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十九章 「皆が望むハッピーエンド」
5.ナツミの魔法
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その後から学校長の態度がもの凄く変わったのは‥でも無理はないかなあ。(それまでも、国の首席学者様相手だから勿論無礼な態度をとってたわけでは無いが)
だって、普通だったら絶対会わない(会えない)類の人だよね!
マリアンは「ちょっと気の毒だな」ってこころのなかでこっそり苦笑いした。
‥私も驚いたし‥後で怒っておかないとね! 内緒にするにしても‥ちょっと秘密が大きすぎやしない?
‥まあそんな話されたら絶対婚約とか‥しなかっただろうな。
とも思った。
‥でも、私だってタツキ様がどんなご身分の方だって関係な‥くはないな。やっぱり「無理です」って言いそうね‥。
‥だけど、だからって黙ってるのは‥。でも、‥タツキ様は私に断られたくないって思ってくれたってことで‥。それに、タツキ様のご両親も城に住んでないわけだし。タツキ様的にご身分とか「特に関係ない」って思ってらっしゃる‥ってことだろう。なんにしても、タツキ様が何もおっしゃらないなら私も何も言わなくてもいいかな。
‥にしても‥。
とまあ‥マリアンの方はナツミのことどころじゃなくなっていた。
学校長もナラフィスと話をするうちに、「それどころじゃ」なくなった様だ。
あれこれ名簿なんかを持ち出しながら‥今は二人で真剣に‥難しそうな顔して話をしている。
きっと(今回は)深刻な話なんだろうけど‥ナラフィスは、結構どんな話でも真剣に議論するし、手を抜かずに‥深刻な顔で話す。だけど、話が纏まったら決まって「満足~! 」って感じの「イイ笑顔」をするんだ。
それが可愛いんだ。
目を細めて、へらって笑う。
キラキラした笑顔じゃなくって、へらっと笑う。
今は真剣な顔タイム。
話の内容は気になるけど‥最初の方別のことに気を取られて聞いてなかったから‥今更話に入るのもちょっとね。聞いてるうちに「なんとなくこういうことかな? 」って分かるほど単純な話ならまだしも‥なんとなくそんな感じじゃない。
だから、今回は大人しく‥ナラフィスが「イイ笑顔」で話を終えるまで待つことにしたんだ。
と、ナラフィスの横顔を見ていると(暇だから)目が若干紫がかってる。
‥記憶のスキルを使ってるのかな?
ってマリアンは思った。
議論が白熱してノートに書くのも煩わしい時、ナラフィスは時々このスキルを使っている。
これは風魔法の一種らしい。
風に記憶して欲しい会話だけ記憶してもらうんだ‥っていう説明を昔受けた。
「風はそもそも、この世界で起こった全てのことを記憶している。だけど、風は同じ場所にとどまるわけでは無い」
つまり、同じ場所の記憶をずっとしているわけでは無い。
だから、「ここでの」「この瞬間の」ことを記憶して欲しい場合は、自分で風を作ってそれに記憶してもらえばいい‥っていう理屈らしい。
風って作れるんですかね。
リバーシってほんと出鱈目ですね。
「土も同じ。この世界の全てを記憶している。この場合はその土を切り取ってどこかに持ち去ったりしない限り、同じ場所でとどまって、記憶し続ける。
水は‥川や海だったら風と一緒で流転するね。
だけど、さっき僕が言ったような「自分で作った水」なら、自分が望むように‥望む時間、望む場所の記憶を残す媒体になりうる。理論上はそうだろうけど‥僕には出来ない。水属性は無いことは無いけど‥そんなに強くはないから。だから‥いつか、ヒジリにでも手伝ってもらって立証してみようと思ってる」
って話をしたことがあった。
‥未来の王子妃もタツキ様にとっては実験材料なんだなあ。
ってその時マリアンは思った。
そんなことを思い出して自然と口元がほころんだ時‥
「わー爆発した! 」
「おい、アイザック、何やってんだよ! 」
「先生~! こっちも来てください~! ノーマが魔力を暴走させてます~! 」
「ノーマ。動くんじゃないぞ! 」
微かに色んな声が開いた窓から入ってきた。
風向きが変わって、校舎の声が聞こえたんだろう。
幼さの残る学生たちの声だ。
皆若々しい‥楽し気な声。
ふわりと風でカーテンが揺れる。
