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眠っている間に、夢を見た。
そんなに前の話じゃない。きっと、灯が俺を庇って撥ねられたから、思い出したのだろう。
小学校の入学式の帰りに、信号無視で横断歩道に突っ込んできた、大型トラックから俺を守って死んだ義理の両親。その当時の俺の視点で、再び夢の中で体験した。
両親と死に別れてからは、歳の離れた義理の兄が面倒を見てくれていた。兄さんは、俺が小学校入学の年にちょうど成人していたから、逆に俺と離れ離れにされなくてよかったと、よく言っていた。小学3年生になる今日の今日まで、面倒を見てくれた。大学に通いつつ、バイトで生活費まで稼いでくれた。兄さんに会って、抱き着きたいな。と、思いながら、瞼を開けた。
「...おはよう。」
「...おはよう、せんせい。...あ、かりは?」
「もちろん、君の血のおかげで助かったよ。今は集中治療室で眠っている頃じゃないかな。」
「...そっか、助かったんだね。...お見舞いとか行ける?」
「...集中治療室にいるから、お見舞いはちょっと難しいかな。....それに。」
「...それに?」
「私は君をこの部屋から出す気はないよ。」
一瞬何を言われたか分からなかった。それはつまり監禁すると公言しているようなもので、兄さんに会いたいと願い、目覚めた俺には酷く残酷なものに聞こえた。
「...ど、...して?」
「...君の幻と呼ばれる、どの血液型にも適応するその血は、この病院に幸運をもたらすだろう。
それに、君は私と君だけの秘密の話と言ったね。
...君がこの部屋から出た時点で、秘密は守られないんだよ。
...君の血は、偶々私のお客様が同じ血液型だったから、力を借りたと言っておいた。
これからも私に、この病院のために協力してくれないか?
衣食住完備で3食おやつ付き昼寝有りだよ。
その代わり、君には毎日献血してもらうけれど...。
理不尽で傲慢でごめんね。...どうかな?」
どうかな、とかそういう問題じゃないっていうのは俺でもわかった。でも、声を出しかけた俺の言葉を遮るように言われた先生の言葉を聞いて頭が真っ白になった。
「...あれから一週間経っているのだけど、君の捜索願は出ていないようだよ。勝手に調べさせてもらったけど、義理のお兄さんしかいないんだね。
...しかも、かなり歳の離れた。きっと君がいなくなって清々しているんじゃないか?調べたところ大学生なんでしょう?
生活費も稼いで、家事もほとんどやって、大学に行くって相当ストレスだと思うんだ。
....だから、君はいない方がいいと思われているのかも。」
目覚める前の兄への思いもあってか、先生の言葉を否定できなかった。そして、そうかもしれないと一瞬だけでも思ってしまった。そこからは催眠術でもかけられているのかと思うくらい簡単に、ズブズブと沼に沈むみたいに、暗い気持ちが俺の中身を染めていく。貧血のせいもあってか、だんだん脳も上手く回っていないらしく、何も考えられなくなっていく。
「...そう、かも...しれない。」
「...それに君が献血に協力してくれれば、色んな人が助かるよ。君は、色んな人を助けて、そのお給料で欲しいものでも、なんでも買ってあげよう。これでどうかな。」
「...帰る場所が、なくて、...誰かの役に立てるなら...いいのかもしれない...?」
「...そうと決まれば、君が生活する部屋に案内するよ。」
そう言って、体に力の入らない俺を抱えて医院長室の最奥の扉の中に入った。
そこは、普通の家のリビングみたいになっていて、くつろげる空間になっていた。
「院長室兼自室なんだ、ここは。今日からは君の部屋でもあるね。
...まあ、君の部屋はこの奥なんだけれどね。」
リビングの更に奥に続く扉をくぐれば、小さな個室になっていて、最低限のベッドやソファが置いてあった。
「...逃げないと思うし、逃げれないと思うけれど、私が手前の部屋にも院長室にも居ないときは、鍵をかけさせてもらうよ。」
