不透明な君と。

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Collarを貰ってから、クラスではバカ三人衆が、イジって来たがCollarをしていることにより、璃華にバレたときの恐ろしさがあいつ等の心中で湧き上がったのか、途中で撤退していった。クラスのSubたちは、おめでとう。と祝ってくれた。

俺と璃華は、3日に一度のペースでPlayをした。俺は、初心者なのでどういうのが普通なのかわからないが、おそらくハードなことはしていないと思う。

服を脱げStripだの見せてPresentだのの命令commandは貰っていないから、璃華は俺に合わせてくれているんだと思う。

俺は抑制剤を飲まなくなったから、今まで溜めに溜めた欲求がすぐ出てくるようになった。だが、Glareなんかはやっぱり受け付けなくて、璃華のGlareしか反応はしないようだった。

そんな日々を送り、ゴールデンウィークに入り、お互い家に帰ることになった。入学からかなり濃い毎日を送っているせいか、まだ入学して1ヶ月しか経っていないことに少し驚いた。

璃華とともに学院を出て、駅に着けば、まさかの同じ方向で、電車を待ちながらお互いの住所を教えあった。

――――――――このとき、教えておいて本当に良かったと思う。

璃華は俺が降りる駅より二つ前の駅で降りていった。

「何かあったら連絡してね。すぐ行くから。」
「ああ。」
「あ、何もなくても連絡していいからね!」
「ああ、分かったって。」

微笑みながら手を振って別れた。

最寄りの駅で降り、歩いて帰れる位置にある自宅に向かった。自宅に着けば、一応預かっている合鍵で鍵を開けて中に入る。

予想していた通り、掃除はされていないようで埃っぽく、キッチンにはゴミ袋が積まれていた。たった1ヶ月でこのザマなのだ。夏休み帰ってきたら、ゴミ屋敷になっているかもしれない。そう思いながら、リビングで酒を煽りながらタバコを吸う典型的なダメ親父に声をかける。

「...ただいま、父さん。」

もちろん、返事なんて返ってこない。小さく溜息をこぼしつつ、自室に向かった。こちらも少々埃っぽかったが、出入りがなかったからかいくらかマシだった。窓を開け、網戸にして換気しつつ、汚れた廊下やらキッチンやらの掃除を始めた。俺は3日間で帰るつもりだったから、ゴールデンウィーク中だが、ゴミ袋をゴミ捨て場に出して、その足で買い出しに行った。

どうせろくに食べてないんだろうと思い、簡単に作れるようなカップ麺や、レトルト食品、冷凍食品や缶詰なんかをカゴに入れ、3日分の食料を買い込んだ。帰りにコンビニによって昼飯代わりのスナックパンを買って、食べながら帰った。

帰宅してから換気していた窓を閉め、キッチンで夕食を作る。ダメ親父は、相変わらずリビングソファで酒を煽り、今度はつまみを口にしている。だから、夕食はラップをかけてダイニングテーブルに置いておいた。

風呂に入って、髪を乾かしてと、一般的な夜のルーティンを終わらせて俺は自室で眠りについた。

翌朝、顔を洗ってと、一般的な朝のルーティンを済ませ、リビングに顔を出せばダメ親父はそのままソファで寝たようで、薄い布を被りながら寝ていた。ダイニングテーブルには、夕食がそのまま残されていて、仕方なく温め直して、俺が朝食として食べた。ダメ親父ように味噌汁なんかも作った朝食を用意して、置いておいたが昼過ぎに見に行ったときにそのままだったので食べていないのだろう。

いまだに、ソファでテレビを見ながら酒を煽るダメ親父。ソファの周りには飲み終えた缶ビールやらチューハイなんかの空き缶が散らばっており、テレビ前のローテーブルは空き缶でその姿を見ることはできなかった。

俺は流石に、このままではマズイと思い、ダメ親父に声をかけた。

「...父さん。」
「...。」
「...流石に、飲みすぎだ。飯も食ってない。身体に悪すぎる。」
「...お前には、関係ないだろう。」
「...仕事はどうしたんだ。」
「...んなもん、クビになったに決まってんだろ!!でなきゃ、酒なんてこんな時間に飲んでねぇよ!!!」
「...いつからタバコなんて。」
「....アイツがいたから、吸わなかっただけだ。」
「...仏壇に線香はあげてないみたいだけど。」
「...あげれるわけないだろう。こんな、ダメ男がよぉ!!!!」

