8 / 12
月下の桜(八)
しおりを挟む
土曜日、あかりの頭は痛み止めのおかげか痛くはないようだった。縫うほどの怪我でもなかったようなので、安心する。
……本音を言えば、やはり少しは不満だったけど。あかりを閉じ込めておく機会が失われたということだから。
「無理はしないでね」
「大丈夫。頭が痛くなるようなことはしないよ」
「でも、セックスはするんだろ?」
「……翔吾くん、妬いてる?」
セミダブルのベッドの中で、裸のあかりを抱きすくめて、苦笑する。
妬いている。当たり前だ。
「妬くよ。俺だってあかりの体を夜通し堪能したい」
「もう。クリスマスイブまで待ってね」
「年末年始は実家? 初詣は? 姫始めは誰とするの?」
「年末年始はここにいるよ。初詣は行かないかな。姫始めは……翔吾くん、したい?」
「したい」
あかりの耳元に唇を寄せて囁く。あかりの体がふるりと震えるのがかわいい。
「来年も、再来年も、あかりを抱きたい」
「翔吾くん、彼女作らないつもりなの?」
「あかり以上に好きになれる人ができたらね」
「翔吾くんイケメンだからすぐに――んん」
うるさい唇を塞ぐ。他の女の話なんて、今は聞きたくない。考えたくもない。
両手をベッドに押さえつけて、舌を求め合いながら、ゆっくりあかりの体の上に移動する。硬く勃ち上がってきたモノをあかりの太腿になすりつけて、誘う。
「翔吾、壊れちゃう」
「壊したいの、あかりを」
俺がそうであるように、あかりも欲に狂って欲しい。俺に、狂って欲しい。
「この部屋はあかりの匂いばかりで、すぐに勃っちゃう。抑えられないよ」
「もー、仕方ないなぁ」
仕方ない、じゃなくて、欲しくて欲しくてたまらない、って言わせたい。いつか。
「翔吾、抱いて」
かわいくねだってくるセフレに恋をするなんて、本当に不毛だ。
俺はもう、彼女に溺れている。
◆◇◆◇◆
週明けには、洋介が満面の笑みで「杉田と付き合うことになった!」と報告してきた。
誠心誠意、口説き落としたらしい。そして、その末「友達からなら」という言葉を引き出して、長い長い片想いに終止符を打ったようだ。
……友達とすら思われていなかったのか? それは付き合うってことなのか? という無粋なツッコミはやめておいて、ただ「良かったな」とだけリアクションしておいた。
洋介が幸せそうで何よりだ。
杉田と洋介はうまくいくような気がしている。想われているほうが楽だと、杉田が早く気づいてくれるといいんだけど。
想うのはしんどい。
どんなに体を重ねても、愛の言葉を囁いても、それに応じてはくれない罪な女。
でも、想わずにはいられない。
願わずにはいられない。
「翔吾くん」
ホテルのロビーで待ち合わせ。
真っ黒なアンゴラのコートの裾から、ワンピースのオレンジ色が見え隠れする。プレゼントしたものをおとなしく着てきてくれたようだ。
髪は少しアップにして、オレンジ色の髪飾りでまとめてある。頭の怪我はもう大丈夫のようだ。オレンジ色はクリスマスカラーではないけれど、あかりによく似合う色だ。
「こんばんは、あかり」
「着替えていたら遅れちゃった。待った?」
「今来たところだよ」
一時間前からここにいたのに、くだらない嘘をつく。あかりは俺を見上げて、微笑む。
「翔吾くん、スーツ着ると王子様みたいだね」
「じゃあ、あかりはお姫様かな?」
「……ごめんね、それはちょっと、恥ずかしい……言葉を間違えたね」
「わかってるよ。カッコいい、ってことでしょ?」
「うん、そう、カッコいい」
あかりと腕を組んで、ホテルの階上にあるレストランへ向かう。夜景が見られるフレンチだけど、きっとあかりは夜景なんか気にせず、料理をちょっとずつ美味しそうに食べるんだろうなと想像して、俺は笑う。
「翔吾くん、いいことあった?」
「クリスマスイブに好きな人と過ごせる、っていういいことがあった」
あかりは「良かったね」と笑う。
あかりのことだって、わかってる?
