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俺の目の前で、血を多量に流し、地面に赤い大輪の花を描いているのは、俺が初めて恋をした彼だ。彼は、明星 灯は、俺のことを特段好いてるわけでもないだろうに。なぜ、俺の腕を引いて、代わりに車に撥ねられたんだろうか。なぜ...。
こんなときなのに、周りの大人たちが救急車だとか、警察だとか叫び騒いでいるというのに、頭はやけに冷静で、でも、体は灯の側から動けなくて意識のない灯の手を握り、ただ見つめることしかできない。
彼は、いつだか、学校で血液型の話になったときに言っていた。
『僕は、珍しい血液型で、お母さんに大きなケガをしないように気をつけてね。って言われてるんだ~。』
と。
それなのに、灯は今にも命が尽きそうで。
初恋の彼は遠くに行ってしまいそうで。
それが俺を庇って大怪我をしたからで。
その事実が、恐ろしいほどに、俺の内側を冷やしていく。
遠くから、サイレンの音が聴こえて、赤灯が見えた頃には、灯の呼吸はもう聞こえないくらい、小さくなっていた。
救急隊員が俺を灯から引き剥がして、連れて行こうとする。だが俺も灯の血によって、見た目だけなら怪我をしているように見えたのだろう。一緒に救急車に乗せてもらい、受け入れてくれる病院に連れて行ってもらった。
その間に、灯の呼吸は何度も止まりかけては吹き返しを繰り返した。
病院に着いて灯は、手術室に消えていった。その間に看護師に、灯の血液型とか病気とか知らないか。と聞かれ、あの状況で、冷静な頭のおかげで、灯の荷物から絶対に必要だと思い持ってきた血液型カードを見せた。
「これ。灯、珍しい血液型なんだって。...病気は特になかったと思う。」
そのカードを見た瞬間、看護師はカードを借りると言って、走り出し手術室に消えたかと思えば、たちまち手術室から数人の看護師が小走りで駆けて行った。
少しすると手術室の前で、看護師が集って、情報交換をしているみたいで、小さな話し声が聞こえてきた。
「AB型Rhなんて、そうそういないし、こんな地方の病院にあるわけないじゃない....。」
「そうよ…。他の病院に頼んでる時間もないし....。」
そんな、話し声を聞いて、俺は偶々近くにいた、白衣を着た50代くらいの医者に声をかけた。その人の白衣の裾を、少し引っ張って、振り返った胸元の名札を見て、この人が医院長だと知り、きっと灯を助けてくれると信じ、希望を持った。
「...先生。今ね、手術室で俺の友達が頑張ってるんだ。...でもね、俺の友達、珍しい血液型でね。助からないかもしれないんだ。」
「...それは、....きっとお医者さんがお友達を助けてくれるよ。」
「...ううん。血がないんだって。輸血っていうんでしょ。だから、俺なら手伝えるかなって。声をかけたんだ。」
「...血液型によって、輸血できる血が限られるんだ。もし君がそのお友達と同じ血液型ならお手伝いできるんだけどね。」
だから、俺は、もうこの世にはいない俺を引き取ってくれた義理の両親と歳の離れた義理の兄から言いつけられた約束を破って、自分の血液型カードを見せた。
「...俺なら手伝えるよ。....でも、誰にも灯にも言わないで....。先生が医院長先生って分かったから頼んだんだ....。俺と先生だけの内緒のお話。」
カードを見た医院長は、しばらく動かず、思案したあと、俺を医院長室に連れて行ってくれた。
「....先生と君だけの秘密だ。...本当はこんなことしてはいけないし、保護者の同意なしではやってはいけないことなんだよ。」
「いいよ。灯が助かるなら、俺が怒られるよ。」
「...バレたら、そうは行かないんだよ...。」
そう話しながら、テキパキと採血の準備をしてくれる。
「...さあ、横になって。...時間がないから、普通より多く、早く採血できるように調整するから、すぐ眠気が来るかもしれない。そうしたら、眠ってしまって構わないよ。」
「...わかった。...先生、灯助けてね。」
「...君の血があればきっと助かる。...それじゃあ、始めるね。」
