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第一章
06.オルガと少年の脱走計画
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「わぁ、美味しい! このグラタン美味しいよ!」
「ちょっと冷めてしまいましたが」なんて言いながらリュカが夕飯として持ってきてくれたのは、熱いままのグラタンだ。オレンジオニオンは赤くなるまで炒められており、香ばしい。香味鶏の胸肉もしっとりホクホクだ。
私が食べているのを、リュカは格子の向こう側からニコニコと笑顔で見つめている。先日の会話で林檎のグラタン、と聞いてグラタンを作りたくなったんだそうだ。
今日から星降祭りが始まった。賑やかな音楽が聞こえてくる。大通りには屋台が並び、いつも以上に酔っ払いが増えていることだろう。
聖教会本部では、星降祭り六日目に行なわれる成人の儀の準備で大わらわだという。コレット様やドミニク様の儀式も聖教会の神殿で行われるため、飾り付けや衣装合わせ、来賓の席決めなどやることがたくさんあるのだ。王族が出席する儀式は、警護や導線など、決めることがたくさんあるらしい。
七日目には婚約発表と披露宴が王城で行なわれるらしいから、列席する上位聖職者たちは連日大忙しだろう。私には関係のない話だ。
「僕が世話係をしていた大主教のラプラード様に、姉君様のことを相談してみたんです。どうにかならないか、と」
夕飯を食べ終えたあと、いつものようにリュカが格子の隙間から私の手を握る。緊張のためか、しっとりと汗ばんでいる。
「ラプラード様は『どうにもならない』と仰せでした。残念ながら……姉君様は聖教会内でずっと過ごすことが決められているようです」
何となく予想はしていた。私は期待していなかったのだけど、リュカは期待していたのか、ずいぶん落ち込んでいるように見える。
仕方がない。だって人質だもの。聖教会が手放すわけがない。
「勇者様に姉君様が虐げられていることをお伝えする方法を探したのですが、世界中を旅して回っておられるので、書簡のようなものでは難しく……すみません、僕では力及ばず」
「大丈夫よ、リュカ。気にしてくれてありがとう」
「大丈夫ではありません。ですから、僕は考えました。星降祭りの慌ただしさを利用して、姉君様を逃がすことができるのではないかと」
「……え?」
塔の鍵は、二つある。塔の出入り口の鍵と、私がいる部屋の鍵。出入り口の鍵は世話係のリュカが持っているけれど、部屋の鍵は総主教が持っているらしい。成人の儀で警備が手薄になるので、総主教の部屋から盗み出すことも容易なのではないかとリュカは考えている。
そんなに簡単なことじゃないだろう。総主教が鍵を部屋に置いておらず、肌身離さず所持していたとしたら? 警備兵に見つかったら? 鍵が見つからなかったら? 都度、計画を変更しなければならない。
リュカが失敗し、このことが露見した場合、責任を取らされるのは彼だ。破門されるか、国外へ追放されるか、とにかく重い処罰が科せられるだろう。
「だ、ダメよ。失敗したら全部リュカのせいになっちゃう。そんな危険なことはさせられないわ。ねぇ、考え直して、リュカ。私は今のままでも大丈夫なの。だから」
「だから、この先ずっと我慢するんですか?」
「ええ、我慢できる。我慢するわ。だから、やめましょう?」
「僕が我慢できないんですよ」
リュカが手を握る。痛いほどに強く、強く。
「好きな人が自分以外の男に凌辱されているのを見て喜ぶような趣味はありません。あの男じゃあるまいし」
「リュカ……?」
「姉君様の体に他の男が触れるのも、抱かれるのも、本当は嫌なんです。僕はここで、手の届く範囲でしかあなたに触れられないのに、他の男はあなたの中に押し入っているかと思うと、嫉妬で狂いそうになる」
リュカが私の世話係になってから、何度男の相手をしただろう。何度、抱かれただろう。何度、リュカを傷つけたのだろう。
あの瓶の中身の想像はついているはずだ。朝、私の姿を見るたびにつらかったはずだ。
「ごめん。ごめんね、リュカ」
握った手の甲に口づける。これが二人の精一杯だ。手の上でしか触れ合えない二人の限界だ。
格子越しにリュカが私を抱きしめることができても、私が彼を抱きしめることはできない。格子の隙間からキスをすることはできるかもしれないけれど、ちょっと間の抜けた形になる。
