リバーシ!

文月

文字の大きさ
244 / 248
二十一章 平和的交渉

2.金と銀。

しおりを挟む
 ネルは、俺より年上らしい。もっとも、それはネルは言っていたことで、真実は分からない。地球とこの国の時間の流れは一緒らしいけど‥地球でも「数え年」とかあるし‥そういうの分からないじゃない?
 もしかしたら年の数え方違うんじゃない? って思った。それ位、彼は年上に見えなかったんだ。
 銀色の髪の毛、薄いブルーの瞳‥はこっちでは、珍しいらしい。入口まで一緒に来てくれたナラフィス先生が「珍しい髪色だな。‥目の色も」って呟いてた。後から聞いたんだけど、こっちでは、俺みたいな緑の目の方が一般的らしい。そういう点は地球と違うね。地球では緑の目が珍しいらしいから。(ってのも、インターネットを調べて知った。アジア人は黒か茶の目が殆どだからね)
 由緒正しい王族は金髪、紫の目が当たり前で、貴族でも「王家に近しい家」は金色が混じった髪色をしている。ラルシュ様たちの従兄弟であるナラフィス先生はわざわざ「王家から遠い色」に自分で変えているんだ。リバーシだからそういうことが出来るんであって、ナラフィス先生以外の家族は皆金に近い髪色をしているらしい。
 一般人に一番多いのはブラウン。俺みたいに明るいブラウン(ハニーブラウン)も珍しくない。‥でも、一番多いのはダークブラウンかなあ。マリアンみたいなピンクがかったブラウンは珍し部類。彼女の一族はそういう髪色の人が多いらしい。なんか可愛いね。でも、オッサンもそういう髪色してると思ったら‥ちょっと面白い。
 ‥なんかどうでもいいこと考えちゃった。
 だって、ホント‥暇なんだもん。
 さっきからカタルはじーってミチルのこと見つめてるし、ミチルは顔面蒼白で俺の上着の裾をぎゅって掴んで「超厳戒態勢」状態でさ、動きがねえの。しかも、両者無言で。
 話し合い担当の二人がそんな様子じゃ、俺とネルに出来ることなんてない。今回はさ、俺なんてオマケだよ。実質ね。立場的にはミチルがオマケって扱いになるんだろうけど‥実際のとこ考えてもみろ、俺がしゃしゃり出る場面なんか無いよね? この国の事情もミチルの方がずっと知ってるし‥ミチルの方がトークスキルありそう。
 それにさ、俺は‥はっきり言ってカタルが苦手だ。どういう感じってはっきり言葉にしては言えないけどさ‥なんてんだろ、「凄い隙が無さそう」なのもそうだし、「腹の中何考えてんか分かんねえな」な感じが怖いじゃない。俺の周りにはいない感じだよね。
 効率厨なのはサラージがそうだけど‥サラージはあんな感じで、なんかちょっと「オモシロ系枠」って感じだしさ? あんな‥つかみどころないって感じじゃないんだよ。カタルは、でも、俺やラルシュに対してはそんな、「隙なんて見せません」って感じなのに、ミチルに対しては‥アレじゃん。デレデレ~なの。
 いや。love全開! とかじゃないよ? ヤンデレ~で、「もう帰さないよ♡」とかだったら、流石に俺も止める。でも、そうじゃないんだ。どっちかというと‥「わんちゃん可愛いね~♡ 」って愛犬を愛でまくる老人の目。
 普段は雷親父って呼ばれてる部長が、孫娘にデレデレ‥もこんな感じかも。(ww)
 おもしろいから、ここはこんな感じで放置。‥ミチルには悪いけど。アレだよ。関係を崩すのはヨクナイ。
 初めっから険悪ムードで進めるのとか‥キツイじゃんね? 