「私もね、いいことがあったんだよ」
「へぇ、何?」
美味しいケーキを食べたとか、美味しい和菓子をもらったとか、そういうことかな、と想像する。あかりの「いいこと」はお手軽なものだ。
エレベーターが音もなくどんどん上がっていく。密室には二人きり。でも、キスはさせてもらえなかった。部屋まで我慢、我慢。
「今日、仕事終わりだったんだ」
「へぇ……え、終わり?」
「引き継ぎも滞りなく、すませたよ」
「……じゃあ」
あかりの笑顔に隠された意味に、ようやく気づく。
「クリスマスは仕事」と言っていたけど、何時間かしか一緒にいられないと思っていたけど。まさか、そんな、まさか。
「明日は……?」
「お休み。明後日もお休み。来年の五日までゆっくりできるよ」
人生初、セフレと過ごす年末年始。時間を気にせず、あかりの体を堪能できる、甘い甘い蜜月。
「……勃った」
「翔吾くん、隠して! 着くよ!」
サンタクロース、ありがとう。
これこそ、最高のクリスマスプレゼントだ。
◆◇◆◇◆
「わぁ、スゴい! 何、この部屋!?」
「スイートルーム」
「広い! キレイ! 高そう!」
広くて綺麗だから高いんだけどね。
部屋に入った瞬間に抱きついてあかりにキスをしようとしたら、逃げられた。部屋のドアを開けながら、「スゴい」を繰り返すあかりを見て、二人分のコートとジャケットをクローゼットにしまい、荷物を置く。
ディナーでは、やはり夜景など一切見ないあかりが「美味しい」を繰り返していた。相変わらず少食で、結局デザートを食べる前に満腹になってしまって悔しがっていた。それでも、一口二口食べるうちに皿が綺麗になっていたのだから、別腹というものがあるのだろう。
「お風呂がスゴいよ、翔吾くん!」
「あとで一緒に入ろう」
「ベッドはどっちを使うの?」
「どっちを使ってもいいよ」
浴室はガラス張りのジャグジーバス。ベッドルームは二つ。窓は大きく、近くには他に高層ビルがないから、夜景が綺麗に見える。
ネクタイを緩め、ボタンを外す。そして、うろうろ動き回るオレンジ色をようやく腕の中に閉じ込める。
「ひゃ、翔吾くん?」
「あかりは語彙力が貧弱だなぁ」
「そう?」
「美味しいとスゴいしか言っていないよ」
腕の中で俺を見上げて、あかりは「ほんとだ」と笑う。まぁ、レポーター顔負けの食レポを披露されても驚くけど。
「翔吾くん、ありがと――んんっ」
――黙って。
グロスと口紅ごと唇を奪って、あかりの柔らかい体のラインに指を這わせる。早く繋がりたい。けど、まだ我慢。舌を味わいながら、少しずつ窓際に追い込んでいく。
窓の外は、この時期だけのきらびやかなイルミネーションの海。赤に緑に、青に白。どんな明かりも、今目の前にいるあかりと比べたら、霞んでしまう。
俺が今一番欲しいのは――輝く海の中にいる、天使。窓際に追い詰められて、困惑しているオレンジ色の女神。
「あかり」
「翔吾くん、窓、冷たいよ?」
「大丈夫。今から熱くしてあげる」
襟からネクタイを抜き取って、あかりの手首に巻きつける。強すぎないように、弱すぎないように、逃げられないように、捕らえる。
「今日は、そういうプレイ?」
「嫌い?」
「……嫌いじゃない」
なら、良かった。
二十センチほどある窓の縁にあかりを座らせて、キスをする。やっぱり、あかりが一番綺麗だ。イルミネーションの海に、オレンジ色が映える。
ヒールのあるパンプスを床に落とし、ベージュのストッキングの上からつま先に舌を這わせる。押し殺したような甘い吐息が降ってくる。舐って、キスをして、撫でて、少しずつ上へと移動していく。
オレンジ色の裾から太腿へと手を差し込み、いつもと違う手触りに、一瞬手を止める。太腿の、肌に、触れた?
