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第一夜
038.【幕間】初夜翌日(赤青黄)
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【赤の君】
聖武官のイーサンは先輩騎士のオーウェンを大変尊敬していた。美しい赤毛、鍛え抜かれた体躯、敵う者がいないほどの剣の腕。後輩の面倒見もよく、上からの信頼も厚い。手合わせをしただけで、彼の強さと優しさがすぐにわかる。そんな、人柄も申し分ない、唯一無二の聖武官、聖騎士であった。
しかし、黒翼地帯との国境にある村を守っていたオーウェンは、狼型の魔物に襲われ、右肩を負傷してしまう。村を守ることはできたが、オーウェンはもう剣を振るうことができなくなった。
聖女の夫候補としてオーウェンの名前が挙がったとき、イーサンは迷わず彼の従者となることに決めた。聖武官を辞めることに迷いはない。憧れの人の役に立ちたかったのだ。
「イーサン、初めて、聖武官の心得を諳んずる機会があったぞ。お前はまだ覚えているか? あれは心を鎮めるのにかなり役立つものなんだなぁ」
聖女の居室から戻ってきたオーウェンは、イーサンが驚くほどに柔和な笑みを浮かべていた。しかし、それも束の間、すぐに日課としている鍛錬を始める。
背筋や腹筋を鍛えるその姿を、イーサンは美しいと思っている。昔のままだ、ということに安堵もしている。
「しかし、あんな快楽があったとは……悩ましい」
「快楽……?」
「欲の解放だ」
イーサンは目を丸くした。硬派で、女にモテるくせに誰とも懇ろにならず、女嫌いだと噂が立つほどだったオーウェンが、聖女と同衾し、欲の解放にまでたどり着いたということに驚いたのだ。
「イーサンには経験があるか?」
「ええと、はい、娼館でなら……」
「そうか。あれは、すごいな。女の体は、あんなに柔らかくて熱いんだな。あれに溺れる気持ちが初めてわかった」
左腕だけで腕立て伏せをしながら、オーウェンは苦笑する。聖女のことを思い出しているのだろう。オーウェンのそんな笑顔を、イーサンは初めて見た。
「それは……良かったです」
「次から潤滑油を持って行かなければならない。準備をしておいてくれ」
「はい。聖女様は濡れにくい体質だったのですか?」
「いや、イズミ殿に問題はない。自分のモノが大きすぎて挿入らなかったのだ。イズミ殿に痛い思いをさせるわけにはいかない」
「そ、そうなんですか」
オーウェンからあけすけにこのような話をされることに、イーサンは戸惑うばかりだ。今までは剣の持ち方、戦闘における身の動かし方、魔物のトドメの刺し方、そういった話ばかりだったからだ。
この変化がいいことなのか、悪いことなのか、イーサンにはまだわからない。
「イーサン」
「はい」
「女はどのようにすれば悦ぶ? どのようにすれば達する? どのような体位を好む? 経験があるなら、教えてくれないか」
硬派な元聖騎士オーウェンが幻のように消えていく。代わりに現れたのは、妻と仲良くなりたい、ただの男だ。イーサンは苦笑する。
「頼む、イーサン」
憧れの男から頼られるのも、悪くはない。イーサンはオーウェンの変化を、好意的に解釈することにしたのだった。
◆◇◆◇◆
【青の君】
「ねぇ、ユーリィ。イズは最高だったよ」
「良かったですねぇ、セルゲイ様!」
ユーリはセルゲイが脱いだ衣服を受け取りながら、主人の笑顔を見て同じようにニッコリと笑う。主人が幸せそうだと従者も嬉しいのだ。
「最高ってことは、もしかして!?」
「そうなんだ、勃つようになったんだ! ユーリィに見せてあげられないのが残念だよ」
ブラブラさせながら、セルゲイは微笑む。大変美しい造作をしている彼だが、もちろん全裸である。ユーリは慣れているため、恥ずかしさなどは感じてはいない。ただ、喜びながら腰を振るのはやめてもらいたいと思うだけだ。目のやり場に困る。