 でもさ、そろそろ流石に「それはそうと‥」って気持ちを切り替えて欲しい。今日ずっとこのままとかだったらどうしよう‥。ナラフィス先生が「3時間たったら、迎えに行く」って言ってたけど‥。まさかそれまでこの状態とかだったら‥キツイわ~。
 チラッとネルを見たら‥にこっと微笑まれた。
 かわい~。こんな後輩居たら絶対贔屓しちゃいそう。国見は「可愛くない」後輩だからな~。
 しかし‥ホント可愛い。
 カタルもだけど‥銀の髪綺麗。
 珍しい‥かあ。
 王家が金の髪みたいに、銀の髪の一族とかもある‥とか? ナラフィス先生に聞いてみよっと。
 よく見ると‥
 ネルの顔って‥ラルシュ様とちょっと似てる。兄弟とかって程じゃないよ? でも、系統的に‥親戚っぽい‥? (逆に)何で今まで気付かなかったんだろ‥。俺は、普段人の顔あんまり見ないから気付くのが遅れた。あと‥ラルシュたちの顔そういえばそんなにしげしげ見たことない。だけど、ミチルとかなら付き合いも長いから気付きそうなもんだ。ミチルはあの、誘拐未遂事件の時ネルを見てたはずだ。ネルもあの時あそこにいた‥はずだよね。いたよね。
 いたけど、まあ‥そういえば俺もあの時はそれどころじゃなかった。
 でも、まあ‥記憶の片隅位には残らないか? 残らないかも。‥うん、ミチルのことはいいや。
 色‥
 ああ‥そうだ‥
 色だ。
 ぱっと見た時、まず色に目が行く。
 金と銀で「全く違うもの」って認識しちゃってもおかしくない。例えば‥凄い真面目で学ラン着てる少年と、髪の毛をピンクに染めて革ジャン着てる双子を別々に見て「格好はアレだけど、顔は似てる! 」って瞬時に思う人‥どれだけいる? そういないと思う(※ ヒジリ個人の意見です)
 更に、ここでは銀は珍しい‥というか、ホントにいないレベルらしい。そして、青い瞳。これも、ここでは珍しいらしい。水の魔法属性の魔法使いは青っぽい目なことは多いらしいけど、それも「青緑」って感じらしい。青っぽい緑。ここまで(灰色がかったいるとはいえ)純粋に青いのはたぶん、相当珍しい。
 つまり‥色のインパクトが強すぎて、顔のパーツは二の次になってたってこと! 
 そんな感じで「ネルってこの国の王子殿下に似てね? 」って話にならんかったと推測される。あと、圧倒的に顔を知ってる人間が少ないよね。
 色と‥顔。
 これ‥なんか引っかかる‥
 ああ‥
 ずっと「頭の片隅で気になってたアレ」‥
 デュカとレゼリアだ。
 双子のデュカとレゼリアが一目見て「あれ!? 」ってならなかった理由‥
 色‥じゃないか? 
 二卵性でしかも男女、性別が違う。その違いに加えて更に‥色が違ったから‥じゃないか? 
 きっと男の方のデュカが金髪でレゼリアが銀だった‥とかじゃないか? 
 そりゃ勿論、デュカが親父似でレゼリアが母親似で、顔がそんなに似てなかった、ってのはあり得るよ? でもね、そういうのって「家族はそういうけど、他人から見たらホンマ見分けつかないよね」ってのが多いじゃない? 
 なのに、父親以外気付かなかった。
 ‥そういうことじゃないかなって‥。
 容姿については、歴史書に記されることはないらしい(※ 王族の容姿について触れるのは不敬に当たるらしい)から、確かめるすべはないんだけど‥多分間違ってない気がする。
 じゃあ‥ネルは‥
 王族の血を引いてるってこと? 


