悪役派遣所〜異世界でヒール役をやって下さい〜

神月いろは

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叔母

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「叔母さん!」
「まりちゃんでしょ!何回言ったら分かるの⁈老け込むから叔母さんはやめてよね!」

目の前にぷりぷり怒る叔母がいる。相変わらずかわいい。叔母はアラフィフだが見た目は三十代後半といったところだ。
叔母は派遣業を私に引継ぎ、自分は異世界で出逢った彼の元に行き人生を謳歌している。
まじまじと叔母をみた。また若返った気がする…

「相変わらず地味ね。元がいいんだから華やかにすればいいのに。まだ処女おとめなの?」

「ほっておいて。それより何でここに居るの?私はクレーム対応に行かないといけないんだけど」

「あーあれ嘘だから。そうでもしないとすずはこっち来ないでしょ!」

うわぁ…ヤラレた…叔母得意の”必要悪”。
叔母の持論で結果OKなら過程での嘘はチャラになるらしい。何度騙されたか…

「すずに引き継いで半年経ったわ。そつ無くこなしている様ね。安心したわ…そろそろ会ってもいい頃だと思って呼んだの」

「会うって誰に?」

「お祖父様よ。すずからしたら曽祖父になるわ」

「曽祖父って異世界の人なの⁈」

「そうよ。こちらは時間の流れがゆっくりだから、まだ元気でいるわ。もう直ぐ100歳の誕生日で盛大にお祝いをするから、すずも参加しなさい。親戚を紹介するから」

口を開けて固まってしまった。母には叔母以外親戚は居ないって聞いていた。まぁ…離婚した父方の親戚はいるけど、母が完全に縁を切ったから居ないも同然だ。今更親戚居るって言われても…それも異世界で…

確かに母も叔母も日本人離れしていて色素が薄い。
私も髪色は茶髪より亜麻色にちかい。髪も癖毛?と言うよりパーマをかけた様に、綺麗なウェーブヘアーだ。学生の頃は必ず生活指導に捕まり”何だこの髪は!”と叱られた。幼児の頃の写真と地毛申告書を毎回出していた。
曽祖父が異世界人と言われ自分の容姿に今納得した。

「それにすずもいい加減”男”しらないと、修道女になっちゃうわよ。お祖父様が居る世界は美形で情熱的な殿方が多いから大丈夫。きっと愛される喜びを得られるわ。それに貴方が子供産まないと派遣業を継ぐ人が居なくなるでしょう⁈」

確かに母と叔母は姉妹で叔母は未婚で子供が居ない。”印”を付与する能力が子に引き継がれるなら、私が子供を作らなければ途絶える。
…ってこれって一種のお見合い?

「叔母さん。私まだ彼氏とか結婚とか要らない」
「まりちゃん!!」
「…も!呼びはどうでもいいでしょ!」
「よくない!叔母さん何で呼ばれたら老けて見えるでしょ!」
「はぃはぃ…分かったから大きい声出さないで」

叔母はぷりぷり怒っている。見た目若いからいいじゃん!

「さぁ!今から行くわよ」
「いや。話は分かったから一旦帰らせて。準備したいし、家もそのままだから片付けしてきたい」
「だ~め!一旦帰ったら来ないでしょ!このまま行くから」
「いやいや…明日はまだ休みだけど、明後日は仕事あるし…」
「大丈夫。異世界は時間の流れが遅いのはすずも知っているでしょう。明日帰るならあっちでは5日ほど過ごせるわ。よゆうです!」

何か理由を作って帰ろうとするが、叔母は帰す気がない様だ。私の手を取り向こうに見える光に向かいずんずん歩いて行く。

嫌だ!なだらかな役所務め生活気に入っているのに…変化は不要ノーサンキューです!
離して!
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