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「……見つけたぞ」
「ギャー! なんでここが分かったのよ!」
城の図書室の奥の奥。
「禁書コーナー」と書かれた埃っぽい棚の隙間に挟まっていた私を、アレクシスはいとも容易く発見した。
「君の行動パターンは把握している。『静かで』『暗くて』『人が来ない』場所。つまり、ここかワインセラーの二択だ」
「……ストーカーもここまでくると職人芸ね」
私は手にしていた『古代魔法文明の興亡(全20巻)』の第1巻を閉じた。
ここ数日、私はアレクシスから逃げ回っていた。
顔を合わせれば「結婚しろ」「嫌だ」の問答になるからだ。
「で? 今日は何の用? また『愛の言葉』という名の呪詛を吐きに来たの?」
「いいや。今日はビジネスの話だ」
アレクシスはそう言って、脇に抱えていた分厚いファイルをドサリと私の膝に置いた。
「……何これ。レンガ?」
「『ミリオネ・ラ・ベル・フルールとの婚姻に関する特別措置法案(草案)』だ」
「法律作っちゃったの!?」
私は仰天した。
「まだ議会には通していない。君の合意があれば、即日施行する準備はある」
アレクシスは私の隣に(無理やり)座り込み、ファイルをめくった。
「君が結婚を渋る理由は、大きく分けて三つだ。『労働(公務)の拒否』『自由の制限』『飽き』。……違うか?」
「……正解よ。よく分かってるじゃない」
「なので、これらを法的に解決する条項を盛り込んだ」
彼は指で条文をなぞる。
「第一条。皇后ミリオネは、全ての公務における出席義務を免除される」
「……へ?」
「つまり、夜会、式典、パレード、外交会議。これら全てにおいて、君は『欠席』を選択する権利を持つ。私が強制することはない」
「……全部?」
「全部だ。君が『今日は眠いからパス』と言えば、それが正当な理由として受理される」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
それは、カイル王子が夢見ていた(そして絶対に叶わなかった)怠惰の極みではないか。
「で、でも、国民が納得しないわよ。皇后が引きこもりなんて」
「第二条。国民への説明責任は、全て皇帝アレクシスが負うものとする」
「……!」
「私が適当に理由をつける。『皇后は今、国の未来を憂いて瞑想中だ』とか、『神託を受けている』とかな。国民は私を信じているから問題ない」
「……詐欺の共犯になれと?」
「方便だ。次、第三条」
アレクシスはページをめくる。
「皇后ミリオネは、城内および帝国内の任意の場所に、自分専用の『聖域(サンクチュアリ)』を設定できる」
「聖域?」
「そこには、皇帝を含め、いかなる者も許可なく立ち入ることはできない。つまり、君が『一人になりたい』と思ったら、誰にも邪魔されずに引きこもれる権利だ」
「……え、すごくない?」
私の心がグラグラと揺れる。
結婚=束縛という概念を覆す、画期的なシステムだ。
「そして第四条。これが君にとって一番重要かもしれん」
アレクシスはニヤリと笑った。
「食事中に『一口ちょうだい』とねだる行為を、皇帝は自重する。ただし、皇后からの供給はこの限りではない」
「……ッ!」
私はファイルを握りしめた。
私のデザートを狙われる心配がなくなる。
これはデカイ。
「……な、なかなか良い条件じゃない」
私は震える声で言った。
「でも、まだ足りないわ。……もし、私が飽きたら?」
「飽きたら?」
「毎日同じ景色、同じ生活。飽きっぽい私が、この城での暮らしに退屈したらどうするの?」
「第五条を見てくれ」
アレクシスが最後のページを開く。
そこには、地図のような図面が挟まっていた。
「……何これ? テーマパーク?」
「『ミリオネ・ランド(仮)』の建設予定図だ」
「……は?」
「城の敷地内に、カジノ、劇場、ショッピングモール、そして世界中の珍味を集めたレストラン街を建設する。すべて君専用だ」
「……馬鹿なの? 予算はどうするのよ」
「君がカイルから巻き上げた鉱山の収益を充てる。君が稼いだ金だ、君のために使うのが筋だろう?」
「……」
私は言葉を失った。
この男、本気だ。
本気で私を「飼育」しようとしている。
しかも、世界最高レベルの環境で。
「どうだ、ミリオネ。これでもまだ『嫌だ』と言うか?」
アレクシスが顔を近づけてくる。
「これだけの自由と、権力と、快楽を保証されて、なお『独身』にこだわる合理的な理由は?」
「……っ」
ない。
計算機が「エラー」ではなく「即・契約!」と弾き出している。
この条件を蹴るのは、もはや合理的ではなく、ただの意地だ。
しかし、その「意地」こそが、私の最後の砦だった。
「……うまい話すぎるわ」
私はファイルを閉じた。
「こんな好条件、逆に怪しいわよ。あなたに何のメリットがあるの?」
「メリット?」
アレクシスは不思議そうに首を傾げた。
「君が城にいてくれる。それだけで、私の精神安定剤(メンタルヘルス)になる。私が健康なら、帝国は繁栄する。費用対効果は抜群だ」
「……私がいるだけで?」
「ああ。君の毒舌を聞くと、脳が活性化するんだ」
「……変態」
「褒め言葉だ」
アレクシスは私の手を取り、ペンを握らせた。
「さあ、サインを。この歴史的な法案に、君の署名を」
ペンの先が、署名欄に触れる。
インクが滲む。
書くか?