「どうやって克服なさったんですか?」
「フフフ、実は僕、足に興奮するみたいなんだ」
「足に!」
ユーリは先日まで働いていた娼館の女たちを思い浮かべ、納得した。青の国では寒い時期が長く続くため、衣装から足を出す習慣がない。娼婦でさえ、長いズボンをはいている。足に興奮すると言うセルゲイがその癖に気づかなかったのも頷ける話なのだ。
「だから、昔、何かの祭りで出会った異国の踊り子に恋をしたんだね、僕は」
「例の淡い初恋とやらですね」
「聞いてよ、ユーリィ。イズの足は素晴らしいよ。柔らかくて程よい弾力があって、太すぎず細すぎず、完璧な足なんだ。何より、イズが一番『わかっている』のが、僕は嬉しくて」
ユーリは目を細めながら「そうですかぁ」とセルゲイの惚気に付き合う。それは何よりです、と相槌を打ちながら。
娼館の美貌の三男坊は不能である、と噂が立てられても、セルゲイは困ったように笑うだけだった。聖女の夫候補となっても、周りの者たちから「命の実をつけられるものか」と嘲笑される日々だった。聖女はそれを払拭したのだ。
主人が心の底から喜んでいると、ユーリにはわかっている。おそらく、青の国の民は命の実を授かるだろう。そのとき、ようやくセルゲイへの評価が変わるはずだ。不能ではなく有能である、と。
ユーリは、「本当に良かったですねぇ」と涙ぐむ。しかし、セルゲイは少し表情を曇らせる。
「でもね、元の世界では苦労してきた子だと思うんだ」
「そうなんですか?」
「腹に刺し傷があったよ。かわいそうに。男慣れしすぎているから、娼婦をやっていたのかもしれない」
娼館で育ったセルゲイのことだ。娼婦かどうかはすぐにわかったのだろうとユーリは納得する。
「でも、聖女様は良かったですよ。お相手がセルゲイ様なんですから」
「そうだね。優しくしてあげないといけないね」
頷きながら、セルゲイは微笑む。
「ついでにイリーナのお母さんが見つかるといいんだけどね」
ユーリは凄腕の娼婦を思い浮かべながら、「そうですね」とつられて微笑むのだった。
◆◇◆◇◆
【黄の君】
聖女の居室から戻ってきた主人がぐったりしているのを見て、ジェラールはうまくいかなかったのだと察した。
何しろ、結婚するには引く手数多な家柄にもかかわらず、ヒューゴは見合いする令嬢全員から断られているのだ。見目麗しくとも性格に難がある――結婚相手としては致命的だ。
「湯殿へ向かわれますか? それとも食事になさいますか?」
「湯を使います。そのあと、軽めのものを……スープやパンを準備しておいてください」
「かしこまりました」
食事が喉を通らないかもしれない、とジェラールは柔らかめのパンと野菜をくたくたに煮込んだスープを準備した。
湯殿から出てきたヒューゴは、心ここにあらずといった表情で食事を始める。熱いはずのスープに指を入れても気づかず、パンを食べ終えてもまだ手を口に持っていっているヒューゴに気づき、さすがにジェラールもおかしいと思い始める。
「ヒューゴ様、聖女様はどうでしたか?」
ヒューゴの濃い茶色の瞳がギラリと輝く。その言葉を待っていたかのように、淀みなく言葉が流れ始める。
「最高でした。最高という言葉以上の賛辞の言葉があるのなら、それを使いたいくらい最っっ高でした。イズミさんは大変可愛らしく、聡明で、魅力的な体と声と心をお持ちの方です。聖女になるべくしてなられた、素晴らしい女性です。今までにお会いしたご令嬢とは全く異なり、私を拒絶することも、嘲笑うことも、暴言を吐くこともありませんでした。まさしく聖女。聖女様です」
ジェラールはすぐに悟る。うまくいったのだ、と。それは大変喜ばしいことだ。この早口でさえも、聖女は気にしなかったということなのだ。確かに、今までに見合いをした娘たちとは異なるようだ。