俺は、もうどうすればいいのかわからないし、こうなってしまっては、もう何もできないと悟った。
「...わかった。...俺はいつから血をあげればいいの?」
「...随分、適応が早いね。...そうだな、今日は流石に寝起きだし、...うん、明日からにしよう。毎日、お昼の時間に。採血が終わり次第、お昼にしよう。」
「...わかった。」
「...それから、自分より年上の人には、敬語を使えるようにしようか。」
「なんで?」
「一人称は俺のままでいいんだけれど、強いて言うなら、もし君が外に出たとき困らないようにかな。」
「...ふぅん。...分かった。じゃあ、頑張るからおやつおまけしてくださいね。」
「いいよ。」
その日は、ただ一緒に昼、夜とご飯を食べて、15時のおやつに夜ご飯後のデザートまで食べさせてくれた。
でも、次の日からは、かなりしんどかった。
お昼前の採血は、倒れるまでとか、気を失うまでとか、そういう量ではないけれど、ある程度疲労感と貧血感を感じたところで、終わりにしてくれた。
でも、毎日続くと、どんどん疲労感と貧血感が抜けなくて、今までの食事よりちゃんとしてて、おやつまでついてきて、栄養面ではバッチリで。寝るのも好きなときに寝ていいと言われたから、眠くなったら寝て、体は休まっているはずなのに。
日を増すごとに、眠る時間が長くなって、お昼前まで眠ってることも増えていって、でも、先生は寝ていても、俺の採血をしてから起こしてくれる。
「...おはよう。」
「...おは、よ、ござ、ます。...せ、せい。」
「...調子はどうかな?...最近は眠ってることが多いと思うけれど。」
「...す、ごく、つかれ、て、とて、も...ねむ、いです。」
「それは君の身体が足りない血を補おうと、頑張っているからだよ。」
「...そ、なんだ。...じゃあ、さいきん、はなしにくいし、、なんか、くちがまわら、ないのは、どうして、ですか?」
「...各所に血が行き渡ってなくて、脳が最低限の司令しか出せていないんだね。...話すのが大変になったら、頷くだけとかでも大丈夫だからね。」
「...は、い。」
「...それから、手足にも力が入らなくなるかもしれないけど、そうしたら、私がきちんとお世話するから安心していいよ。」
そんなに前の話じゃない。きっと、灯が俺を庇って撥ねられたから、思い出したのだろう。
小学校の入学式の帰りに、信号無視で横断歩道に突っ込んできた、大型トラックから俺を守って死んだ義理の両親。その当時の俺の視点で、再び夢の中で体験した。
両親と死に別れてからは、歳の離れた義理の兄が面倒を見てくれていた。兄さんは、俺が小学校入学の年にちょうど成人していたから、逆に俺と離れ離れにされなくてよかったと、よく言っていた。小学3年生になる今日の今日まで、面倒を見てくれた。大学に通いつつ、バイトで生活費まで稼いでくれた。兄さんに会って、抱き着きたいな。と、思いながら、瞼を開けた。
「...おはよう。」
「...おはよう、せんせい。...あ、かりは?」
「もちろん、君の血のおかげで助かったよ。今は集中治療室で眠っている頃じゃないかな。」
「...そっか、助かったんだね。...お見舞いとか行ける?」
「...集中治療室にいるから、お見舞いはちょっと難しいかな。....それに。」
「...それに?」
「私は君をこの部屋から出す気はないよ。」
一瞬何を言われたか分からなかった。それはつまり監禁すると公言しているようなもので、兄さんに会いたいと願い、目覚めた俺には酷く残酷なものに聞こえた。
「...ど、...して?」
「...君の幻と呼ばれる、どの血液型にも適応するその血は、この病院に幸運をもたらすだろう。
それに、君は私と君だけの秘密の話と言ったね。
...君がこの部屋から出た時点で、秘密は守られないんだよ。
...君の血は、偶々私のお客様が同じ血液型だったから、力を借りたと言っておいた。
これからも私に、この病院のために協力してくれないか?
