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聖女の休日
061.聖女、ラルスと共に監禁される。
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「聖女様!? 聖女様!」
ドンドンと扉を叩くラルス。エレミアスは扉を開け、ラルスがわたしのほうへ駆け寄っている間に外へ出て鍵をかけるつもりなのだろう。ラルスは鍵を持っていない。持っていたらすぐにでも鍵を開けて入ってくるはずだもの。
わたしのこれが収まるのにどれくらいの時間が必要なのだろう。後ろ手に縛られた状態で、さらに鎖で繋がれているのだとしたら、わたしは自分の指さえ使えないことになる。
最悪だ。
「ラルス、来ちゃ、ダメ、罠っ、ん」
力が入らない。大きな声を出すこともできない。ただ、どんどん体がしんどくなっていく。何でもいいから、棒状のものでぐちゃぐちゃにかき混ぜて欲しい。
「聖女様!!」
扉が開いたのか、ラルスの声が室内に響く。エレミアスのバカ。わたしのバカ。どうすればいいの、これ。
「聖女様!? ご無事ですか!?」
「ラルス、とびら、扉がっ」
ラルスはあられもないわたしの姿を見て、慌てて自分の衣装の上着を脱いで体にかけてくれる。その際、わたしの手足を見て顔をしかめる。
「誰がこんなことを」
「ラルス、扉! 閉じ込め、られるっ!」
わたしの言葉に慌てて扉へ向かったラルスだったけど、「鍵がかかっています」と肩を落として帰ってきた。あぁ、マジイケメン……って、二の腕、めっちゃ太くない? 衣装の下はタンクトップみたいなノースリーブ状の肌着だったなんて、知らなかった。めっちゃイイじゃん、それ。
すごいなぁ。エレミアスには全然反応しなかったのに、ラルスの腕を見ているだけでムラムラしてくる。ラルス、割と筋肉質だったんだなぁ。体、美味しそう。
「……聖女様?」
「ごめ、ラルス、なんか、薬? 挿れられてて」
「薬? 挿れる、とは……?」
「催淫剤、とか、媚薬って、言ってた、エレミアスが」
「エレミアス……!」
あぁ、怒ってる顔もイケメン。めっちゃ好み。ダメだ、正常な思考ができなくなっている。
ラルスは一生懸命足の縄を解いてくれているのだけど、なかなか難しいみたい。フルーツナイフはエレミアスが持って行ってしまったみたいだし、簪はどこに落ちたかわからない。
足首、めっちゃじんじんする。ラルスに触られているからかな? はぁ、堪んない。
「水、水を飲みますか? 水……あ、ここにはないんでしたね」
「あ、薬、口じゃ、なくて、その、っあ」
もどかしい。内股を擦り合わせるだけの刺激では全然イケない。イケたらきっと楽になるのに。ベアナードに一晩中攻め立てられているみたい。つらい。縄も解けないし。めっちゃつらい。
「か、体、大丈夫ですか?」
「ダメ、足触っちゃダメ。つらいから。ラルスが、格好良く見えて、本当につら……」
「……それは、なんか、すみません」
違う、違う、ラルスを謝らせたいわけじゃないの。イケメンに見えすぎて、ぐちゃぐちゃのセックスをしたくて仕方ないのよ。
でも、そんなことしたら、ラルスは黒翼地帯に追放されてしまう。彼は夫じゃないから。……ラルスを八人目の夫にすることってできるかなぁ? 無理かなぁ? 無理だよねぇ、ラルスは既婚者だもの。
「あぁぁ……」
「どうしました?」
「も、ダメ、挿れてっ、欲しいよぉ。椅子の足で、いいか、らっ、挿れたいぃ」
むしろ椅子の足がいい。指だと物足りない。太くて硬いものが欲しい。苦しくて涙が出てくる。ラルスに背を向けて、咽び泣く。
夫たちが来てくれたら、本当にすぐに楽になれるのに。あ、でも、できればオーウェンかヒューゴかアールシュがいいな。残り四人はちょっと厳しいもん。
あぁ、想像しただけで濡れてくる。つらい、これ。頭おかしくなりそう。いや、もうおかしくなってるのかも。
「ラルスっぅ、椅子、持ってきて、椅子。何とか、挿れる、からぁ」
「聖女様?」
「だからっ、つらいのっ! イキたいのにイケないのっ! ラルスにお願い、なんて、できないでしょ! だって、奥さんがーー」
そう、奥さんと今日紫の国へ行く予定だったのに。子どもを授かりに行く予定だったのに。わたしのせいで、大事な大聖樹会を放ったらかして、こんなところに閉じ込められて。
わたしのせいで、ラルスの人生、めちゃくちゃじゃん。かわいそすぎる。
「……あぁ、妻とは離縁します」
えっ? りえん? 離婚のこと? 何で? 子ども、どうするの?
