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王都への「殴り込み」が決まった夜。
私たちは明日の早朝出発に備え、店内で旅の準備をしていた。
「お嬢、留守の間は俺たちに任せてください!」
「ああ、頼んだわよ。私がいないからといって、サボって筋トレを怠らないようにね」
「もちろんっす! 帰ってきた頃には、全員ベンチプレスの記録を10キロ更新しておきます!」
残る組と、王都へ同行する選抜メンバー(ガンツ含む精鋭5名)との間で、熱い抱擁が交わされている。
暑苦しいが、美しい光景だ。
クロード様も一度屋敷に戻り、旅装を整えてから合流することになっている。
「ふぅ……さて、私も最後の確認をしましょうか」
私はキッチンの愛用道具たちを点検し始めた。
王都へ持っていく武器……ではなく、調理器具の選別だ。
その時だった。
ガシャンッ!!
入り口のガラスが割れる音が、深夜の店内に響き渡った。
「……!」
「な、なんだ!?」
ガンツたちが身構える。
続いて、ドカドカと土足で踏み込んでくる複数の足音。
「へっへっへ……ここが噂の店か」
「今のうちに燃やしちまえ! 隊長に恥をかかせた報復だ!」
入ってきたのは、昼間に逃げ帰ったはずの正規軍の兵士たち――その残党だった。
数名は手に松明を持っており、その目は卑劣な光を宿している。
どうやら、クロード様がいない隙を狙って、寝込みを襲う(放火する)作戦に出たらしい。
「てめぇら……!」
ガンツが激昂して飛び出そうとするが、兵士の一人がニヤリと笑って何かを取り出した。
魔道具だ。
火炎系の攻撃魔法が封じられた石。
「動くなよ! この石を使えば、こんな木造のボロ屋、一瞬で消し炭だぞ!」
「くっ……!」
店員たちが足を止める。
彼らの筋肉は物理攻撃には強いが、魔法には弱い。
店を人質(物質)に取られては、迂闊に動けないのだ。
「ははは! ビビってやがる! さあ、今のうちに金目の物をよこせ! あと、そこの女(マーヤ)も連れて行くぞ!」
兵士たちが下卑た笑い声を上げながら、店内のテーブルを蹴り飛ばし、椅子を破壊し始めた。
大切に磨き上げたカウンターに、泥だらけのブーツが乗せられる。
プツン。
私の中で、何かが切れる音がした。
「……いい度胸ね」
私は静かに呟いた。
恐怖はない。
あるのは、沸騰するような怒りだけだ。
私の大切な店。
筋肉たちが安らぎ、汗を流す聖域。
それを「ボロ屋」呼ばわりし、あまつさえ土足で踏み荒らすとは。
「そこをどきなさい、ガンツ」
「えっ? で、でもお嬢……」
「どけと言っているのよ!!」
私の怒号に、ガンツたちがビクッとして道を開ける。
私はゆっくりと歩み出た。
右手には、愛用の鉄製フライパン(直径30センチ、重量2キロの特注品)を握りしめて。
「あぁ? なんだその女。料理でも振る舞ってくれるのかぁ?」
兵士が舐めた口調で近づいてくる。
「ええ、振る舞ってあげるわ。……『鉄分』たっぷりのフルコースをね!!」
ブンッ!!
私は腰の回転を利かせ、全力でフライパンを振り抜いた。
綺麗な水平スイング。
これぞ、毎日の鍋振りで鍛えた広背筋の賜物だ。
カァァァンッ!!
