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第二章
18.リュカの嘘
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成人の儀。王都及び近辺に住む新成人が聖教会の神殿に集められ、聖女様や総主教様、国王陛下から祝いの言葉を賜る儀式。
貴族を含む聖職者らはその儀式を見守る必要があるため、自然と神殿内の警備は強固なものとなり、本部内の警備は手薄になる。その隙をついてオルガ様を逃がす、というのが僕の計画の骨子だ。
まずは、総主教様が持つ鍵――腕輪を奪取しなければならない。僕は自らの頬を張り、気合いを入れる。よし、行くか。
総主教様の部屋は、聖職者たちが挨拶や段取りの相談のため頻繁に出入りするため、早朝から扉が開かれている。僕も堂々と入室する。
総主教様はまだ着替えもせずに何かの書類に目を通しているところだ。ジョエルもロランも、他の世話係の少年たちも、僕の事情は知っている。驚きもせず、年長者のジョエルが僕に指示を出す。
「リュカ、いいところに来た。お前、裁縫は得意か? 今朝仕上がったばかりの総主教様の聖衣に、ほつれが見られないか確認してくれ」
「わかりました」
針よりも剣の扱いのほうが得意なんだけど、仕方がない。執務室の隣、衣装部屋に入って深い藍色の聖衣を手に取る。そして、椅子に座って糸のほころびがないか確認し始める。普段の針子の仕事は丁寧だとわかっているけれど、今回は儀式があり聖職者や貴族が大勢集まるためどうしたって粗は出てくるものだ。
他の世話係は、次々にやって来る貴族たちに香茶や菓子を振る舞っている。また、総主教様への伝言を預かることもあるようで、それらを記憶するため必死の形相となっている。
僕はそれを横目に見ながら、緩んだ箇所を糸で留める。もちろん、緩みなんてほとんどないから、でっち上げの仕事だ。部屋の様子をじっくり観察できるのでありがたいものだ。
衣装部屋には宝飾品をしまう棚もある。今日総主教様が身につける宝飾品は既に準備されている。やはり、青色の宝石がはめられた腕輪や指輪だ。まだ身につけていないということは、腕輪は総主教様の腕にはめられたままなのだろう。
総主教様の着替えの時間に合わせて、ここにいられるといいんだけど。
「ジョエル、聖衣の確認と補正が終わりました」
「おぅ。では、総主教様、着替えをいたしましょう」
僕の声に合わせて、ジョエルと数名の世話係、そして総主教様が聖職者と打ち合わせをしながら衣装部屋へ移動する。ジョエルから他の仕事を指示されなかったので、僕は衣装部屋に残ったまま――なんて幸運なんだ。
総主教様は話をしながら衣服を脱いでいく。脱いだ衣服をよけ、儀式用の衣装を着せていくのは世話係。聖職者との話を中断させないように、無言で紐を縛ったり、衣服を重ねたりしていく。
僕は落ちた衣服をたたみながら、宝飾品が外されるときを待つ。
総主教様が鏡の前に座り、ジョエルが髪を整え結っていく。その間に、他の世話係が総主教様の手足に宝飾品をつけていく。赤色の宝石がはめられた腕輪――鍵は、僕よりも幼い少年が取り外し、他の宝飾品と同じようにソファに置いてある木箱へと入れられた。
少年たちは総主教様に靴を履かせたり、小物を準備したりで慌ただしくしている。僕は木箱を持ち、宝飾品の棚へと向かう。
「リュカ」
ジョエルの声に、一瞬肩が震える。まずい、と思いながらジョエルのほうを見ると、彼は髪を三つ編みにしながら「しまうついでに大きなターコイズのついた紐を取ってくれないか」と僕に指示を出した。なんだ、バレていないのか。良かった。