「それは良うございました。仲睦まじくなさると、命の実も確実に結実なさることでしょう」
「命の実……あぁぁ、大切な使命を忘れていました! 挨拶を覚えるのに一生懸命で、命の実のことなどすっかり忘れていました! ジェラール、命の実をつけるにはキスをどれだけ行なえば良かったのでしょう?」
「存じ上げませんが、回数が多ければ多いほど良いのではないでしょうか」
「欲の解放を八回すれば大丈夫ですか!?」
ジェラールは耳を疑った。奥手で、女性を見るだけで真っ赤になり、視線はさまよい、会話もろくにできない主人が、聖女相手に欲の解放を八回も。八回も。八回も。にわかには信じられない。「本当に八回ですか?」と確認するのも当然のことだ。
「……たぶん、八回。七回かもしれません。気持ち良すぎてあまり覚えていなくて……すみません」
「そ、それは良うございました。しかし、聖女様は大変だったでしょうね」
「はい。ぐったりしていました。でも、仕方がないんです。イズミさんが魅力的すぎて、私の欲望が抑えきれなくて……気がついたら、夜通し喘がせてしまっていました。朝もあんなにたくさん、出してしまいました。あぁぁ、こんな男は嫌われますか? 八回はやりすぎでしたか? 何回ならいいのでしょうか?」
ジェラールは苦笑しながら、「八回はやりすぎです」とやんわり苦言を呈する。そうして、聖女に同情する。八回も主人に付き合って、突き合ってくれた、聖女。主人への教育が至らなかったせいで、迷惑をかけた。今頃、体力を回復しているに違いない。
彼女の負担を和らげるためにも、ジェラールは主人に様々なことを教えなければならないと決意する。女性の体のこと、欲の解放の適度な回数。教えることは山ほどある。
しかし、勉強熱心なヒューゴなら七日間ですべてを学習するであろう。そうして、長期に渡り命の実を実らせることができるだろう。
ジェラールは微笑む。素晴らしい奥方を娶ることができて、本当に良うございました、と。
聖武官のイーサンは先輩騎士のオーウェンを大変尊敬していた。美しい赤毛、鍛え抜かれた体躯、敵う者がいないほどの剣の腕。後輩の面倒見もよく、上からの信頼も厚い。手合わせをしただけで、彼の強さと優しさがすぐにわかる。そんな、人柄も申し分ない、唯一無二の聖武官、聖騎士であった。
しかし、黒翼地帯との国境にある村を守っていたオーウェンは、狼型の魔物に襲われ、右肩を負傷してしまう。村を守ることはできたが、オーウェンはもう剣を振るうことができなくなった。
聖女の夫候補としてオーウェンの名前が挙がったとき、イーサンは迷わず彼の従者となることに決めた。聖武官を辞めることに迷いはない。憧れの人の役に立ちたかったのだ。
「イーサン、初めて、聖武官の心得を諳んずる機会があったぞ。お前はまだ覚えているか? あれは心を鎮めるのにかなり役立つものなんだなぁ」
聖女の居室から戻ってきたオーウェンは、イーサンが驚くほどに柔和な笑みを浮かべていた。しかし、それも束の間、すぐに日課としている鍛錬を始める。
背筋や腹筋を鍛えるその姿を、イーサンは美しいと思っている。昔のままだ、ということに安堵もしている。
「しかし、あんな快楽があったとは……悩ましい」
「快楽……?」
「欲の解放だ」
イーサンは目を丸くした。硬派で、女にモテるくせに誰とも懇ろにならず、女嫌いだと噂が立つほどだったオーウェンが、聖女と同衾し、欲の解放にまでたどり着いたということに驚いたのだ。
「イーサンには経験があるか?」
「ええと、はい、娼館でなら……」
「そうか。あれは、すごいな。女の体は、あんなに柔らかくて熱いんだな。あれに溺れる気持ちが初めてわかった」
