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三章 尊と優磨と天音と彰彦
1.駆け込み寺的なところ。
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「って、うちに来るのか!! 」
彰彦が絶句する。
数分後、尊は当たり前の様に彰彦宅を訪れていた。
軽く事情を説明し、
「彰彦兄さん、お世話になります! 」
へへ、と照れくさそうに尊が彰彦を見上げる。その顔に「断られるかも」なんて不安は少しもない。
無言で見下ろす彰彦と、見上げる尊。
彰彦と尊の身長差は、当たり前だけど尊と優磨のそれよりずっと大きい。
それは、まるで大人と子供だ。
しかも、尊は土間、彰彦は高めの上がり框の上にいる。
大人と子供どころではない。お白洲で裁きを受ける罪人と奉行程の遠さだ。
「‥知るもんかあ!! 」
彰彦は、‥結構マジで怒っているが、尊にとってはまあ知ったこっちゃない。
これで、結構面倒見がいい彰彦は、尊を追い出したりなんかできないだろうし、尊もそれを知っている。
‥これ以上にない移住先。
尊は、家を出た瞬間思いたち、そのままそう迷うことなくここに来た。(ちょっと立ち尽くしたのは、行き先を考えたからではなく、家出のタイミングのミスを反省したから)
と、
ガラリ
もう一度彰彦宅の玄関の引き戸が開く。
古図か?
彰彦が引き戸に目をやり、尊が会釈で当然現れるであろうこの家のもう一人の住人を待つ。
しかし
引き戸を開け、そのまま後ろ手に引き戸を閉め‥。その前に立ち尽くした人物は
「お」
驚いた顔の天音だった。
‥なぜ驚く。驚いたのは‥寧ろ急に家に押しかけられた俺だと思うんだが‥。
彰彦は、余りの事に、声も出なかった。
彰彦がそんな状態なのに、天音は
「そんなとこに突っ立つな。我が入れないであろう‥」
って、尊に言う。
ってか、その不機嫌顔、可笑しくないか? 別に誰にも「入っていい」と許可した覚えはないんだが?!
「‥って、天音ちゃんまで‥」
玄関先に、天音、尊、彰彦。
そして、またガラリと開く引き戸
「リアルお化け屋敷になりましたね」
ちょっと驚いた顔をした古図から、とっさに出た言葉が、これ。
「古図~!! 」
彰彦が、頭を抱える。
「くく‥」
まあ、あれだけ玄関先で騒いだら気付くであろう。母・房子が出て来ていた。
声を出して笑いはしないが、肩が震えている。
房子は音もなく、彰彦の後ろに立っていた。
女性にしては長身のすらっとした浴衣姿。艶のある黒髪を軽く一つに束ねた楚々とした和風美人。この家の主人(彰彦の父・和彦だ)より留守を負かされているこの家の女主人である。
顔色こそは青白いがその凛とした顔に弱弱しさや、「くたびれた感」は感じさせない。(別に溌溂灯していないのだが)
「まあ、そこもなんだから、入れば? 貴女は芳美の娘さんね」
切れ長の目を、ちょっと細めて微かに微笑む。
‥母さんも幽霊に順応してるな。尊ちゃんで見慣れたのか?
天音は丁寧にお辞儀して
「はい。‥お久しぶりです」
房子を見上げた。
‥まあ、確かにお久しぶりだな。昔(生存時)一二回来たな。
彰彦が心の中で呟いていると、
「大きくなったわね」
と房子がにこりと笑みを深めて、天音を見た。
‥大きくなったって、正しい表現ですかね?