思わず、背後のラルスを見上げる。涙でぐちゃぐちゃになった酷い顔を見て、彼はそっと上着のどこかで拭いてくれる。
「昨夜、話をしました。……そんなに驚かなくても。話し合えと仰ったのは、聖女様ではありませんか」
「えっ?」
「その結果、妻は私ではなくエレミアスの子を望んだのです。仕方ありません。黄の国の実はもう手に入るのですから」
エレミアス? えっ、奥さん、エレミアスとデキてたの? マジかー。ラルス、めっちゃ不憫じゃん。マージーかー。うわぁ。
と、足の縄がようやく緩くなった。しばらく足をこすり合わせていると、はらりと解ける。やったぁ! 足は自由だ!
「……それで、薬は飲まされたのではなく、挿れられた、と。どちらに?」
「な、なか」
「それはつらいでしょう。椅子の足を挿れたいというのは、それが理由ですか……本当にあなたは、無茶なことを言いますねぇ」
だって、そうしなきゃ、ラルスの細い指じゃ満足できないし! それに、ラルスとセックスしたら、ラルス追放されちゃうじゃん! どうしていいかわからないんだもん!
頭の中も、顔も、ぐちゃぐちゃだ。
「だって、だっ、ラルス、はな、れたく、なっ」
「……私と離れたくない?」
「うん、うん! でも、セックス、できないから、っふ、う」
ラルスはしばらく何かを考えるような表情になる。あぁ、それ、めっちゃ格好いい。濡れちゃう。
「あぁ……夫以外の男が聖女を姦淫すること、そして命の実を食べさせて子をなすことは、黒翼地帯への追放を意味しますからね」
「うん、うん」
「ですが、エレミアスは知らないのでしょう。今の総主教様は、前の聖女と懇ろな仲だったのですよ」
……ん?
「聖女宮にいる者だけが知っています。前の聖女のご夫君方も、同意の上での愛人関係でした。もちろん、子どもは作ってはおりませんが」
……んんっ?
「七人のご夫君方のことを尊敬していたスサンナは、それゆえに総主教様のことを嫌っているようですね。……ですから、総主教様は私を追放することはできません。存命中の前のご夫君方の証言が出てくれば、自分も追放されることになりますので」
つまり、わたしとセックスするだけではラルスは追放されない、と。わたしがラルスの子どもを生まない限りは、大丈夫だということ? じゃあ、エレミアスの目論見が外れたということ?
「総主教の名前って、もしかして、オレール?」
「それは元の名前ですね。聖職者名はアウレリウス様です。……椅子の足をお持ちいたしましょうか?」
ぶんぶんと頭を左右に振る。
ラルスとセックスをしてはいけない理由がない、ということに気づいてしまった。
いや、これは夫たちを裏切ることになるのかな? ラルスとセックスをしたら、夫たちを悲しませることになる? それは嫌だな。皆を悲しませたいわけじゃない。
でも、我慢も限界なのよ、本当に。マジつらい。生理現象と同じだと説明したらわかってくれるかな? わかってくれないなら、聖樹の花を浮かべた湯船でずっと射精を寸止めするプレイをしなくちゃ。そうしたら、わかってくれるかな? まぁ、そういう問題じゃないかぁ。
あぁ、もう! 想像したら、イキたくなってきたじゃん! むーりー!
「では、大聖樹会が終わるまで……助けが来るまで、ここで待ちましょうか?」
この状態で何時間も耐えることができるだろうか。目の前に、据え膳が、あるというのにっ!
ごめん、皆! わたし、いろいろ無理!
