近未来判事「タクヤ」

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事件簿008 『白波看板』その6

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捨て子の赤ん坊を引き取った男。
木綿問屋の亀屋義八とは表向きの名前。
実は江戸の大泥棒、「天切り角五郎」だった。

『天切り』というのは、屋根を切って天井から忍び込む、泥棒の手口。
乱暴な押し込み強盗と違い、盗みに入られたことを誰も気づかない、技を持っていた。

角五郎は、日頃から悪い噂が絶えない悪徳商人や賄賂役人の家だけを狙う。
誰一人傷つけることなく、しかも、盗まれたことを公に出来ないお宝だけを盗む。
盗んだ金は年寄りや病人がいるような貧しい町民の長屋に配っていく。
いわゆる義賊だったのだ。

引き取られた赤ん坊は角五郎の棲家、根津門前の料理茶屋「すすきや」で元気に育っていった。
育ての父は、江戸で知らぬものの無い天下の大義賊「天切りの角五郎」。
育ての母は、プロでさえ盗まれたことに気付かない凄腕のスリ師「玄の前およう」。
角右衛門と名付けられた子供は、二つ名を持つ泥棒夫婦にきっちりと育てられ「立派な」泥棒に育っていった。

角右衛門の初仕事は19歳のとき。
大火事が続くなか、売り控えで値段を吊り上げ、火事太りと陰口を叩かれていた米問屋「越後屋」に10名の盗賊を指揮して侵入し、金三千両と米20俵を盗み出した。

越後屋では誰一人傷つけなかったうえに、盗んだ金と米は火事で焼け出された江戸の人々に配られた。
これは天切り角五郎の息子の仕業らしいという評判が立ち、この事件から角右衛門は「白浪角右衛門」と呼ばれるようになる。

ちなみに「白浪」は盗賊の別名である。
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