リバーシ!

文月

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十九章 「皆が望むハッピーエンド」

3.デートにお化け屋敷って、ベタだよね。

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 馬車に揺られて‥小一時間‥いやもっとかな? 
 その間に乗客は一人減りまた一人減り‥目的地魔法学校に着いた時、乗客はマリアンとナラフィスだけになっていた。
 ‥というか、目的地に着く大分前に乗客は二人だけになっており、御者が
「お客さんたち、この時期に珍しいね」
 と苦笑いした。
 魔法学校に通う学生かその関係者位しか終点である「魔法学校」まで乗ることがないらしく、乗客が二人しかいない‥しかも、帰りが空ということで他の御者からは散々断られていたのだ。
 見かねたこの御者が行ってくれることになったのだ。‥もう、感謝しかない。
 だけど、魔法学校の学生だって乗るだろうに‥って思ったら
「魔法学校は全寮制だから」
 と、御者が不思議そうな顔で言った。
 ‥そんなことも知らない奴が、魔法学校に何の用だ? 
 って思ったんだろう。
 ナラフィスは
「そうだったんですね。私は学者で‥普段研究ばかりで外の世界のことに疎くって」
 と苦笑いして言った。
 御者は「ふうん」とさほど興味もないといった様子で頷いた。
「学者さんですか。‥成程。私たちは頭を使うことはからっきしでさ。机の前に一時間も座ってたら‥もう寝ちまうや」
 って笑った。
 悪い奴じゃないんだろう。(唯一馬車を出してくれた人だしね)
「それにしても‥何もない所ですね」
 マリアンがきょろきょろとまわりを見回しながら言った。
 気が付けば、ちょっとした森の中に入っていた。
 周りは、木ばかり店どころか人家も見られない。
 時々、犬だろうか‥何か動物の鳴く声が遠くで聞こえるばかりだ。
「皆魔法使いが学ぶところなんて怖がるんだろうね。だから、‥こんな山奥に押し込まれてるんでさあ。学生って言ったて初等学校を卒業したての幼い子供もいるのに‥可哀そうだねえ」
 皆が怖がるから
 と
 皆に隠したいから。
 ナラフィスはきゅっと眉根を寄せた。
 普通の人(魔力の少ない普通の人)の多い国だ。彼らにとって、魔法使いやリバーシは「必要だが、そう関わり合いになりたくない人種」なんだ。
 ただでさえそんな微妙な存在なのに、(きちんと勉強を終え、国に保護されている)「完成した」魔法使いならまだしも、‥まだ魔力の制御すらおぼつかない「魔法使い見習い」や「魔法使い予備軍」なんかは‥「未完成」だから、問答無用に「厄介者」って扱いなんだろう。
 だけど、そんな未完成(学生)をこの男は「可哀そうだ」と思ってくれる。
 (自分も厄介者扱いされるリバーシだから)その気持ちが嬉しい。

 だけど、リバーシと魔法使いは‥「普通の人」からの扱いが全然違う。きっとリバーシだってわかったら同じ扱いになるのだろうが、見ただけで魔法使いと分かる魔法使いと違ってリバーシは見ただけでは分からないという違うがある。
 魔法使いは、みんなローブの着用を義務付けられているが、リバーシに服装規定はない。
 魔法使いは「危険があるかもしれないから」見た目で魔法使いと分かる方が周りの人間にとって安心だからだ。
 ‥実際は危険なんてない。
 危険がないように学んできたんだから。‥だけど、だ。
 リバーシも魔法が使える者はローブの着用が義務付けられる。‥というか、リバーシで魔法使いなんて「危険人物」は一生城から監視される人生を送ることになって‥そうそう一般人の住む街に出てくることはないだろう。サラージやヒジリなんかもそういう一生を送ることになるだろう。(サラージもヒジリも魔法は使えないが、上級のスキルが多数使えるから。そういうのは、危険とみなされるんだ)
 ローブを着ているのは魔法使い。
 更に白い手袋を着用しているのは、「専属契約している相手」が魔法使い。
 まだ決まっていない‥もしくは専属契約する必要がない魔法使い。
 つまり、攻撃職である可能性は少ない。
 逆に、手袋をしていない魔法使いは、専属契約している相手が必要な程大量な魔力を必要とする攻撃職である可能性が高い。→ だから、近寄らない方がいいね。
 って外見からそこまで分かる。
 ローブの色も違う。
 一般の魔法使いは黒(一番下っ端)→灰色(一つ上)で、街でたまに見かけるのはこの二色。
 上級は白、最上級はそれに更に銀糸か金糸の刺繍(最上級。最大二人しかいない)が施されている。因みに今期は金糸はいなくて、ラルシュローレが銀糸の刺繍の白ローブ(王族だからシルク製)を纏っている。因みに銀と金に能力的な違いはなく、ただ本人の希望で選ばれるだけだ。
 控えめなラルシュは金より銀が好き。‥それぐらいの理由だ。
 いつかは白を! 
 黒、灰色のローブの魔法使いの目標だ。
 魔法使いは、結構そういうのが好きなんだ。
 リバーシにそういうのはない。
 専属契約を結んだ「特別な相手」である魔法使いに、他の魔法使いに一目でわかるようにお守りをつけられてる者もいるが、それも魔法使い同士ではわかるが、「普通の人」には分からない。
 街を歩くことは‥少ないけど歩いたとしても一般人と何ら変わらないから分からないだろう。
 分かるとしたら‥その人並み外れた美貌だろうが、余剰魔力を全部「知識記憶能力」に使用することを国から特別に許可されているナラフィスの容姿は「人より若干いい」位だ。
 それこそ、普通の人の中では美人であるマリアンなんかにも劣る程度。
 マリアンは元の容姿もあるけど、やっぱり貴族だから普段から肌や髪の手入れが行き届いている。仕草も洗練されてて美しい‥それって美人度がアップする要因だ。(一番大事なのは性格だっていうのは言うまでもない。いくら美人でも性格が悪かったら‥やっぱり、表情なんかに出るからね)
 そんなことをあれこれ考えていたナラフィスは(考察好きのナラフィスは放っておいたらすぐ自分の世界に入ってしまう。マリアンはそんなの慣れっこだから、「そうなった」ナラフィスは放っておくことにしてるんだ)
「もうすぐ着きますよ」
 っていう御者の声で我に返った。

 目的地魔法学校についたナラフィスとマリアンは親切な御者にそれぞれ二倍の料金と大量のチップを支払った。
 からで帰る道を少し憂鬱に思っていた御者は素直にそれを喜んで受け取って、二時間後また来て欲しいというナラフィスのお願いも快く引き受けた。
 人がいいって言っても、彼も養う家族もいる一家の大黒柱だから。
 ‥まあ、まったく最後まで空で帰るわけでは無いんだけどね。
 そこは、それ、だ。(時間は確実にとられたわけだしね)

「ここが魔法学校‥」
 マリアンが目を見開いて森の中にぽつんと立つ建物を見た。
 その建物は‥

 まるでお化け屋敷の様だった。

 デートにお化け屋敷って、ベタだよね。
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