「ぐべっ!?」
鈍く、かつ甲高い音が響き、兵士の顔面にフライパンがクリーンヒットした。
兵士は独楽のようにきりきり舞いして吹き飛び、壁に激突して白目を剥いた。
「な、なんだと!?」
「バカな! 女の細腕で……!」
「私の腕が細い? よく見なさい! 上腕三頭筋が怒りでパンプアップしているのが分からないの!?」
私はフライパンを構え直した。
まだ残りの兵士がいる。
「や、やっちまえ! 魔法石を使え!」
一人が慌てて魔道具を構える。
「させねぇよ!」
ガンツが横からタックルをかまし、兵士を吹き飛ばした。
魔道具が床に転がる。
乱戦の開始だ。
「オラァッ! 俺の店になにすんだ!」
「マッスル・ラリアット!」
店員たちも暴れ始める。
だが、兵士たちも腐っても正規軍。
剣を抜いて応戦してくる。
「くっ……! 女だけでも殺せ!」
一人の兵士が、私に向かって剣を突き出してきた。
鋭い切っ先が迫る。
フライパンで受け止めるには角度が悪い!
(しまっ……!)
私が目を閉じた、その瞬間だった。
ガキンッ!!
金属同士がぶつかり合う激しい音が、目の前で炸裂した。
痛みはない。
恐る恐る目を開けると、私の目の前には、見慣れた広く頼もしい背中があった。
「……ク、クロード様……?」
漆黒の外套を翻し、私の前に立ちはだかるクロード公爵。
彼は大剣を片手で軽々と操り、兵士の剣を受け止めていた。
「……出発の前に、虫退治が必要だったか」
低い声。
だが、そこに含まれる怒気は、私の比ではなかった。
周囲の空気が瞬時に凍りつき、松明の火さえも小さくなる。
「き、貴様……また邪魔をするのか!」
兵士が震えながら叫ぶ。
「邪魔をしているのは貴様らだ。……私の大切な『場所』と、大切な『人』に、その汚い剣を向けるな」
大切な人。
その言葉に、私の心臓がドクンと跳ねた。
(もちろん、「大切なプロテイン提供者」という意味でしょうけど!)
クロード様は剣を軽く一振りしただけで、兵士の剣を弾き飛ばした。
そして、氷のような瞳で残党たちを見渡した。
「……消えろ。私の気が変わる前にな」
「ひ、ひぃぃぃ!! 化け物だぁぁ!!」
兵士たちは這うようにして逃げ出した。
二度目の敗走。
もう二度と、この店には近づかないだろう。
「……怪我はないか、マーヤ」
クロード様が振り返り、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「ええ、おかげさまで。……フライパンが少し凹んでしまいましたけれど」
私が苦笑して凹んだフライパンを見せると、彼はふっと表情を緩めた。
「……君も大概、剛腕だな」
「あら、褒め言葉として受け取っておきますわ」
店内の惨状を見渡す。
壊された椅子、汚された床。
私の怒りはまだ収まらない。
むしろ、再燃していた。
「……許しません」
私は拳(とフライパン)を握りしめた。
「私の可愛い筋肉(店員)たちを危険に晒し、神聖な店を汚した罪……万死に値しますわ」
私はガンツたちに向き直った。
「みんな! 予定変更よ! 夜明けを待つ必要なんてないわ!」
「お、お嬢?」
「今すぐ出発するわよ! 王都へ! この怒りの熱量が冷めないうちに、ジュリアン殿下の寝室までカチ込みにいくわ!」
私の宣言に、ガンツたちが「おおお!」と歓声を上げる。
クロード様も、やれやれといった様子だが、その目は楽しそうだ。
「……夜襲返し、か。悪くない」
「ええ。倍返しですわ。慰謝料の追加請求も忘れません!」
私たちはすぐに荷物をまとめ、馬車(と荷台に乗るマッチョたち)に乗り込んだ。
月明かりの下、筋肉軍団を乗せた隊列が動き出す。
目指すは王都。
待っていなさい、もやし王子とぶりっ子令嬢。
あなたたちの「常識」を、私たちの「筋肉」が粉砕しに行くわよ!