書いてしまうのか?
ミリオネ・フォン・ガレリアに?
「……待って」
私は寸前で手を止めた。
「まだよ。まだ一つ、足りないものがあるわ」
「なんだ? 言ってみろ。月でも星でも取ってきてやる」
「……枕」
「枕?」
「この図書室の椅子、硬いのよ。読書用の、もっといいクッション性が欲しいわ」
私は苦し紛れに言った。
「それを今すぐ用意できたら、前向きに検討してあげる(※サインするとは言っていない)」
時間を稼ぐための、無理難題。
しかし、アレクシスは涼しい顔で指をパチンと鳴らした。
「リゲル!」
「はいっ!!」
書架の影から、待機していたリゲルが飛び出してきた。
手には、最高級のビーズクッションが抱えられている。
「用意周到すぎるわよ!!」
私は叫んだ。
「さあ、これで条件はクリアだ。サインを」
「……ぐぬぬ……!」
私は追い詰められた。
完全にチェックメイトだ。
逃げ場はない。
このまま流されるか?
いや、悪役令嬢たるもの、最後の一線だけは自分で決めたい。
「……分かったわ」
私は観念したように息を吐いた。
「サインはするわ。……でも、今日は無理」
「なぜだ」
「腱鞘炎(けんしょうえん)なの。最近、書類仕事が多すぎて手が震えるのよ」
私はわざとらしく手をプルプルさせてみせた。
「治るまで待って。全治……そうね、あと三日くらいかしら」
小学生レベルの嘘だ。
しかし、アレクシスはそれを見て、深く、優しく笑った。
「……そうか。大事な手だ。無理はさせられないな」
彼は私の手を両手で包み込み、温めた。
「三日待とう。……だが、それ以上は待たんぞ」
「……善処するわ」
私は顔を背けた。
彼の体温が心地よくて、このまま彼に捕まるのも悪くないかも、と本気で思い始めている自分がいたからだ。
「……策士ね、アレク」
「君ほどではないさ」
図書室の静寂の中、私たちの「攻防戦」は、いよいよ最終局面へと向かっていた。
三日後。
それが私の「独身最後の日」になる予感が、濃厚に漂っていた。
「ギャー! なんでここが分かったのよ!」
城の図書室の奥の奥。
「禁書コーナー」と書かれた埃っぽい棚の隙間に挟まっていた私を、アレクシスはいとも容易く発見した。
「君の行動パターンは把握している。『静かで』『暗くて』『人が来ない』場所。つまり、ここかワインセラーの二択だ」
「……ストーカーもここまでくると職人芸ね」
私は手にしていた『古代魔法文明の興亡(全20巻)』の第1巻を閉じた。
ここ数日、私はアレクシスから逃げ回っていた。
顔を合わせれば「結婚しろ」「嫌だ」の問答になるからだ。
「で? 今日は何の用? また『愛の言葉』という名の呪詛を吐きに来たの?」
「いいや。今日はビジネスの話だ」
アレクシスはそう言って、脇に抱えていた分厚いファイルをドサリと私の膝に置いた。
「……何これ。レンガ?」
「『ミリオネ・ラ・ベル・フルールとの婚姻に関する特別措置法案(草案)』だ」
「法律作っちゃったの!?」
私は仰天した。
「まだ議会には通していない。君の合意があれば、即日施行する準備はある」
アレクシスは私の隣に(無理やり)座り込み、ファイルをめくった。
「君が結婚を渋る理由は、大きく分けて三つだ。『労働(公務)の拒否』『自由の制限』『飽き』。……違うか?」
「……正解よ。よく分かってるじゃない」
「なので、これらを法的に解決する条項を盛り込んだ」
彼は指で条文をなぞる。
「第一条。皇后ミリオネは、全ての公務における出席義務を免除される」
「……へ?」
「つまり、夜会、式典、パレード、外交会議。これら全てにおいて、君は『欠席』を選択する権利を持つ。私が強制することはない」
「……全部?」
「全部だ。君が『今日は眠いからパス』と言えば、それが正当な理由として受理される」
私はゴクリと唾を飲み込んだ。
それは、カイル王子が夢見ていた(そして絶対に叶わなかった)怠惰の極みではないか。
「で、でも、国民が納得しないわよ。皇后が引きこもりなんて」
「第二条。国民への説明責任は、全て皇帝アレクシスが負うものとする」
「……!」
「私が適当に理由をつける。『皇后は今、国の未来を憂いて瞑想中だ』とか、『神託を受けている』とかな。国民は私を信じているから問題ない」
「……詐欺の共犯になれと?」
「方便だ。次、第三条」
アレクシスはページをめくる。
「皇后ミリオネは、城内および帝国内の任意の場所に、自分専用の『聖域(サンクチュアリ)』を設定できる」
「聖域?」
「そこには、皇帝を含め、いかなる者も許可なく立ち入ることはできない。つまり、君が『一人になりたい』と思ったら、誰にも邪魔されずに引きこもれる権利だ」
