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四章.入れ替わり
1.千佳
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昔から千佳は姉の紅葉にべったりだ。シスコンなのは誰の目からも明らかなのだけど、千佳の紅葉への接し方が、どうも『頼りない姉の面倒を私が見ています』といった感じに見える。
紅葉は決して頼りない姉ではない。
成績は常に上位。スポーツは日々のジョギングに、水泳や剣術。沢山の習い事のせいで困ることは無い。
‥足が速いとか個人競技に限られるけれど。
バレーやバスケといった団体競技は実はそう得意じゃないんだ。
昔から紅葉はその目立つ容姿とは裏腹に、凄く地味な子供だった。
天才タイプでもない。
千佳は、夜遅くまで勉強をする紅葉の背中を見て育った。
「無理はダメだよ」
って言っても聞かない。あれで紅葉は凄く頑固なところがあるんだ。千佳にはそれが、もどかしい。
優しい紅葉が、『自分自身の為』に頑張っている気がしない。
姉だから、長女だから。
『尊敬できる姉』『いい娘』
ストイックに『何者かに』なろうとしている。
それが、もどかしい。
どんな紅葉でも、紅葉だよ!
千佳の必死の訴えを紅葉はいつも心細いような微笑みで返す。
以前はそうだった。ちょっと昔の話だ。
「この頃の紅葉はなんだか‥前にも増して何かに追われているみたい‥」
母親の蕗子が少し苦しそうに、千佳に愚痴るでもなく言った。しかし直ぐに普段の穏やかな顔に戻して「いやね、私ったら」って胡麻化した。
蕗子は、時々千佳に愚痴を言う。
蕗子が千佳に愚痴を言うっていうか、蕗子の呟きを千佳が拾ってやってるんだ。
口が固い千佳は、学校でもよく相談事を受ける。
話しやすいのと‥なんでも聞いてくれるっていう変な安心感みたいなものが千佳にはある。
話す『相談者』の話を、千佳は否定も肯定もしない。
だけど、こと紅葉のことについては別だった。
「くれちゃんは変わってないよ。だって、どれもこれもくれちゃんだよ。私の大好きなお姉ちゃんだよ」
蕗子を元気づけるみたいに、自分に言い聞かせるみたいに、力強く千佳は言った。
この言葉は真実だ。
「千佳‥」
千佳を見る蕗子の‥どこかほっとしたような表情。
きっと蕗子は自分の娘が変わってしまったことに対して‥何も出来ない自分が不安なのだ。
変わったのはわかるが‥どう変わったか
何故変わったのか‥それが分からない自分が不安なんだ。
だけど、千佳はそんな不安を全部「なかったものだ」って言ってくれる。
どんな紅葉でも大事な紅葉だって言って‥自分の不甲斐なさごと受け止めてくれる。
‥そんな気持ちになった。
「無理しすぎるのも、くれちゃんだから、私たちが何を言っても聞くはずがないんだ。それも、くれちゃん。だから、せめて私はくれちゃんの『逃げ道』をつくってあげる。それが、私がくれちゃんに出来る唯一のこと」
穏やかな視線で蕗子を見る。
「逃げ道? 」
蕗子が首を少し傾げて千佳を見る。
千佳が頷く。
「くれちゃんの目標とするゴールが私にわかったならば‥私にできること全部やって、私はくれちゃんを応援する。だって、くれちゃんが望むことだから。
それが途轍もなく棘の道の先にあるだとしても、だ。
だけど、それは心の中だけのことで‥私は「表向きは」「絶対」くれちゃんを応援する立場には立たない」
「表向きは? 」