「ラルスっ」
「はい」
「抱いて」
ラルスは苦笑する。けれど、優しい瞳がわたしを見下ろしている。
「私を道具として使われますか」
「ちがっ、違うよ! そうじゃない! あれ、でも、そうなのかな?」
すっごい我慢しているから、よくわからなくなってきた。体はつらいし、頭もぼんやりしている。目の前のイケメンに、ただ貪られたいだけ。
「私の体を、道具として使ってくださいませ。ただの椅子の足だと」
「やだぁ。ラルスはラルスだよ! 道具だなんて、思えなっ」
重ねられた唇が、震えている。侵入してきた舌が触れ合うだけで、体中がピリピリしてしまう。もっと欲しい。もっとして。もっと、もっと、もっと、奥まで。
「私を道具と思えば、ご夫君方への罪悪感も少しは軽減されるでしょう。ですから」
「嫌だ」
「聖女様、どうか」
「わたしは、ラルスに、抱かれたい」
目の前の黒い瞳をまっすぐ見つめる。
「ラルスがわたしを嫌いなら、謝る。ごめん。昨日も無神経だった。ごめんなさい。でも、今、ラルスが欲しいの」
ラルスは長々と溜め息を吐き出す。マジごめん。そんなに嫌われてたなんて知らなかったわ。やっぱ椅子の足を持ってきてもらおうかな。も、だいぶ、ヤバイんだよね。
「嫌いに……なれたら、どれだけ良かったか」
「えっ、ごめん」
「もう、無理ですよ。我慢できないのは、私のほうです。あなたに触れたくて仕方なかった」
頬に触れる指が、ゆっくりと首筋を通り胸元へ進む。
「ラルス?」
「あなたを抱きたくて、仕方なかった」
えっ、あっ、そうなの? そうだったの? そういうの、もったいぶらないで早く言ってよー! めっちゃ誤解してたじゃん!
「……優しく、できないと思います」
「う、うん、大丈夫、優しくなくても」
「では」
かけられていた上着が取り払われる。ラルスは目を細め、ゆっくりと肌の上に指を滑らせる。
「抱きますよ、イズミ様」
あぁ、それ、反則! その一言で、うっかりイキそうになっちゃったよ! バカ!
ドンドンと扉を叩くラルス。エレミアスは扉を開け、ラルスがわたしのほうへ駆け寄っている間に外へ出て鍵をかけるつもりなのだろう。ラルスは鍵を持っていない。持っていたらすぐにでも鍵を開けて入ってくるはずだもの。
わたしのこれが収まるのにどれくらいの時間が必要なのだろう。後ろ手に縛られた状態で、さらに鎖で繋がれているのだとしたら、わたしは自分の指さえ使えないことになる。
最悪だ。
「ラルス、来ちゃ、ダメ、罠っ、ん」
力が入らない。大きな声を出すこともできない。ただ、どんどん体がしんどくなっていく。何でもいいから、棒状のものでぐちゃぐちゃにかき混ぜて欲しい。
「聖女様!!」
扉が開いたのか、ラルスの声が室内に響く。エレミアスのバカ。わたしのバカ。どうすればいいの、これ。
「聖女様!? ご無事ですか!?」
「ラルス、とびら、扉がっ」
ラルスはあられもないわたしの姿を見て、慌てて自分の衣装の上着を脱いで体にかけてくれる。その際、わたしの手足を見て顔をしかめる。
「誰がこんなことを」
「ラルス、扉! 閉じ込め、られるっ!」
わたしの言葉に慌てて扉へ向かったラルスだったけど、「鍵がかかっています」と肩を落として帰ってきた。あぁ、マジイケメン……って、二の腕、めっちゃ太くない? 衣装の下はタンクトップみたいなノースリーブ状の肌着だったなんて、知らなかった。めっちゃイイじゃん、それ。
すごいなぁ。エレミアスには全然反応しなかったのに、ラルスの腕を見ているだけでムラムラしてくる。ラルス、割と筋肉質だったんだなぁ。体、美味しそう。
「……聖女様?」
「ごめ、ラルス、なんか、薬? 挿れられてて」
「薬? 挿れる、とは……?」
「催淫剤、とか、媚薬って、言ってた、エレミアスが」
「エレミアス……!」
あぁ、怒ってる顔もイケメン。めっちゃ好み。ダメだ、正常な思考ができなくなっている。