「……え、すごくない?」
私の心がグラグラと揺れる。
結婚=束縛という概念を覆す、画期的なシステムだ。
「そして第四条。これが君にとって一番重要かもしれん」
アレクシスはニヤリと笑った。
「食事中に『一口ちょうだい』とねだる行為を、皇帝は自重する。ただし、皇后からの供給はこの限りではない」
「……ッ!」
私はファイルを握りしめた。
私のデザートを狙われる心配がなくなる。
これはデカイ。
「……な、なかなか良い条件じゃない」
私は震える声で言った。
「でも、まだ足りないわ。……もし、私が飽きたら?」
「飽きたら?」
「毎日同じ景色、同じ生活。飽きっぽい私が、この城での暮らしに退屈したらどうするの?」
「第五条を見てくれ」
アレクシスが最後のページを開く。
そこには、地図のような図面が挟まっていた。
「……何これ? テーマパーク?」
「『ミリオネ・ランド(仮)』の建設予定図だ」
「……は?」
「城の敷地内に、カジノ、劇場、ショッピングモール、そして世界中の珍味を集めたレストラン街を建設する。すべて君専用だ」
「……馬鹿なの? 予算はどうするのよ」
「君がカイルから巻き上げた鉱山の収益を充てる。君が稼いだ金だ、君のために使うのが筋だろう?」
「……」
私は言葉を失った。
この男、本気だ。
本気で私を「飼育」しようとしている。
しかも、世界最高レベルの環境で。
「どうだ、ミリオネ。これでもまだ『嫌だ』と言うか?」
アレクシスが顔を近づけてくる。
「これだけの自由と、権力と、快楽を保証されて、なお『独身』にこだわる合理的な理由は?」
「……っ」
ない。
計算機が「エラー」ではなく「即・契約!」と弾き出している。
この条件を蹴るのは、もはや合理的ではなく、ただの意地だ。
しかし、その「意地」こそが、私の最後の砦だった。
「……うまい話すぎるわ」
私はファイルを閉じた。
「こんな好条件、逆に怪しいわよ。あなたに何のメリットがあるの?」
「メリット?」
アレクシスは不思議そうに首を傾げた。
「君が城にいてくれる。それだけで、私の精神安定剤(メンタルヘルス)になる。私が健康なら、帝国は繁栄する。費用対効果は抜群だ」
「……私がいるだけで?」
「ああ。君の毒舌を聞くと、脳が活性化するんだ」
「……変態」
「褒め言葉だ」
アレクシスは私の手を取り、ペンを握らせた。
「さあ、サインを。この歴史的な法案に、君の署名を」
ペンの先が、署名欄に触れる。
インクが滲む。
書くか?
書いてしまうのか?
ミリオネ・フォン・ガレリアに?
「……待って」
私は寸前で手を止めた。
「まだよ。まだ一つ、足りないものがあるわ」
「なんだ? 言ってみろ。月でも星でも取ってきてやる」
「……枕」
「枕?」
「この図書室の椅子、硬いのよ。読書用の、もっといいクッション性が欲しいわ」
私は苦し紛れに言った。
「それを今すぐ用意できたら、前向きに検討してあげる(※サインするとは言っていない)」
時間を稼ぐための、無理難題。
しかし、アレクシスは涼しい顔で指をパチンと鳴らした。
「リゲル!」
「はいっ!!」
書架の影から、待機していたリゲルが飛び出してきた。
手には、最高級のビーズクッションが抱えられている。
「用意周到すぎるわよ!!」
私は叫んだ。
「さあ、これで条件はクリアだ。サインを」
「……ぐぬぬ……!」
私は追い詰められた。
完全にチェックメイトだ。
逃げ場はない。
このまま流されるか?
いや、悪役令嬢たるもの、最後の一線だけは自分で決めたい。
「……分かったわ」
私は観念したように息を吐いた。
「サインはするわ。……でも、今日は無理」
「なぜだ」
「腱鞘炎(けんしょうえん)なの。最近、書類仕事が多すぎて手が震えるのよ」
私はわざとらしく手をプルプルさせてみせた。
「治るまで待って。全治……そうね、あと三日くらいかしら」
小学生レベルの嘘だ。
しかし、アレクシスはそれを見て、深く、優しく笑った。
「……そうか。大事な手だ。無理はさせられないな」
彼は私の手を両手で包み込み、温めた。
「三日待とう。……だが、それ以上は待たんぞ」
「……善処するわ」
私は顔を背けた。
彼の体温が心地よくて、このまま彼に捕まるのも悪くないかも、と本気で思い始めている自分がいたからだ。
「……策士ね、アレク」
「君ほどではないさ」
図書室の静寂の中、私たちの「攻防戦」は、いよいよ最終局面へと向かっていた。
三日後。
それが私の「独身最後の日」になる予感が、濃厚に漂っていた。
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