「あなたが好きです」
顔を上げると、リュカが泣きそうな顔で笑っている。
「あなたと一緒になれるなら、僕は何だってできる。何だってやってみせます」
リュカの目は真剣だ。そして、やる気に満ち溢れている。「だから、僕に頑張らせてください」と笑う。
「オルガ様、一緒に逃げましょう。それから、僕と結婚しましょう」
すぐに答えられない。
弟のためなら、こんなろくでもない場所ででも生きていける。死んだほうがマシなような扱いを受けても、まだ我慢できる。
一年の間に、私の心は折れてしまっている。だから、今、「逃げよう」と言われても、躊躇してしまうのが現状だ。
私が逃げたら、弟はどうなる? 弟が勇者のままでいられるとは限らない。聖教会が新しい勇者を擁立するかもしれない。勇者が二人いるのは聖教会にとっては不都合だから、弟を一方的に悪人に仕立て上げてどこか遠くの地へ追放することも容易なはず。
私は、弟を不幸にしたいわけじゃない。私の不幸の上に弟の幸せ――世界中の幸せが成り立っているのなら、現状を享受するだけの覚悟はある。……自己犠牲かもしれないけれど。
「やっぱりダメだわ。もう少し時間が欲しい」
「次にこんな絶好の機会がやってくるのは、いつかわかりません。コレット様やドミニク様の結婚式、建国祭、生誕祭……聖教会が慌ただしい時期を狙うのは難しくはありませんが、そのときに姉君様の体調が良いとも限りません。これ以上怪我を増やされたらどうするおつもりですか」
「それは」
「怪我だけではありませんよ。もし、避妊薬を使わせてもらえなくなったら? 意図的に孕まされるようなことになったら? 姉君様はお優しいので、赤子を守りたいと考えるでしょうね。生まれた子を愛しいと思うでしょうね。おわかりでしょう? 次の人質を作ってくれるなら、聖教会は何だってするんですよ」
リュカの言葉にゾッとする。
確かに、そうだ。私が逃げようとするなら、逃げられなくすればいいだけのこと。足を不自由にされても脱走を企てるのであれば、身重にしてしまえばいいと考える輩が少なくないはずだ。赤ん坊が生まれたら、当分は逃げられなくなる。下手をすると、赤ん坊を新たな人質として取り上げられてしまうかもしれない。そうなったら、最悪だ。
「僕は成人していないから、姉君様に近づけるんです。まだ子どもだから、聖職者たちの疑いが向けられることなく、姉君様のそばにいられるんです。成人したら、世話係は解任されるでしょう。本部勤めを希望しても、追い出されるかもしれない。猶予はないんです」
「リュカ……でも、こんなことであなたの人生を狂わせていいわけがないわ」
リュカにはリュカの人生を歩んでほしい。
私と共に逃げてしまえば、聖教会から追われることになるだろう。聖教会を信仰していない国は少ない。知人もいない不慣れな土地で、二人生きていくことはできるだろうか。そもそも、まだ成人していないのに、リュカにそんな生活をさせてしまっていいものだろうか。
そう、私にはまだ、リュカと一緒に生きる覚悟がない。まだ、迷っている。
「こんなこと、ですか」
リュカの声が低くなる。緑色の目が私を睨めつける。怒らせて、しまったみたいだ。
「僕はあなたを愛したことを、こんなことだとは思っていません。もっと狂わせてもらいたいくらいですよ」
リュカが私の手を引く。格子の結界に阻まれ、手は外側には出ないけれど、リュカの顔が目の前にやってくる。私の首の後ろに手を回し、リュカはそのまま私を引き寄せる。
「もっとあなたに狂いたい」
格子の隙間から触れる唇は、柔らかくて温かい。ヌルと侵入してきた舌は熱く、菓子のように甘い。格子の隙間から差し込まれたリュカの腕が、逃げられないよう私を抱きしめる。意外と力が強くて、離れられない。
「オルガ様」
田舎の森の色に似た目が、葉から零れ落ちる水滴のように澄んだ瞳が、私を映す。
「僕と一緒に逃げてくださるなら、口づけを。そうでないなら、首を横に振ってください。僕はオルガ様の気持ちを尊重します」
今、覚悟を求められている。
囚われたまま一生を終えるのか、遠くへ逃げて自由に暮らすのか、二つに一つ。リュカの誘いを断り弟の帰りを待つのか、弟を裏切りリュカと逃げるのか、二つに一つ。
私は――。
「オルガ様」