ホッとしながら、ターコイズの紐を見つける。三つ編みの最後をこれで縛るのだろう。ラピスラズリの紐も一応ジョエルに持っていく。彼が選べばいい。
木箱の中の宝飾品を棚にしまっていく。腕輪や指輪、何を留めていたのかわからない留め具。棚に鍵はついていない。今盗むのは得策ではないから、皆が儀式へ行ってからゆっくり奪うことにする。
「お時間です。参りましょう」
ジョエルは結局ラピスラズリのついた紐にしたようだ。濃紺の石が白髪によく映える。
総主教様は世話係一人一人に礼を言い、最後に僕を見た。
「リュカ、手伝いありがとう。あとは自分の勤めに戻りなさい」
はい、と短く返事をして、何人かの世話係と連れ立って神殿へと向かう総主教様の背中を見送る。総主教様の部屋に残っているのは、食器洗いや片付けをしている少年たち何人かだ。
誰もいない衣装部屋に入り、腕輪を盗む。鍵は驚くほどあっさりと手に入った。拍子抜けだ。やはり、慌ただしい今日を決行日に選んだのは正解だった。
「あとはゴミを片付けるくらい?」
「あ、ねぇ、このお菓子美味しそう! 食べちゃ駄目かな?」
執務室の椅子に座ってのんびりしている少年たちに気づかれないようにこっそりと給湯室に入る。
そして、鍵を開け媚薬と避妊薬の瓶を取り出して、媚薬をいくつか小瓶に分けたあと、まずは避妊薬の原液を捨てる。これがなければ、オルガ様を訪ねることはできないだろう。薬を煎じるのにも時間がかかるはずだ。聖教会では中絶は禁止されている。避妊薬のない行為を妻子ある聖職者や貴族たちが行なうとは考えにくい……一人を除いては。
これは、脱走が失敗したときのためのもの。とにかく、一回でもオルガ様を他の男と交わらせたくない。その一心だ。
原液を捨てる際、媚薬だけ少し残し、洗ったばかりのカップの底に何滴か塗り込んでおく。来客用のカップではなく、総主教様用と世話係たち用のカップ、すべて。
これに飲み物を入れて飲んだら、媚薬を飲み慣れている者には効果がすぐに現れるはずだ。儀式のあとに休憩をして香茶でも飲んだら、総主教様にとっては最高に幸せな時間が訪れるはず。楽しみじゃないか。
「あれ、リュカさん、まだいたんですか?」
「あぁ、ちょっと水を飲んでいたんです。もう仕事に戻ります」
「ありがとうございました、助かりました」
少年たちは屈託のない笑みを僕に向ける。かわいそうに、僕の計画も知らないで。
総主教様の部屋を出て、小瓶を自分の部屋に隠したあと、僕は走り出す。もちろん、オルガ様がいるあの塔へ朝食を持っていくために。
腕輪の赤い宝石を、壁に埋め込まれた赤い宝石に近づけると、格子の扉が開いた。まずはそれにホッとする。
オルガ様はまだ眠っている。朝食を載せたトレイが震える。僕が震えている。
何だろう、怖いのかもしれない。オルガ様はちゃんと逃げてくれるだろうか。彼女をちゃんと逃がすことができるだろうか。不安だ。僕はちゃんと、オルガ様に嘘をつき通すことができるだろうか。
オルガ様が好きだ。オルガ様に触れたい。抱き合いたくて仕方がない。格子に阻まれることなく、お互いの奥底まで触れ合いたい。
そんな浅ましい衝動を、僕はぐっと我慢する。我慢する。……我慢できるはずだ。
「姉君様」
声をかけると、起き上がったオルガ様は、目をまんまるにして僕を見つめてきた。格子の内側にいる僕に気づいて、大地の色の瞳から涙が零れ落ちていく。その様子を、僕はやっぱり愛しいと思うのだ。
あなたが好きです。どうしようもないほど、あなたを愛しています。
けれど、あなたと共に逃げることはできません。僕にできるのは、あなたを自由にすることだけ。
僕はやっぱり、あなたを傷つけた男を、許すことができないのです。母を捨てた男を、許すことができないのです。
