血の医者〜僕らの仕事は人を殺すことです〜

タコオカ

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第一章 英雄の帰還

15 作戦決行2

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 「君たちメディクスは二手に分かれてもらう。怪物戦闘班と救出班だね」

 てきぱきと地図に線を引いていく。

 「怪物戦闘班は文字通り怪物と戦闘、あわよくばここで捕獲してもらいたいね。メンバーは……戦闘能力的にタイガとアランと言いたいところだけど……相手が逃走を始めるかもしれない点、そして2人で戦う場合、カバーする動きはユンの方が上手い点、この二つを考慮して、タイガとユンにやってもらうね」

 「は、はい!」

 「はい」

 「で、救出班はアランとパパ。タイガとユンは【盾の怪物】を引きつけたら笛を鳴らして。それを合図にアランとパパは6人を救出。もし【盾の怪物】が逃走を始めてもすぐに駆けつけることができる山の中腹にいよう。あと、もしあいつ戦闘能力が高かったら4人で戦ってもらうね」

 「はい!」

 「了解だよ!ミナ!」

 「う~ん。キモいね。でも健闘を祈るよ」






 「でもお前あれだろ?本当は戦いたかっただろ?」

 「そりゃあ…なんとための修行だよってなりますから。でもタイガさんがいるなら安心です」

 「まあな……しっかしミナも怖え作戦考えるよな……医療班肝座りすぎだろ」

 「誰が怖いって?」

 「ひぃ!!!」

 振り返ると背後にミナさんが立っていた。

 「気を抜かないでね。あなたたちは前の小屋でも、後ろでも、笛が鳴った方に駆けつけるのよ。あ、そうね……アラン、君のスピードが役に立ちそうね」

 「お、おい?パ、パパは?」

 「たった一瞬で、どれくらいの犠牲者が出るか、よく考えてね」

 「おーい無視?」

 「はい……というかミナさんはどこで待機するんですか?」

 「え?嫌われてる?」

 「私は……ここにいようかな。医療班副隊長として、部下より後に命を懸けるわけには行かないからね」

 「お?パパなくぞ?」

 「ほら、メスもあるし」

 ミナさんは笑顔で体にくくりつけたロープとメスを見せてきた。







 「準備はいいか?ユン」

 「は、は、は、は、はい!!!」

 「そう緊張するな、いつも通り行こう」

 2人はゆっくりと小屋へと近づいている。

 「お前が面接で何を言ったか聞いたぞ。成長したな。お前のお父さんとお母さんも誇らしく思っているさ」

 「は、はい……ありがとうございます」

 「よし、まずは俺が小屋入る、逃げられないよう出入り口は頼んだぞ」

 「は、はい!」





 あれからどれくらい経っただろうか。

 「おかしいね、どちらの笛も鳴らない……」

 「かと言って勝手に動くわけには行かないんですよね?」

 「そうだな。一体上で何が起きてるのか……」

 「ほんとに……」






 ドックン!!






 「っ!!」

 まただ。

 4年ぶりに感じた。

 あの悪い気配だ。

 「今、何か恐ろしいものが下に行きませんでした?」

 「え?いやなんも?」

 「気のせいだと思うね」

 「いや、確実にいましたって!」

 「おいおい……勘弁してくれよ」

 「本当ですよ!ちょっと見に行ってきます!」

 「まって」

 「もしがあったらどうするんですか!俺は行きまーー」




 「まって!!!」


 
 ビクッとなるほど大きな声でミナさんが言った。この人はこんなに声を出せる人だったのか。

 「まって。お願いだから」

 「で、でも……」

 「あなたは……母を守ってくれなかったオスピタルを…信用できないのかもしれない……それでも…まって。信じて。絶対救うから。ここで逃したら……みんなの…ノーナの命を無駄にしないでほしいの…」

 ミナさんは目に涙を浮かべていた。

 「たのむ、アラン。俺からも。信じてくれ……今怪物が逃げてきたら……すべて無駄になるんだ」

 「わ、分かりました…」

 幸い、悪い気配はすぐに消え去った……いや、ただ遠ざかっただけかもしれない。

 






 ピィーーーーーー! 


 上から笛が鳴った

 「よし!よかった上だ!いくぞアラン!」

 「はい!早くみんなを助けに……」

 ピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィピィーーーーーーーーーーーーーーーー!


 「え?」

 山のふもとに、笛が鳴り引いた。
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