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六章.迷い、戸惑い
7.執着
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桜様の言うことは絶対です。
それは、でも、部下だから絶対服従なんです。とかいう意味じゃない。
桜様は、アレだから。(暴君だから)あと、アレだから。(世間知らずで我が儘なとこあるから)
って意味。
‥諦めました。
四朗がため息をつくと、桐江が苦笑いした。
そして桜を振り返ると、
「恋、ではありません」
と、冷静に言った。
桜と博史が手を止める。
「臣霊と守護臣霊との違いについて、もう一度思い出してくださいませ、桜様」
桜を軽くたしなめるように、桜を見つめながら桐江が言う。少し冷静さを取り戻した桜は、ばつが悪そうに眼を逸らしてその頬を少し赤くした。
まあ、そうだ。大いに反省してほしい。
四朗は静かにため息をついた。
「あの‥」
おずおずと、博史が桐江を見る。
「なんですか? 博史さん、でしたか? 」
桐江が博史の前に立って、軽く会釈する。
「はい」
博史も会釈を返すと
「相生 四朗の弟の相生 博史です」
と、丁寧に自己紹介した。
ちょっと緊張しているようであったが、その口調はしっかりとしていて好感がもてるもので、四朗は弟の成長に自然と笑顔になった。
「何ですか? なにかご質問がおありですか? 」
と、桐江が言うのを、四朗は呆れ顔で見た。
‥ありすぎだろ。むしろ、質問しかないだろう。
さっきから、ここで話されていたことは、まあ、どう考えてもおかしい事ばかりだ。
「さっき聞いた話ですと、兄は普通の人間ではなく、しん‥何とかで、だから術が限界になって死んでしまうかもしれないってことだったんですけれど‥」
改めて聞いても、あんまりな説明だ。
「そもそも、兄は本当にそのしん‥なんとかなんですか? 」
博史の疑問は、もっともだ。
今まで自分が一緒に生活してきた兄が、急にそんなオカルトな存在だといわれても信じられるわけがない。
しかも、それを説明しているのが、つい最近知り合ったばかりの紅葉ちゃんだ。
「それは、間違いないです。因みに「臣霊」です。臣下の臣と霊魂の霊で、臣霊です。まあいうならば陰陽師が使役する式神のようなものですね」
「‥間違いないのですか? 」
桐江は断言するが、博史は納得がいかないようだった。
‥そりゃね。
「お子様がどのようにこの世に生を受けるかご存じで? 」
と、桐江が例の説明を始めた。
あ、本日二回目だ。
「ええ?! 」
と、博史の反応は、四朗と全く同じだった。
「いえ、肉体的なものではなく、お子様の魂のお話です」
そんなことを気にすることもなく、桐江は話を続ける。
「魂? 」
「人間として生まれてきたとき、肉体と精神がありますよね。その精神‥つまり魂は、もともと母体の中に含まれてきたものじゃない‥。どこかから、呼ばれてきたものなのです」
と、この説明もきっとさっきと全く一緒なんだろう。なにかテンプレでもあるのだろうか?
「呼ぶって、誰が? 」
ああ、博史のそれに対する質問、なんか本当にさっきの話聞いていたんじゃないだろうかってくらい同じ。
四朗はもう、何も言わずにそのやり取りを見つめていた。
「多くの場合は、ご両親ですよ」
「ご両親の魂が、子供となるべき魂を呼ぶんです。何の霊能力もいりません。ただ、それは愛情ですとか、運命ですとかそういった、ちょっとした「縁(えにし)」です」
「はあ」
博史はもう、ついていけなくなっているんだか、話が更にオカルトになって来ているのでドン引きしているのだか、分からない様な反応になっている。
「そして、世の中には稀にその縁を引き入れられない方というのがいます」
「‥」
そして、相槌の方も。もはや頷くだけになってきた。
「体のほうの問題でその縁を受け入れられる環境にない方、それから、霊能力が著しく高い方です」
「低い、ではなくて? 」
と、そこで博史の目が桐江を見た。今日初めての話に、四朗も桐江を見る。
「ええ」
桐江が事も無げに頷く。
「霊能力なんて‥ない人が殆どでしょう? それは問題はないのです。寧ろ、ある方が問題があるのです。
言うならば‥自然の摂理に反するから。
だけど、少し高いだけなら、そう問題にはならない。高すぎるっていうのが問題なんです」
つまり、霊能力があるだけでも自然の摂理に反しててちょっと問題があるのに、高すぎるなんか問題あり過ぎるやろが~ってことか?
