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荻原達とほぼ強引に別れた水無瀬は自宅に戻り、ワインセラーからボトルを抜き出し、驚く両親には目もくれず自室であおっていた。
まだ、苛立ちが納まらない。ムシャクシャした気分を何とかしたくて酒に頼ったというのに、気が晴れるどころか、酔いさえも回ってこない。深いため息と共に思い出されるのは、あの顔。
初めて会った時はただ、綺麗だと思った。しかし、話をしてみたいと思い呼び止めた姿は、予想と全く違う言葉と態度を見せつけた。
それは、アルファを毛嫌いしていると荻原から情報を得たことで納得しているが。
解せない。
それほどまでにアルファを嫌っているくせに何故、あの店にいるのか。
それを荻原は知っているのに何故、辞めさせないのか。
思えば思うほど、気分は悪くなる。せっかくのワインも、酷くまずく舌に絡む。
「あー……、もうっ!!」
結局、苛立ちが極地まで達した水無瀬は、残っていたワインをテーブルに叩きつけた。
……代々続くグループ。
国内で『水無瀬』の名を知らないものは、おそらくいないと言われるほどの。その跡取りではあるが興味はない。元々、そう言う立場に向いていない。だが。
「秀様。旦那様と奥様がお呼びです。お話がある、と」
否応なしでも、血筋が思いを拒否させる。
両親の話など聞かなくてもわかっている。見合い話。紆余曲折があったとは言え、鷲尾には子供がいる。そして、長男。彼自身も今の活動にめどがつけば、本来の仕事に戻り、家を継ぐ。……つまりは、そう言うこと。
今は鷲尾と共に動き、それを口実にしているが。このままではいつかは、皆瀬自身もグループを牽引していかなければならない。
それが嫌だから。
最近は日本に戻っても極力ホテルに宿泊していた。なのに今日は、気がついたら家に足が向き、敷居をまたいでいた。
縁談は何度も断っている。写真を見たことはあったが、張り付いた笑顔を見ただけで吐き気がした。水無瀬には姉がいて、彼女はすでに結婚し、家を出ている。相手は、グループの傘下にあたる商社の社長。アルファの中でも優秀な部類に入り、両親もその人物を気にいっている。それならば、継ぐのは彼でいい。見合いなんて時間の無駄にしかならない。
「……行かない」
「ですがっ、秀様」
「疲れてるんだよっ。そう言う話は後にしてくれっ!」
らしくなく、ぶっきらぼうに待機している執事に吐き捨てる。
「畏まりました。ですが。お話を先延ばしにされては、秀様が不利になられるだけですよ」
水無瀬の言葉を受け、忠告し、執事は去っていく。そんなことは、わかっている。わかっているが。
「くそ……っ」
スーツのまま、ベッドに身を投げ、目を閉じる。
瞼の裏に現れるのは、一つの影。ビジョンは少しずつ、クリアーになる。
佇む姿。相反する言葉と態度。それらは次第に渦に飲まれ……、見えたのは。抱き上げられたまま、欲と、色にまみれ。気怠そうに見つめる、瞳。
どんなに振り払おうとしても、べっとりと。脳裏にこびりつき、離れない。
そうして、気づく。浮かぶ姿に対して、身体が非常に素直な反応を示していることに。始めは、何度も振り払おうとしたが、無理だと判断した。そう言えば、記憶にはないが『ラット』を起こしたと鷲尾から聞いている。……だからなのか。
ふっ、と。小さく苦笑した水無瀬は起き上がり。纏っていたスーツを投げ捨て、ぬるくなったワインを再び煽り。ベッドに戻り、緩く立ち上がる物に手を伸ばす。確か、可愛らしい手だった。実際は己のものだが、そうイメージするだけで、触られているように感じるのだから、不思議だ。
「くっ……」
遊び、と言ってしまっては失礼に当たるが、女を抱いたことはゼロではない。確かにその時も快楽を得ることはできたが、今は、それ以上。
シーツにくるまれた彼を抱き寄せ、唇を奪い、啼かせ、繋がりたい。そのすべてが妄想。しかし。
「うっ、あ……っ」
扱く手は、段々と加速し。一気に水無瀬を昂ぶらせる。
「うぁ、ああ……っ!!」
声と共に、白濁がシーツに飛ぶ。残されたのは、荒く、整わない呼吸音。
確かに、吐きだした。なのに、欲の塊はまだ萎えることを知らない。
「マジか……」
水無瀬は唖然とする。しかしまた、彼の姿が脳裏に蘇り、理性で抑えることができなくなる。
これもすべて、あのフェロモンのせいなのか。
