近未来判事「タクヤ」

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事件簿005 『帯久』その4

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借金のかたに大事な娘を人身御供などにはできない。
とは言っても、300年の歴史ある老舗を自分の代で潰すわけにはいかない。

「どうすればいいんだ!!」
毎日頭を抱えて苦悶する南社長の様子を見て、自分のことのように苦しんでいたのは、当時本社工場長の佐藤蜜朗。

蜜朗は、26年前の大不況による大量の人員整理で10年以上勤めた車工場を突然クビになった。
次の仕事は、なかなかみつからず、元々少ない蓄えはすぐに底を突き、当時小学生だった息子の給食費さえ払えなくなっていた。
しかも、悪いことは重なるもので、昼夜連続のパートで家計を支えてくれていた妻が倒れてしまった。
妻はすい臓がんだった。
しかも既に内臓全体に転移していて手術も出来ず、3ヶ月後にはあっけなくこの世を去ってしまった。

「一生懸命働いても何もいいことは無い。せめてあの世で三人仲良く暮らそう・・・。」

息子のアツシと二人で心中しようと日向の岬の灯台に立っている時に、声をかけてきたのが南社長だった。

「そこにいる子供さんには、どんな未来が待ってるのかねぇ。君の名前は?ほぉ、アツシっていうのか。お菓子は好きか?そうか!好きか!おじさんはお菓子を作ってるんだ。食べてみないかね?」

南社長は有無を言わさず、蜜朗とアツシを自宅に連れて行った。
そして、南風のお菓子を美味しそうに食べるアツシを横で見ながら蜜朗は全ての事情を吐露した。

「苦労したなぁ。でもな、アツシ君のためにもうちょっとだけ苦労してみようじゃないか。」

南社長は経験もない蜜朗を、菓子職人の見習いとして自分の店に雇った。
蜜朗は死んだつもりで必死で働いた。そして26年経った今では本社の工場を任されるまでになった。
当時小学生だったアツシも高校を出てから、父親がいる工場に就職した。

「会社も大事だが、なによりも南社長のお役に立ちたい。」
蜜朗は、知り合いの経営コンサルタント浦賀草哉(40歳)に相談した。
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