【R18】肉食聖女と七人のワケあり夫たち

千咲

文字の大きさ
60 / 91
聖女の休日

060.聖女、書庫に監禁される。

しおりを挟む
 体が熱い。何これ。下腹部がじんじんする。何なの、これ。

「ふぅぅっ」
「よく効くじゃないか。もう濡れてきたぞ」

 笑いながらエレミアスはわたしの秘部から指を引き抜いた。その僅かな刺激でさえ、堪らなく切ない。もっと欲しいと思ってしまう。もちろん、エレミアスのモノなんていらないのだけど。
 エレミアスはわたしが耐えているのを見下ろしたあと、近くに落ちていた鍵を拾い上げる。総主教からもらった鍵だ。彼の狙いはそれか。

「閲覧禁止の本棚の鍵はこっちだな」
「んんんっ!」
「お前も気になるだろ? 総主教になるためには、どれだけの聖職者の秘密を握っておけるかが大事なのさ。副主教の持つ鍵では開けられない本棚が、この向こうにある。楽しみじゃないか」

 そんなの興味ない! 誰が総主教になろうとわたしには関係ない。わたしたちの生活を脅かす人でないのなら、誰だって構わない。
 だから、エレミアスだけは絶対に総主教にはなってもらいたくない。どクズじゃん! 犯罪者じゃん! 絶対、トップにしちゃいけない男だよ!
 あぁぁ、ダメ、イキたい……っ! 誰か、今すぐ、貫いてほしい。……ダメ、すぐ雑念が入ってくる。あぁ、もう!

 見たところ、書庫はかなり広い部屋だ。本棚が所狭しと並び、机や椅子もある。……あぁ、あの椅子の足、挿入するにはいい感じの太さだわ。ダメダメ、油断するとすぐに挿入のことを考えてしまう。つらい。これ、めっちゃつらい。
 エレミアスは奥のほうに進み、姿が見えなくなる。閲覧禁止の本棚に向かったのだろう。
 わたしを追ってきた男たちはどうしたのだろう、と耳を澄ますと、廊下で何やら話し声がする。どうやら、彼らはエレミアスに雇われていたみたい。ノックをしてくる気配がない。たぶん、誰かが立ち入らないように外で見張っているのだ。

「約束が違います!」

 廊下のほうから声が聞こえる。たぶん、レナータ。あぁ、聖女宮の扉の鍵を男たちに渡したのが、彼女だったのね。わたしのこと、好きじゃないもんね。まぁ仕方ないね。わたしもラルスのこととかでぼんやりしていて、警戒していなかったし。

「聖女様には手を出さないと仰ったではありませんか! ただ鍵を奪うだけだと! どうして、命の実がここにあるのですか!? まさか、聖女様に食べさせたのですか!?」

 大丈夫、食べてはいないよ。果汁はさっきから飲んじゃってるけど。これ、ぜんぶ食べないと妊娠しないんだよね? じゃあ、果汁を飲むだけならセーフでしょ!?

「聖女様!? いらっしゃいますか、聖女様っ!!」
「引っ込んでろ、この女!」
「きゃあっ!!」
「んんーんーっ!!」

 扉の外で、レナータが男たちに殴られたみたいだ。酷い。なんてことを。わたしを殴るのはいいけど、レナータには手を出しちゃダメでしょ! わたしを裏切ったけど、だからといって、殴っていいわけではない。
 埃っぽい床の上でびたんびたんと動く。……はぁ、誰か早く挿れてくれないかな……いやいや、そうじゃなくて! 油断するとえっちな気分になってしまう。ヤバイな、これ。
「その女には手を出すな!」とエレミアスが遠くで叫ぶ。割と大きい声だから、廊下にも聞こえたみたい。

「その女、総主教様の遠縁の者だからな!」

 あ、そうなんだ? へぇー! だから、総主教との橋渡しができたわけね。ってことは、レナータ、実はいいところのお嬢様なんじゃないの?
 でも、そんなお嬢様がどうして女官になったのか、こんな犯罪に加担したのか、わからない。何かのっぴきならない事情でもあったのだろうか。

「じゃあ、どうしますか、この女」
「鍵は返してやれ。それから、本部から追い出せ。どうせ誰かに助けを求めることもできんさ。自分が撒いた種だからな」
「聖女様! 聖女様!! 助けを、必ず助けを呼んできますからっ!!」

 レナータ、それじゃあ自分の罪を認めるってことになるじゃん? それはダメじゃない? お嬢様なのに、その地位を捨てることになるんじゃない? ちょっと、早まっちゃダメだよー!

「んんーっ!」
「なんだ、これは?」

 エレミアスがランプ片手にやって来て、わたしの眼前に何かを突きつける。ん? 近い、近い、読めないよ。バカなの? あぁ、紙? 何か書いてある? 文字?
 ……日本語?

「お前の世界の言葉か?」

 エレミアスの言葉に頷く。まさかこんなところで日本語を見ることになるなんてビックリ。それが閲覧禁止の本棚に置いてあったのならば、つまり――。

「これは聖女が書いたものか。なんと書いてある? 読めるのだろう?」
「んー!」
「あぁ、喋れないのか……」

 エレミアスは近くの机から小型のナイフを持ってくる。命の実の皮を剥いたときのフルーツナイフだろう。それをわたしの首筋につけ、「叫んだら刺すぞ」と脅す。うんうんと頷くと、ようやく命の実が口から抜かれる。
 ケホケホとむせるわたしの鼻先に紙を突きつけ「読め」とエレミアスが命ずる。
 その文字が書かれた紙は、便箋くらいの大きさのもの。その真ん中に、インクで書かれた綺麗な文字が並ぶ。

「明け、ぬれば、暮れ……暮るるものとは、知りながら?」

 あー、これ、いつだったか国語でやったやつじゃない? ほら、あれ、何だっけ?

