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「マーヤ・ベルンシュタイン! 貴様との婚約を、この場をもって破棄する!」
王城の大広間。
数百の貴族が見守る煌びやかな夜会の最中、王太子ジュリアンの甲高い声が響き渡った。
音楽は止まり、人々の囁き声すら凍りつく。
誰もが息を呑む緊張感の中、弾劾された悪役令嬢――マーヤ・ベルンシュタインは、ゆっくりと扇を広げた。
口元を隠したその扇の下で、彼女が満面の笑みを浮かべているとも知らずに。
(来た……! ついにこの時が来たわ!)
マーヤは震える手で扇を握りしめる。
それは悲しみでも恐怖でもない。
純粋な歓喜による武者震いだ。
目の前で彼女を指差しているのは、この国の次期国王となるジュリアン殿下。
金髪碧眼の美青年であり、多くの令嬢が憧れる存在である。
だが、マーヤの目には別のものとして映っていた。
(見てよあの上腕。細い。あまりにも細すぎるわ。まるで茹でる前のパスタね)
彼女の視線は、王太子の顔ではなく、突きつけられた人差し指から伸びる腕に釘付けだった。
(胸板の厚みも皆無。王族の礼服は生地が厚いから誤魔化せているけれど、私にはわかるわ。あの下にあるのは筋肉ではない。ただの骨と皮よ!)
マーヤ・ベルンシュタインには、人には言えない秘密がある。
それは、重度の筋肉フェチであるということだ。
実家の領地には鉱山があり、彼女は幼い頃から、岩盤を砕く鉱夫たちの盛り上がった背筋や、汗に濡れて輝く上腕二頭筋を見て育った。
彼女にとっての「理想の男性」とは、重いツルハシを軽々と振るえる男であり、風が吹けば飛びそうな優男ではない。
ゆえに、この貧相な王太子との婚約は、彼女にとって苦行でしかなかったのだ。
「……おい、聞いているのかマーヤ!」
返答のないマーヤに痺れを切らしたのか、ジュリアンがさらに声を張り上げる。
彼の隣には、小動物のように震える男爵令嬢、リリナが寄り添っていた。
「リリナへの陰湿な嫌がらせ、もはや看過できん! 教科書を隠し、ドレスにワインをかけ、階段から突き落とそうとしたそうだな!」
身に覚えのない罪状が次々と読み上げられる。
周囲からは「なんて恐ろしい」「やはり悪女だ」という軽蔑の視線が突き刺さる。
だが、マーヤは涼しい顔で小首を傾げた。
「殿下。一つよろしいでしょうか」
「なんだ、言い訳か? 今さら何を言っても無駄だぞ!」
「いいえ。言い訳などいたしません」
マーヤは扇をパチンと音を立てて閉じた。
その音の鋭さに、ジュリアンとリリナがビクリと肩を揺らす。
「その婚約破棄、謹んでお受けいたしますわ」
「は……?」
予想外の反応だったのだろう。
ジュリアンが間の抜けた声を漏らす。
彼はきっと、マーヤが泣いて縋るか、あるいは激昂してリリナに掴みかかるとでも思っていたに違いない。
「聞こえませんでしたか? 破棄を受け入れると申し上げたのです。喜んで」
「よ、喜んで……だと?」
「ええ。殿下のご判断は賢明かと存じます。私のような性悪女よりも、そちらの可愛らしいリリナ様のほうが、殿下の細くて白い指にはお似合いですもの」
マーヤはにっこりと微笑んだ。
それは皮肉ではなく、心からの本音だった。
(だって、そんな細い指じゃ私(・)は(・)満(・)足(・)で(・)き(・)な(・)い(・)もの!)
彼女の理想は、丸太のような腕で抱き上げられることだ。
折れそうな腕でエスコートされても、不安でときめく暇などない。
「な、なんだその態度は! 貴様、自分が何を失おうとしているのか分かっているのか!?」
ジュリアンが顔を真っ赤にして叫ぶ。
プライドの高い彼にとって、マーヤのあっさりとした態度は許容しがたい侮辱なのだろう。
「未来の王妃の座だぞ! 二度と手に入らぬ栄光なのだぞ!」
「栄光、ですか」
マーヤは鼻で笑うのを必死に堪えた。
王妃になれば、一日中王城の奥に座り、退屈な公務と茶会に明け暮れることになる。
そこに筋肉はない。
あるのは、たるんだ腹を隠そうとする貴族たちと、化粧の厚い夫人たちだけだ。
(そんな未来、こちらから願い下げよ。私には夢があるの!)