そう考えつつも、欲望に逆らうことはできなかった。
まだ、苛立ちが納まらない。ムシャクシャした気分を何とかしたくて酒に頼ったというのに、気が晴れるどころか、酔いさえも回ってこない。深いため息と共に思い出されるのは、あの顔。
初めて会った時はただ、綺麗だと思った。しかし、話をしてみたいと思い呼び止めた姿は、予想と全く違う言葉と態度を見せつけた。
それは、アルファを毛嫌いしていると荻原から情報を得たことで納得しているが。
解せない。
それほどまでにアルファを嫌っているくせに何故、あの店にいるのか。
それを荻原は知っているのに何故、辞めさせないのか。
思えば思うほど、気分は悪くなる。せっかくのワインも、酷くまずく舌に絡む。
「あー……、もうっ!!」
結局、苛立ちが極地まで達した水無瀬は、残っていたワインをテーブルに叩きつけた。
……代々続くグループ。
国内で『水無瀬』の名を知らないものは、おそらくいないと言われるほどの。その跡取りではあるが興味はない。元々、そう言う立場に向いていない。だが。
「秀様。旦那様と奥様がお呼びです。お話がある、と」
否応なしでも、血筋が思いを拒否させる。
両親の話など聞かなくてもわかっている。見合い話。紆余曲折があったとは言え、鷲尾には子供がいる。そして、長男。彼自身も今の活動にめどがつけば、本来の仕事に戻り、家を継ぐ。……つまりは、そう言うこと。
今は鷲尾と共に動き、それを口実にしているが。このままではいつかは、皆瀬自身もグループを牽引していかなければならない。
それが嫌だから。
最近は日本に戻っても極力ホテルに宿泊していた。なのに今日は、気がついたら家に足が向き、敷居をまたいでいた。
縁談は何度も断っている。写真を見たことはあったが、張り付いた笑顔を見ただけで吐き気がした。水無瀬には姉がいて、彼女はすでに結婚し、家を出ている。相手は、グループの傘下にあたる商社の社長。アルファの中でも優秀な部類に入り、両親もその人物を気にいっている。それならば、継ぐのは彼でいい。見合いなんて時間の無駄にしかならない。
「……行かない」
「ですがっ、秀様」
「疲れてるんだよっ。そう言う話は後にしてくれっ!」
らしくなく、ぶっきらぼうに待機している執事に吐き捨てる。
「畏まりました。ですが。お話を先延ばしにされては、秀様が不利になられるだけですよ」
水無瀬の言葉を受け、忠告し、執事は去っていく。そんなことは、わかっている。わかっているが。
「くそ……っ」
スーツのまま、ベッドに身を投げ、目を閉じる。
瞼の裏に現れるのは、一つの影。ビジョンは少しずつ、クリアーになる。
佇む姿。相反する言葉と態度。それらは次第に渦に飲まれ……、見えたのは。抱き上げられたまま、欲と、色にまみれ。気怠そうに見つめる、瞳。
どんなに振り払おうとしても、べっとりと。脳裏にこびりつき、離れない。
そうして、気づく。浮かぶ姿に対して、身体が非常に素直な反応を示していることに。始めは、何度も振り払おうとしたが、無理だと判断した。そう言えば、記憶にはないが『ラット』を起こしたと鷲尾から聞いている。……だからなのか。
ふっ、と。小さく苦笑した水無瀬は起き上がり。纏っていたスーツを投げ捨て、ぬるくなったワインを再び煽り。ベッドに戻り、緩く立ち上がる物に手を伸ばす。確か、可愛らしい手だった。実際は己のものだが、そうイメージするだけで、触られているように感じるのだから、不思議だ。
「くっ……」
遊び、と言ってしまっては失礼に当たるが、女を抱いたことはゼロではない。確かにその時も快楽を得ることはできたが、今は、それ以上。
シーツにくるまれた彼を抱き寄せ、唇を奪い、啼かせ、繋がりたい。そのすべてが妄想。しかし。
「うっ、あ……っ」
扱く手は、段々と加速し。一気に水無瀬を昂ぶらせる。
「うぁ、ああ……っ!!」
声と共に、白濁がシーツに飛ぶ。残されたのは、荒く、整わない呼吸音。
確かに、吐きだした。なのに、欲の塊はまだ萎えることを知らない。
「マジか……」
水無瀬は唖然とする。しかしまた、彼の姿が脳裏に蘇り、理性で抑えることができなくなる。
これもすべて、あのフェロモンのせいなのか。
そう考えつつも、欲望に逆らうことはできなかった。
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