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94話、弟。
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前期試験が終われば、デート。前期試験が終わればデート。前期試験が終われば。
呪文のように繰り返しているうちに、いつの間にか日々は過ぎていく。
美郷店長と姉ちゃんの件にかたがつき、バイト先から美郷店長と永田板長の名前が消えた。本店の運営は、一旦は篠原さんに任され、金子から愚痴のメッセージがたくさん届く。まぁ、前期試験を理由にして、無視をしていたけれど。
俺は宮田店長に、今月いっぱいでバイトを辞めることを告げ、受理された。美郷店長が俺の姉に危害を加えたことは、上層部と店長クラスしか知らないが、それも時間の問題だろう。好奇の目にさらされる前に、との判断だ。
事件は小さく報道されたが、前期試験で忙しい教授や学生の目にとまることはなかったようだ。それだけはホッとしている。
姉ちゃんは、退院の翌々日から仕事に復帰した。あれこれ詮索されるかと思いきや、課長さんの根回しが良かったのか、事件に触れてくる人はほとんどいなかったようだ。おかげで、姉ちゃんはジュラルミンケース代以上の恩を課長さんに感じているみたいだ。
一週間の記憶がないことにより、多少なりとも業務に影響があったみたいだけれど、隣に座っている川口さんが手助けをしてくれているようで……腹が立つ。いや、姉ちゃんの業務には役立っているみたいだけど、やっぱりわかっていても、腹が立つ。
カナさんもよく気遣ってくれているみたいで、ありがたいことだ。
姉ちゃんと俺の関係に、大きな変化はない。
毎日キスはしているけれど、それ以上のことはしていない。一緒に寝てもいないし、お風呂にも入っていない。生殺しの状態のまま、俺は頑張っている。頑張っている。すごく頑張っている。たまに胸を揉むけど。
「そういえば、昨日被害届取り下げに行ったとき、水谷さんから食事に誘われたよ」
水谷警部補。まだ姉ちゃんのことを諦めていなかったのか。
「なんて答えたの?」
「彼氏がいるので行けません」
姉ちゃんの髪の毛をブラシで整えて、ドライヤーをしまう。
ソファからこちらの様子を伺っている姉ちゃんは、「褒めて」と言っている犬みたいだ。
「上出来じゃん。模範回答にしなきゃ」
「うん、でしょ?」
ソファで利口に待っている姉ちゃんにキスを落として、お風呂上がりの匂いを堪能する。
姉ちゃんはだいぶキスが好きになったみたいで、舌を挿れても動じないし、むしろ求めてくる。その間に胸を揉んでも、体のラインを優しくたどっても、ソファに押し倒しても、拒否しない。それどころか、もっと触ってもらいたいみたいで、小さく喘ぐ。
――抱きたい。
際限なく溢れてくる自分の欲望を、まだ姉ちゃんにぶつけるわけにはいかない。
「あ、ダメ、ショウ」
「いいじゃん。キスマークくらいつけさせてよ」
姉ちゃんの胸元には、昨日つけた痕がまだ残っている。上書きするようにまた赤い印を刻む。
――抱きたい。
あと一日。あと一日で試験が終わるから。
「もう、恥ずかしいじゃん」
「恥ずかしいのがいいんじゃん」
腕の下にいる姉ちゃんにキスをすると、姉ちゃんは俺の首の後ろに手を回してぎゅうと抱きしめてくる。姉ちゃんの熱が伝わってくる。胸の柔らかさも、二の腕の柔らかさも、お腹の、太ももの、柔らかさも。
唇を重ね、お互いの味を貪る。姉ちゃんの柔らかさにもっと溺れたい。
――抱きたい。
「姉ちゃん、ダメ」
「……だめ?」
「うん、ダメ。やめられなくなるから」
「……やめな」
姉ちゃんの唇を塞ぐ。次の言葉を言わせないために。
……やめないで。
姉ちゃんの我慢が限界であることは、俺がよくわかっている。太ももがもじもじと動いて、触れて欲しくて堪らないって顔をしているのも知っている。俺だって、触れたい。もう我慢したくない。
けれど、今は。
「だーめ。明日、ゆっくり抱いてあげるから」
むぅと頬を膨らませる姉ちゃんの額にキスをして、起き上がる。
「明日、寄り道しないで早く帰っておいで。ごはん作って待ってるから」
「出し巻きも?」
「作るよ。姉ちゃん、俺の作った出し巻き好きでしょ?」
「うん、好き!」
姉ちゃんの機嫌が直って良かった。