「……パンストじゃ、ない?」
「ストッキングにしてみたよ。脱がしやすいかなと、思っ」
かわいいな、あかりは。脱がしやすいとか、破れないようにとか、気にしなくてもいいのに。買ってあげるのに。
あかりは縛られた腕を俺の頭に通し、お互いの唇を貪り合う。グロスも口紅も落ち、唾液だけがツヤツヤと光る。
ワンピースの背中のファスナーをおろし、ブラジャーのホックを外し、寒さで身じろぎするあかりに構わず、柔らかな双丘を揉みしだく。キスをしながら突起を親指で弾くと、「ふあ」と甘い声が漏れる。
かわいい。
むしゃぶりつきたい気持ちを抑えて、キスをしながら乳首を捏ねる。ビクと震えるあかりがかわいい。乳房のほうを愛撫するだけだと大して感じないらしく、柔らかさを堪能するだけだと不満そうな視線を寄越してくる。
「あかり、どうして欲しい?」
「……舐めて」
「どこを?」
「ひゃっ、あっ、んん」
乳首をきゅっと摘むと、嬌声が上がる。嬌声ごと唇を塞いで、乳首をいじめる。
あかりの両足が俺の背中に巻き付き、はしたなく腰が揺れる。そんな痴態すら愛おしい。
もっと、欲しがって。
もっと、ねだって。
もっと――。
「しょーご、おねが、なめ、っ」
「どこを?」
頬を朱に染めたあかりが、俺の耳元で囁く。彼女にとっては羞恥心を煽られるものの名称でしかなくても、俺にとっては最高のご馳走だ。
望まれるまま、乳首に舌を這わせて、熱を帯びた指をショーツに滑り込ませる。しっとりと湿った茂みを進み、蜜に濡れる花弁をたどり、泉のように溢れ出る蜜口に指を添える。
「ん、ふ……っ」
くちゅくちゅといやらしい音が俺の興奮を煽る。ワンピースは溢れた愛液で既に濡れてしまっている。あかりは窓ガラスに頭と肩を預け、快感に打ち震えている。真っ赤になっちゃって、かわいい。周囲の窓ガラスが少しずつ曇り始める。
「……しょーご……っ、挿れて?」
「何を? どこに?」
「やぁっ」
意地悪をして啼かせるのは、悪くない。
何もかもが甘い。乳首も、唇も、声も。気のせいであっても、あかりの体は、匂い立つほどに甘い。
「んっ、ゆび、挿れてっ」
「指でいいの?」
乳首をコリと歯で軽く噛むと、あかりがぎゅうと抱きついてくる。痛い、とは聞こえない。
中指の第一関節だけ膣口に挿れて、乳首を甘噛みする。甘い吐息が俺の意識を侵食してくる。
早く挿れたい。挿れて、出したい。
でも、我慢。あと少し我慢。
「翔吾、お願い」
「指?」
「もっと、硬くて、太いの、欲しい」
指はいいの?
いいの。もう我慢できな――っ!