ダメ親父に大きな声を出され、しばしばビクつくが必死に喰らいついた。

「そもそも、お前が産まれなきゃ、アイツは死ななかったんだ!!!」

だが、その言葉をきいて、俺は何も言えなくなってしまった。母さんは、俺を産んでから身体が弱り、そのまま二年前に旅立った。ダメ親父、父さんは未だ受け入れられていないのか、おそらくそのせいで仕事もクビになったんだろう。

「...悪い。」
「お前さえ!!お前さえいなければっ!!!」

そう叫びながら、俺の胸ぐらを掴み揺する。そのとき、首に光るCollarが目に入ったのか、首を掴んできた。

「...俺が、こんな生活をしている間に、お前は寮に入って?安定した生活をして?更には、パートナーを作ってんのか?なあ?どういうことだよ!!!」
「...っ、そんなの!自業自得だろ!!父さんが、いつまでもうだうだして!どうせそのまま、取引先なんかに行って断られまくってクビになったんだろうが!!」

「ああ、そうだよ!!どうせ俺は引きずり続けてんだ!!だが、お前が幸せを掴んでるのは許せない!!お前は一番不幸になるべき存在だろう!!!!」

なにを言っているのかわからなかった。ただの逆恨みもいいところだ。

「たかがSubの分際で、パートナー?笑わせるな!!」「俺だってDomなんだぞ!!」
「...そういえば、抑制剤飲んでないんだってなぁ?病院から薬を取りに来ないって連絡が来たぜ?」
「なんで、飲んでねぇんだよ!!チビだった頃からじっくり殺してやろうと思ったのによぉ!!」

「...は?」

「...俺はお前が産まれたときからお前が邪魔だったんだよ!アイツが子供が欲しいと言ったから、一回だけ産ませてやったんだ!!」
「なのに、その一回のせいで!!アイツは死んだんだ!!!」
「全部お前のせいなんだよ!!!」

父さんは怒りに任せて、Glareを最大放出している。璃華Glareしか効かないと言ったって感じるものは感じているんだ。しかも、抑制剤は飲んでいない。今までで一番の量を浴びている。

しかも父さんは、俺を殺そうとしていた。今まで溜め込んでいた、秘密にしていたことを叫びながら、俺に向けた暴言をGlareとともに放つ。それらは形式張った命令commandとは別の、禁止ワードとなって、俺に刺さる。

『お前なんかいなくなればいい!!』
『お前なんかいらねぇんだよ!!』
『Subなら媚びてみろよ!!!なあ?!!!!』
『死ね!死ね!死ね!!!!』
『消えろ!消えろ!消えろ消えろ!!!!!』

首を掴まれ、馬乗りにされた状態で、耳に、直に入る。塞ぎたくても、足で腕を抑えられて塞げない。大量のGlareを、殺意のこもったGlareを直で浴び続け、耳から脳に直接、禁止ワードが命令commandとして響く。

俺は、......。

「.....ぃ、ぇ。.....ぃ....ぇ。」

「なに、ブツブツ言ってんだよ!!このゴミが!!」

俺は、最後の足掻きとでもいうように、藻掻き、父さんを押し退けて、走って自室に戻り鍵をかけた。

ドアに寄りかかるように座り込んで、スマホの電話帳を開く。霞んできた目で、その名前を探し、電話をかける。

「“はい。”」
「...。」
「“どうしたの?來希?”」
「...ぃ、ぇ。」
「“...來希?”」
「...り、か、...ぃ、ぇ。」
「“いえ?...家が、....まさかっ、”」
「...り、か、...ぃ、...ぇ、ごめ...。」
「“來希!!待ってて!!すぐ行くから!!頑張って!!”」
「...り、か。」
「“うん!うん!大丈夫!大丈夫だよ!!このまま電話繋いでていいから!!”」

部屋のドアが激しく叩かれる。

「おい!!開けろぉ!!出てこいよぉ!!」

「...り、か、....。」
「“なに?”」
「....ぃ、ぇ、たす、け、て。」
「“っ、うん!!もちろんだよ!!すぐ行くからね!!”」
「...り、か。」

手の力が抜けて、スマホを落ち、それが視界に入ったのを最後に目の前が真っ暗になった。

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