そして、何より、あなたを復讐の道具にしようとした僕を――僕自身を、許すことができないのです。
オルガ様、ごめんなさい。
貴族を含む聖職者らはその儀式を見守る必要があるため、自然と神殿内の警備は強固なものとなり、本部内の警備は手薄になる。その隙をついてオルガ様を逃がす、というのが僕の計画の骨子だ。
まずは、総主教様が持つ鍵――腕輪を奪取しなければならない。僕は自らの頬を張り、気合いを入れる。よし、行くか。
総主教様の部屋は、聖職者たちが挨拶や段取りの相談のため頻繁に出入りするため、早朝から扉が開かれている。僕も堂々と入室する。
総主教様はまだ着替えもせずに何かの書類に目を通しているところだ。ジョエルもロランも、他の世話係の少年たちも、僕の事情は知っている。驚きもせず、年長者のジョエルが僕に指示を出す。
「リュカ、いいところに来た。お前、裁縫は得意か? 今朝仕上がったばかりの総主教様の聖衣に、ほつれが見られないか確認してくれ」
「わかりました」
針よりも剣の扱いのほうが得意なんだけど、仕方がない。執務室の隣、衣装部屋に入って深い藍色の聖衣を手に取る。そして、椅子に座って糸のほころびがないか確認し始める。普段の針子の仕事は丁寧だとわかっているけれど、今回は儀式があり聖職者や貴族が大勢集まるためどうしたって粗は出てくるものだ。
他の世話係は、次々にやって来る貴族たちに香茶や菓子を振る舞っている。また、総主教様への伝言を預かることもあるようで、それらを記憶するため必死の形相となっている。
僕はそれを横目に見ながら、緩んだ箇所を糸で留める。もちろん、緩みなんてほとんどないから、でっち上げの仕事だ。部屋の様子をじっくり観察できるのでありがたいものだ。
衣装部屋には宝飾品をしまう棚もある。今日総主教様が身につける宝飾品は既に準備されている。やはり、青色の宝石がはめられた腕輪や指輪だ。まだ身につけていないということは、腕輪は総主教様の腕にはめられたままなのだろう。
総主教様の着替えの時間に合わせて、ここにいられるといいんだけど。
「ジョエル、聖衣の確認と補正が終わりました」
「おぅ。では、総主教様、着替えをいたしましょう」
僕の声に合わせて、ジョエルと数名の世話係、そして総主教様が聖職者と打ち合わせをしながら衣装部屋へ移動する。ジョエルから他の仕事を指示されなかったので、僕は衣装部屋に残ったまま――なんて幸運なんだ。
総主教様は話をしながら衣服を脱いでいく。脱いだ衣服をよけ、儀式用の衣装を着せていくのは世話係。聖職者との話を中断させないように、無言で紐を縛ったり、衣服を重ねたりしていく。
僕は落ちた衣服をたたみながら、宝飾品が外されるときを待つ。
総主教様が鏡の前に座り、ジョエルが髪を整え結っていく。その間に、他の世話係が総主教様の手足に宝飾品をつけていく。赤色の宝石がはめられた腕輪――鍵は、僕よりも幼い少年が取り外し、他の宝飾品と同じようにソファに置いてある木箱へと入れられた。
少年たちは総主教様に靴を履かせたり、小物を準備したりで慌ただしくしている。僕は木箱を持ち、宝飾品の棚へと向かう。
「リュカ」
ジョエルの声に、一瞬肩が震える。まずい、と思いながらジョエルのほうを見ると、彼は髪を三つ編みにしながら「しまうついでに大きなターコイズのついた紐を取ってくれないか」と僕に指示を出した。なんだ、バレていないのか。良かった。
ホッとしながら、ターコイズの紐を見つける。三つ編みの最後をこれで縛るのだろう。ラピスラズリの紐も一応ジョエルに持っていく。彼が選べばいい。
木箱の中の宝飾品を棚にしまっていく。腕輪や指輪、何を留めていたのかわからない留め具。棚に鍵はついていない。今盗むのは得策ではないから、皆が儀式へ行ってからゆっくり奪うことにする。