中指をぐぐっと挿れて、蜜で溢れる膣壁を擦る。あかりの嬌声をキスで塞ぎながら、手早くベルトを外し、スラックスを寛げ、屹立した陰茎をボクサーパンツから取り出す。硬く滾ったその先端からは、ぬるりと先走りが溢れている。
あぁ、挿れたい。
「あかり」
「ん、うっ?」
「俺だけ、見て」
「ん、見て、る」
「今は、俺のことだけ、見て」
「翔吾く、んっ」
今だけでいい。
セックスをしている間だけ、俺のことだけ考えて。俺のものでいて。
俺だけの、あかりで、いて。
「あかり、好きだよ」
その言葉に答えがなくても、いい。
その愛に応じられなくても、いい。
今は、ただ――俺のことだけ。
中指を膣内から引き抜き、ズルリとワンピースを滑らせて、あかりの腰を抱き寄せる。裾をめくり上げ、さらに足を上げさせて、蜜口に亀頭を宛てがう。
「あかり、しっかり掴まっていてね」
あかりがしっかりと俺の首に抱きついたのを確認して、俺は一気に彼女の隘路を割って肉棒を押し進めた。
……本音を言えば、やはり少しは不満だったけど。あかりを閉じ込めておく機会が失われたということだから。
「無理はしないでね」
「大丈夫。頭が痛くなるようなことはしないよ」
「でも、セックスはするんだろ?」
「……翔吾くん、妬いてる?」
セミダブルのベッドの中で、裸のあかりを抱きすくめて、苦笑する。
妬いている。当たり前だ。
「妬くよ。俺だってあかりの体を夜通し堪能したい」
「もう。クリスマスイブまで待ってね」
「年末年始は実家? 初詣は? 姫始めは誰とするの?」
「年末年始はここにいるよ。初詣は行かないかな。姫始めは……翔吾くん、したい?」
「したい」
あかりの耳元に唇を寄せて囁く。あかりの体がふるりと震えるのがかわいい。
「来年も、再来年も、あかりを抱きたい」
「翔吾くん、彼女作らないつもりなの?」
「あかり以上に好きになれる人ができたらね」
「翔吾くんイケメンだからすぐに――んん」
うるさい唇を塞ぐ。他の女の話なんて、今は聞きたくない。考えたくもない。
両手をベッドに押さえつけて、舌を求め合いながら、ゆっくりあかりの体の上に移動する。硬く勃ち上がってきたモノをあかりの太腿になすりつけて、誘う。
「翔吾、壊れちゃう」
「壊したいの、あかりを」
俺がそうであるように、あかりも欲に狂って欲しい。俺に、狂って欲しい。
「この部屋はあかりの匂いばかりで、すぐに勃っちゃう。抑えられないよ」
「もー、仕方ないなぁ」
仕方ない、じゃなくて、欲しくて欲しくてたまらない、って言わせたい。いつか。
「翔吾、抱いて」
かわいくねだってくるセフレに恋をするなんて、本当に不毛だ。
俺はもう、彼女に溺れている。
◆◇◆◇◆
週明けには、洋介が満面の笑みで「杉田と付き合うことになった!」と報告してきた。
誠心誠意、口説き落としたらしい。そして、その末「友達からなら」という言葉を引き出して、長い長い片想いに終止符を打ったようだ。
……友達とすら思われていなかったのか? それは付き合うってことなのか? という無粋なツッコミはやめておいて、ただ「良かったな」とだけリアクションしておいた。
洋介が幸せそうで何よりだ。
杉田と洋介はうまくいくような気がしている。想われているほうが楽だと、杉田が早く気づいてくれるといいんだけど。
想うのはしんどい。
どんなに体を重ねても、愛の言葉を囁いても、それに応じてはくれない罪な女。
でも、想わずにはいられない。
願わずにはいられない。
「翔吾くん」
ホテルのロビーで待ち合わせ。
真っ黒なアンゴラのコートの裾から、ワンピースのオレンジ色が見え隠れする。プレゼントしたものをおとなしく着てきてくれたようだ。
髪は少しアップにして、オレンジ色の髪飾りでまとめてある。頭の怪我はもう大丈夫のようだ。オレンジ色はクリスマスカラーではないけれど、あかりによく似合う色だ。
「こんばんは、あかり」
「着替えていたら遅れちゃった。待った?」
「今来たところだよ」
一時間前からここにいたのに、くだらない嘘をつく。あかりは俺を見上げて、微笑む。
「翔吾くん、スーツ着ると王子様みたいだね」
「じゃあ、あかりはお姫様かな?」
「……ごめんね、それはちょっと、恥ずかしい……言葉を間違えたね」
「わかってるよ。カッコいい、ってことでしょ?」
「うん、そう、カッコいい」
あかりと腕を組んで、ホテルの階上にあるレストランへ向かう。夜景が見られるフレンチだけど、きっとあかりは夜景なんか気にせず、料理をちょっとずつ美味しそうに食べるんだろうなと想像して、俺は笑う。
「翔吾くん、いいことあった?」
「クリスマスイブに好きな人と過ごせる、っていういいことがあった」
あかりは「良かったね」と笑う。
あかりのことだって、わかってる?