は、彰彦も古図も言わずにおいた。(この家は基本的に随時こんな感じ)
と、まあ二人の幽霊が家に居候することになった。
その日以降、夕食に買う豆腐が一丁増えたことで(一人半丁づつ)
「若旦那(※彰彦)、お嫁さんでも貰われましたか? 」
と豆腐屋の主人に聞かれたと古図が笑っていた。
‥嫁をもらったら、豆腐毎日は勘弁してもらいたいな。
と、彰彦は何故かそんなことを思った。
彰彦が絶句する。
数分後、尊は当たり前の様に彰彦宅を訪れていた。
軽く事情を説明し、
「彰彦兄さん、お世話になります! 」
へへ、と照れくさそうに尊が彰彦を見上げる。その顔に「断られるかも」なんて不安は少しもない。
無言で見下ろす彰彦と、見上げる尊。
彰彦と尊の身長差は、当たり前だけど尊と優磨のそれよりずっと大きい。
それは、まるで大人と子供だ。
しかも、尊は土間、彰彦は高めの上がり框の上にいる。
大人と子供どころではない。お白洲で裁きを受ける罪人と奉行程の遠さだ。
「‥知るもんかあ!! 」
彰彦は、‥結構マジで怒っているが、尊にとってはまあ知ったこっちゃない。
これで、結構面倒見がいい彰彦は、尊を追い出したりなんかできないだろうし、尊もそれを知っている。
‥これ以上にない移住先。
尊は、家を出た瞬間思いたち、そのままそう迷うことなくここに来た。(ちょっと立ち尽くしたのは、行き先を考えたからではなく、家出のタイミングのミスを反省したから)
と、
ガラリ
もう一度彰彦宅の玄関の引き戸が開く。
古図か?
彰彦が引き戸に目をやり、尊が会釈で当然現れるであろうこの家のもう一人の住人を待つ。
しかし
引き戸を開け、そのまま後ろ手に引き戸を閉め‥。その前に立ち尽くした人物は
「お」
驚いた顔の天音だった。
‥なぜ驚く。驚いたのは‥寧ろ急に家に押しかけられた俺だと思うんだが‥。
彰彦は、余りの事に、声も出なかった。
彰彦がそんな状態なのに、天音は
「そんなとこに突っ立つな。我が入れないであろう‥」
って、尊に言う。
ってか、その不機嫌顔、可笑しくないか? 別に誰にも「入っていい」と許可した覚えはないんだが?!
「‥って、天音ちゃんまで‥」
玄関先に、天音、尊、彰彦。
そして、またガラリと開く引き戸
「リアルお化け屋敷になりましたね」
ちょっと驚いた顔をした古図から、とっさに出た言葉が、これ。
「古図~!! 」
彰彦が、頭を抱える。
「くく‥」
まあ、あれだけ玄関先で騒いだら気付くであろう。母・房子が出て来ていた。
声を出して笑いはしないが、肩が震えている。
房子は音もなく、彰彦の後ろに立っていた。
女性にしては長身のすらっとした浴衣姿。艶のある黒髪を軽く一つに束ねた楚々とした和風美人。この家の主人(彰彦の父・和彦だ)より留守を負かされているこの家の女主人である。
顔色こそは青白いがその凛とした顔に弱弱しさや、「くたびれた感」は感じさせない。(別に溌溂灯していないのだが)
「まあ、そこもなんだから、入れば? 貴女は芳美の娘さんね」
切れ長の目を、ちょっと細めて微かに微笑む。
‥母さんも幽霊に順応してるな。尊ちゃんで見慣れたのか?
天音は丁寧にお辞儀して
「はい。‥お久しぶりです」
房子を見上げた。
‥まあ、確かにお久しぶりだな。昔(生存時)一二回来たな。
彰彦が心の中で呟いていると、
「大きくなったわね」
と房子がにこりと笑みを深めて、天音を見た。
‥大きくなったって、正しい表現ですかね?
は、彰彦も古図も言わずにおいた。(この家は基本的に随時こんな感じ)
と、まあ二人の幽霊が家に居候することになった。
その日以降、夕食に買う豆腐が一丁増えたことで(一人半丁づつ)
「若旦那(※彰彦)、お嫁さんでも貰われましたか? 」
と豆腐屋の主人に聞かれたと古図が笑っていた。
‥嫁をもらったら、豆腐毎日は勘弁してもらいたいな。
と、彰彦は何故かそんなことを思った。
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