馬車の窓から夜風を受けながら、私は高らかに笑った。
その手には、まだ熱を帯びたフライパンがしっかりと握られていた。
私たちは明日の早朝出発に備え、店内で旅の準備をしていた。
「お嬢、留守の間は俺たちに任せてください!」
「ああ、頼んだわよ。私がいないからといって、サボって筋トレを怠らないようにね」
「もちろんっす! 帰ってきた頃には、全員ベンチプレスの記録を10キロ更新しておきます!」
残る組と、王都へ同行する選抜メンバー(ガンツ含む精鋭5名)との間で、熱い抱擁が交わされている。
暑苦しいが、美しい光景だ。
クロード様も一度屋敷に戻り、旅装を整えてから合流することになっている。
「ふぅ……さて、私も最後の確認をしましょうか」
私はキッチンの愛用道具たちを点検し始めた。
王都へ持っていく武器……ではなく、調理器具の選別だ。
その時だった。
ガシャンッ!!
入り口のガラスが割れる音が、深夜の店内に響き渡った。
「……!」
「な、なんだ!?」
ガンツたちが身構える。
続いて、ドカドカと土足で踏み込んでくる複数の足音。
「へっへっへ……ここが噂の店か」
「今のうちに燃やしちまえ! 隊長に恥をかかせた報復だ!」
入ってきたのは、昼間に逃げ帰ったはずの正規軍の兵士たち――その残党だった。
数名は手に松明を持っており、その目は卑劣な光を宿している。
どうやら、クロード様がいない隙を狙って、寝込みを襲う(放火する)作戦に出たらしい。
「てめぇら……!」
ガンツが激昂して飛び出そうとするが、兵士の一人がニヤリと笑って何かを取り出した。
魔道具だ。
火炎系の攻撃魔法が封じられた石。
「動くなよ! この石を使えば、こんな木造のボロ屋、一瞬で消し炭だぞ!」
「くっ……!」
店員たちが足を止める。
彼らの筋肉は物理攻撃には強いが、魔法には弱い。
店を人質(物質)に取られては、迂闊に動けないのだ。
「ははは! ビビってやがる! さあ、今のうちに金目の物をよこせ! あと、そこの女(マーヤ)も連れて行くぞ!」
兵士たちが下卑た笑い声を上げながら、店内のテーブルを蹴り飛ばし、椅子を破壊し始めた。
大切に磨き上げたカウンターに、泥だらけのブーツが乗せられる。
プツン。
私の中で、何かが切れる音がした。
「……いい度胸ね」
私は静かに呟いた。
恐怖はない。
あるのは、沸騰するような怒りだけだ。
私の大切な店。
筋肉たちが安らぎ、汗を流す聖域。
それを「ボロ屋」呼ばわりし、あまつさえ土足で踏み荒らすとは。
「そこをどきなさい、ガンツ」
「えっ? で、でもお嬢……」
「どけと言っているのよ!!」
私の怒号に、ガンツたちがビクッとして道を開ける。
私はゆっくりと歩み出た。
右手には、愛用の鉄製フライパン(直径30センチ、重量2キロの特注品)を握りしめて。
「あぁ? なんだその女。料理でも振る舞ってくれるのかぁ?」
兵士が舐めた口調で近づいてくる。
「ええ、振る舞ってあげるわ。……『鉄分』たっぷりのフルコースをね!!」
ブンッ!!
私は腰の回転を利かせ、全力でフライパンを振り抜いた。
綺麗な水平スイング。
これぞ、毎日の鍋振りで鍛えた広背筋の賜物だ。
カァァァンッ!!