超・自然の摂理に反する。
だから、食やら寝るといった日常生活には問題なくても、妊娠出産という「一歩先の日常」には支障をきたす‥ってことか?
「桜様は霊能力が高すぎて、他の魂を寄せることが出来なかったんです」
「そんなこと‥なんでわかるんですか」
と、聞いたのは四朗だった。桐江が頷く。
「わかりますよ。むしろ、そうではないと、臣霊は作れませんから」
「臣霊は子供の魂を呼ぶのとは違い‥子供ではなく、別の‥魂を作るのです。
術者はその辺りの気やら、自分の中の力を集めて子供の魂にも似たコアを作ります。そして、それに名前を付けて、形を固定します」
式神とは違って、依り代を要しないらしい。そして、「作る」という点でもそれは式神とは違っていた。
「式神とは違うんですね」
確認してみたところで、四朗には、ちょっとかじった程度の知識しかない。
「そうですね。そのようなもの、と説明しますが。実のところ全く違うものです。が、そういったほうがわかりやすいので。
特に説明をすることもないですしね。
ああ、違うといえば‥
式神は男性の陰陽師にも作れますが、臣霊は女性にしか作れません。だから、余計に子供の様な扱いになるんですかね」
「ああ‥」
もう博史は相槌を打つのもやめてしまっている。しかしながら、聞いてはいるようで、時折首をかしげたりしている。
「桜様は、臣霊を四人お持ちです。それは、歴代でも例を見ないほど多いですね」
と、ちょっと誇らしそうに桐江が桜情報を挟んだ。
「四人」
「紅葉ちゃんについてる月桂と鮮花‥と、俺についてる華鳥とあと一人が、‥俺ですか?」
「ちょっと、兄ちゃん。何認めちゃってるの」
博史がすっと目を細めて、諫める様に四朗を見る。
「ええ」
しかし、それに対して桐江は完全にスルーして話を進めていく。
「その流れでいうと、俺にも臣霊としての名前があるのですよね」
それは四朗も同じだった。それが、博史には面白くない。
「それは、‥ご容赦ください。名は呪ですよ」
「聞いたら、‥臣霊にもどってしまうと」
「可能性はありますね」
「そうですか‥」
話が、荒唐無稽な設定を前提に展開されているのが、まず、面白くない。自分の聡明で、常であれば現実主義者の兄もその話を否定しないのもまた、面白くない。
そして、それが多分本当だろうと思える今の状況が何よりも面白くない。
博史は、また叫びだしてしまいそうなのを、かろうじて耐えた。
イライラする。
この状態に‥
「今までに例がないから、何とも言えないけれどね」
ちょくちょく、桜が話を付け加えていく。もうそのあたりは、作った本人にしかわからないことなんだろう。
「もしかして、俺が消えそうなのはその辺りのことが関係しているのですか? 名前をすっかり忘れてしまったことが」
「それは、違います。名前は確かに臣霊と人間としての四朗様との境界線の一つではありますが、臣霊と無との境界線ではありません」
「これは、もうオール オア ナッシング の世界ですから」
と、少し声を低くして言った。
ごくり、と四朗が唾を飲み込む。
さっきから、喉がかわいてしかたがない。
「なくちゃ、死ぬ」
からからの喉で、かろうじて言葉を絞り出す。
「そうです」
「それがさっきから母さんが騒いでいる、「恋」っていうものですね。でも、「恋」ではないと」
そして、「では、何だと? 」と答えを促す。
「ええ。執着、ですわ。
たから、恋も間違いではないです。ですが、すべてではありません。四朗様には向いてらっしゃらないようですので、違うと申しましたが」
「執着‥? 」
四朗が反芻すると、桐江が頷いた。
「臣霊と守護臣霊の違い、と申しましたでしょ? 」
「守護臣霊が生きるのは、一重にマスターを守るという義務があるからです。生きたいから生きてるわけではないのです。‥そもそも、守護臣霊にはそこまでの知恵はありません」
‥臣霊とは違う。
臣霊は、