蕗子は「理解できない」って風に首を傾げ、千佳は頷く。
「応援したい気持ちはあるけど、「本心では」無理や危ないことして欲しくないから「表向きは」応援できないってこと? 」
蕗子が聞くと、千佳は首を振った。
「本心ではなんでも応援する。だって、私はくれちゃんの意志を全部尊重するから。だけど、私だけは、なんでもかんでも反対しなくちゃいけないんだ。くれちゃんが‥自分のことキライになって欲しくないから。
くれちゃんが自分のことを嫌いになる位だったら、私のせいって思ってくれた方がずっといい」
ぽつりぽつりと、千佳は言葉をつなぐ。
千佳はいつの間に、こんなにしっかりとしたことを話すようになったんだろうか。
千佳は優しい、そして‥強い。
彼女は悩んで悩んでこの結論にたどり着いたんだ‥。
「私が変わらずずっとずっと反対してたら、もし途中でくれちゃんが力及ばず諦めたとき‥たとえ、逃げたとしても、千佳があんなに嫌がることをこれからも、し続ける意味があるだろうか。ってくれちゃんがほんのちょっとでも‥思ってくれたら、いいなって」
優しく微笑んで千佳が言い、
「くれちゃんは、私に甘い以上に実は頑固で、自分がやるって決めたらたとえ誰が反対してもやる。だけど、ワンチャン迷うかもしれないのが‥妹である私のお願い。私の言葉なら‥気持ちを変える切っ掛けになることは絶対なくても‥頭に残る。
‥自分の気持ちが折れてやめたくなった時‥自分が諦めるんじゃなくて、私の言葉を思い出して「千佳があんなに嫌がってたんだし」って思てくれたら‥それ程嬉しいことは無いなって」
蕗子は黙って千佳を見た。自分がただオロオロしている間に、千佳はこんなことを考えている。
ひどく、自己嫌悪に陥った。
千佳は、ははっと今度は明るく笑うと、
「それに単純に、妹に甘いくれちゃんならもしかしたら、千佳がそんなに嫌がるならって、結構すぐにやめてくれるかもしれないし。くれちゃんが無理をするのは例えくれちゃんが望むことのための努力だとしても私は嫌なのだよ」
って言った。
「くれちゃんには、もっと楽しいことも知ってほしいよ。おしゃれだとか、恋だとか。友達との買い食いだとか」
ほんとにそうだって思った。
そういえば、蕗子も学生時代にそういったことをしたことはない。
そう言うことがないのが当たり前に育ってきた。だけど、紅葉や千佳にはそんな暮らし絶対して欲しくない。
自由に笑って‥青春を謳歌してほしい。
千佳に言われるまで‥気付かなかった。
紅葉には千佳がいて良かった。
紅葉に、だけじゃなく、私にとっても勿論徹さん(← 紅葉たちの父親)にとっても‥。
蕗子は泣きだしそうになるのを、下手な笑顔で必死に堪えた。
紅葉は決して頼りない姉ではない。
成績は常に上位。スポーツは日々のジョギングに、水泳や剣術。沢山の習い事のせいで困ることは無い。
‥足が速いとか個人競技に限られるけれど。
バレーやバスケといった団体競技は実はそう得意じゃないんだ。
昔から紅葉はその目立つ容姿とは裏腹に、凄く地味な子供だった。
天才タイプでもない。
千佳は、夜遅くまで勉強をする紅葉の背中を見て育った。
「無理はダメだよ」
って言っても聞かない。あれで紅葉は凄く頑固なところがあるんだ。千佳にはそれが、もどかしい。
優しい紅葉が、『自分自身の為』に頑張っている気がしない。
姉だから、長女だから。
『尊敬できる姉』『いい娘』
ストイックに『何者かに』なろうとしている。
それが、もどかしい。
どんな紅葉でも、紅葉だよ!
