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十九章 「皆が望むハッピーエンド」
6.マリアンの望み
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「‥可哀そう」
気が付いたら‥
マリアンはそう呟いていた。
呟いちゃダメなのに、呟いても仕方が無いのに‥
思わず呟いてしまった。
そのことで、ナラフィスが罪悪感を感じたら‥って思ったけど‥それはすぐに「無いな」って思った。
マリアンが知る限り「タツキ」という人間はそういう人間ではない。
おおよそセンチメンタルとは縁遠い人間だ。「そんなことで悩んでも時間の無駄でしょ? 」‥とは、流石に口に出しては言わないだろうけど‥こころのなかでは普通に思ってそう。
彼なら、そういう「悩んでも時間の無駄」なことを考えずに、「それはそうで仕方がないから、それを踏まえて」最良の方法を考えるだろう。
世の中の不平不満を言って諦めてそれで終わりとは違う。
もっとも、世の科中の不平不満に対して声を上げるだけのパッションがないっていうのも否めない。
ヒジリなら泣いて怒って声を上げ、皆のこころに訴えかけて制度を変えていく道を選ぶだろう。
ミチルなら‥きっと「ふうん、大変だね」って言うだけ。何もしない。‥だけど、それは彼が特別冷たいっていううより、ヒジリとは違って魔法使いの友達がいないってことに起因してるかな。
自分の事として考えられない。‥そもそも、この国の人間じゃないしね。
自分は‥
可哀そう
って口で言うだけ。
きっとヒジリ様が「一緒に声を上げましょう! 」って言ったとしても‥それに応じることもない。
ただ、遠くで眺めて「頑張って欲しい‥」って祈るだけ。
だけど、そんな自分が嫌だとか、変わりたい、変わらなきゃ‥とは思わないんだ。
いろんな人間がいるのが当たり前だし、皆がこうあるべきってことではないって思うから。
「意見には同意。協力はしないが、意見を求められたら答えるし、絶対に邪魔になるようなことはしない」って存在。
そういうポジションだけど、私は「肯定派」に入る。一番中心から遠い、肯定派。
「否定派」の一番中心から遠いポジションは、私と全く反対の存在。絶対に邪魔になるようなことはしないってのが重要。
賛成者名簿、反対者名簿に名前が載る程度のポジション。
そういうのが許されるのが「当たり前」だと思う。
こうあるべき。
賛成なら一緒に声を上げろ。反対者を非難せよ。戦って勝利(例えば法律の改正)を勝ち取れ。
っていうのが「当たり前」ってのは‥ちょっと違うって思う。
魔法使いにも、そんな風に「いろんな人」がいて「当たり前」なはずなのに‥。
マリアンは「これは、私の意見だから‥聞き流してね。ただ、ちょっと言いたくなったんだ」
って断ってから、
「魔法使いの子たちだって‥自由に職業を選択する権利があると思う。
なのに‥
未来を城に全部預けさせられるしかない‥って思ったら‥嫌だって逃げたくなる。‥そう思う子だっていて当たり前なのに‥全部決められて‥可哀そうだね」
って言った。そして、ナラフィスの返事を待たず、
「言っても仕方がないのは分かるけど‥でも、私くらい発言力の薄い人間だからこそ‥言えることかなって。
皆に「当たり前」って思われてるとか‥彼らが可哀そうすぎるなって‥」
と、付け加えると、悲しそうに‥寂しそうに微笑んだ。
「そうだねえ‥」
ってナラフィスは同意の姿勢を示したけど‥本心ではホントに同意してるかどうかなんてわからない。