室内は‥思ったよりも明るいなって思った。
この部屋に入る前に感じていた「きっとおどろおどろしいところだろう‥」って先入観は、この部屋に入った瞬間消え失せた。
ここは‥教わっていることが違うだけで、自分が学生時代学んで来た学校と何ら変わらない。
知らないことを教わる楽しみ、‥分からない悔しさ。時々嫌になったり、苦しくなったりしたっけ。楽しい友達との会話。だけど、時々面倒くさかったり、煩わしかったり、憎らしかったりもしたっけ。尊敬する先生。だけど、時には意見が衝突したり、「あの子にだけ甘くない? 」って理不尽に思ったり‥。
だけど、そこにしかない独特な雰囲気があった。
キラキラした思い出もあった。
自分は‥だ。
思い出してみれば、どうしても合わなくて学校を辞めた者もいた。途中で「したいことが見つかった」と言って辞めた者も。
だけどそれって、本人の自由だ。
なのに‥「辞めたら腕の健を切るとか‥在り得ない」ふつふつと怒りが込み上げてきたが‥ここでそれを言うのは違うかなって思った。
あくまで学校長は国の方針に従っているのであって、学校長の意志でそれを決めたわけでは無いだろうから‥。
‥だけど、元であろうと生徒を守れない学校長なんて‥どうだろうって思う。
なんとか‥手はなかっただろうか?
そんなことを考えると、むかむかして‥もう、この男の顔なんて見たくもないって思うのだった。
「何の話をしていたのですか? 」
帰りの馬車を待ちながら、マリアンが聞いた。
ナラフィスは「ん? 」とちょっと首を傾げ
「珍しい。聞いてなかったの? マリアンなら興味を持つかなって思ったんだけど」
ふふっと微笑んで言った。
マリアンはちょっと眉を寄せると
「‥腕の健を切ったって事実がショッキング過ぎて、‥その後の話を聞きたくなくなったんです」
言いにくそうに言った。
勿論それだけじゃないけど‥それはまあ‥言わないでもいいかなって思った。
ナラフィスは「まあ‥そうだよね」って肩をすくめると
「でも‥それっ位、魔法使いってのが危険視されてるってことだね」
って言った。
分かる。
それは分かるんだけど‥でも、って思う。
だけど、そんなこと勿論ナラフィスに言っても仕方がないから、マリアンは話を終了させることにした。(言い続けても仕方がないからね)
だから(「もうその話は終わりましょう」ってわざわざ言う代わりに)
「それで‥何の話をしてたんですか? 」
改めて初めの質問に話を戻した。
「ああ」
ナラフィスもそれに了解したんだろう。小さく頷いた。
「辞めた子の名前を聞いていたのは、学校を辞めた = 国に属していない魔法使い未満がいるってことですよね? その子たちを探し出すってことですか? その子たちが‥つまり、反政府組織にかくまわれてるかもしれないってタツキ様はお考え‥ってことですよね? 」
マリアンが言うと、ナラフィスはちょっと目を見開いて「さすがだねえ」って呟いた。
「まあ‥小説はいっぱい読んでますから」
ナラフィスに褒められ、マリアンが頬を赤くして‥小さく呟く。
「僕はね、その子たちがナツミに魔法を教えたって考えてる」
私もそう思うという風にマリアンが頷く、
が
「でも、魔法って‥人それぞれだし、属性によって魔法の使い方も違うんでしょう? 」
マリアンが首を傾げると、ナラフィスが頷いた。
「そう‥だけど、基本はそう変わらないらしいんだ。そこら辺は魔法使いであるラルシュと話していかなきゃ詳しいことは分からないけど。
多分‥ナツミはその子たちに基本だけ学んだんじゃないかなって」
そんな話を聞きながらちょっと胸が痛んだ。
魔法学校を辞めて、行き場がなくなって‥どうしようもなくなったところを助けてくれたのが反政府組織。
そこで魔法使い未満の子どもたちはきっと、肩を寄せ合って生きて来たんだろう。
そして、同じく魔法を志し‥だけど、それがかなわなかったナツミが反政府組織に保護された。
そんな後輩に魔法使い未満の先輩たちが魔法の基礎を教えた。
もう自分たちには使えない魔法を使える者。
そして、城に反感を持っていて‥カタルたちが目をかけている‥「特殊な子供」。
彼女なら何かをしてくれるかもしれない。
そう思ったに違いない。
‥彼らにとってナツミは希望だったんだ‥。
だって、普通だったら絶対会わない(会えない)類の人だよね!