千佳の必死の訴えを紅葉はいつも心細いような微笑みで返す。
以前はそうだった。ちょっと昔の話だ。
「この頃の紅葉はなんだか‥前にも増して何かに追われているみたい‥」
母親の蕗子が少し苦しそうに、千佳に愚痴るでもなく言った。しかし直ぐに普段の穏やかな顔に戻して「いやね、私ったら」って胡麻化した。
蕗子は、時々千佳に愚痴を言う。
蕗子が千佳に愚痴を言うっていうか、蕗子の呟きを千佳が拾ってやってるんだ。
口が固い千佳は、学校でもよく相談事を受ける。
話しやすいのと‥なんでも聞いてくれるっていう変な安心感みたいなものが千佳にはある。
話す『相談者』の話を、千佳は否定も肯定もしない。
だけど、こと紅葉のことについては別だった。
「くれちゃんは変わってないよ。だって、どれもこれもくれちゃんだよ。私の大好きなお姉ちゃんだよ」
蕗子を元気づけるみたいに、自分に言い聞かせるみたいに、力強く千佳は言った。
この言葉は真実だ。
「千佳‥」
千佳を見る蕗子の‥どこかほっとしたような表情。
きっと蕗子は自分の娘が変わってしまったことに対して‥何も出来ない自分が不安なのだ。
変わったのはわかるが‥どう変わったか
何故変わったのか‥それが分からない自分が不安なんだ。
だけど、千佳はそんな不安を全部「なかったものだ」って言ってくれる。
どんな紅葉でも大事な紅葉だって言って‥自分の不甲斐なさごと受け止めてくれる。
‥そんな気持ちになった。
「無理しすぎるのも、くれちゃんだから、私たちが何を言っても聞くはずがないんだ。それも、くれちゃん。だから、せめて私はくれちゃんの『逃げ道』をつくってあげる。それが、私がくれちゃんに出来る唯一のこと」
穏やかな視線で蕗子を見る。
「逃げ道? 」
蕗子が首を少し傾げて千佳を見る。
千佳が頷く。
「くれちゃんの目標とするゴールが私にわかったならば‥私にできること全部やって、私はくれちゃんを応援する。だって、くれちゃんが望むことだから。
それが途轍もなく棘の道の先にあるだとしても、だ。
だけど、それは心の中だけのことで‥私は「表向きは」「絶対」くれちゃんを応援する立場には立たない」
「表向きは? 」
蕗子は「理解できない」って風に首を傾げ、千佳は頷く。
「応援したい気持ちはあるけど、「本心では」無理や危ないことして欲しくないから「表向きは」応援できないってこと? 」
蕗子が聞くと、千佳は首を振った。
「本心ではなんでも応援する。だって、私はくれちゃんの意志を全部尊重するから。だけど、私だけは、なんでもかんでも反対しなくちゃいけないんだ。くれちゃんが‥自分のことキライになって欲しくないから。
くれちゃんが自分のことを嫌いになる位だったら、私のせいって思ってくれた方がずっといい」
ぽつりぽつりと、千佳は言葉をつなぐ。
千佳はいつの間に、こんなにしっかりとしたことを話すようになったんだろうか。
千佳は優しい、そして‥強い。
彼女は悩んで悩んでこの結論にたどり着いたんだ‥。
「私が変わらずずっとずっと反対してたら、もし途中でくれちゃんが力及ばず諦めたとき‥たとえ、逃げたとしても、千佳があんなに嫌がることをこれからも、し続ける意味があるだろうか。ってくれちゃんがほんのちょっとでも‥思ってくれたら、いいなって」
優しく微笑んで千佳が言い、
「くれちゃんは、私に甘い以上に実は頑固で、自分がやるって決めたらたとえ誰が反対してもやる。だけど、ワンチャン迷うかもしれないのが‥妹である私のお願い。私の言葉なら‥気持ちを変える切っ掛けになることは絶対なくても‥頭に残る。
‥自分の気持ちが折れてやめたくなった時‥自分が諦めるんじゃなくて、私の言葉を思い出して「千佳があんなに嫌がってたんだし」って思てくれたら‥それ程嬉しいことは無いなって」
蕗子は黙って千佳を見た。自分がただオロオロしている間に、千佳はこんなことを考えている。
ひどく、自己嫌悪に陥った。
千佳は、ははっと今度は明るく笑うと、
「それに単純に、妹に甘いくれちゃんならもしかしたら、千佳がそんなに嫌がるならって、結構すぐにやめてくれるかもしれないし。くれちゃんが無理をするのは例えくれちゃんが望むことのための努力だとしても私は嫌なのだよ」
って言った。
「くれちゃんには、もっと楽しいことも知ってほしいよ。おしゃれだとか、恋だとか。友達との買い食いだとか」
ほんとにそうだって思った。
そういえば、蕗子も学生時代にそういったことをしたことはない。
そう言うことがないのが当たり前に育ってきた。だけど、紅葉や千佳にはそんな暮らし絶対して欲しくない。
自由に笑って‥青春を謳歌してほしい。
千佳に言われるまで‥気付かなかった。
紅葉には千佳がいて良かった。
紅葉に、だけじゃなく、私にとっても勿論徹さん(← 紅葉たちの父親)にとっても‥。
蕗子は泣きだしそうになるのを、下手な笑顔で必死に堪えた。
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