だって、それがナラフィスだから。
マリアンはそれを分かっているから、さっきの笑顔のまま、ただ小さく頷いた。
この話、ヒジリにはしない方がいい。
だって、ナツミのことになったらヒジリは感情的になるから‥。
そんなことも思った。
あの、単純で善良で発言力の強い人間を‥自分まで‥せめて自分だけは‥利用しようって思わないでおかなければって思ってるんだ。
あの人ならこうしてくれる。こうできるって‥期待じゃなくくて、利用だよね。
「ではまずすることは、逃げ出した子たちの行方を捜す‥ってことでいいですよね。それで、見つからなかったら、反政府組織にかくまわれている確率が高いってことで間違いないですよね。
ああ‥その前に‥逃げ出した子たちの属性の確認の方が先ですね。
帰ってそれを整理をしてから行方等の調査を依頼しましょうか‥」
さっきの話はそれでおしまいっていう意味で、マリアンが話を変えていった。
ふふってナラフィスが苦笑いして
「そうだね。でも‥」
マリアンの肩を引き寄せ‥
「まずはデートかな。仕事の話はいったん保留ね」
ちょっと頬を赤らめて‥照れくさそうに言ったんだ。
‥だって、今日は楽しみにしてたんだから‥。
仕事より楽しみなことが自分に出来るなんてなあ
そんなことを「他人事のように」思ったナラフィスだった。
(side ナラフィス)
これが恋って奴なのかな。
「こうあるべき」が無くってマニュアルもなくて、結果が全てじゃなくて、ゴールが定められてなくって‥そもそも、何がゴールなのかすら分からない。
学者なんてしてると「結果が全て」「端的に纏める」「分かりやすく、シンプルに」が全てになってたけど、恋はそうじゃない。
例えば「今日手を繋ぐぞ」っていう小さな目標すら思うように実現できない。それどころか、ゴールである「手を繋ぐ」を実現すればいいってわけでは無く、そこにたどり着くまでのプロセスが重要と来た。
人の気持ちは、何一つ思い通りにいかないし、どんなに本を読んでも分からない。
だけどそれが面倒で嫌になるかと言われると‥全然そんな風ではない。
その人のことで悩んだり、何もしないでただ一緒にぼーとしているだけの時間も‥全然無駄だって思わないし、苦痛じゃない。
眠ってるマリアンの顔をずっと眺めてたいな、ここにずっと居たいなって思う。そんな感情は‥今まで生きて来た人生で初めてだったかもしれない。
リバーシは訓練次第では、ある程度「裏の時間」に居る場所を決めることが出来るんだ。訓練って言うか‥こころの鍛錬‥的な? まあ‥つまり、どれ程ワーホリかってことだな。「この仕事するまでどこにも行くもんか! 」って執念。それが、僕やサラージには特別強かった(のと、王家だけが持つ何らかの特別な力だろうね)
勿論並大抵の想いじゃない。気を抜けば、どこかに精神が飛ばされて‥ぼんやり見知らぬ湖を眺めされられる羽目になる。気が抜けるほど「疲れてる」から、「飛ばす側の威力」も凄くって「絶対休ませてやる‥」って感じで‥誰もいないところを選んで飛ばされたり‥とかする。そこで‥まるで金縛りにあったかのように‥強制的に湖を眺めさせられる。
湖だけじゃなくって、無駄に綺麗でそれこそ「こころが洗われるようだろ? 」って感じの風景が「飛ばされ先」のセレクトだ。そういう「風光明媚」な景色を選んで飛ばされる。
で、それで心がリフレッシュされる者も居るんだろうが、こころがそれ程清らかじゃない僕やらサラージは「しまった~! やられた~! 」って悔しがって、無駄に余計にストレス溜めるっていうね?
