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34.進展
降り積もった雪が完全に溶けると、新しい命が芽吹く。
各地の羊小屋では、新しく生まれた子羊が慌ただしく乳を求めて鳴いている。
もう少し育ったら奥様に召し上がっていただこう。
子羊の肉付きを確認しながら、エマトンは満足そうに頷いていた。
「エマトンさん、神殿に行く時間では?」
羊小屋の下男が声をかけると、エマトンは思い出したように急いで小屋を後にした。
エマトンが神殿に到着すると、すぐ後にマルグリットを乗せた馬車が神殿の前に止まった。
間に合った。
エマトンは息を整えて、オスカーに手を引かれて馬車を降りるマルグリットに頭を下げた。
マルグリットはエマトンの息が上がっているのを見て、目を細めたがそのまま神殿の中に足を進めた。
「これを御覧ください」
司祭が自慢気に広げたのは、12枚の襟飾りと3組の袖飾りだった。
「ひと月の間にこれを?」
マルグリットが尋ねながら、手に取ると、金糸や銀糸で編まれているのに、麻のように軽かった。
いつもなら司祭の自慢気な顔が鼻につくが、今日はそれよりも目の前の作品の美しさに目が行く。
これまで通りの単純な意匠でさえ、金糸や銀糸で編むと芸術品に見えるというのに、トールスの作った意匠を合わせると、絵画のような美しさだ。
「奥様からお預かりした職人が製作いたしました。これだけのものを作れるのなら、もう一人前かと」
司祭はご機嫌だった。
レースそのものを売るよりも、糸とレースの歩合を受け取ったほうが利益になると結論付けたのだろう。
マルグリットも微笑んだ。
雪解け前から準備していた工房では、彼女たちから技術を教えてもらいたい者たちが大勢待ち構えていたのだから。
神殿を出ると、マルグリットは桑畑へと馬車を回した。
「植え替えは半分以上完了しています。根付きもいいようで、枯れてしまった木は今のところありません。夏芽の時期には完了するでしょう」
エマトンの言う通り、これまで乱雑に生えていた桑の木は、見事に整然と植え替えられていた。
ところどころ穴が空いているのを見るに、この穴に植え替えるのだろう。
作業をしている者たちの顔も活き活きしている。
桑畑の近くでは、養蚕小屋の建築が進められていた。
「これは奥様」
ノーマンがわざとらしく頭を下げると、マルグリットは「ごきげんよう」と声をかけた。
小さな部屋がいくつも連なった造りの小屋を指さして、ノーマンは勝手に説明を始めた。
「1階は糸を取るために釜を置きます。冬は蚕が死なないよう、1階で火を炊くんですわ。2階は床をすのこ状にすることで、1階の暖気をあげて蚕があったかいようにしてやるんですよ。部屋を区切るのは、部屋が広いと熱が逃げますからね――」
「いつ頃完成しそうかしら」
説明を邪魔しないよう相槌を打つつもりだったが、つい本音が出てしまった。
「植え替えが終わる頃には完成して、蚕の幼虫を連れてきますよ」
だが、ノーマンは気にせずに当然のように機嫌よく答えると、マルグリットは微笑んだ。
「あとふた月ほどなのね――楽しみだわ」
マルグリットは小屋の建築の様子を微笑んだまま、しっかりと見つめていた。
各地の羊小屋では、新しく生まれた子羊が慌ただしく乳を求めて鳴いている。
もう少し育ったら奥様に召し上がっていただこう。
子羊の肉付きを確認しながら、エマトンは満足そうに頷いていた。
「エマトンさん、神殿に行く時間では?」
羊小屋の下男が声をかけると、エマトンは思い出したように急いで小屋を後にした。
エマトンが神殿に到着すると、すぐ後にマルグリットを乗せた馬車が神殿の前に止まった。
間に合った。
エマトンは息を整えて、オスカーに手を引かれて馬車を降りるマルグリットに頭を下げた。
マルグリットはエマトンの息が上がっているのを見て、目を細めたがそのまま神殿の中に足を進めた。
「これを御覧ください」
司祭が自慢気に広げたのは、12枚の襟飾りと3組の袖飾りだった。
「ひと月の間にこれを?」
マルグリットが尋ねながら、手に取ると、金糸や銀糸で編まれているのに、麻のように軽かった。
いつもなら司祭の自慢気な顔が鼻につくが、今日はそれよりも目の前の作品の美しさに目が行く。
これまで通りの単純な意匠でさえ、金糸や銀糸で編むと芸術品に見えるというのに、トールスの作った意匠を合わせると、絵画のような美しさだ。
「奥様からお預かりした職人が製作いたしました。これだけのものを作れるのなら、もう一人前かと」
司祭はご機嫌だった。
レースそのものを売るよりも、糸とレースの歩合を受け取ったほうが利益になると結論付けたのだろう。
マルグリットも微笑んだ。
雪解け前から準備していた工房では、彼女たちから技術を教えてもらいたい者たちが大勢待ち構えていたのだから。
神殿を出ると、マルグリットは桑畑へと馬車を回した。
「植え替えは半分以上完了しています。根付きもいいようで、枯れてしまった木は今のところありません。夏芽の時期には完了するでしょう」
エマトンの言う通り、これまで乱雑に生えていた桑の木は、見事に整然と植え替えられていた。
ところどころ穴が空いているのを見るに、この穴に植え替えるのだろう。
作業をしている者たちの顔も活き活きしている。
桑畑の近くでは、養蚕小屋の建築が進められていた。
「これは奥様」
ノーマンがわざとらしく頭を下げると、マルグリットは「ごきげんよう」と声をかけた。
小さな部屋がいくつも連なった造りの小屋を指さして、ノーマンは勝手に説明を始めた。
「1階は糸を取るために釜を置きます。冬は蚕が死なないよう、1階で火を炊くんですわ。2階は床をすのこ状にすることで、1階の暖気をあげて蚕があったかいようにしてやるんですよ。部屋を区切るのは、部屋が広いと熱が逃げますからね――」
「いつ頃完成しそうかしら」
説明を邪魔しないよう相槌を打つつもりだったが、つい本音が出てしまった。
「植え替えが終わる頃には完成して、蚕の幼虫を連れてきますよ」
だが、ノーマンは気にせずに当然のように機嫌よく答えると、マルグリットは微笑んだ。
「あとふた月ほどなのね――楽しみだわ」
マルグリットは小屋の建築の様子を微笑んだまま、しっかりと見つめていた。
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