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第一章 英雄の帰還

9 合格発表

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 「面接は以上だ」

 面接官が去っていく。

 「おい!ふざけてんのかアンタ!?」

 先程カルマと呼ばれた男がアランの胸ぐらを掴む。

 「な、なんだよ」

 「冷やかしか!?僕らは本気でここに来てるんだぞ!?」

 「おいおい……やめなさいよ」

 バスが止めに入る。

 「なんだよ急に……俺だって本気だ」

 「本気な訳があるか!!バスさんだって思ったでしょう!?僕らはあのウイルスに家族を奪われたんだぞ!?そんな悲しみも……辛さも知らないで………本気を語るな!!」

 「……」

 「まぁまぁカルマ君……君は君じゃないか…他の人なんか気にすることないよ…こんなことで君の将来を閉ざすんじゃない」

 「けど……」

 「さぁ。手を離しなさい」

 カルマが手を離す。

 「さっきから悲しいやら……辛いやら…」

 アランが俯いていた顔を上げる。

 「てめぇらにとって……家族の死は誇りかなんかかよ?」

 「貴様……!」

 今度はバスがアランの胸ぐらを掴む。

 「いくら舐めたことを言っても構わないが……家族をバカにするのだけは許さんぞ!」

 「アンタらの家族をバカにしてる訳じゃねえよ。アンタらをバカにしてるんだよ」

 アランがバスの腕を振り払う。

 「自分が命を懸ける理由を…死んだ家族に押し付けんなよ!アンタらの家族はウイルスへの復讐なんて望んじゃいねぇよ!」

 
 「悲しい?泣いた?バカか?それで何が変わるんだよ?悲しんで泣いて自分が楽になるだけだろ?それで家族のため?ふざけんなよ!」

 
 「アンタらは泣いてろ。悲しんでろ。それだけでいい。もうこれ以上傷つく必要なんてない」

 
 「俺だって家族を失ってる……でも悲しむ時間すら惜しい。いくら傷つこうが、俺はその一瞬を望みのために使う」


 「もう……」




 もうこんな思いは、俺以外誰にもさせない




 「それが俺の望みだ」

 

 「ンーーー!!素晴らしい!」

 突如背後から声が聞こえる。

 パチパチパチパチ……。

 「ンーー?驚かせたかな?」

 そう首を傾げたのは、青い髪に丸いメガネの男。

 「ンーー。君の名前を聞かせてもらっても?」

 その男が丁寧に手を差し出す。

 「な、なんだよ。俺はアラン・ロバーツだ」

 「ロバーツ……なるほど……!」

 くるっと男は向きを変え、去っていく。

 「ちょっと!なんなんですかアンタ!僕やバスさんよりコイツが正しいって言うですか!?」

 「ンーー?もう面接は終了ですよ?さぁ帰りなさい」

 男はヒラヒラと手を振った。











 「え~では今年の100名の結果を発表しよう」

 面接の終わった俺たちは全員が一つの部屋に集められた。

 「合格者はオスピタルの最高責任者である、ヲルス・シェードに発表していただく」

 ヲルスさん、と呼ばれて1人の男が前に出てきた。

 「え……!?」

 「ンーーー!」

 そこには見覚えのあるの青髪の男が。

 「ンーー!今年は素晴らしい!!なんと2人も合格者がいます!その名は…………

 78番ユン・ウォーレン!!

 100番アラン・ロバーツ!!」

 ヲルスが声高らかに宣言した。

 「やったー!!!やったよ!アラン!!」

 「あぁ……やった。やっと……ここまで来れた」






 「ンーー!じゃあ改めて2人とも……合格おめでとう」

 ヲルスに連れられ、俺たち2人はオスピタルの【ヘッドルーム】に来ていた。

 「まぁ説明は後々するとして……まずは自己紹介からーー」

 「ちょっと待ってください!!」

 バタン!と、音を立てドアが開く。

 「なんだい?許可なくヘッドルームには入っちゃいけないよ?」

 「なんでその100番が合格なんですか!?説明をしてください!」

 ヘッドルームに飛び込んできたのは、俺たち98~100番を担当していた面接官だった。

 「ンーーー?あ、そっか。そうだそうだアランくん。何故君は面接官に<俺の望みだから>しか言わなかったのかな?」

 「え?いや…キンじぃが真っ直ぐに答えろって言うから……」

 「ンーー!!?ハハハハハハ!!!やっぱり素晴らしい!流石ロバーツだ!」

 「あ、あの……説明は……?」

 「ンーーー?そうだな……あ!僕のお墨付きってことにしてくれ!」

 「い、いやそれだけじゃどうも……」

 「ンーー!いいからいいから!大丈夫!」



 「この2人は……きっと素晴らしい事をしてくれる!」
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