ラルスは一生懸命足の縄を解いてくれているのだけど、なかなか難しいみたい。フルーツナイフはエレミアスが持って行ってしまったみたいだし、簪はどこに落ちたかわからない。
足首、めっちゃじんじんする。ラルスに触られているからかな? はぁ、堪んない。
「水、水を飲みますか? 水……あ、ここにはないんでしたね」
「あ、薬、口じゃ、なくて、その、っあ」
もどかしい。内股を擦り合わせるだけの刺激では全然イケない。イケたらきっと楽になるのに。ベアナードに一晩中攻め立てられているみたい。つらい。縄も解けないし。めっちゃつらい。
「か、体、大丈夫ですか?」
「ダメ、足触っちゃダメ。つらいから。ラルスが、格好良く見えて、本当につら……」
「……それは、なんか、すみません」
違う、違う、ラルスを謝らせたいわけじゃないの。イケメンに見えすぎて、ぐちゃぐちゃのセックスをしたくて仕方ないのよ。
でも、そんなことしたら、ラルスは黒翼地帯に追放されてしまう。彼は夫じゃないから。……ラルスを八人目の夫にすることってできるかなぁ? 無理かなぁ? 無理だよねぇ、ラルスは既婚者だもの。
「あぁぁ……」
「どうしました?」
「も、ダメ、挿れてっ、欲しいよぉ。椅子の足で、いいか、らっ、挿れたいぃ」
むしろ椅子の足がいい。指だと物足りない。太くて硬いものが欲しい。苦しくて涙が出てくる。ラルスに背を向けて、咽び泣く。
夫たちが来てくれたら、本当にすぐに楽になれるのに。あ、でも、できればオーウェンかヒューゴかアールシュがいいな。残り四人はちょっと厳しいもん。
あぁ、想像しただけで濡れてくる。つらい、これ。頭おかしくなりそう。いや、もうおかしくなってるのかも。
「ラルスっぅ、椅子、持ってきて、椅子。何とか、挿れる、からぁ」
「聖女様?」
「だからっ、つらいのっ! イキたいのにイケないのっ! ラルスにお願い、なんて、できないでしょ! だって、奥さんがーー」
そう、奥さんと今日紫の国へ行く予定だったのに。子どもを授かりに行く予定だったのに。わたしのせいで、大事な大聖樹会を放ったらかして、こんなところに閉じ込められて。
わたしのせいで、ラルスの人生、めちゃくちゃじゃん。かわいそすぎる。
「……あぁ、妻とは離縁します」
えっ? りえん? 離婚のこと? 何で? 子ども、どうするの?
思わず、背後のラルスを見上げる。涙でぐちゃぐちゃになった酷い顔を見て、彼はそっと上着のどこかで拭いてくれる。
「昨夜、話をしました。……そんなに驚かなくても。話し合えと仰ったのは、聖女様ではありませんか」
「えっ?」
「その結果、妻は私ではなくエレミアスの子を望んだのです。仕方ありません。黄の国の実はもう手に入るのですから」
エレミアス? えっ、奥さん、エレミアスとデキてたの? マジかー。ラルス、めっちゃ不憫じゃん。マージーかー。うわぁ。
と、足の縄がようやく緩くなった。しばらく足をこすり合わせていると、はらりと解ける。やったぁ! 足は自由だ!
「……それで、薬は飲まされたのではなく、挿れられた、と。どちらに?」
「な、なか」
「それはつらいでしょう。椅子の足を挿れたいというのは、それが理由ですか……本当にあなたは、無茶なことを言いますねぇ」
だって、そうしなきゃ、ラルスの細い指じゃ満足できないし! それに、ラルスとセックスしたら、ラルス追放されちゃうじゃん! どうしていいかわからないんだもん!
頭の中も、顔も、ぐちゃぐちゃだ。
「だって、だっ、ラルス、はな、れたく、なっ」
「……私と離れたくない?」
「うん、うん! でも、セックス、できないから、っふ、う」
ラルスはしばらく何かを考えるような表情になる。あぁ、それ、めっちゃ格好いい。濡れちゃう。
「あぁ……夫以外の男が聖女を姦淫すること、そして命の実を食べさせて子をなすことは、黒翼地帯への追放を意味しますからね」
「うん、うん」
「ですが、エレミアスは知らないのでしょう。今の総主教様は、前の聖女と懇ろな仲だったのですよ」
……ん?