現実とは違う場所に飛ばされる。
普通の人にとっては「夢を見る」。リバーシにとってはそうじゃない。
「普通の人」の見る夢とは決定的に違うのは、そこに何のストーリもないことと、自分の意志で動きまわることが出来るって点。
ぼ~と眺めてることもできるし、湖に入ることもできる。
時々、魔法使いのスカウトに会うこともある。
そこであったことは全て現実で「なかったこと」にはならない。
そこにあらわれた魔法使いは実際に存在している魔法使いだし、彼は勿論起きている。起きて、同じく起きているリバーシと話す。
魔法使いと僕らの違いは身体と魂が一緒になっている状態(魔法使い)と魂だけ(リバーシ)ってこと。
じゃあ、逃げ切ることなんて簡単じゃないか? って思うかもしれないけど、そうじゃない。
魂だけの僕らは、「その時間」が来るまでそこから動けない。
その場でなら何でもできるけど、その場から離れることは出来ない。
もう一つ違うのは(こっちの方が問題)
自分の本性を演技力やなんかで隠せる魔法使いと違って、リバーシはむき出しの魂の状態だから、自分を偽ることが出来ない。
こころでは「好き」って思っててもそっけない態度、とか出来ない。
こころで好きって思ったら、態度にすぐ出ちゃう。
あと‥まあ、リバーシの方が魔法使いより「チョロい」奴が多い‥かな。
(魔力を)持てる者の余裕って奴かもしれない。
例え魔力だとしても、何かを持ってる者ってのはそれだけで心に余裕が持てますよね? (って思う。多分)
そんな「思い上がってて」「チョロい」リバーシがほろほろと「リバーシ出現目撃情報多数」な場所にまんまと現れる。そこで、待ち構えてた魔法使いが好意的な振りをして‥愛を囁いたとしたら‥大概ころっと騙される。リバーシは孤独で愛に飢えてる者が多いから。子供なんてなおさらだ。
愛を囁かなくたって「僕は君の運命の人なんだ。僕はここで君をずっと待ってたんだ」って言われただけで‥世間知らずな子供のリバーシだったら、けっこうころっと行くんだろう。
因みに、これはただのナンパなんかじゃない。
パートナーを持っていない魔法使いのパートナー探しだ。(ちなみに違法。今は随分取り締まりが厳しくなってるけど、一昔前はもっと緩かったらしい)
僕が初めて飛ばされた場所も‥あちらこちらでそんな光景が繰り広げられてて‥子供心に「引くわ~」って思ったのを覚えてる。僕はやっぱり王族に近いってのもあって、普通の子どもより頭脳的にも情緒的にも「おませ」だったからね。あと‥普通の子どもより圧倒的に冷めてた。
ハイハイ。パートナー契約目当てデショ?
って感じで、さらっとあしらってたし、‥そもそも、隠れてたかな。
だけど、「今日はどこにとばされるのかな」って楽しみでもあったのは確か。身体に戻ってきたときに「今日飛ばされたところはどこだろ」って調べるのも楽しみだったし。
あと‥色々試してみて分かったことなんだけど、「裏の時間」でぼーと過ごした時は身体に戻ってきたとき「疲れが取れたわ~」って感じになってるんだけど、魔法使いをまいたりとかして動き回った時は、身体に戻ってきた時、全然疲れが取れてなくて、「余計疲れたわ」って感じる。
これは、でも皆(他のリバーシ)は分かってなかったみたいで、これを発表した時「‥そういえばそうかも」「そういうことだったのか」って随分騒然となった。
てか、その程度なの。
リバーシにとって24時間好き勝手に出来ないことは「当たり前」で別にそれ以上の感情はないの。
僕もそうだった。
マリアンに恋をする前は。
一緒に眠りたい。
一晩中、マリアンの暖かさを感じていたい。
そう思うようになった。
でもね。
「ベッドは別」
って言ったのは、僕。
僕だって一緒に眠りたい。だけど‥ダメだ。
裏の時間になって、魂が抜けた「抜け殻の身体」は‥
死人のように冷たいから。