さて、勉強の合間に出し巻きに合う料理を考えますか。
あと一日。
無事に過ごせますように。
呪文のように繰り返しているうちに、いつの間にか日々は過ぎていく。
美郷店長と姉ちゃんの件にかたがつき、バイト先から美郷店長と永田板長の名前が消えた。本店の運営は、一旦は篠原さんに任され、金子から愚痴のメッセージがたくさん届く。まぁ、前期試験を理由にして、無視をしていたけれど。
俺は宮田店長に、今月いっぱいでバイトを辞めることを告げ、受理された。美郷店長が俺の姉に危害を加えたことは、上層部と店長クラスしか知らないが、それも時間の問題だろう。好奇の目にさらされる前に、との判断だ。
事件は小さく報道されたが、前期試験で忙しい教授や学生の目にとまることはなかったようだ。それだけはホッとしている。
姉ちゃんは、退院の翌々日から仕事に復帰した。あれこれ詮索されるかと思いきや、課長さんの根回しが良かったのか、事件に触れてくる人はほとんどいなかったようだ。おかげで、姉ちゃんはジュラルミンケース代以上の恩を課長さんに感じているみたいだ。
一週間の記憶がないことにより、多少なりとも業務に影響があったみたいだけれど、隣に座っている川口さんが手助けをしてくれているようで……腹が立つ。いや、姉ちゃんの業務には役立っているみたいだけど、やっぱりわかっていても、腹が立つ。
カナさんもよく気遣ってくれているみたいで、ありがたいことだ。
姉ちゃんと俺の関係に、大きな変化はない。
毎日キスはしているけれど、それ以上のことはしていない。一緒に寝てもいないし、お風呂にも入っていない。生殺しの状態のまま、俺は頑張っている。頑張っている。すごく頑張っている。たまに胸を揉むけど。
「そういえば、昨日被害届取り下げに行ったとき、水谷さんから食事に誘われたよ」
水谷警部補。まだ姉ちゃんのことを諦めていなかったのか。
「なんて答えたの?」
「彼氏がいるので行けません」
姉ちゃんの髪の毛をブラシで整えて、ドライヤーをしまう。
ソファからこちらの様子を伺っている姉ちゃんは、「褒めて」と言っている犬みたいだ。
「上出来じゃん。模範回答にしなきゃ」
「うん、でしょ?」
ソファで利口に待っている姉ちゃんにキスを落として、お風呂上がりの匂いを堪能する。
姉ちゃんはだいぶキスが好きになったみたいで、舌を挿れても動じないし、むしろ求めてくる。その間に胸を揉んでも、体のラインを優しくたどっても、ソファに押し倒しても、拒否しない。それどころか、もっと触ってもらいたいみたいで、小さく喘ぐ。
――抱きたい。
際限なく溢れてくる自分の欲望を、まだ姉ちゃんにぶつけるわけにはいかない。
「あ、ダメ、ショウ」
「いいじゃん。キスマークくらいつけさせてよ」
姉ちゃんの胸元には、昨日つけた痕がまだ残っている。上書きするようにまた赤い印を刻む。
――抱きたい。
あと一日。あと一日で試験が終わるから。
「もう、恥ずかしいじゃん」
「恥ずかしいのがいいんじゃん」
腕の下にいる姉ちゃんにキスをすると、姉ちゃんは俺の首の後ろに手を回してぎゅうと抱きしめてくる。姉ちゃんの熱が伝わってくる。胸の柔らかさも、二の腕の柔らかさも、お腹の、太ももの、柔らかさも。
唇を重ね、お互いの味を貪る。姉ちゃんの柔らかさにもっと溺れたい。
――抱きたい。
「姉ちゃん、ダメ」
「……だめ?」
「うん、ダメ。やめられなくなるから」
「……やめな」
姉ちゃんの唇を塞ぐ。次の言葉を言わせないために。
……やめないで。
姉ちゃんの我慢が限界であることは、俺がよくわかっている。太ももがもじもじと動いて、触れて欲しくて堪らないって顔をしているのも知っている。俺だって、触れたい。もう我慢したくない。
けれど、今は。
「だーめ。明日、ゆっくり抱いてあげるから」
むぅと頬を膨らませる姉ちゃんの額にキスをして、起き上がる。
「明日、寄り道しないで早く帰っておいで。ごはん作って待ってるから」
「出し巻きも?」
「作るよ。姉ちゃん、俺の作った出し巻き好きでしょ?」
「うん、好き!」
姉ちゃんの機嫌が直って良かった。
さて、勉強の合間に出し巻きに合う料理を考えますか。
あと一日。
無事に過ごせますように。
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