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「……殿下。いえ、シルルさん」
王都の賑やかな中央広場。
香ばしいソースの匂いと人々の活気に包まれる中、私はジト目で隣の男を見上げた。
「一つ言っておきますけど、変装の意味、ご存知ですか?」
「もちろんさ、ヴィオ。目立たないように周囲に溶け込むことだろう?」
隣に立つシルヴェスター殿下――今日の設定では商人の「シルル」――は、爽やかに微笑んだ。
確かに、彼が着ているのは最高級のシルクやベルベットではなく、一般的な綿のシャツと地味な色のベストだ。
髪も少し乱して、伊達眼鏡までかけている。
けれど。
「どうして地味な服を着ているのに、そこだけスポットライトが当たっているみたいに輝いているんですか!?」
隠しきれない。
王族オーラが全く隠せていない。
すれ違う女性たちが皆、「まあ、あの素敵な殿方は誰?」「役者さんかしら?」と振り返り、頬を染めているのだ。
これでは「お忍び」ではなく「お披露目パレード」である。
「そうかな? 私は気配を消しているつもりなんだが」
「その無駄に長い脚と、整いすぎた顔面をどうにかしてください。あと、無意識に優雅な所作で髪をかき上げるのをやめてください。絵になりすぎて目立ちます」
「厳しいな。……まあ、君の方こそ、その町娘風のワンピースがよく似合っていて可愛いよ。さらわれるんじゃないかと心配になるくらいにね」
「っ……! 口説き文句は結構です!」
不意打ちで褒められ、私はカッと顔が熱くなった。
今日の私は、動きやすい茶色のワンピースにエプロン姿。
公爵令嬢時代には絶対に着られなかった軽装だ。
自分でも「意外と悪くないかも」と思っていたけれど、この男に言われるとなんだか調子が狂う。
「さあ、行こうか。君のお目当てはあれだろう?」
シルヴェスターは私の手を取り、人混みの中へとエスコートした。
その自然な仕草にも、周囲から黄色い悲鳴が上がる。
私はもう諦めて、目的を果たすことだけに集中することにした。
今日の目的。
それは、ガレリア名物『爆弾串』を食べることである。
「おじさん! 爆弾串二本ちょうだい! 一番辛いソースで!」
「へいよ! お嬢ちゃん、いい度胸してるねぇ!」
屋台の店主から渡されたのは、拳ほどの大きさの肉団子が三つも刺さった巨大な串焼き。
甘辛いタレと、ピリッとする香辛料の香りが食欲をそそる。
「はい、シルルさん。これが平民の味ですよ」
「……これが? 随分と豪快な見た目だね」
シルヴェスターは渡された串をまじまじと見つめた。
ナイフとフォークがないと食事ができない王子様には、ハードルが高かっただろうか。
「まさか、食べ方がわからないなんて言いませんよね? こうやって、ガブッとかぶりつくんです」
私は手本を見せるべく、大口を開けて肉団子に噛み付いた。
ジュワッと溢れる肉汁。
濃厚なタレの味。
そして後からくる強烈な辛味。
「んん~っ! 美味しい!」
口の端にタレがつくのも構わず、私は至福の声を上げた。
これよ、これ。
堅苦しいテーブルマナーも、毒見役のチェックも必要ない、自由の味!
それを見たシルヴェスターは、少し驚いたように目を丸くし、それからふっと笑った。
「君は本当に、見ていて飽きないな」
彼も意を決したように、串にかぶりついた。
「……! なるほど、これは……」
「どうですか?」
「美味いな。味が濃くて、酒が欲しくなる」
「でしょう? ビールがあれば最高なんですけど……あ」
私は自然な動作で、彼の口元に自分のハンカチを差し出した。
「タレがついてますよ」
「おっと、すまない」
彼が私の手ごとハンカチを受け取ろうとした、その時だった。
「ヒュー! 熱いねぇ、兄ちゃん姉ちゃん!」
下卑た声と共に、数人の男たちが私たちの進路を塞いだ。
薄汚れた革鎧を着た、いかにも柄の悪い冒険者崩れといった風体の男たちだ。
昼間から酒臭い息を吐きながら、ニタニタと笑っている。
「その串焼き、美味そうじゃねぇか。俺たちにも奢ってくれよ」
「ついでに姉ちゃん、俺たちと遊ばねぇ? こんな優男より、俺たちの方が楽しませてやるぜ?」
典型的なチンピラだ。
お忍びイベントの定番すぎて、むしろ感動すら覚える。
シルヴェスターがすっと前に出ようとしたが、私はそれを手で制した。
(待って。ここで殿下が動いたら、大事(おおごと)になるわ)
彼が剣を抜けば、その剣技で正体がバレるかもしれないし、衛兵が駆けつければお忍びが中止になってしまう。
ここは、穏便に、かつ平和的に解決すべきだ。
私はニッコリと営業スマイルを浮かべ、男たちの前に出た。
「あら、奇遇ですね。私たちも今、ちょうどお金に困っていたところなんです」
「あ?」
予想外の反応に、男たちが顔を見合わせる。
「見ての通り、私たちは貧乏な新婚旅行中でして。宿代も払えなくて困っていたんです。そこでお兄さんたちにお願いがあるんですけど」
私はすっと懐から、先ほどの屋台で貰った紙ナプキンとペンを取り出した。
「あなた方、見るからに強そうで頼りになりそうですわ! どうでしょう、これから私たちが大道芸をするので、そのサクラ……いえ、盛り上げ役をやってくれませんか? 売り上げの二割をお支払いしますから!」
「はぁ? 大道芸?」
「ええ! 私の夫(シルル)は、なんと『一瞬で相手の関節を外す』という特技を持っているんです!」
私はシルヴェスターの腕をバンと叩いた。
「ねえ、あなた! このお兄さんの腕でちょっと実演してみて!」
「……ヴィオ?」
「関節外し? なんだそりゃ」
男の一人が、馬鹿にしたように手を伸ばしてきた。
「やってみろよ。もし出来なかったら、姉ちゃんは俺たちの……」
その瞬間。
シルヴェスターは私の意図を察したのか、苦笑しながらも一瞬で男の手首を掴み、流れるような動作でひねった。
ボキッ。
「ぎゃあああああ!!」
乾いた音と共に、男が悲鳴を上げて崩れ落ちる。
関節を外したわけではない。
ただ、ちょっと強めに極めただけだ。
さすが殿下、加減が上手い。
「あら凄いわあなた! 大成功ね!」
私はパチパチと手を叩いた。
「さあ、次の方! 次は『一瞬で気絶させる』芸をお見せします! どなたか体験したい方は!?」
私が満面の笑みで呼びかけると、残りの男たちは真っ青になった。
仲間の腕が一瞬でひねり上げられたのを見て、目の前の優男がタダモノではないと悟ったらしい。
「ひ、ひぃぃ! ば、化け物だ!」
「覚えてろよ!」
男たちは脱臼した仲間を引きずり、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
周囲の観衆からは、「なんだ、芸じゃないのか」という残念そうな声が漏れる。
「ふぅ。なんとかなりましたね」
私は胸を撫で下ろし、食べかけの串焼きの続きに取り掛かった。
「……ヴィオレッタ」
シルヴェスターが、呆れたような、でもどこか楽しそうな顔で私を見ている。
「君という人は……普通、ああいう時は私の背中に隠れて震えるものではないのかい?」
「震えている間に冷めたら、串焼きが不味くなるじゃないですか」
「くっ……ははは!」
シルヴェスターは声を上げて笑った。
王宮での計算高い笑いとは違う、年相応の少年のように無邪気な笑顔だった。
「参ったな。君といると、私の調子が狂いっぱなしだ」
彼は不意に距離を詰めると、私の手首――先ほどハンカチを渡そうとした手――を優しく包み込んだ。
「ありがとう。君のおかげで、騒ぎにならずに済んだ」
至近距離で見つめられる琥珀色の瞳。
その奥に、いつものふざけた色はなく、真摯な光が宿っているのを見て、私の心臓がトクンと跳ねた。
な、何よ急に。
そういうキャラじゃないでしょ。
「……ど、どういたしまして。それより、あっちの屋台でクレープが売ってますよ! 行きましょう!」
私は照れ隠しのために、強引に彼の腕を引いた。
顔が熱い。
これはきっと、爆弾串の香辛料のせいだ。
絶対にそうだ。
シルヴェスターは引かれるままに歩きながら、小さな声で呟いた。
「……本当に、君を逃がしたくなくなってきたな」
その言葉は、広場の喧騒にかき消され、私の耳には届かなかった。
ただ、繋がれた手のひらの熱さだけが、いつまでも残っていた。
こうして、私たちの波乱含みのデートは、私の胃袋が満たされるまで続いたのだった。
王都の賑やかな中央広場。
香ばしいソースの匂いと人々の活気に包まれる中、私はジト目で隣の男を見上げた。
「一つ言っておきますけど、変装の意味、ご存知ですか?」
「もちろんさ、ヴィオ。目立たないように周囲に溶け込むことだろう?」
隣に立つシルヴェスター殿下――今日の設定では商人の「シルル」――は、爽やかに微笑んだ。
確かに、彼が着ているのは最高級のシルクやベルベットではなく、一般的な綿のシャツと地味な色のベストだ。
髪も少し乱して、伊達眼鏡までかけている。
けれど。
「どうして地味な服を着ているのに、そこだけスポットライトが当たっているみたいに輝いているんですか!?」
隠しきれない。
王族オーラが全く隠せていない。
すれ違う女性たちが皆、「まあ、あの素敵な殿方は誰?」「役者さんかしら?」と振り返り、頬を染めているのだ。
これでは「お忍び」ではなく「お披露目パレード」である。
「そうかな? 私は気配を消しているつもりなんだが」
「その無駄に長い脚と、整いすぎた顔面をどうにかしてください。あと、無意識に優雅な所作で髪をかき上げるのをやめてください。絵になりすぎて目立ちます」
「厳しいな。……まあ、君の方こそ、その町娘風のワンピースがよく似合っていて可愛いよ。さらわれるんじゃないかと心配になるくらいにね」
「っ……! 口説き文句は結構です!」
不意打ちで褒められ、私はカッと顔が熱くなった。
今日の私は、動きやすい茶色のワンピースにエプロン姿。
公爵令嬢時代には絶対に着られなかった軽装だ。
自分でも「意外と悪くないかも」と思っていたけれど、この男に言われるとなんだか調子が狂う。
「さあ、行こうか。君のお目当てはあれだろう?」
シルヴェスターは私の手を取り、人混みの中へとエスコートした。
その自然な仕草にも、周囲から黄色い悲鳴が上がる。
私はもう諦めて、目的を果たすことだけに集中することにした。
今日の目的。
それは、ガレリア名物『爆弾串』を食べることである。
「おじさん! 爆弾串二本ちょうだい! 一番辛いソースで!」
「へいよ! お嬢ちゃん、いい度胸してるねぇ!」
屋台の店主から渡されたのは、拳ほどの大きさの肉団子が三つも刺さった巨大な串焼き。
甘辛いタレと、ピリッとする香辛料の香りが食欲をそそる。
「はい、シルルさん。これが平民の味ですよ」
「……これが? 随分と豪快な見た目だね」
シルヴェスターは渡された串をまじまじと見つめた。
ナイフとフォークがないと食事ができない王子様には、ハードルが高かっただろうか。
「まさか、食べ方がわからないなんて言いませんよね? こうやって、ガブッとかぶりつくんです」
私は手本を見せるべく、大口を開けて肉団子に噛み付いた。
ジュワッと溢れる肉汁。
濃厚なタレの味。
そして後からくる強烈な辛味。
「んん~っ! 美味しい!」
口の端にタレがつくのも構わず、私は至福の声を上げた。
これよ、これ。
堅苦しいテーブルマナーも、毒見役のチェックも必要ない、自由の味!
それを見たシルヴェスターは、少し驚いたように目を丸くし、それからふっと笑った。
「君は本当に、見ていて飽きないな」
彼も意を決したように、串にかぶりついた。
「……! なるほど、これは……」
「どうですか?」
「美味いな。味が濃くて、酒が欲しくなる」
「でしょう? ビールがあれば最高なんですけど……あ」
私は自然な動作で、彼の口元に自分のハンカチを差し出した。
「タレがついてますよ」
「おっと、すまない」
彼が私の手ごとハンカチを受け取ろうとした、その時だった。
「ヒュー! 熱いねぇ、兄ちゃん姉ちゃん!」
下卑た声と共に、数人の男たちが私たちの進路を塞いだ。
薄汚れた革鎧を着た、いかにも柄の悪い冒険者崩れといった風体の男たちだ。
昼間から酒臭い息を吐きながら、ニタニタと笑っている。
「その串焼き、美味そうじゃねぇか。俺たちにも奢ってくれよ」
「ついでに姉ちゃん、俺たちと遊ばねぇ? こんな優男より、俺たちの方が楽しませてやるぜ?」
典型的なチンピラだ。
お忍びイベントの定番すぎて、むしろ感動すら覚える。
シルヴェスターがすっと前に出ようとしたが、私はそれを手で制した。
(待って。ここで殿下が動いたら、大事(おおごと)になるわ)
彼が剣を抜けば、その剣技で正体がバレるかもしれないし、衛兵が駆けつければお忍びが中止になってしまう。
ここは、穏便に、かつ平和的に解決すべきだ。
私はニッコリと営業スマイルを浮かべ、男たちの前に出た。
「あら、奇遇ですね。私たちも今、ちょうどお金に困っていたところなんです」
「あ?」
予想外の反応に、男たちが顔を見合わせる。
「見ての通り、私たちは貧乏な新婚旅行中でして。宿代も払えなくて困っていたんです。そこでお兄さんたちにお願いがあるんですけど」
私はすっと懐から、先ほどの屋台で貰った紙ナプキンとペンを取り出した。
「あなた方、見るからに強そうで頼りになりそうですわ! どうでしょう、これから私たちが大道芸をするので、そのサクラ……いえ、盛り上げ役をやってくれませんか? 売り上げの二割をお支払いしますから!」
「はぁ? 大道芸?」
「ええ! 私の夫(シルル)は、なんと『一瞬で相手の関節を外す』という特技を持っているんです!」
私はシルヴェスターの腕をバンと叩いた。
「ねえ、あなた! このお兄さんの腕でちょっと実演してみて!」
「……ヴィオ?」
「関節外し? なんだそりゃ」
男の一人が、馬鹿にしたように手を伸ばしてきた。
「やってみろよ。もし出来なかったら、姉ちゃんは俺たちの……」
その瞬間。
シルヴェスターは私の意図を察したのか、苦笑しながらも一瞬で男の手首を掴み、流れるような動作でひねった。
ボキッ。
「ぎゃあああああ!!」
乾いた音と共に、男が悲鳴を上げて崩れ落ちる。
関節を外したわけではない。
ただ、ちょっと強めに極めただけだ。
さすが殿下、加減が上手い。
「あら凄いわあなた! 大成功ね!」
私はパチパチと手を叩いた。
「さあ、次の方! 次は『一瞬で気絶させる』芸をお見せします! どなたか体験したい方は!?」
私が満面の笑みで呼びかけると、残りの男たちは真っ青になった。
仲間の腕が一瞬でひねり上げられたのを見て、目の前の優男がタダモノではないと悟ったらしい。
「ひ、ひぃぃ! ば、化け物だ!」
「覚えてろよ!」
男たちは脱臼した仲間を引きずり、蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
周囲の観衆からは、「なんだ、芸じゃないのか」という残念そうな声が漏れる。
「ふぅ。なんとかなりましたね」
私は胸を撫で下ろし、食べかけの串焼きの続きに取り掛かった。
「……ヴィオレッタ」
シルヴェスターが、呆れたような、でもどこか楽しそうな顔で私を見ている。
「君という人は……普通、ああいう時は私の背中に隠れて震えるものではないのかい?」
「震えている間に冷めたら、串焼きが不味くなるじゃないですか」
「くっ……ははは!」
シルヴェスターは声を上げて笑った。
王宮での計算高い笑いとは違う、年相応の少年のように無邪気な笑顔だった。
「参ったな。君といると、私の調子が狂いっぱなしだ」
彼は不意に距離を詰めると、私の手首――先ほどハンカチを渡そうとした手――を優しく包み込んだ。
「ありがとう。君のおかげで、騒ぎにならずに済んだ」
至近距離で見つめられる琥珀色の瞳。
その奥に、いつものふざけた色はなく、真摯な光が宿っているのを見て、私の心臓がトクンと跳ねた。
な、何よ急に。
そういうキャラじゃないでしょ。
「……ど、どういたしまして。それより、あっちの屋台でクレープが売ってますよ! 行きましょう!」
私は照れ隠しのために、強引に彼の腕を引いた。
顔が熱い。
これはきっと、爆弾串の香辛料のせいだ。
絶対にそうだ。
シルヴェスターは引かれるままに歩きながら、小さな声で呟いた。
「……本当に、君を逃がしたくなくなってきたな」
その言葉は、広場の喧騒にかき消され、私の耳には届かなかった。
ただ、繋がれた手のひらの熱さだけが、いつまでも残っていた。
こうして、私たちの波乱含みのデートは、私の胃袋が満たされるまで続いたのだった。
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