「マスターを守りたい、一緒に居たい、一緒に‥生きたい‥って思う‥? 臣霊は守護臣霊とそういう点で違う。臣霊は‥生かされてるんじゃなくて‥」
生きたいって自分の意思で思って、生きている。
普通はマスターを守りたいから、一緒に生きたいからって理由で‥
だけど、理由はともあれ‥
臣霊は、自分の意思で「生きたい」って思って生きている。
今の俺は、マスターを‥桜を守りたいって気持ちは、正直もうない。その地点で、俺はもう‥「桜の臣霊」ではない。だけど‥俺は、博史や父さん‥母さんたちと‥一緒に生きていきたい。まだ武生に剣術で負けることもあるし、相崎にはテニスで一度も勝ててないし‥。
生に対して‥未練がいっぱいで‥死にたくないって思う。
だから、
「生きたい‥? 」
なぜか、涙が頬を伝っていた。
「俺は、生きたいのかな‥。何にもないけど‥。生きるべきなのかな」
「兄ちゃん、生きてよ。何、達観してるのさ! 」
そういって、四朗の腕を掴んできた博史もまた、泣いていた。
「四朗」
見た目は紅葉の桜もボロボロ涙を流しながら四朗に抱き着いてくる。
三人でわあわあ泣いた、
それを、桐江が今度は穏やかな表情で見つめていた。
それは、でも、部下だから絶対服従なんです。とかいう意味じゃない。
桜様は、アレだから。(暴君だから)あと、アレだから。(世間知らずで我が儘なとこあるから)
って意味。
‥諦めました。
四朗がため息をつくと、桐江が苦笑いした。
そして桜を振り返ると、
「恋、ではありません」
と、冷静に言った。
桜と博史が手を止める。
「臣霊と守護臣霊との違いについて、もう一度思い出してくださいませ、桜様」
桜を軽くたしなめるように、桜を見つめながら桐江が言う。少し冷静さを取り戻した桜は、ばつが悪そうに眼を逸らしてその頬を少し赤くした。
まあ、そうだ。大いに反省してほしい。
四朗は静かにため息をついた。
「あの‥」
おずおずと、博史が桐江を見る。
「なんですか? 博史さん、でしたか? 」
桐江が博史の前に立って、軽く会釈する。
「はい」
博史も会釈を返すと
「相生 四朗の弟の相生 博史です」
と、丁寧に自己紹介した。
ちょっと緊張しているようであったが、その口調はしっかりとしていて好感がもてるもので、四朗は弟の成長に自然と笑顔になった。
「何ですか? なにかご質問がおありですか? 」
と、桐江が言うのを、四朗は呆れ顔で見た。
‥ありすぎだろ。むしろ、質問しかないだろう。
さっきから、ここで話されていたことは、まあ、どう考えてもおかしい事ばかりだ。
「さっき聞いた話ですと、兄は普通の人間ではなく、しん‥何とかで、だから術が限界になって死んでしまうかもしれないってことだったんですけれど‥」
改めて聞いても、あんまりな説明だ。
「そもそも、兄は本当にそのしん‥なんとかなんですか? 」
博史の疑問は、もっともだ。
今まで自分が一緒に生活してきた兄が、急にそんなオカルトな存在だといわれても信じられるわけがない。
しかも、それを説明しているのが、つい最近知り合ったばかりの紅葉ちゃんだ。
「それは、間違いないです。因みに「臣霊」です。臣下の臣と霊魂の霊で、臣霊です。まあいうならば陰陽師が使役する式神のようなものですね」
「‥間違いないのですか? 」
桐江は断言するが、博史は納得がいかないようだった。
‥そりゃね。
「お子様がどのようにこの世に生を受けるかご存じで? 」
と、桐江が例の説明を始めた。
あ、本日二回目だ。
「ええ?! 」
と、博史の反応は、四朗と全く同じだった。
「いえ、肉体的なものではなく、お子様の魂のお話です」
そんなことを気にすることもなく、桐江は話を続ける。
「魂? 」
「人間として生まれてきたとき、肉体と精神がありますよね。その精神‥つまり魂は、もともと母体の中に含まれてきたものじゃない‥。どこかから、呼ばれてきたものなのです」
と、この説明もきっとさっきと全く一緒なんだろう。なにかテンプレでもあるのだろうか?