マリアンは「ちょっと気の毒だな」ってこころのなかでこっそり苦笑いした。
‥私も驚いたし‥後で怒っておかないとね! 内緒にするにしても‥ちょっと秘密が大きすぎやしない?
‥まあそんな話されたら絶対婚約とか‥しなかっただろうな。
とも思った。
‥でも、私だってタツキ様がどんなご身分の方だって関係な‥くはないな。やっぱり「無理です」って言いそうね‥。
‥だけど、だからって黙ってるのは‥。でも、‥タツキ様は私に断られたくないって思ってくれたってことで‥。それに、タツキ様のご両親も城に住んでないわけだし。タツキ様的にご身分とか「特に関係ない」って思ってらっしゃる‥ってことだろう。なんにしても、タツキ様が何もおっしゃらないなら私も何も言わなくてもいいかな。
‥にしても‥。
とまあ‥マリアンの方はナツミのことどころじゃなくなっていた。
学校長もナラフィスと話をするうちに、「それどころじゃ」なくなった様だ。
あれこれ名簿なんかを持ち出しながら‥今は二人で真剣に‥難しそうな顔して話をしている。
きっと(今回は)深刻な話なんだろうけど‥ナラフィスは、結構どんな話でも真剣に議論するし、手を抜かずに‥深刻な顔で話す。だけど、話が纏まったら決まって「満足~! 」って感じの「イイ笑顔」をするんだ。
それが可愛いんだ。
目を細めて、へらって笑う。
キラキラした笑顔じゃなくって、へらっと笑う。
今は真剣な顔タイム。
話の内容は気になるけど‥最初の方別のことに気を取られて聞いてなかったから‥今更話に入るのもちょっとね。聞いてるうちに「なんとなくこういうことかな? 」って分かるほど単純な話ならまだしも‥なんとなくそんな感じじゃない。
だから、今回は大人しく‥ナラフィスが「イイ笑顔」で話を終えるまで待つことにしたんだ。
と、ナラフィスの横顔を見ていると(暇だから)目が若干紫がかってる。
‥記憶のスキルを使ってるのかな?
ってマリアンは思った。
議論が白熱してノートに書くのも煩わしい時、ナラフィスは時々このスキルを使っている。
これは風魔法の一種らしい。
風に記憶して欲しい会話だけ記憶してもらうんだ‥っていう説明を昔受けた。
「風はそもそも、この世界で起こった全てのことを記憶している。だけど、風は同じ場所にとどまるわけでは無い」
つまり、同じ場所の記憶をずっとしているわけでは無い。
だから、「ここでの」「この瞬間の」ことを記憶して欲しい場合は、自分で風を作ってそれに記憶してもらえばいい‥っていう理屈らしい。
風って作れるんですかね。
リバーシってほんと出鱈目ですね。
「土も同じ。この世界の全てを記憶している。この場合はその土を切り取ってどこかに持ち去ったりしない限り、同じ場所でとどまって、記憶し続ける。
水は‥川や海だったら風と一緒で流転するね。
だけど、さっき僕が言ったような「自分で作った水」なら、自分が望むように‥望む時間、望む場所の記憶を残す媒体になりうる。理論上はそうだろうけど‥僕には出来ない。水属性は無いことは無いけど‥そんなに強くはないから。だから‥いつか、ヒジリにでも手伝ってもらって立証してみようと思ってる」
って話をしたことがあった。
‥未来の王子妃もタツキ様にとっては実験材料なんだなあ。
ってその時マリアンは思った。
そんなことを思い出して自然と口元がほころんだ時‥
「わー爆発した! 」
「おい、アイザック、何やってんだよ! 」
「先生~! こっちも来てください~! ノーマが魔力を暴走させてます~! 」
「ノーマ。動くんじゃないぞ! 」
微かに色んな声が開いた窓から入ってきた。
風向きが変わって、校舎の声が聞こえたんだろう。
幼さの残る学生たちの声だ。
皆若々しい‥楽し気な声。
ふわりと風でカーテンが揺れる。
室内は‥思ったよりも明るいなって思った。
この部屋に入る前に感じていた「きっとおどろおどろしいところだろう‥」って先入観は、この部屋に入った瞬間消え失せた。
ここは‥教わっていることが違うだけで、自分が学生時代学んで来た学校と何ら変わらない。
知らないことを教わる楽しみ、‥分からない悔しさ。時々嫌になったり、苦しくなったりしたっけ。楽しい友達との会話。だけど、時々面倒くさかったり、煩わしかったり、憎らしかったりもしたっけ。尊敬する先生。だけど、時には意見が衝突したり、「あの子にだけ甘くない? 」って理不尽に思ったり‥。
だけど、そこにしかない独特な雰囲気があった。
キラキラした思い出もあった。
自分は‥だ。
思い出してみれば、どうしても合わなくて学校を辞めた者もいた。途中で「したいことが見つかった」と言って辞めた者も。
だけどそれって、本人の自由だ。
なのに‥「辞めたら腕の健を切るとか‥在り得ない」ふつふつと怒りが込み上げてきたが‥ここでそれを言うのは違うかなって思った。
あくまで学校長は国の方針に従っているのであって、学校長の意志でそれを決めたわけでは無いだろうから‥。
‥だけど、元であろうと生徒を守れない学校長なんて‥どうだろうって思う。
なんとか‥手はなかっただろうか?
