持ちとかだったんだろう。
② 家は裕福ではなく、ナツミは魔法学校の学費を自分で稼ぐためにヒジリの魔力を吸収させた魔石を作って魔石商人に売り、小遣い稼ぎをしていた。
③ 魔石商人にそこで、友達にどうやら膨大な量の良質な魔力があるリバーシがいるらしいってことがバレたと推測される。なぜなら、リバーシの魔力は特徴のある「色のない魔力」だから。
④ そして、魔石商人はナツミを利用してヒジリの誘拐を計画する。
⑤ そこで、そのリバーシがどうやら世界の災厄と呼ばれている噂のリバーシではないかとバレた(これは推測なんだけど、ほぼ間違いはないだろう)
⑥ 魔石商人はヒジリを誘拐しようとするがナツミがヒジリをラルシュに託すことによって誘拐が阻止される。
⑦ ナツミ、行方不明になる。
って話」
 メモを見ながら、タツキ様が言う。
「わ~。壮絶な人生ですね! 」
 ってか‥メモは単語ぐらいしか書いてないのに‥殆ど頭の中に入ってるってことですよね‥。‥ナツミさんの人生にも関心するけど、タツキ様の凄さだよ‥。
 でも‥さっきなんか‥「よくわからない単語」を聞いたな‥? 
「さっきタツキ様‥ナツミさんは‥行方不明になったって‥じゃあ魔法学校に入ったとは限らないんじゃないですか? 」
 私が聞くと、
「魔法学校に入らないと、魔法は使えないよ。ナツミは、再会したヒジリに魔法で攻撃してきた」
 タツキ様が当たり前の事って顔で言った。
 確かにそうだよね‥。それに、それも含めて調べに行くってことだもんね。
 ここでうだうだ言ってても仕方がない。
 だけど‥
 ヒジリ様に攻撃‥?
「‥王子に託してまで守ろうとした幼馴染なのに‥攻撃したんですか? 何故? 」
「反政府組織に洗脳された‥とか? 人間色々あるよ」
 成程‥
 そこら辺ですね? このキャラの薄いナツミさんがキャラが濃いい敵の悪の組織メンバーに入ってる理由。そこら辺の事情が絡んでるんですね?!
「loveの予感がします‥。きっとナツミさんは悪の組織メンバーの誰かとloveな関係なんです‥。
 そして、その人とヒジリ様を天秤にかけて‥loveを選んだってことですね? 」
「う~ん。あるかも。これは‥ドロドロ展開もあるか? もしかしてカタルloveで、でもカタルはミチルlove(loveではないけどミチルに執着しているのは確か)だから‥「ヒジリ軍許すまじ‥」ってなってるとか、ネルがブラコン傾向で「カタルlove」で「兄(カタル)の想いを無下にするミチル死ね! 」って感じだとか‥。
 いずれにせよ‥ミチルをあっちに明け渡したらすべて解決する感じ??
 だけど‥ネルがミチルを恨んでる‥だったらナツミが関わってこないな。
 だからナツミがカタルloveかネルlove‥。
 でも、それだったら片思いのナツミが「知らねえよ」ってどっちかに追い出されて終わりだよね‥
 ‥もしや、三角関係??
 ナツミ→カタル ネル→ナツミ カタルはネルがナツミのことloveなのを知っているから応援している‥とか? だけど、ナツミはカタルが好きで‥切ない。「私は切ない恋をしてるのに、何ヒジリはイケメンたちと楽しそうにしとんねん。死ね! 」‥って逆恨み‥。
 ‥なにこれ、地味に面白くなってきた‥」

 脱線しちゃってお出かけの時間が無くなりそうな予感に‥苦笑いの私でした。
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