「私もね、いいことがあったんだよ」
「へぇ、何?」
美味しいケーキを食べたとか、美味しい和菓子をもらったとか、そういうことかな、と想像する。あかりの「いいこと」はお手軽なものだ。
エレベーターが音もなくどんどん上がっていく。密室には二人きり。でも、キスはさせてもらえなかった。部屋まで我慢、我慢。
「今日、仕事終わりだったんだ」
「へぇ……え、終わり?」
「引き継ぎも滞りなく、すませたよ」
「……じゃあ」
あかりの笑顔に隠された意味に、ようやく気づく。
「クリスマスは仕事」と言っていたけど、何時間かしか一緒にいられないと思っていたけど。まさか、そんな、まさか。
「明日は……?」
「お休み。明後日もお休み。来年の五日までゆっくりできるよ」
人生初、セフレと過ごす年末年始。時間を気にせず、あかりの体を堪能できる、甘い甘い蜜月。
「……勃った」
「翔吾くん、隠して! 着くよ!」
サンタクロース、ありがとう。
これこそ、最高のクリスマスプレゼントだ。
◆◇◆◇◆
「わぁ、スゴい! 何、この部屋!?」
「スイートルーム」
「広い! キレイ! 高そう!」
広くて綺麗だから高いんだけどね。
部屋に入った瞬間に抱きついてあかりにキスをしようとしたら、逃げられた。部屋のドアを開けながら、「スゴい」を繰り返すあかりを見て、二人分のコートとジャケットをクローゼットにしまい、荷物を置く。
ディナーでは、やはり夜景など一切見ないあかりが「美味しい」を繰り返していた。相変わらず少食で、結局デザートを食べる前に満腹になってしまって悔しがっていた。それでも、一口二口食べるうちに皿が綺麗になっていたのだから、別腹というものがあるのだろう。
「お風呂がスゴいよ、翔吾くん!」
「あとで一緒に入ろう」
「ベッドはどっちを使うの?」
「どっちを使ってもいいよ」
浴室はガラス張りのジャグジーバス。ベッドルームは二つ。窓は大きく、近くには他に高層ビルがないから、夜景が綺麗に見える。
ネクタイを緩め、ボタンを外す。そして、うろうろ動き回るオレンジ色をようやく腕の中に閉じ込める。
「ひゃ、翔吾くん?」
「あかりは語彙力が貧弱だなぁ」
「そう?」
「美味しいとスゴいしか言っていないよ」
腕の中で俺を見上げて、あかりは「ほんとだ」と笑う。まぁ、レポーター顔負けの食レポを披露されても驚くけど。
「翔吾くん、ありがと――んんっ」
――黙って。
グロスと口紅ごと唇を奪って、あかりの柔らかい体のラインに指を這わせる。早く繋がりたい。けど、まだ我慢。舌を味わいながら、少しずつ窓際に追い込んでいく。
窓の外は、この時期だけのきらびやかなイルミネーションの海。赤に緑に、青に白。どんな明かりも、今目の前にいるあかりと比べたら、霞んでしまう。
俺が今一番欲しいのは――輝く海の中にいる、天使。窓際に追い詰められて、困惑しているオレンジ色の女神。
「あかり」
「翔吾くん、窓、冷たいよ?」
「大丈夫。今から熱くしてあげる」
襟からネクタイを抜き取って、あかりの手首に巻きつける。強すぎないように、弱すぎないように、逃げられないように、捕らえる。
「今日は、そういうプレイ?」
「嫌い?」
「……嫌いじゃない」
なら、良かった。
二十センチほどある窓の縁にあかりを座らせて、キスをする。やっぱり、あかりが一番綺麗だ。イルミネーションの海に、オレンジ色が映える。
ヒールのあるパンプスを床に落とし、ベージュのストッキングの上からつま先に舌を這わせる。押し殺したような甘い吐息が降ってくる。舐って、キスをして、撫でて、少しずつ上へと移動していく。
オレンジ色の裾から太腿へと手を差し込み、いつもと違う手触りに、一瞬手を止める。太腿の、肌に、触れた?