隙間から飛び出たリュカの鼻に、キスをする。リュカは顔を赤らめ、破顔した。
「仰せの通りに」
ここから、逃げよう。リュカと共に。聖教会の、セドリックの手が届かぬ、遠い場所へ。
「ちょっと冷めてしまいましたが」なんて言いながらリュカが夕飯として持ってきてくれたのは、熱いままのグラタンだ。オレンジオニオンは赤くなるまで炒められており、香ばしい。香味鶏の胸肉もしっとりホクホクだ。
私が食べているのを、リュカは格子の向こう側からニコニコと笑顔で見つめている。先日の会話で林檎のグラタン、と聞いてグラタンを作りたくなったんだそうだ。
今日から星降祭りが始まった。賑やかな音楽が聞こえてくる。大通りには屋台が並び、いつも以上に酔っ払いが増えていることだろう。
聖教会本部では、星降祭り六日目に行なわれる成人の儀の準備で大わらわだという。コレット様やドミニク様の儀式も聖教会の神殿で行われるため、飾り付けや衣装合わせ、来賓の席決めなどやることがたくさんあるのだ。王族が出席する儀式は、警護や導線など、決めることがたくさんあるらしい。
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「僕が世話係をしていた大主教のラプラード様に、姉君様のことを相談してみたんです。どうにかならないか、と」
夕飯を食べ終えたあと、いつものようにリュカが格子の隙間から私の手を握る。緊張のためか、しっとりと汗ばんでいる。
「ラプラード様は『どうにもならない』と仰せでした。残念ながら……姉君様は聖教会内でずっと過ごすことが決められているようです」
何となく予想はしていた。私は期待していなかったのだけど、リュカは期待していたのか、ずいぶん落ち込んでいるように見える。
仕方がない。だって人質だもの。聖教会が手放すわけがない。
「勇者様に姉君様が虐げられていることをお伝えする方法を探したのですが、世界中を旅して回っておられるので、書簡のようなものでは難しく……すみません、僕では力及ばず」
「大丈夫よ、リュカ。気にしてくれてありがとう」
「大丈夫ではありません。ですから、僕は考えました。星降祭りの慌ただしさを利用して、姉君様を逃がすことができるのではないかと」
「……え?」
塔の鍵は、二つある。塔の出入り口の鍵と、私がいる部屋の鍵。出入り口の鍵は世話係のリュカが持っているけれど、部屋の鍵は総主教が持っているらしい。成人の儀で警備が手薄になるので、総主教の部屋から盗み出すことも容易なのではないかとリュカは考えている。
そんなに簡単なことじゃないだろう。総主教が鍵を部屋に置いておらず、肌身離さず所持していたとしたら? 警備兵に見つかったら? 鍵が見つからなかったら? 都度、計画を変更しなければならない。
リュカが失敗し、このことが露見した場合、責任を取らされるのは彼だ。破門されるか、国外へ追放されるか、とにかく重い処罰が科せられるだろう。
「だ、ダメよ。失敗したら全部リュカのせいになっちゃう。そんな危険なことはさせられないわ。ねぇ、考え直して、リュカ。私は今のままでも大丈夫なの。だから」
「だから、この先ずっと我慢するんですか?」
「ええ、我慢できる。我慢するわ。だから、やめましょう?」
「僕が我慢できないんですよ」
リュカが手を握る。痛いほどに強く、強く。
「好きな人が自分以外の男に凌辱されているのを見て喜ぶような趣味はありません。あの男じゃあるまいし」
「リュカ……?」
「姉君様の体に他の男が触れるのも、抱かれるのも、本当は嫌なんです。僕はここで、手の届く範囲でしかあなたに触れられないのに、他の男はあなたの中に押し入っているかと思うと、嫉妬で狂いそうになる」
リュカが私の世話係になってから、何度男の相手をしただろう。何度、抱かれただろう。何度、リュカを傷つけたのだろう。
あの瓶の中身の想像はついているはずだ。朝、私の姿を見るたびにつらかったはずだ。
「ごめん。ごめんね、リュカ」
握った手の甲に口づける。これが二人の精一杯だ。手の上でしか触れ合えない二人の限界だ。
格子越しにリュカが私を抱きしめることができても、私が彼を抱きしめることはできない。格子の隙間からキスをすることはできるかもしれないけれど、ちょっと間の抜けた形になる。
「あなたが好きです」
顔を上げると、リュカが泣きそうな顔で笑っている。