衣食住完備で3食おやつ付き昼寝有りだよ。
その代わり、君には毎日献血してもらうけれど...。
理不尽で傲慢でごめんね。...どうかな?」
どうかな、とかそういう問題じゃないっていうのは俺でもわかった。でも、声を出しかけた俺の言葉を遮るように言われた先生の言葉を聞いて頭が真っ白になった。
「...あれから一週間経っているのだけど、君の捜索願は出ていないようだよ。勝手に調べさせてもらったけど、義理のお兄さんしかいないんだね。
...しかも、かなり歳の離れた。きっと君がいなくなって清々しているんじゃないか?調べたところ大学生なんでしょう?
生活費も稼いで、家事もほとんどやって、大学に行くって相当ストレスだと思うんだ。
....だから、君はいない方がいいと思われているのかも。」
目覚める前の兄への思いもあってか、先生の言葉を否定できなかった。そして、そうかもしれないと一瞬だけでも思ってしまった。そこからは催眠術でもかけられているのかと思うくらい簡単に、ズブズブと沼に沈むみたいに、暗い気持ちが俺の中身を染めていく。貧血のせいもあってか、だんだん脳も上手く回っていないらしく、何も考えられなくなっていく。
「...そう、かも...しれない。」
「...それに君が献血に協力してくれれば、色んな人が助かるよ。君は、色んな人を助けて、そのお給料で欲しいものでも、なんでも買ってあげよう。これでどうかな。」
「...帰る場所が、なくて、...誰かの役に立てるなら...いいのかもしれない...?」
「...そうと決まれば、君が生活する部屋に案内するよ。」
そう言って、体に力の入らない俺を抱えて医院長室の最奥の扉の中に入った。
そこは、普通の家のリビングみたいになっていて、くつろげる空間になっていた。
「院長室兼自室なんだ、ここは。今日からは君の部屋でもあるね。
...まあ、君の部屋はこの奥なんだけれどね。」
リビングの更に奥に続く扉をくぐれば、小さな個室になっていて、最低限のベッドやソファが置いてあった。
「...逃げないと思うし、逃げれないと思うけれど、私が手前の部屋にも院長室にも居ないときは、鍵をかけさせてもらうよ。」
俺は、もうどうすればいいのかわからないし、こうなってしまっては、もう何もできないと悟った。
「...わかった。...俺はいつから血をあげればいいの?」
「...随分、適応が早いね。...そうだな、今日は流石に寝起きだし、...うん、明日からにしよう。毎日、お昼の時間に。採血が終わり次第、お昼にしよう。」
「...わかった。」
「...それから、自分より年上の人には、敬語を使えるようにしようか。」
「なんで?」
「一人称は俺のままでいいんだけれど、強いて言うなら、もし君が外に出たとき困らないようにかな。」
「...ふぅん。...分かった。じゃあ、頑張るからおやつおまけしてくださいね。」
「いいよ。」
その日は、ただ一緒に昼、夜とご飯を食べて、15時のおやつに夜ご飯後のデザートまで食べさせてくれた。
でも、次の日からは、かなりしんどかった。
お昼前の採血は、倒れるまでとか、気を失うまでとか、そういう量ではないけれど、ある程度疲労感と貧血感を感じたところで、終わりにしてくれた。
でも、毎日続くと、どんどん疲労感と貧血感が抜けなくて、今までの食事よりちゃんとしてて、おやつまでついてきて、栄養面ではバッチリで。寝るのも好きなときに寝ていいと言われたから、眠くなったら寝て、体は休まっているはずなのに。
日を増すごとに、眠る時間が長くなって、お昼前まで眠ってることも増えていって、でも、先生は寝ていても、俺の採血をしてから起こしてくれる。
「...おはよう。」
「...おは、よ、ござ、ます。...せ、せい。」
「...調子はどうかな?...最近は眠ってることが多いと思うけれど。」
「...す、ごく、つかれ、て、とて、も...ねむ、いです。」
「それは君の身体が足りない血を補おうと、頑張っているからだよ。」
「...そ、なんだ。...じゃあ、さいきん、はなしにくいし、、なんか、くちがまわら、ないのは、どうして、ですか?」
「...各所に血が行き渡ってなくて、脳が最低限の司令しか出せていないんだね。...話すのが大変になったら、頷くだけとかでも大丈夫だからね。」
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