すごい勢いで血が抜けていくのがわかる。それと同時に眠気に襲われて、どんどん瞼が降りていく。意識がなくなる直前に医院長が何かを言っていたけれど、聞き取ることはできなかった。
こんなときなのに、周りの大人たちが救急車だとか、警察だとか叫び騒いでいるというのに、頭はやけに冷静で、でも、体は灯の側から動けなくて意識のない灯の手を握り、ただ見つめることしかできない。
彼は、いつだか、学校で血液型の話になったときに言っていた。
『僕は、珍しい血液型で、お母さんに大きなケガをしないように気をつけてね。って言われてるんだ~。』
と。
それなのに、灯は今にも命が尽きそうで。
初恋の彼は遠くに行ってしまいそうで。
それが俺を庇って大怪我をしたからで。
その事実が、恐ろしいほどに、俺の内側を冷やしていく。
遠くから、サイレンの音が聴こえて、赤灯が見えた頃には、灯の呼吸はもう聞こえないくらい、小さくなっていた。
救急隊員が俺を灯から引き剥がして、連れて行こうとする。だが俺も灯の血によって、見た目だけなら怪我をしているように見えたのだろう。一緒に救急車に乗せてもらい、受け入れてくれる病院に連れて行ってもらった。
その間に、灯の呼吸は何度も止まりかけては吹き返しを繰り返した。
病院に着いて灯は、手術室に消えていった。その間に看護師に、灯の血液型とか病気とか知らないか。と聞かれ、あの状況で、冷静な頭のおかげで、灯の荷物から絶対に必要だと思い持ってきた血液型カードを見せた。
「これ。灯、珍しい血液型なんだって。...病気は特になかったと思う。」
そのカードを見た瞬間、看護師はカードを借りると言って、走り出し手術室に消えたかと思えば、たちまち手術室から数人の看護師が小走りで駆けて行った。
少しすると手術室の前で、看護師が集って、情報交換をしているみたいで、小さな話し声が聞こえてきた。
「AB型Rhなんて、そうそういないし、こんな地方の病院にあるわけないじゃない....。」
「そうよ…。他の病院に頼んでる時間もないし....。」
そんな、話し声を聞いて、俺は偶々近くにいた、白衣を着た50代くらいの医者に声をかけた。その人の白衣の裾を、少し引っ張って、振り返った胸元の名札を見て、この人が医院長だと知り、きっと灯を助けてくれると信じ、希望を持った。
「...先生。今ね、手術室で俺の友達が頑張ってるんだ。...でもね、俺の友達、珍しい血液型でね。助からないかもしれないんだ。」
「...それは、....きっとお医者さんがお友達を助けてくれるよ。」
「...ううん。血がないんだって。輸血っていうんでしょ。だから、俺なら手伝えるかなって。声をかけたんだ。」
「...血液型によって、輸血できる血が限られるんだ。もし君がそのお友達と同じ血液型ならお手伝いできるんだけどね。」
だから、俺は、もうこの世にはいない俺を引き取ってくれた義理の両親と歳の離れた義理の兄から言いつけられた約束を破って、自分の血液型カードを見せた。
「...俺なら手伝えるよ。....でも、誰にも灯にも言わないで....。先生が医院長先生って分かったから頼んだんだ....。俺と先生だけの内緒のお話。」
カードを見た医院長は、しばらく動かず、思案したあと、俺を医院長室に連れて行ってくれた。
「....先生と君だけの秘密だ。...本当はこんなことしてはいけないし、保護者の同意なしではやってはいけないことなんだよ。」
「いいよ。灯が助かるなら、俺が怒られるよ。」
「...バレたら、そうは行かないんだよ...。」
そう話しながら、テキパキと採血の準備をしてくれる。
「...さあ、横になって。...時間がないから、普通より多く、早く採血できるように調整するから、すぐ眠気が来るかもしれない。そうしたら、眠ってしまって構わないよ。」
「...わかった。...先生、灯助けてね。」
「...君の血があればきっと助かる。...それじゃあ、始めるね。」
すごい勢いで血が抜けていくのがわかる。それと同時に眠気に襲われて、どんどん瞼が降りていく。意識がなくなる直前に医院長が何かを言っていたけれど、聞き取ることはできなかった。
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