「あなたと一緒になれるなら、僕は何だってできる。何だってやってみせます」
リュカの目は真剣だ。そして、やる気に満ち溢れている。「だから、僕に頑張らせてください」と笑う。
「オルガ様、一緒に逃げましょう。それから、僕と結婚しましょう」
すぐに答えられない。
弟のためなら、こんなろくでもない場所ででも生きていける。死んだほうがマシなような扱いを受けても、まだ我慢できる。
一年の間に、私の心は折れてしまっている。だから、今、「逃げよう」と言われても、躊躇してしまうのが現状だ。
私が逃げたら、弟はどうなる? 弟が勇者のままでいられるとは限らない。聖教会が新しい勇者を擁立するかもしれない。勇者が二人いるのは聖教会にとっては不都合だから、弟を一方的に悪人に仕立て上げてどこか遠くの地へ追放することも容易なはず。
私は、弟を不幸にしたいわけじゃない。私の不幸の上に弟の幸せ――世界中の幸せが成り立っているのなら、現状を享受するだけの覚悟はある。……自己犠牲かもしれないけれど。
「やっぱりダメだわ。もう少し時間が欲しい」
「次にこんな絶好の機会がやってくるのは、いつかわかりません。コレット様やドミニク様の結婚式、建国祭、生誕祭……聖教会が慌ただしい時期を狙うのは難しくはありませんが、そのときに姉君様の体調が良いとも限りません。これ以上怪我を増やされたらどうするおつもりですか」
「それは」
「怪我だけではありませんよ。もし、避妊薬を使わせてもらえなくなったら? 意図的に孕まされるようなことになったら? 姉君様はお優しいので、赤子を守りたいと考えるでしょうね。生まれた子を愛しいと思うでしょうね。おわかりでしょう? 次の人質を作ってくれるなら、聖教会は何だってするんですよ」
リュカの言葉にゾッとする。
確かに、そうだ。私が逃げようとするなら、逃げられなくすればいいだけのこと。足を不自由にされても脱走を企てるのであれば、身重にしてしまえばいいと考える輩が少なくないはずだ。赤ん坊が生まれたら、当分は逃げられなくなる。下手をすると、赤ん坊を新たな人質として取り上げられてしまうかもしれない。そうなったら、最悪だ。
「僕は成人していないから、姉君様に近づけるんです。まだ子どもだから、聖職者たちの疑いが向けられることなく、姉君様のそばにいられるんです。成人したら、世話係は解任されるでしょう。本部勤めを希望しても、追い出されるかもしれない。猶予はないんです」
「リュカ……でも、こんなことであなたの人生を狂わせていいわけがないわ」
リュカにはリュカの人生を歩んでほしい。
私と共に逃げてしまえば、聖教会から追われることになるだろう。聖教会を信仰していない国は少ない。知人もいない不慣れな土地で、二人生きていくことはできるだろうか。そもそも、まだ成人していないのに、リュカにそんな生活をさせてしまっていいものだろうか。
そう、私にはまだ、リュカと一緒に生きる覚悟がない。まだ、迷っている。
「こんなこと、ですか」
リュカの声が低くなる。緑色の目が私を睨めつける。怒らせて、しまったみたいだ。
「僕はあなたを愛したことを、こんなことだとは思っていません。もっと狂わせてもらいたいくらいですよ」
リュカが私の手を引く。格子の結界に阻まれ、手は外側には出ないけれど、リュカの顔が目の前にやってくる。私の首の後ろに手を回し、リュカはそのまま私を引き寄せる。
「もっとあなたに狂いたい」
格子の隙間から触れる唇は、柔らかくて温かい。ヌルと侵入してきた舌は熱く、菓子のように甘い。格子の隙間から差し込まれたリュカの腕が、逃げられないよう私を抱きしめる。意外と力が強くて、離れられない。
「オルガ様」
田舎の森の色に似た目が、葉から零れ落ちる水滴のように澄んだ瞳が、私を映す。
「僕と一緒に逃げてくださるなら、口づけを。そうでないなら、首を横に振ってください。僕はオルガ様の気持ちを尊重します」
今、覚悟を求められている。
囚われたまま一生を終えるのか、遠くへ逃げて自由に暮らすのか、二つに一つ。リュカの誘いを断り弟の帰りを待つのか、弟を裏切りリュカと逃げるのか、二つに一つ。
私は――。
「オルガ様」
隙間から飛び出たリュカの鼻に、キスをする。リュカは顔を赤らめ、破顔した。
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