子ども泥棒 ヘッポコ・エイト2世

パイナップル

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第2話 ヘッポコ・エイト2世 VS ヘッポコ・エイト1世

盗まれた物

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起きたてだろうかパジャマ姿のままの1世が、大きくなった頭のツボミをゆっさゆっさと揺らしながら玄関口に現れた。
「月が、2世が、きっ金庫が!」
あわててまくし立てるぼくの言葉を聞いた1世は何ごとかをくみ取ってくれたようで身をひるがえすと足早に金庫へと向かった。ぼくは文章にならない役立たずの口を閉じるとその背中を追いかけた。

1世は金庫の前に行くとダイヤルやカギをいじりはじめた。ほんの10数秒だったが、ぼくはもどかしく気がせいた、やがて「カチキーン」と心地よい音がし金庫が解錠を知らせる。1世が両手でハンドルを回す、真ん中から金庫の扉が開くと、昨夜までギュウギュウに詰め込まれていたはずの金銀財宝が1つ残らず空っぽになって、、、なかった。

混乱したぼくが1世の顔を見ると、1世は金庫の中を見つめたままその両眼からボロボロと涙をこぼしていた。
「なにか大切なものが金庫から盗まれたのですか?」1世の横顔を凝視したままたずねると1世は
「いや金庫からは何も盗まれないわい。それどころか3つ増えとる」
ヘッポコ・エイト1世の視線の先を追うと金庫のちょうど真ん中に「ダ・ビンチのモナ・リザ」「ダチョウの卵」「大真珠」が置かれていた。それはヘッポコ・エイト2世の仕業だった。

1世は金庫に置かれた3つの宝物から「あたまはな病」の薬を調合すると一気にあおった。
するとあんなに大きかった頭の上のツボミや茎がスルスルと縮んでいって、とうとうしまいには種になってポトリと床に落ちた。
ホントに気味の悪い種だった。種の先端には口があり口のなかにはギザギザのキバが覗いていた。あのキバで頭のテッペンに噛み付いていたのかと思うと背筋がこおった。
1世はガラス瓶に種をすくうと、そのまま封印した。

病み上がりの1世が落ち着くのを待って、ぼくはインタビューをさせてもらった。だって明日の新聞に間に合わせないと

ぼくは1番大切なことから質問した
「今回の腕くらべはどちらの勝ちですか?金庫を破ったからヘッポコ・エイト2世の勝ちですか?それとも何も盗まれなかったから1世さんあなたの勝ちですか?」
ヘッポコ・エイト1世は左右に首を振りながら答えてくれた
「何も盗まれなかったなんてとんでもないヘッポコ・エイト2世は、わしからまんまと『死』を奪っていったのさ。わしの敗けじゃよ。そしてこんなにうれしい負けはない」
そう言って優しく笑った。

次の日の僕の書いた記事を君にも見せたかったな。もちろん見出しはこうさ
『ヘッポコ・エイト1世「死」を盗まれる!』
新聞は飛ぶように売れた。あんなに気持ちのいい記事を書いたのは後にも先にもはじめてだったな。

さてと、ぼくの話しはこれでおしまい。

最後に1つだけ忠告するよ。夏の暑い日や、強い日差しのときは頭に帽子をかぶることをすすめるよ。君の頭のテッペンにあの種がかじりつかない保障なんてどこにもないんだからね。

第2話おしまい
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