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第二章 どうして今更……
第四話 後継者(ライト視点)
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あの二人が死んだ?
今まで、散々命を狙ってきた二人が死んだと聞いて、心に浮かんだのは『どうして』だった。
ただ、それが、『どうして、母様が死ぬ前に死んでくれなかったのか』なのか、『どうして死んだのか』なのか、全く分からなかった。それに……。
「だからどうだというのですか? それで、僕に後を継げとでも? 馬鹿にするのも大概にしてもらいたい」
そんなことを知ったからと言って、僕の選択が変わるはずもない。
「不躾な願いだということは重々承知しておりますっ! しかし、このままではお嬢様があまりにも苦しい人生となってしまわれますっ」
そんな言葉に、そういえば、ハリオール家の内情はほとんど知らないな、ということに思い至る。ただ、それは僕だけだったようで……。
「ハリオール家に他の子供が居るなどという話を聞いたことはありませんが?」
宰相補佐という役職にある以上、貴族関連の知識はオリアナ様の方があるようだった。
「それは……お嬢様は、障害を持って、お生まれになられ、十年も生きられないと言われていたからです」
「障害……そういえば、魔力逆流症に関する論文をハリオール家がやたらと評価していましたね」
「っ!? な、なぜ、それを……?」
魔力逆流症。それは、生まれつき、魔力を体に循環させることができず、むしろ逆流させてしまうという体質のことだ。そんな体質で生まれた子供は、大抵が赤子の内に亡くなる。しかし、逆流する魔力をどうにかして発散させ続ければ、魔力による肉体の強化は叶わなくとも、数年は生きられるとも言われている。
ただ、その常識は、数年前に覆されていた。今、オリアナ様が話していた論文によって。そして、僕は、オリアナ様がその論文を知っている理由も知っていた。
「なぜも何も、その論文は、オリアナ様が書いたものだからでしょう?」
オリアナ様が何を思って、その題材を選んだのかは不明だが、オリアナ様は、魔力の逆流が起こる原因となる仕組みを解明し、その対処法として有効と思われるものまでを論文に書いていたのだ。
「っ、あなた様がっ……」
そして、オリアナ様の言葉とアバルの様子を見れば、そのお嬢様とやらの障害がどんなものだったのかも理解できた。
「つまりは、ハリオール家に居る娘は、魔力逆流症を回復させたとはいえ、魔力の乏しい体で、後継者とするにはあまりにも負担が大きいから、僕のところに来た、ということですか?」
それでも、後継者になどなるつもりはないのだが、アバルは、ただ推測を口にしただけの僕に、希望を浮かべた瞳で見つめてきた。
今まで、散々命を狙ってきた二人が死んだと聞いて、心に浮かんだのは『どうして』だった。
ただ、それが、『どうして、母様が死ぬ前に死んでくれなかったのか』なのか、『どうして死んだのか』なのか、全く分からなかった。それに……。
「だからどうだというのですか? それで、僕に後を継げとでも? 馬鹿にするのも大概にしてもらいたい」
そんなことを知ったからと言って、僕の選択が変わるはずもない。
「不躾な願いだということは重々承知しておりますっ! しかし、このままではお嬢様があまりにも苦しい人生となってしまわれますっ」
そんな言葉に、そういえば、ハリオール家の内情はほとんど知らないな、ということに思い至る。ただ、それは僕だけだったようで……。
「ハリオール家に他の子供が居るなどという話を聞いたことはありませんが?」
宰相補佐という役職にある以上、貴族関連の知識はオリアナ様の方があるようだった。
「それは……お嬢様は、障害を持って、お生まれになられ、十年も生きられないと言われていたからです」
「障害……そういえば、魔力逆流症に関する論文をハリオール家がやたらと評価していましたね」
「っ!? な、なぜ、それを……?」
魔力逆流症。それは、生まれつき、魔力を体に循環させることができず、むしろ逆流させてしまうという体質のことだ。そんな体質で生まれた子供は、大抵が赤子の内に亡くなる。しかし、逆流する魔力をどうにかして発散させ続ければ、魔力による肉体の強化は叶わなくとも、数年は生きられるとも言われている。
ただ、その常識は、数年前に覆されていた。今、オリアナ様が話していた論文によって。そして、僕は、オリアナ様がその論文を知っている理由も知っていた。
「なぜも何も、その論文は、オリアナ様が書いたものだからでしょう?」
オリアナ様が何を思って、その題材を選んだのかは不明だが、オリアナ様は、魔力の逆流が起こる原因となる仕組みを解明し、その対処法として有効と思われるものまでを論文に書いていたのだ。
「っ、あなた様がっ……」
そして、オリアナ様の言葉とアバルの様子を見れば、そのお嬢様とやらの障害がどんなものだったのかも理解できた。
「つまりは、ハリオール家に居る娘は、魔力逆流症を回復させたとはいえ、魔力の乏しい体で、後継者とするにはあまりにも負担が大きいから、僕のところに来た、ということですか?」
それでも、後継者になどなるつもりはないのだが、アバルは、ただ推測を口にしただけの僕に、希望を浮かべた瞳で見つめてきた。
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