彼女の脳裏に、実家の鉱山街の風景が浮かぶ。
熱気。
飛び散る汗。
そして、視界を埋め尽くす極上のマッチョたち。
あそこでカフェを開く。
プロテインたっぷりの特製ミルクを振る舞い、男たちが「うまい!」と唸りながら筋肉を躍動させる姿を、特等席で眺めるのだ。
それこそが、マーヤの描く黄金郷(エルドラド)。
「殿下。私、悟りましたの」
マーヤは凛とした声で告げた。
その瞳は、シャンデリアの輝きよりも強く煌めいている。
「身の丈に合わぬ服は、脱ぎ捨てるべきだと。私には王妃の座よりも、もっと相応しい場所がございます」
「そ、それは修道院のことか? そうだ、貴様のような悪女は教会で懺悔でもして……」
「いいえ」
マーヤは踵を返した。
その背中には、一点の迷いもない。
「実家へ帰らせていただきます。今すぐに」
「は?」
「慰謝料の請求書は、後日実家の弁護士を通じて送らせていただきますわ。相場通りの金額に、精神的苦痛への手切れ金を上乗せして。一括払いでお願いしますね」
言い捨てると、マーヤは颯爽と歩き出した。
あまりの早業に、近衛兵たちも止めるタイミングを失っている。
「ま、待て! 話はまだ終わっていないぞ!」
背後でジュリアンが何か喚いているが、マーヤの耳には届かない。
彼女の心はすでに、王都から遠く離れた北の大地へと飛んでいた。
(さようなら、もやし王子! こんにちは、筋肉の楽園!)
大広間の扉を衛兵が開ける。
冷たい夜風が吹き込んできたが、マーヤにはそれが自由の風に感じられた。
ドレスの裾を翻し、彼女は夜の闇へと消えていく。
その足取りは、舞踏会で踊っていた時よりも遥かに軽やかで、力強かった。
こうして、悪役令嬢マーヤ・ベルンシュタインの婚約破棄騒動は幕を閉じた。
少なくとも、彼女の中では。
だが、彼女はまだ知らない。
実家へ帰った先に、運命を変えるほどの「極上の筋肉」との出会いが待っていることを。
「ふふふ……待っていなさい、私のマッスルたち!」
馬車に飛び乗ったマーヤの叫び声が、王都の夜空に吸い込まれていった。
王城の大広間。
数百の貴族が見守る煌びやかな夜会の最中、王太子ジュリアンの甲高い声が響き渡った。
音楽は止まり、人々の囁き声すら凍りつく。
誰もが息を呑む緊張感の中、弾劾された悪役令嬢――マーヤ・ベルンシュタインは、ゆっくりと扇を広げた。
口元を隠したその扇の下で、彼女が満面の笑みを浮かべているとも知らずに。
(来た……! ついにこの時が来たわ!)
マーヤは震える手で扇を握りしめる。
それは悲しみでも恐怖でもない。
純粋な歓喜による武者震いだ。
目の前で彼女を指差しているのは、この国の次期国王となるジュリアン殿下。
金髪碧眼の美青年であり、多くの令嬢が憧れる存在である。
だが、マーヤの目には別のものとして映っていた。
(見てよあの上腕。細い。あまりにも細すぎるわ。まるで茹でる前のパスタね)
彼女の視線は、王太子の顔ではなく、突きつけられた人差し指から伸びる腕に釘付けだった。
(胸板の厚みも皆無。王族の礼服は生地が厚いから誤魔化せているけれど、私にはわかるわ。あの下にあるのは筋肉ではない。ただの骨と皮よ!)