そんなことを考えると、むかむかして‥もう、この男の顔なんて見たくもないって思うのだった。
「何の話をしていたのですか? 」
帰りの馬車を待ちながら、マリアンが聞いた。
ナラフィスは「ん? 」とちょっと首を傾げ
「珍しい。聞いてなかったの? マリアンなら興味を持つかなって思ったんだけど」
ふふっと微笑んで言った。
マリアンはちょっと眉を寄せると
「‥腕の健を切ったって事実がショッキング過ぎて、‥その後の話を聞きたくなくなったんです」
言いにくそうに言った。
勿論それだけじゃないけど‥それはまあ‥言わないでもいいかなって思った。
ナラフィスは「まあ‥そうだよね」って肩をすくめると
「でも‥それっ位、魔法使いってのが危険視されてるってことだね」
って言った。
分かる。
それは分かるんだけど‥でも、って思う。
だけど、そんなこと勿論ナラフィスに言っても仕方がないから、マリアンは話を終了させることにした。(言い続けても仕方がないからね)
だから(「もうその話は終わりましょう」ってわざわざ言う代わりに)
「それで‥何の話をしてたんですか? 」
改めて初めの質問に話を戻した。
「ああ」
ナラフィスもそれに了解したんだろう。小さく頷いた。
「辞めた子の名前を聞いていたのは、学校を辞めた = 国に属していない魔法使い未満がいるってことですよね? その子たちを探し出すってことですか? その子たちが‥つまり、反政府組織にかくまわれてるかもしれないってタツキ様はお考え‥ってことですよね? 」
マリアンが言うと、ナラフィスはちょっと目を見開いて「さすがだねえ」って呟いた。
「まあ‥小説はいっぱい読んでますから」
ナラフィスに褒められ、マリアンが頬を赤くして‥小さく呟く。
「僕はね、その子たちがナツミに魔法を教えたって考えてる」
私もそう思うという風にマリアンが頷く、
が
「でも、魔法って‥人それぞれだし、属性によって魔法の使い方も違うんでしょう? 」
マリアンが首を傾げると、ナラフィスが頷いた。
「そう‥だけど、基本はそう変わらないらしいんだ。そこら辺は魔法使いであるラルシュと話していかなきゃ詳しいことは分からないけど。
多分‥ナツミはその子たちに基本だけ学んだんじゃないかなって」
そんな話を聞きながらちょっと胸が痛んだ。
魔法学校を辞めて、行き場がなくなって‥どうしようもなくなったところを助けてくれたのが反政府組織。
そこで魔法使い未満の子どもたちはきっと、肩を寄せ合って生きて来たんだろう。
そして、同じく魔法を志し‥だけど、それがかなわなかったナツミが反政府組織に保護された。
そんな後輩に魔法使い未満の先輩たちが魔法の基礎を教えた。
もう自分たちには使えない魔法を使える者。
そして、城に反感を持っていて‥カタルたちが目をかけている‥「特殊な子供」。
彼女なら何かをしてくれるかもしれない。
そう思ったに違いない。
‥彼らにとってナツミは希望だったんだ‥。
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