左腕だけで腕立て伏せをしながら、オーウェンは苦笑する。聖女のことを思い出しているのだろう。オーウェンのそんな笑顔を、イーサンは初めて見た。
「それは……良かったです」
「次から潤滑油を持って行かなければならない。準備をしておいてくれ」
「はい。聖女様は濡れにくい体質だったのですか?」
「いや、イズミ殿に問題はない。自分のモノが大きすぎて挿入らなかったのだ。イズミ殿に痛い思いをさせるわけにはいかない」
「そ、そうなんですか」
オーウェンからあけすけにこのような話をされることに、イーサンは戸惑うばかりだ。今までは剣の持ち方、戦闘における身の動かし方、魔物のトドメの刺し方、そういった話ばかりだったからだ。
この変化がいいことなのか、悪いことなのか、イーサンにはまだわからない。
「イーサン」
「はい」
「女はどのようにすれば悦ぶ? どのようにすれば達する? どのような体位を好む? 経験があるなら、教えてくれないか」
硬派な元聖騎士オーウェンが幻のように消えていく。代わりに現れたのは、妻と仲良くなりたい、ただの男だ。イーサンは苦笑する。
「頼む、イーサン」
憧れの男から頼られるのも、悪くはない。イーサンはオーウェンの変化を、好意的に解釈することにしたのだった。
◆◇◆◇◆
【青の君】
「ねぇ、ユーリィ。イズは最高だったよ」
「良かったですねぇ、セルゲイ様!」
ユーリはセルゲイが脱いだ衣服を受け取りながら、主人の笑顔を見て同じようにニッコリと笑う。主人が幸せそうだと従者も嬉しいのだ。
「最高ってことは、もしかして!?」
「そうなんだ、勃つようになったんだ! ユーリィに見せてあげられないのが残念だよ」
ブラブラさせながら、セルゲイは微笑む。大変美しい造作をしている彼だが、もちろん全裸である。ユーリは慣れているため、恥ずかしさなどは感じてはいない。ただ、喜びながら腰を振るのはやめてもらいたいと思うだけだ。目のやり場に困る。
「どうやって克服なさったんですか?」
「フフフ、実は僕、足に興奮するみたいなんだ」
「足に!」
ユーリは先日まで働いていた娼館の女たちを思い浮かべ、納得した。青の国では寒い時期が長く続くため、衣装から足を出す習慣がない。娼婦でさえ、長いズボンをはいている。足に興奮すると言うセルゲイがその癖に気づかなかったのも頷ける話なのだ。
「だから、昔、何かの祭りで出会った異国の踊り子に恋をしたんだね、僕は」
「例の淡い初恋とやらですね」
「聞いてよ、ユーリィ。イズの足は素晴らしいよ。柔らかくて程よい弾力があって、太すぎず細すぎず、完璧な足なんだ。何より、イズが一番『わかっている』のが、僕は嬉しくて」
ユーリは目を細めながら「そうですかぁ」とセルゲイの惚気に付き合う。それは何よりです、と相槌を打ちながら。
娼館の美貌の三男坊は不能である、と噂が立てられても、セルゲイは困ったように笑うだけだった。聖女の夫候補となっても、周りの者たちから「命の実をつけられるものか」と嘲笑される日々だった。聖女はそれを払拭したのだ。
主人が心の底から喜んでいると、ユーリにはわかっている。おそらく、青の国の民は命の実を授かるだろう。そのとき、ようやくセルゲイへの評価が変わるはずだ。不能ではなく有能である、と。
ユーリは、「本当に良かったですねぇ」と涙ぐむ。しかし、セルゲイは少し表情を曇らせる。
「でもね、元の世界では苦労してきた子だと思うんだ」
「そうなんですか?」
「腹に刺し傷があったよ。かわいそうに。男慣れしすぎているから、娼婦をやっていたのかもしれない」
娼館で育ったセルゲイのことだ。娼婦かどうかはすぐにわかったのだろうとユーリは納得する。
「でも、聖女様は良かったですよ。お相手がセルゲイ様なんですから」
「そうだね。優しくしてあげないといけないね」
頷きながら、セルゲイは微笑む。
「ついでにイリーナのお母さんが見つかるといいんだけどね」