「お時間です。参りましょう」
ジョエルは結局ラピスラズリのついた紐にしたようだ。濃紺の石が白髪によく映える。
総主教様は世話係一人一人に礼を言い、最後に僕を見た。
「リュカ、手伝いありがとう。あとは自分の勤めに戻りなさい」
はい、と短く返事をして、何人かの世話係と連れ立って神殿へと向かう総主教様の背中を見送る。総主教様の部屋に残っているのは、食器洗いや片付けをしている少年たち何人かだ。
誰もいない衣装部屋に入り、腕輪を盗む。鍵は驚くほどあっさりと手に入った。拍子抜けだ。やはり、慌ただしい今日を決行日に選んだのは正解だった。
「あとはゴミを片付けるくらい?」
「あ、ねぇ、このお菓子美味しそう! 食べちゃ駄目かな?」
執務室の椅子に座ってのんびりしている少年たちに気づかれないようにこっそりと給湯室に入る。
そして、鍵を開け媚薬と避妊薬の瓶を取り出して、媚薬をいくつか小瓶に分けたあと、まずは避妊薬の原液を捨てる。これがなければ、オルガ様を訪ねることはできないだろう。薬を煎じるのにも時間がかかるはずだ。聖教会では中絶は禁止されている。避妊薬のない行為を妻子ある聖職者や貴族たちが行なうとは考えにくい……一人を除いては。
これは、脱走が失敗したときのためのもの。とにかく、一回でもオルガ様を他の男と交わらせたくない。その一心だ。
原液を捨てる際、媚薬だけ少し残し、洗ったばかりのカップの底に何滴か塗り込んでおく。来客用のカップではなく、総主教様用と世話係たち用のカップ、すべて。
これに飲み物を入れて飲んだら、媚薬を飲み慣れている者には効果がすぐに現れるはずだ。儀式のあとに休憩をして香茶でも飲んだら、総主教様にとっては最高に幸せな時間が訪れるはず。楽しみじゃないか。
「あれ、リュカさん、まだいたんですか?」
「あぁ、ちょっと水を飲んでいたんです。もう仕事に戻ります」
「ありがとうございました、助かりました」
少年たちは屈託のない笑みを僕に向ける。かわいそうに、僕の計画も知らないで。
総主教様の部屋を出て、小瓶を自分の部屋に隠したあと、僕は走り出す。もちろん、オルガ様がいるあの塔へ朝食を持っていくために。
腕輪の赤い宝石を、壁に埋め込まれた赤い宝石に近づけると、格子の扉が開いた。まずはそれにホッとする。
オルガ様はまだ眠っている。朝食を載せたトレイが震える。僕が震えている。
何だろう、怖いのかもしれない。オルガ様はちゃんと逃げてくれるだろうか。彼女をちゃんと逃がすことができるだろうか。不安だ。僕はちゃんと、オルガ様に嘘をつき通すことができるだろうか。
オルガ様が好きだ。オルガ様に触れたい。抱き合いたくて仕方がない。格子に阻まれることなく、お互いの奥底まで触れ合いたい。
そんな浅ましい衝動を、僕はぐっと我慢する。我慢する。……我慢できるはずだ。
「姉君様」
声をかけると、起き上がったオルガ様は、目をまんまるにして僕を見つめてきた。格子の内側にいる僕に気づいて、大地の色の瞳から涙が零れ落ちていく。その様子を、僕はやっぱり愛しいと思うのだ。
あなたが好きです。どうしようもないほど、あなたを愛しています。
けれど、あなたと共に逃げることはできません。僕にできるのは、あなたを自由にすることだけ。
僕はやっぱり、あなたを傷つけた男を、許すことができないのです。母を捨てた男を、許すことができないのです。
そして、何より、あなたを復讐の道具にしようとした僕を――僕自身を、許すことができないのです。
オルガ様、ごめんなさい。
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