心臓が動いてるんだから、冷たいってのはおかしいって思うけど‥。‥心臓が「一応」動いてるだけでほぼ死んでるって状態なのか?? そこら辺は‥分からない。(だけど、いつかは解明してやる)
(まあ、とにかく)冷たくなるの。一緒に寝てたら、さっきまで暖かかった身体が次第に冷たくなっていく‥その感覚は体感したことはないが、きっと怖いことだろう。(ちなみに、魂の状態で除霊‥じゃないけど「殺された」ら、身体に帰れなくなり、残された身体も‥何日もその状態(魂がずっと入ってない状態)が続けば死んじゃうんだ。だから、ヒジリはホントに特殊で凄い状態だったんだ)
冷たい身体の僕と一緒に寝てたらきっと、マリアンは‥怖いって思うだろう。
だから、僕は一人で眠って、目覚めても一人。
そんなの、今までは当たり前のことだったのに‥。
サイドテーブルを隔てて眠るマリアンの寝顔を見る度に感じる寂しさ。
‥今までに感じたことのない物足りなさ。
僕は‥マリアンのことが‥自分では信じられない程好きになっている。
気が付いたら‥
マリアンはそう呟いていた。
呟いちゃダメなのに、呟いても仕方が無いのに‥
思わず呟いてしまった。
そのことで、ナラフィスが罪悪感を感じたら‥って思ったけど‥それはすぐに「無いな」って思った。
マリアンが知る限り「タツキ」という人間はそういう人間ではない。
おおよそセンチメンタルとは縁遠い人間だ。「そんなことで悩んでも時間の無駄でしょ? 」‥とは、流石に口に出しては言わないだろうけど‥こころのなかでは普通に思ってそう。
彼なら、そういう「悩んでも時間の無駄」なことを考えずに、「それはそうで仕方がないから、それを踏まえて」最良の方法を考えるだろう。
世の中の不平不満を言って諦めてそれで終わりとは違う。
もっとも、世の科中の不平不満に対して声を上げるだけのパッションがないっていうのも否めない。
ヒジリなら泣いて怒って声を上げ、皆のこころに訴えかけて制度を変えていく道を選ぶだろう。
ミチルなら‥きっと「ふうん、大変だね」って言うだけ。何もしない。‥だけど、それは彼が特別冷たいっていううより、ヒジリとは違って魔法使いの友達がいないってことに起因してるかな。
自分の事として考えられない。‥そもそも、この国の人間じゃないしね。
自分は‥
可哀そう
って口で言うだけ。
きっとヒジリ様が「一緒に声を上げましょう! 」って言ったとしても‥それに応じることもない。
ただ、遠くで眺めて「頑張って欲しい‥」って祈るだけ。
だけど、そんな自分が嫌だとか、変わりたい、変わらなきゃ‥とは思わないんだ。
いろんな人間がいるのが当たり前だし、皆がこうあるべきってことではないって思うから。
「意見には同意。協力はしないが、意見を求められたら答えるし、絶対に邪魔になるようなことはしない」って存在。
そういうポジションだけど、私は「肯定派」に入る。一番中心から遠い、肯定派。
「否定派」の一番中心から遠いポジションは、私と全く反対の存在。絶対に邪魔になるようなことはしないってのが重要。
賛成者名簿、反対者名簿に名前が載る程度のポジション。
そういうのが許されるのが「当たり前」だと思う。
こうあるべき。
賛成なら一緒に声を上げろ。反対者を非難せよ。戦って勝利(例えば法律の改正)を勝ち取れ。
っていうのが「当たり前」ってのは‥ちょっと違うって思う。
魔法使いにも、そんな風に「いろんな人」がいて「当たり前」なはずなのに‥。
マリアンは「これは、私の意見だから‥聞き流してね。ただ、ちょっと言いたくなったんだ」
って断ってから、
「魔法使いの子たちだって‥自由に職業を選択する権利があると思う。
なのに‥
未来を城に全部預けさせられるしかない‥って思ったら‥嫌だって逃げたくなる。‥そう思う子だっていて当たり前なのに‥全部決められて‥可哀そうだね」
って言った。そして、ナラフィスの返事を待たず、