「なほ恨めしき、あさぼらけかな……あぁ、そうだ、百人一首だ!」
「何だそれは? どういう意味だ?」
「覚えてないよ! たぶん、聖女の心情を詠んだ歌だよ」

 いつの時代の聖女かわからないけれど、きっと教養のある人だったのだろう。百人一首をここに書きつけることができるほどの人なんだもの。
 その歌のすぐそばに、名前が書いてある。ええと、オレール、様? オレールって人に宛てた短歌なんだろうな。 

「……なんだ、詩歌か。何が閲覧禁止だ。くだらん詩歌と下手な絵しか残っていないじゃないか、クソッ」

 エレミアスは転がった命の実を持ち、わたしの口に突っ込もうとする。けれど、わたしは口を開けない。床に落ちた果実を口に入れられるなんて汚いじゃん! せめて洗ってからにして! まぁ、そういう問題でもないんだけど。

「口を! 開けろ!」
「いーっ!」
「んのっ、愚か者めがっ!」

 往生際が悪いわたしは、エレミアスがナイフを置いたのを見て、床をごろごろびたんびたんと這い回る。髪や服の乱れ、体の痛みなど気にしていられない。

「助けて! 誰か、助けて!」

 書庫に防音設備はない。だから、叫んでいれば、きっと、誰かが。

「きゃあ!」

 目の前がチカチカする。エレミアスに殴られたのだと理解したときには、既に彼はわたしに馬乗りになっていた。エレミアスの怒りに満ちた目がわたしを見下ろしている。

「殺されたいのか!」
「あなたこそ! 聖女にこんなことして、バレたら大変なことになるんじゃない?」
「はん! 私は処分などされないさ。黄の国の者だからな」
「驕れる者、久しからず!」

 エレミアスのようなクズ男、さっさと滅んでしまえばいい。わたしに彼を失脚させるような力がないのは腹立たしいけれど、彼に恨みのある聖職者だっているはずだから、きっと一緒に声を上げてくれるはず。

「んんっ」

 はだけた胸元に、冷たい感触。エレミアスがナイフを滑らせただけなのに、体がピリピリする。感じやすくなっている。

「本当に、イイ体をしているな。そりゃ、夢中になるはずだ、あの七人が」
「っあ」

 エレミアスの指がわたしの秘所を這う。あ、ダメ、それ欲しい。指、欲しい。挿れて。挿れて……いや、ダメダメ、エレミアスのは、ダメ。絶対ダメ。

「欲しいんだろ?」
「やっ、だ」
「そうか。じゃあ、あと二粒やるよ」
「あぁっ」

 つぷと指が挿れられた瞬間、エレミアスの指なんかで体が悦んでしまった。最悪だ。確かに、硬いものが押し込まれる。さっきと同じ薬なら、最悪だ。この状態のまま、どうしろというのだろう。

「もっと挿れて欲しいだろ?」
「だ、誰が」
「安心しろ。お前を犯すのは私じゃない。聖女の夫でもないのにお前に手を出したら、黒翼地帯に追放されるからな」

 やだ、頭がふわふわしてきた。すごいな、この薬。体が言うことを聞かない。どうしよう。すごい、イキたい。指、指、使いたいよぅ。
 息が荒くなってくる。体がつらい。エレミアスの指でいいから、ぐちゃぐちゃにかき混ぜてもらいたくなっている。ダメだ、つらい、しんどい。

「……来たか」

 言って、エレミアスはわたしの上からどいて、わたしを書庫の奥のほうへと引きずっていく。こんな摩擦では全然イケない。太い棒が欲しい。欲しいなぁ。やっぱ椅子の足かなぁ。

「聖女様! 聖女様、こちらですか!?」

 扉をドンドンと叩く音が、よく知っている声が、聞こえる。エレミアスはニヤリと笑って、わたしの手の縄に何か細工をする。ヒヤリと冷たい……金属? 鎖? 手錠? そうして、わたしを書庫の奥に放置したまま、エレミアスは音を立てずに扉のほうへと向かう。
 彼の計画の一部始終を理解して、ゾッとする。エレミアスは、わたしと彼をここに閉じ込める気だ。それから、彼を罪人にするつもりだ。聖女を犯した者として告発する気だ。

「来ちゃダメ、ラルス! 来ないで!」
「聖女様!?」

 あぁ、逃げなきゃよかった。聖女宮で見知らぬ男二人に嬲られたほうがまだマシだった。夫以外の子を孕んだとしても、逃げるべきではなかった。
 ラルスを失うくらいなら、彼を罪人にするくらいなら、わたしが我慢すればよかったんだ。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?

すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。 一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。 「俺とデートしない?」 「僕と一緒にいようよ。」 「俺だけがお前を守れる。」 (なんでそんなことを私にばっかり言うの!?) そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。 「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」 「・・・・へ!?」 『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!? ※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。 ※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。 ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

処理中です...