「呼ぶって、誰が? 」
ああ、博史のそれに対する質問、なんか本当にさっきの話聞いていたんじゃないだろうかってくらい同じ。
四朗はもう、何も言わずにそのやり取りを見つめていた。
「多くの場合は、ご両親ですよ」
「ご両親の魂が、子供となるべき魂を呼ぶんです。何の霊能力もいりません。ただ、それは愛情ですとか、運命ですとかそういった、ちょっとした「縁(えにし)」です」
「はあ」
博史はもう、ついていけなくなっているんだか、話が更にオカルトになって来ているのでドン引きしているのだか、分からない様な反応になっている。
「そして、世の中には稀にその縁を引き入れられない方というのがいます」
「‥」
そして、相槌の方も。もはや頷くだけになってきた。
「体のほうの問題でその縁を受け入れられる環境にない方、それから、霊能力が著しく高い方です」
「低い、ではなくて? 」
と、そこで博史の目が桐江を見た。今日初めての話に、四朗も桐江を見る。
「ええ」
桐江が事も無げに頷く。
「霊能力なんて‥ない人が殆どでしょう? それは問題はないのです。寧ろ、ある方が問題があるのです。
言うならば‥自然の摂理に反するから。
だけど、少し高いだけなら、そう問題にはならない。高すぎるっていうのが問題なんです」
つまり、霊能力があるだけでも自然の摂理に反しててちょっと問題があるのに、高すぎるなんか問題あり過ぎるやろが~ってことか?
超・自然の摂理に反する。
だから、食やら寝るといった日常生活には問題なくても、妊娠出産という「一歩先の日常」には支障をきたす‥ってことか?
「桜様は霊能力が高すぎて、他の魂を寄せることが出来なかったんです」
「そんなこと‥なんでわかるんですか」
と、聞いたのは四朗だった。桐江が頷く。
「わかりますよ。むしろ、そうではないと、臣霊は作れませんから」
「臣霊は子供の魂を呼ぶのとは違い‥子供ではなく、別の‥魂を作るのです。
術者はその辺りの気やら、自分の中の力を集めて子供の魂にも似たコアを作ります。そして、それに名前を付けて、形を固定します」
式神とは違って、依り代を要しないらしい。そして、「作る」という点でもそれは式神とは違っていた。
「式神とは違うんですね」
確認してみたところで、四朗には、ちょっとかじった程度の知識しかない。
「そうですね。そのようなもの、と説明しますが。実のところ全く違うものです。が、そういったほうがわかりやすいので。
特に説明をすることもないですしね。
ああ、違うといえば‥
式神は男性の陰陽師にも作れますが、臣霊は女性にしか作れません。だから、余計に子供の様な扱いになるんですかね」
「ああ‥」
もう博史は相槌を打つのもやめてしまっている。しかしながら、聞いてはいるようで、時折首をかしげたりしている。
「桜様は、臣霊を四人お持ちです。それは、歴代でも例を見ないほど多いですね」
と、ちょっと誇らしそうに桐江が桜情報を挟んだ。
「四人」
「紅葉ちゃんについてる月桂と鮮花‥と、俺についてる華鳥とあと一人が、‥俺ですか?」
「ちょっと、兄ちゃん。何認めちゃってるの」
博史がすっと目を細めて、諫める様に四朗を見る。
「ええ」
しかし、それに対して桐江は完全にスルーして話を進めていく。
「その流れでいうと、俺にも臣霊としての名前があるのですよね」