「言っても仕方がないのは分かるけど‥でも、私くらい発言力の薄い人間だからこそ‥言えることかなって。
皆に「当たり前」って思われてるとか‥彼らが可哀そうすぎるなって‥」
と、付け加えると、悲しそうに‥寂しそうに微笑んだ。
「そうだねえ‥」
ってナラフィスは同意の姿勢を示したけど‥本心ではホントに同意してるかどうかなんてわからない。
だって、それがナラフィスだから。
マリアンはそれを分かっているから、さっきの笑顔のまま、ただ小さく頷いた。
この話、ヒジリにはしない方がいい。
だって、ナツミのことになったらヒジリは感情的になるから‥。
そんなことも思った。
あの、単純で善良で発言力の強い人間を‥自分まで‥せめて自分だけは‥利用しようって思わないでおかなければって思ってるんだ。
あの人ならこうしてくれる。こうできるって‥期待じゃなくくて、利用だよね。
「ではまずすることは、逃げ出した子たちの行方を捜す‥ってことでいいですよね。それで、見つからなかったら、反政府組織にかくまわれている確率が高いってことで間違いないですよね。
ああ‥その前に‥逃げ出した子たちの属性の確認の方が先ですね。
帰ってそれを整理をしてから行方等の調査を依頼しましょうか‥」
さっきの話はそれでおしまいっていう意味で、マリアンが話を変えていった。
ふふってナラフィスが苦笑いして
「そうだね。でも‥」
マリアンの肩を引き寄せ‥
「まずはデートかな。仕事の話はいったん保留ね」
ちょっと頬を赤らめて‥照れくさそうに言ったんだ。
‥だって、今日は楽しみにしてたんだから‥。
仕事より楽しみなことが自分に出来るなんてなあ
そんなことを「他人事のように」思ったナラフィスだった。
(side ナラフィス)
これが恋って奴なのかな。
「こうあるべき」が無くってマニュアルもなくて、結果が全てじゃなくて、ゴールが定められてなくって‥そもそも、何がゴールなのかすら分からない。
学者なんてしてると「結果が全て」「端的に纏める」「分かりやすく、シンプルに」が全てになってたけど、恋はそうじゃない。
例えば「今日手を繋ぐぞ」っていう小さな目標すら思うように実現できない。それどころか、ゴールである「手を繋ぐ」を実現すればいいってわけでは無く、そこにたどり着くまでのプロセスが重要と来た。
人の気持ちは、何一つ思い通りにいかないし、どんなに本を読んでも分からない。
だけどそれが面倒で嫌になるかと言われると‥全然そんな風ではない。
その人のことで悩んだり、何もしないでただ一緒にぼーとしているだけの時間も‥全然無駄だって思わないし、苦痛じゃない。
眠ってるマリアンの顔をずっと眺めてたいな、ここにずっと居たいなって思う。そんな感情は‥今まで生きて来た人生で初めてだったかもしれない。
リバーシは訓練次第では、ある程度「裏の時間」に居る場所を決めることが出来るんだ。訓練って言うか‥こころの鍛錬‥的な? まあ‥つまり、どれ程ワーホリかってことだな。「この仕事するまでどこにも行くもんか! 」って執念。それが、僕やサラージには特別強かった(のと、王家だけが持つ何らかの特別な力だろうね)
勿論並大抵の想いじゃない。気を抜けば、どこかに精神が飛ばされて‥ぼんやり見知らぬ湖を眺めされられる羽目になる。気が抜けるほど「疲れてる」から、「飛ばす側の威力」も凄くって「絶対休ませてやる‥」って感じで‥誰もいないところを選んで飛ばされたり‥とかする。そこで‥まるで金縛りにあったかのように‥強制的に湖を眺めさせられる。
湖だけじゃなくって、無駄に綺麗でそれこそ「こころが洗われるようだろ? 」って感じの風景が「飛ばされ先」のセレクトだ。そういう「風光明媚」な景色を選んで飛ばされる。
で、それで心がリフレッシュされる者も居るんだろうが、こころがそれ程清らかじゃない僕やらサラージは「しまった~! やられた~! 」って悔しがって、無駄に余計にストレス溜めるっていうね?