「聖女宮にいる者だけが知っています。前の聖女のご夫君方も、同意の上での愛人関係でした。もちろん、子どもは作ってはおりませんが」
……んんっ?
「七人のご夫君方のことを尊敬していたスサンナは、それゆえに総主教様のことを嫌っているようですね。……ですから、総主教様は私を追放することはできません。存命中の前のご夫君方の証言が出てくれば、自分も追放されることになりますので」
つまり、わたしとセックスするだけではラルスは追放されない、と。わたしがラルスの子どもを生まない限りは、大丈夫だということ? じゃあ、エレミアスの目論見が外れたということ?
「総主教の名前って、もしかして、オレール?」
「それは元の名前ですね。聖職者名はアウレリウス様です。……椅子の足をお持ちいたしましょうか?」
ぶんぶんと頭を左右に振る。
ラルスとセックスをしてはいけない理由がない、ということに気づいてしまった。
いや、これは夫たちを裏切ることになるのかな? ラルスとセックスをしたら、夫たちを悲しませることになる? それは嫌だな。皆を悲しませたいわけじゃない。
でも、我慢も限界なのよ、本当に。マジつらい。生理現象と同じだと説明したらわかってくれるかな? わかってくれないなら、聖樹の花を浮かべた湯船でずっと射精を寸止めするプレイをしなくちゃ。そうしたら、わかってくれるかな? まぁ、そういう問題じゃないかぁ。
あぁ、もう! 想像したら、イキたくなってきたじゃん! むーりー!
「では、大聖樹会が終わるまで……助けが来るまで、ここで待ちましょうか?」
この状態で何時間も耐えることができるだろうか。目の前に、据え膳が、あるというのにっ!
ごめん、皆! わたし、いろいろ無理!
「ラルスっ」
「はい」
「抱いて」
ラルスは苦笑する。けれど、優しい瞳がわたしを見下ろしている。
「私を道具として使われますか」
「ちがっ、違うよ! そうじゃない! あれ、でも、そうなのかな?」
すっごい我慢しているから、よくわからなくなってきた。体はつらいし、頭もぼんやりしている。目の前のイケメンに、ただ貪られたいだけ。
「私の体を、道具として使ってくださいませ。ただの椅子の足だと」
「やだぁ。ラルスはラルスだよ! 道具だなんて、思えなっ」
重ねられた唇が、震えている。侵入してきた舌が触れ合うだけで、体中がピリピリしてしまう。もっと欲しい。もっとして。もっと、もっと、もっと、奥まで。
「私を道具と思えば、ご夫君方への罪悪感も少しは軽減されるでしょう。ですから」
「嫌だ」
「聖女様、どうか」
「わたしは、ラルスに、抱かれたい」
目の前の黒い瞳をまっすぐ見つめる。
「ラルスがわたしを嫌いなら、謝る。ごめん。昨日も無神経だった。ごめんなさい。でも、今、ラルスが欲しいの」
ラルスは長々と溜め息を吐き出す。マジごめん。そんなに嫌われてたなんて知らなかったわ。やっぱ椅子の足を持ってきてもらおうかな。も、だいぶ、ヤバイんだよね。
「嫌いに……なれたら、どれだけ良かったか」
「えっ、ごめん」
「もう、無理ですよ。我慢できないのは、私のほうです。あなたに触れたくて仕方なかった」
頬に触れる指が、ゆっくりと首筋を通り胸元へ進む。
「ラルス?」
「あなたを抱きたくて、仕方なかった」
えっ、あっ、そうなの? そうだったの? そういうの、もったいぶらないで早く言ってよー! めっちゃ誤解してたじゃん!
「……優しく、できないと思います」
「う、うん、大丈夫、優しくなくても」
「では」
かけられていた上着が取り払われる。ラルスは目を細め、ゆっくりと肌の上に指を滑らせる。
「抱きますよ、イズミ様」
あぁ、それ、反則! その一言で、うっかりイキそうになっちゃったよ! バカ!
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