私、異世界で保護されました! 〜やりたいことのために猪突猛進です〜

星宮歌

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第一章 保護されました

第七話 後遺症

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 魔族には、人間を遥かに上回る身体能力と魔力が備わっている。身体能力に関しては、獣人と比べればやや劣るものの、それでも個々が凄まじい能力を有しているという点で、魔族といえば強いイメージが先行しがちだ。


「そこまで!」

「はいっ、ありがとうございました!」

「っ……ありがとう、ございました」


 恐らくは、魔力逆流症の後遺症とされるものによって、私は、他の魔族とは比べ物にならないくらいに弱かった。身体能力は人間並み、魔力は、ほんの少ししかなく、戦闘に向かないどころか、日常生活でさえ危うい。
 剣術も魔術も、授業の一環で習うし、手合わせも行うのだが、私はそのどちらでも、一度だって他の魔族に勝てたことはない。
 今だって、魔法と剣を用いた勝負に負けたところだ。


「また負けてる。ロットール嬢、やる気あるのかな?」

「まぁまぁ、向き不向きもあるし、ロットール様も負けたくて負けてるわけじゃないと思うよ?」


 学園側には、一応、私の体の状態は伝わっている。しかし、生徒達にはわざわざ伝えないでほしいとお願いしていたため、彼らは私の弱さを嘲笑う。


 大丈夫。この程度、なんともない。


 前世の声が励ましていた頃と今は違う。今は、自分の意思で『大丈夫』だと思える。
 どんなに笑われても、私は、立ち止まるわけにはいかない。私を引き取ってくれたオリアナ様やライト様へ恩返しするために、少しでも私の力を伸ばして、その価値を上げておきたい。


 そうすれば、片翼が分からない私なら、政略結婚の駒に使うこともできる。


 ロットール家は新興貴族だ。それも、オリアナ様とライト様の代から始まった家であり、歴史のある貴族家からは蔑まれ、平民からは嫉妬される傾向にある。
 そこに来て、私が引き取られたとなれば、その用途は政略結婚以外にあり得ない。


 そう、私は、恩返しのために頑張るの!


 どんな相手だろうと、オリアナ様とライト様に恩返しできるのであれば大丈夫。しかし、相手にだって選ぶ権利はある。だから、少しでも優秀であろうと努力は怠らない。


 お化粧もある程度のお墨付きはもらえたし、可愛くは見えるはず。家事も、魔力を使わなければならないものは難しいけど、そうでなければ何も問題なしっ。


 もちろん、後遺症によって魔力や体力に不安があることは、マイナスだと分かっている。ただ、それはどうにもできないのだと割り切って、さっさとできることに力を注ぐ方が良いに決まっているのだ。
 それ以外に問題があるとすれば……。


「魔族の結婚適齢期って、長いんだよね……」


 恐ろしく長寿な種族である魔族は、とてものんびりと結婚相手を選ぶ傾向にある。それは、自分の片翼を見つけたい、と思う魔族が圧倒的に多く、探しているうちに百年とか二百年が経ってしまうからというのもある。
 つまりは、政略結婚と言っても、自分から動かなければ、そもそも相手を見つけることができない可能性の方が高い。そもそも、片翼を諦めた魔族となると、数が少なく、全て高齢であるパターンばかり。数百歳差の年の差結婚を覚悟しなければならない。


「でも、絶対に、見つけないと……」


 それが、私の唯一の恩返しの方法。間違えるわけにはいかなかった。
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