「ぐべっ!?」
鈍く、かつ甲高い音が響き、兵士の顔面にフライパンがクリーンヒットした。
兵士は独楽のようにきりきり舞いして吹き飛び、壁に激突して白目を剥いた。
「な、なんだと!?」
「バカな! 女の細腕で……!」
「私の腕が細い? よく見なさい! 上腕三頭筋が怒りでパンプアップしているのが分からないの!?」
私はフライパンを構え直した。
まだ残りの兵士がいる。
「や、やっちまえ! 魔法石を使え!」
一人が慌てて魔道具を構える。
「させねぇよ!」
ガンツが横からタックルをかまし、兵士を吹き飛ばした。
魔道具が床に転がる。
乱戦の開始だ。
「オラァッ! 俺の店になにすんだ!」
「マッスル・ラリアット!」
店員たちも暴れ始める。
だが、兵士たちも腐っても正規軍。
剣を抜いて応戦してくる。
「くっ……! 女だけでも殺せ!」
一人の兵士が、私に向かって剣を突き出してきた。
鋭い切っ先が迫る。
フライパンで受け止めるには角度が悪い!
(しまっ……!)
私が目を閉じた、その瞬間だった。
ガキンッ!!
金属同士がぶつかり合う激しい音が、目の前で炸裂した。
痛みはない。
恐る恐る目を開けると、私の目の前には、見慣れた広く頼もしい背中があった。
「……ク、クロード様……?」
漆黒の外套を翻し、私の前に立ちはだかるクロード公爵。
彼は大剣を片手で軽々と操り、兵士の剣を受け止めていた。
「……出発の前に、虫退治が必要だったか」
低い声。
だが、そこに含まれる怒気は、私の比ではなかった。
周囲の空気が瞬時に凍りつき、松明の火さえも小さくなる。
「き、貴様……また邪魔をするのか!」
兵士が震えながら叫ぶ。
「邪魔をしているのは貴様らだ。……私の大切な『場所』と、大切な『人』に、その汚い剣を向けるな」
大切な人。
その言葉に、私の心臓がドクンと跳ねた。
(もちろん、「大切なプロテイン提供者」という意味でしょうけど!)
クロード様は剣を軽く一振りしただけで、兵士の剣を弾き飛ばした。
そして、氷のような瞳で残党たちを見渡した。
「……消えろ。私の気が変わる前にな」
「ひ、ひぃぃぃ!! 化け物だぁぁ!!」
兵士たちは這うようにして逃げ出した。
二度目の敗走。
もう二度と、この店には近づかないだろう。
「……怪我はないか、マーヤ」
クロード様が振り返り、心配そうに私の顔を覗き込んだ。
「ええ、おかげさまで。……フライパンが少し凹んでしまいましたけれど」
私が苦笑して凹んだフライパンを見せると、彼はふっと表情を緩めた。
「……君も大概、剛腕だな」
「あら、褒め言葉として受け取っておきますわ」
店内の惨状を見渡す。
壊された椅子、汚された床。
私の怒りはまだ収まらない。
むしろ、再燃していた。
「……許しません」
私は拳(とフライパン)を握りしめた。
「私の可愛い筋肉(店員)たちを危険に晒し、神聖な店を汚した罪……万死に値しますわ」
私はガンツたちに向き直った。
「みんな! 予定変更よ! 夜明けを待つ必要なんてないわ!」
「お、お嬢?」
「今すぐ出発するわよ! 王都へ! この怒りの熱量が冷めないうちに、ジュリアン殿下の寝室までカチ込みにいくわ!」
私の宣言に、ガンツたちが「おおお!」と歓声を上げる。
クロード様も、やれやれといった様子だが、その目は楽しそうだ。
「……夜襲返し、か。悪くない」
「ええ。倍返しですわ。慰謝料の追加請求も忘れません!」
私たちはすぐに荷物をまとめ、馬車(と荷台に乗るマッチョたち)に乗り込んだ。
月明かりの下、筋肉軍団を乗せた隊列が動き出す。
目指すは王都。
待っていなさい、もやし王子とぶりっ子令嬢。
あなたたちの「常識」を、私たちの「筋肉」が粉砕しに行くわよ!
馬車の窓から夜風を受けながら、私は高らかに笑った。
その手には、まだ熱を帯びたフライパンがしっかりと握られていた。
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