「……パンストじゃ、ない?」
「ストッキングにしてみたよ。脱がしやすいかなと、思っ」
かわいいな、あかりは。脱がしやすいとか、破れないようにとか、気にしなくてもいいのに。買ってあげるのに。
あかりは縛られた腕を俺の頭に通し、お互いの唇を貪り合う。グロスも口紅も落ち、唾液だけがツヤツヤと光る。
ワンピースの背中のファスナーをおろし、ブラジャーのホックを外し、寒さで身じろぎするあかりに構わず、柔らかな双丘を揉みしだく。キスをしながら突起を親指で弾くと、「ふあ」と甘い声が漏れる。
かわいい。
むしゃぶりつきたい気持ちを抑えて、キスをしながら乳首を捏ねる。ビクと震えるあかりがかわいい。乳房のほうを愛撫するだけだと大して感じないらしく、柔らかさを堪能するだけだと不満そうな視線を寄越してくる。
「あかり、どうして欲しい?」
「……舐めて」
「どこを?」
「ひゃっ、あっ、んん」
乳首をきゅっと摘むと、嬌声が上がる。嬌声ごと唇を塞いで、乳首をいじめる。
あかりの両足が俺の背中に巻き付き、はしたなく腰が揺れる。そんな痴態すら愛おしい。
もっと、欲しがって。
もっと、ねだって。
もっと――。
「しょーご、おねが、なめ、っ」
「どこを?」
頬を朱に染めたあかりが、俺の耳元で囁く。彼女にとっては羞恥心を煽られるものの名称でしかなくても、俺にとっては最高のご馳走だ。
望まれるまま、乳首に舌を這わせて、熱を帯びた指をショーツに滑り込ませる。しっとりと湿った茂みを進み、蜜に濡れる花弁をたどり、泉のように溢れ出る蜜口に指を添える。
「ん、ふ……っ」
くちゅくちゅといやらしい音が俺の興奮を煽る。ワンピースは溢れた愛液で既に濡れてしまっている。あかりは窓ガラスに頭と肩を預け、快感に打ち震えている。真っ赤になっちゃって、かわいい。周囲の窓ガラスが少しずつ曇り始める。
「……しょーご……っ、挿れて?」
「何を? どこに?」
「やぁっ」
意地悪をして啼かせるのは、悪くない。
何もかもが甘い。乳首も、唇も、声も。気のせいであっても、あかりの体は、匂い立つほどに甘い。
「んっ、ゆび、挿れてっ」
「指でいいの?」
乳首をコリと歯で軽く噛むと、あかりがぎゅうと抱きついてくる。痛い、とは聞こえない。
中指の第一関節だけ膣口に挿れて、乳首を甘噛みする。甘い吐息が俺の意識を侵食してくる。
早く挿れたい。挿れて、出したい。
でも、我慢。あと少し我慢。
「翔吾、お願い」
「指?」
「もっと、硬くて、太いの、欲しい」
指はいいの?
いいの。もう我慢できな――っ!
中指をぐぐっと挿れて、蜜で溢れる膣壁を擦る。あかりの嬌声をキスで塞ぎながら、手早くベルトを外し、スラックスを寛げ、屹立した陰茎をボクサーパンツから取り出す。硬く滾ったその先端からは、ぬるりと先走りが溢れている。
あぁ、挿れたい。
「あかり」
「ん、うっ?」
「俺だけ、見て」
「ん、見て、る」
「今は、俺のことだけ、見て」
「翔吾く、んっ」
今だけでいい。
セックスをしている間だけ、俺のことだけ考えて。俺のものでいて。
俺だけの、あかりで、いて。
「あかり、好きだよ」
その言葉に答えがなくても、いい。
その愛に応じられなくても、いい。
今は、ただ――俺のことだけ。
中指を膣内から引き抜き、ズルリとワンピースを滑らせて、あかりの腰を抱き寄せる。裾をめくり上げ、さらに足を上げさせて、蜜口に亀頭を宛てがう。
「あかり、しっかり掴まっていてね」
あかりがしっかりと俺の首に抱きついたのを確認して、俺は一気に彼女の隘路を割って肉棒を押し進めた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる