子ども泥棒 ヘッポコ・エイト2世

パイナップル

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第1.5話 ヘッポコ・エイト2世 VS チュッパ&チャップス

チュッパさんお休みなさい

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そこまで話すとチュッパはウトウトと眠ってしまいそうだった

僕は慌てて聞いた
「それで話しはおしまいですか?結局、腕くらべはなかったってことですか?」

チュッパは眠い目をこすり
「いやいや、それとこれとは話しは別じゃ。わしらもプロじゃからな、泥棒仕事に私情は持ち込まない!それにな屋敷のなかを案内されたとき大きな金庫を見たんじゃよ。もしそれが『グレート・サン(偉大なわが子)』と呼ばれる難攻不落の名金庫だと知ってたら挑戦しようなんて気は起きなかったが、当時は知る由もないからな冷蔵庫を6つ縦横に並べたような大金庫を見て泥棒の血が騒いだんじゃ」

こうしてチュッパとチャップスは夜更けに改めてお屋敷に忍び込んだ。昼間に散々案内されたから迷うことはないし、警備システムもすんなりかわせた。

「わしらはたいした苦労もなく金庫に辿り着くと、さっそく開きに掛かった。わしらにかかれば、たいがいの金庫なら10分もあれば開けられる。しかし『グレート・サン』はうんともすんとも言わなかった」
チュッパをビールを一口飲んで話を続けた
「わしらは何時間も金庫と格闘したが開けられず、とうとう辺りが明るくなってきたんじゃ。わしもチャップスもヘトヘトで金庫の前に座り込んでしまった。しょうがなくその日はあきらめて帰ることにしたんじゃが『よっこらしょ』と金庫の取っ手を掴んで立ち上がろとした拍子にガチャンと音がして金庫が開いてしまった」

「えっ?金庫破りに成功してたんですか?あの『グレート・サン』を?」僕は驚いてきいた。

「わしらも最初はそう思ったよ、でも違ったんじゃ。金庫には最初からカギがかかっていなかったんじゃ」

これには僕も2度びっくり
「で?!金庫の中にはどれだけのお宝が??」僕はゴクリとつばを飲み込んだ。
チュッパは僕の様子が楽しくてしかたがないようで笑いながら続きを話してくれた
「なかにはセミの抜け殻トカゲのシッポ、トレーディングカード、キレイなビー玉、どこかキレイな風景のお城の写真や昼間一緒に遊んだ時に撮ったわしらとの写真が数枚。そんなものが入っていただけじゃった。お宝はお宝でも、子供の宝物じゃな。」

僕は金庫からあふれる金銀財宝を想像してたから、少し期待が外れてがっかりしたが記者魂を奮い立たせて質問を続けた
「まぁ、なんであろうと金庫に入ったお宝には違いないですよね?それを盗んで勝負に勝ったわけですね?」
チュッパはイヤイヤと顔を左右に振った
「わしらは盗めなかったんじゃ」
「え!?なぜですか?!」
「わしらは写真の裏を見てしまったんじゃよ。わしらと写った写真を金庫に戻したときにな。そこにはヘッポコ・エイトのかわいい文字でこう書いてあった『ぼくのともだち』ってな。
その瞬間から、わしらとヘッポコ・エイトは本当の友達になったんじゃ。友達からは盗めない。
それで、わしらは何も盗まず帰って来たというわけじゃ。」

そこまで話すと満足したのか、チュッパはほとんど眠ってしまいそうだった。最後は独り言のように
「わしらの泥棒としての1番の自慢はな50カラットのダイヤを盗んだことでも、泥棒バトルに10連勝したのことでもなく、ヘッポコ・エイト2世の友達になれたってことじゃよ。こんな栄誉なことはない」
そう言ってすやすや寝息をたて始めた。
僕はすっかり眠ってしまったチュッパに毛布を掛けてあげながら、その幸せそうな顔を眺めていた。

僕は今でもたまに考える、自分がヘッポコ・エイト2世の友達になれたらどんなに素敵だろうって。
もし君の近くに、君のこと大切に思ってくれる優しい人がいて、その人と本当の友達になりたいって思ったのなら少し勇気を出してみるといい。友達がいるって、とても素敵なことだから。チュッパ&チャップスがそうだったように『本当の友達』は君にとっての1番の宝物になると思うよ。

第1.5話おしまい
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