マーヤ・ベルンシュタインには、人には言えない秘密がある。
それは、重度の筋肉フェチであるということだ。
実家の領地には鉱山があり、彼女は幼い頃から、岩盤を砕く鉱夫たちの盛り上がった背筋や、汗に濡れて輝く上腕二頭筋を見て育った。
彼女にとっての「理想の男性」とは、重いツルハシを軽々と振るえる男であり、風が吹けば飛びそうな優男ではない。
ゆえに、この貧相な王太子との婚約は、彼女にとって苦行でしかなかったのだ。
「……おい、聞いているのかマーヤ!」
返答のないマーヤに痺れを切らしたのか、ジュリアンがさらに声を張り上げる。
彼の隣には、小動物のように震える男爵令嬢、リリナが寄り添っていた。
「リリナへの陰湿な嫌がらせ、もはや看過できん! 教科書を隠し、ドレスにワインをかけ、階段から突き落とそうとしたそうだな!」
身に覚えのない罪状が次々と読み上げられる。
周囲からは「なんて恐ろしい」「やはり悪女だ」という軽蔑の視線が突き刺さる。
だが、マーヤは涼しい顔で小首を傾げた。
「殿下。一つよろしいでしょうか」
「なんだ、言い訳か? 今さら何を言っても無駄だぞ!」
「いいえ。言い訳などいたしません」
マーヤは扇をパチンと音を立てて閉じた。
その音の鋭さに、ジュリアンとリリナがビクリと肩を揺らす。
「その婚約破棄、謹んでお受けいたしますわ」
「は……?」
予想外の反応だったのだろう。
ジュリアンが間の抜けた声を漏らす。
彼はきっと、マーヤが泣いて縋るか、あるいは激昂してリリナに掴みかかるとでも思っていたに違いない。
「聞こえませんでしたか? 破棄を受け入れると申し上げたのです。喜んで」
「よ、喜んで……だと?」
「ええ。殿下のご判断は賢明かと存じます。私のような性悪女よりも、そちらの可愛らしいリリナ様のほうが、殿下の細くて白い指にはお似合いですもの」
マーヤはにっこりと微笑んだ。
それは皮肉ではなく、心からの本音だった。
(だって、そんな細い指じゃ私(・)は(・)満(・)足(・)で(・)き(・)な(・)い(・)もの!)
彼女の理想は、丸太のような腕で抱き上げられることだ。
折れそうな腕でエスコートされても、不安でときめく暇などない。
「な、なんだその態度は! 貴様、自分が何を失おうとしているのか分かっているのか!?」
ジュリアンが顔を真っ赤にして叫ぶ。
プライドの高い彼にとって、マーヤのあっさりとした態度は許容しがたい侮辱なのだろう。
「未来の王妃の座だぞ! 二度と手に入らぬ栄光なのだぞ!」
「栄光、ですか」
マーヤは鼻で笑うのを必死に堪えた。
王妃になれば、一日中王城の奥に座り、退屈な公務と茶会に明け暮れることになる。
そこに筋肉はない。
あるのは、たるんだ腹を隠そうとする貴族たちと、化粧の厚い夫人たちだけだ。
(そんな未来、こちらから願い下げよ。私には夢があるの!)
彼女の脳裏に、実家の鉱山街の風景が浮かぶ。
熱気。
飛び散る汗。
そして、視界を埋め尽くす極上のマッチョたち。
あそこでカフェを開く。
プロテインたっぷりの特製ミルクを振る舞い、男たちが「うまい!」と唸りながら筋肉を躍動させる姿を、特等席で眺めるのだ。
それこそが、マーヤの描く黄金郷(エルドラド)。
「殿下。私、悟りましたの」
マーヤは凛とした声で告げた。
その瞳は、シャンデリアの輝きよりも強く煌めいている。
「身の丈に合わぬ服は、脱ぎ捨てるべきだと。私には王妃の座よりも、もっと相応しい場所がございます」
「そ、それは修道院のことか? そうだ、貴様のような悪女は教会で懺悔でもして……」
「いいえ」
マーヤは踵を返した。
その背中には、一点の迷いもない。
「実家へ帰らせていただきます。今すぐに」
「は?」
「慰謝料の請求書は、後日実家の弁護士を通じて送らせていただきますわ。相場通りの金額に、精神的苦痛への手切れ金を上乗せして。一括払いでお願いしますね」
言い捨てると、マーヤは颯爽と歩き出した。
あまりの早業に、近衛兵たちも止めるタイミングを失っている。
「ま、待て! 話はまだ終わっていないぞ!」
背後でジュリアンが何か喚いているが、マーヤの耳には届かない。
彼女の心はすでに、王都から遠く離れた北の大地へと飛んでいた。
(さようなら、もやし王子! こんにちは、筋肉の楽園!)
大広間の扉を衛兵が開ける。
冷たい夜風が吹き込んできたが、マーヤにはそれが自由の風に感じられた。
ドレスの裾を翻し、彼女は夜の闇へと消えていく。
その足取りは、舞踏会で踊っていた時よりも遥かに軽やかで、力強かった。
こうして、悪役令嬢マーヤ・ベルンシュタインの婚約破棄騒動は幕を閉じた。
少なくとも、彼女の中では。
だが、彼女はまだ知らない。
実家へ帰った先に、運命を変えるほどの「極上の筋肉」との出会いが待っていることを。
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