それは四朗も同じだった。それが、博史には面白くない。
「それは、‥ご容赦ください。名は呪ですよ」
「聞いたら、‥臣霊にもどってしまうと」
「可能性はありますね」
「そうですか‥」
話が、荒唐無稽な設定を前提に展開されているのが、まず、面白くない。自分の聡明で、常であれば現実主義者の兄もその話を否定しないのもまた、面白くない。
そして、それが多分本当だろうと思える今の状況が何よりも面白くない。
博史は、また叫びだしてしまいそうなのを、かろうじて耐えた。
イライラする。
この状態に‥
「今までに例がないから、何とも言えないけれどね」
ちょくちょく、桜が話を付け加えていく。もうそのあたりは、作った本人にしかわからないことなんだろう。
「もしかして、俺が消えそうなのはその辺りのことが関係しているのですか? 名前をすっかり忘れてしまったことが」
「それは、違います。名前は確かに臣霊と人間としての四朗様との境界線の一つではありますが、臣霊と無との境界線ではありません」
「これは、もうオール オア ナッシング の世界ですから」
と、少し声を低くして言った。
ごくり、と四朗が唾を飲み込む。
さっきから、喉がかわいてしかたがない。
「なくちゃ、死ぬ」
からからの喉で、かろうじて言葉を絞り出す。
「そうです」
「それがさっきから母さんが騒いでいる、「恋」っていうものですね。でも、「恋」ではないと」
そして、「では、何だと? 」と答えを促す。
「ええ。執着、ですわ。
たから、恋も間違いではないです。ですが、すべてではありません。四朗様には向いてらっしゃらないようですので、違うと申しましたが」
「執着‥? 」
四朗が反芻すると、桐江が頷いた。
「臣霊と守護臣霊の違い、と申しましたでしょ? 」
「守護臣霊が生きるのは、一重にマスターを守るという義務があるからです。生きたいから生きてるわけではないのです。‥そもそも、守護臣霊にはそこまでの知恵はありません」
‥臣霊とは違う。
臣霊は、
「マスターを守りたい、一緒に居たい、一緒に‥生きたい‥って思う‥? 臣霊は守護臣霊とそういう点で違う。臣霊は‥生かされてるんじゃなくて‥」
生きたいって自分の意思で思って、生きている。
普通はマスターを守りたいから、一緒に生きたいからって理由で‥
だけど、理由はともあれ‥
臣霊は、自分の意思で「生きたい」って思って生きている。
今の俺は、マスターを‥桜を守りたいって気持ちは、正直もうない。その地点で、俺はもう‥「桜の臣霊」ではない。だけど‥俺は、博史や父さん‥母さんたちと‥一緒に生きていきたい。まだ武生に剣術で負けることもあるし、相崎にはテニスで一度も勝ててないし‥。
生に対して‥未練がいっぱいで‥死にたくないって思う。
だから、
「生きたい‥? 」
なぜか、涙が頬を伝っていた。
「俺は、生きたいのかな‥。何にもないけど‥。生きるべきなのかな」
「兄ちゃん、生きてよ。何、達観してるのさ! 」
そういって、四朗の腕を掴んできた博史もまた、泣いていた。
「四朗」
見た目は紅葉の桜もボロボロ涙を流しながら四朗に抱き着いてくる。
三人でわあわあ泣いた、
それを、桐江が今度は穏やかな表情で見つめていた。
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