「お疲れ様! 」
 疲れた顔の俺を見て、ナラフィス先生は全てさとってますって顔で苦笑した。
 結局あの後も話し合いになんてならなくて、㋕「じゃあまた♡ 」㋯「(ぐったり‥)はい」って感じで別れた。最後までカタルはニコニコでミチルは‥ガクブルって顔してた。次に会っても話し合いになるかどうか‥。じゃあミチル抜きで‥ってなったら、来てくれないだろうしな~。カタル。
 結局はね、二人が落ち着かんと話にならんだろうって話。カタルが落ち着く‥落ち着くかな。う~ん。‥見慣れる? 見飽きる? 
「そういえば‥なんだけどね? 」
 俺がメイドさんに淹れてもらったお茶を飲みながら「銀の髪の仮説」を語ると、
「親戚‥。近い親戚ではないだろうけど‥(※ ナラフィスは王族の近い親戚の所在を全て把握している)まあ、そういうこともあり得るだろうねえ」
 ってナラフィス先生が言った。
「あり得ますか? 」
 俺が聞くと、ナラフィス先生が頷いて、例の防音の魔法結界を張り巡らせる。
 ああ‥そうか。王家に関係あるかもしれない話だ。
「だって、王の兄妹のうち、長男以外は全員城下で暮らすわけだから」
 ああ、そう言ってたね。以前。
 (つまり)城下には、元々王族だった人の末裔がいっぱいいるってことだ。
 そういう人たちは普通は貴族と結婚して城で働くわけだけど、中にはナラフィス先生のお父さんみたいに平民と結婚して平民として城下で暮らす人もいる。そんな「王族の血が混じってる」平民ってのは、いないわけではない。‥カタルやネルたちの親もそんな人たちの末裔だったってこともあり得るわけで‥。(※ ヒジリたちは知らないが、カタルは父親が貴族)
「でも、デュカとレゼリアの話は興味深いな。成程、何故かそんなこと思いもしなかった。
 色の違いかあ‥。なるほどねえ‥」
 う~ん。と腕組して低く唸ったナラフィス先生は、もう「自分の世界」に入りかけてる。このままでは「何を話し掛けても無反応」状態まっしぐらだ。そうなる前に‥
「まずネルの家系を調べてみたら? あの髪色で分かるでしょ? 遠い親戚迄調査の範囲を広げてさ。
 そしたら、どこの誰かって分かるわけじゃない。
 いや‥だからって何が分かるかは‥分からないけど、何か分かるかなって」
 「何かが」ってなんだ。
 言いながら「我ながら変なこと言ったな」って思った。
 分かったからなんだってんだ。「そうか! ネルは「こういう思考・能力」を代々持ってる家系に生まれてるのか! じゃあ、こういう力を持ってる可能性があるね!? ってことが分かる? 
 ‥う~ん。役に立つか立たないかはわからないけど、調べてみてもいいかも? それこそ何かの手がかりにならない? 
 俺があれこれ色々考えていると、
「髪色だけでどうやって調べるっていうのさ‥」
 ってナラフィス先生は呆れ顔だ。
「え? あの髪って珍しいんでしょ? あの髪が産まれやすい家系とかって限られてるんじゃないの? 」
 俺が首を傾げると、ナラフィス先生は首を振った。
「いいや? そんなのはないぞ」
 ときっぱり。
「あれは‥そうだな、地球で言うところのRH-みたいな感じ。どの家に出る‥とかじゃない。
 確かに、全く王家の血が混じってない家では絶対出ない。だから、全くの平民ってことはないんだろう。
 でも、少しでも交ってる家なら‥出る確率がある。
 そんな感じ。
 王家の血はホント特殊なんだよ」
 ええ‥マリアンちゃんの家系みたいに「そういう髪色が出る家系」じゃないのか‥。
 しかし‥RH-とか‥なんでそんな(地球の知識)ことまで知ってるんだ、ナラフィス先生。ホント知的好奇心旺盛だよな。
「‥なんか手掛かりになるかと思ったのに、残念」
 俺が「あ~あ。つまんないな」って顔で言ったら、ナラフィス先生が首を振った。
「あの髪色が、全く何の関係もないってこともないかもしれない。‥確かに調べる価値はあるだろう」
 そう言って‥ナラフィス先生はとうとう「自分の世界」に完全に入ってしまった。
 俺はため息をついてもうぬるくなってしまったお茶を飲む。

 金(王族)と銀(? )の運命の駒‥

 「世界」は一体、彼らに何を求めているんだろうか‥。
 そして‥俺は? 俺の役割は一体なんなんだろうか。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

主人公の義兄がヤンデレになるとか聞いてないんですけど!?

玉響なつめ
恋愛
暗殺者として生きるセレンはふとしたタイミングで前世を思い出す。 ここは自身が読んでいた小説と酷似した世界――そして自分はその小説の中で死亡する、ちょい役であることを思い出す。 これはいかんと一念発起、いっそのこと主人公側について保護してもらおう!と思い立つ。 そして物語がいい感じで進んだところで退職金をもらって夢の田舎暮らしを実現させるのだ! そう意気込んでみたはいいものの、何故だかヒロインの義兄が上司になって以降、やたらとセレンを気にして――? おかしいな、貴方はヒロインに一途なキャラでしょ!? ※小説家になろう・カクヨムにも掲載

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている

井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。 それはもう深く愛していた。 変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。 これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。 全3章、1日1章更新、完結済 ※特に物語と言う物語はありません ※オチもありません ※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。 ※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

処理中です...