現実とは違う場所に飛ばされる。
普通の人にとっては「夢を見る」。リバーシにとってはそうじゃない。
「普通の人」の見る夢とは決定的に違うのは、そこに何のストーリもないことと、自分の意志で動きまわることが出来るって点。
ぼ~と眺めてることもできるし、湖に入ることもできる。
時々、魔法使いのスカウトに会うこともある。
そこであったことは全て現実で「なかったこと」にはならない。
そこにあらわれた魔法使いは実際に存在している魔法使いだし、彼は勿論起きている。起きて、同じく起きているリバーシと話す。
魔法使いと僕らの違いは身体と魂が一緒になっている状態(魔法使い)と魂だけ(リバーシ)ってこと。
じゃあ、逃げ切ることなんて簡単じゃないか? って思うかもしれないけど、そうじゃない。
魂だけの僕らは、「その時間」が来るまでそこから動けない。
その場でなら何でもできるけど、その場から離れることは出来ない。
もう一つ違うのは(こっちの方が問題)
自分の本性を演技力やなんかで隠せる魔法使いと違って、リバーシはむき出しの魂の状態だから、自分を偽ることが出来ない。
こころでは「好き」って思っててもそっけない態度、とか出来ない。
こころで好きって思ったら、態度にすぐ出ちゃう。
あと‥まあ、リバーシの方が魔法使いより「チョロい」奴が多い‥かな。
(魔力を)持てる者の余裕って奴かもしれない。
例え魔力だとしても、何かを持ってる者ってのはそれだけで心に余裕が持てますよね? (って思う。多分)
そんな「思い上がってて」「チョロい」リバーシがほろほろと「リバーシ出現目撃情報多数」な場所にまんまと現れる。そこで、待ち構えてた魔法使いが好意的な振りをして‥愛を囁いたとしたら‥大概ころっと騙される。リバーシは孤独で愛に飢えてる者が多いから。子供なんてなおさらだ。
愛を囁かなくたって「僕は君の運命の人なんだ。僕はここで君をずっと待ってたんだ」って言われただけで‥世間知らずな子供のリバーシだったら、けっこうころっと行くんだろう。
因みに、これはただのナンパなんかじゃない。
パートナーを持っていない魔法使いのパートナー探しだ。(ちなみに違法。今は随分取り締まりが厳しくなってるけど、一昔前はもっと緩かったらしい)
僕が初めて飛ばされた場所も‥あちらこちらでそんな光景が繰り広げられてて‥子供心に「引くわ~」って思ったのを覚えてる。僕はやっぱり王族に近いってのもあって、普通の子どもより頭脳的にも情緒的にも「おませ」だったからね。あと‥普通の子どもより圧倒的に冷めてた。
ハイハイ。パートナー契約目当てデショ?
って感じで、さらっとあしらってたし、‥そもそも、隠れてたかな。
だけど、「今日はどこにとばされるのかな」って楽しみでもあったのは確か。身体に戻ってきたときに「今日飛ばされたところはどこだろ」って調べるのも楽しみだったし。
あと‥色々試してみて分かったことなんだけど、「裏の時間」でぼーと過ごした時は身体に戻ってきたとき「疲れが取れたわ~」って感じになってるんだけど、魔法使いをまいたりとかして動き回った時は、身体に戻ってきた時、全然疲れが取れてなくて、「余計疲れたわ」って感じる。
これは、でも皆(他のリバーシ)は分かってなかったみたいで、これを発表した時「‥そういえばそうかも」「そういうことだったのか」って随分騒然となった。
てか、その程度なの。
リバーシにとって24時間好き勝手に出来ないことは「当たり前」で別にそれ以上の感情はないの。
僕もそうだった。
マリアンに恋をする前は。
一緒に眠りたい。
一晩中、マリアンの暖かさを感じていたい。
そう思うようになった。
でもね。
「ベッドは別」
って言ったのは、僕。
僕だって一緒に眠りたい。だけど‥ダメだ。
裏の時間になって、魂が抜けた「抜け殻の身体」は‥
死人のように冷たいから。
心臓が動いてるんだから、冷たいってのはおかしいって思うけど‥。‥心臓が「一応」動いてるだけでほぼ死んでるって状態なのか?? そこら辺は‥分からない。(だけど、いつかは解明してやる)
(まあ、とにかく)冷たくなるの。一緒に寝てたら、さっきまで暖かかった身体が次第に冷たくなっていく‥その感覚は体感したことはないが、きっと怖いことだろう。(ちなみに、魂の状態で除霊‥じゃないけど「殺された」ら、身体に帰れなくなり、残された身体も‥何日もその状態(魂がずっと入ってない状態)が続けば死んじゃうんだ。だから、ヒジリはホントに特殊で凄い状態だったんだ)
冷たい身体の僕と一緒に寝てたらきっと、マリアンは‥怖いって思うだろう。
だから、僕は一人で眠って、目覚めても一人。
そんなの、今までは当たり前のことだったのに‥。
サイドテーブルを隔てて眠るマリアンの寝顔を見る度に感じる寂しさ。
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僕は‥マリアンのことが‥自分では信じられない程好きになっている。
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