ユーリは凄腕の娼婦を思い浮かべながら、「そうですね」とつられて微笑むのだった。
◆◇◆◇◆
【黄の君】
聖女の居室から戻ってきた主人がぐったりしているのを見て、ジェラールはうまくいかなかったのだと察した。
何しろ、結婚するには引く手数多な家柄にもかかわらず、ヒューゴは見合いする令嬢全員から断られているのだ。見目麗しくとも性格に難がある――結婚相手としては致命的だ。
「湯殿へ向かわれますか? それとも食事になさいますか?」
「湯を使います。そのあと、軽めのものを……スープやパンを準備しておいてください」
「かしこまりました」
食事が喉を通らないかもしれない、とジェラールは柔らかめのパンと野菜をくたくたに煮込んだスープを準備した。
湯殿から出てきたヒューゴは、心ここにあらずといった表情で食事を始める。熱いはずのスープに指を入れても気づかず、パンを食べ終えてもまだ手を口に持っていっているヒューゴに気づき、さすがにジェラールもおかしいと思い始める。
「ヒューゴ様、聖女様はどうでしたか?」
ヒューゴの濃い茶色の瞳がギラリと輝く。その言葉を待っていたかのように、淀みなく言葉が流れ始める。
「最高でした。最高という言葉以上の賛辞の言葉があるのなら、それを使いたいくらい最っっ高でした。イズミさんは大変可愛らしく、聡明で、魅力的な体と声と心をお持ちの方です。聖女になるべくしてなられた、素晴らしい女性です。今までにお会いしたご令嬢とは全く異なり、私を拒絶することも、嘲笑うことも、暴言を吐くこともありませんでした。まさしく聖女。聖女様です」
ジェラールはすぐに悟る。うまくいったのだ、と。それは大変喜ばしいことだ。この早口でさえも、聖女は気にしなかったということなのだ。確かに、今までに見合いをした娘たちとは異なるようだ。
「それは良うございました。仲睦まじくなさると、命の実も確実に結実なさることでしょう」
「命の実……あぁぁ、大切な使命を忘れていました! 挨拶を覚えるのに一生懸命で、命の実のことなどすっかり忘れていました! ジェラール、命の実をつけるにはキスをどれだけ行なえば良かったのでしょう?」
「存じ上げませんが、回数が多ければ多いほど良いのではないでしょうか」
「欲の解放を八回すれば大丈夫ですか!?」
ジェラールは耳を疑った。奥手で、女性を見るだけで真っ赤になり、視線はさまよい、会話もろくにできない主人が、聖女相手に欲の解放を八回も。八回も。八回も。にわかには信じられない。「本当に八回ですか?」と確認するのも当然のことだ。
「……たぶん、八回。七回かもしれません。気持ち良すぎてあまり覚えていなくて……すみません」
「そ、それは良うございました。しかし、聖女様は大変だったでしょうね」
「はい。ぐったりしていました。でも、仕方がないんです。イズミさんが魅力的すぎて、私の欲望が抑えきれなくて……気がついたら、夜通し喘がせてしまっていました。朝もあんなにたくさん、出してしまいました。あぁぁ、こんな男は嫌われますか? 八回はやりすぎでしたか? 何回ならいいのでしょうか?」
ジェラールは苦笑しながら、「八回はやりすぎです」とやんわり苦言を呈する。そうして、聖女に同情する。八回も主人に付き合って、突き合ってくれた、聖女。主人への教育が至らなかったせいで、迷惑をかけた。今頃、体力を回復しているに違いない。
彼女の負担を和らげるためにも、ジェラールは主人に様々なことを教えなければならないと決意する。女性の体のこと、欲の解放の適度な回数。教えることは山ほどある。
しかし、勉強熱心なヒューゴなら七日間ですべてを学習するであろう。そうして、長期に渡り命の実を実らせることができるだろう。
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